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再会の花  作者: 十矢
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次の約束

りぃちゃんに了承をもらって、待ってもらうこと二ヶ月後の少し日が暮れるのが早くなってきたかも、という秋の夕暮れ。

いつかのように、アルバイトにいく途中の道、ようやく見つけたその背中にトーヤから声をかけた。


「ひとみん、また会えたね。」

「トーヤくん。そうだね。」

「あ、とりあえず自転車同士だから。」


そういって、自転車から降りて、日陰となる木の側による。


「まだ暑いねー。それにしても、また逢ったね。うれしい。」

「ごめん。あれから、ひとみんのこと探して歩いてた。」


そういうと、ひとみんは少し不思議な顔をした。

キョトンとしているその表情が変わらない間に、話しを続ける。


「あの再会した日からいろいろあったよ。」

「でも、あの時に言えなかったこともある。だから、きいて欲しい。」

「少しだけいい?」


すると、


「じゃ、ここで。」


と木陰のしたで話しをする。


「あのとき、ひとみんに気づいてもらえて、嬉しかった。」

「懐かしい話し、たくさんできたね。」

「そうだね。いまでもまだ、思い出せること、想い出いっぱいあるよ。」

「バス旅行の話しとか、体育祭の写真とか。」

「あと、調理実習とかも楽しい話しだったよね。」

「体育の授業中、少しケガしたとか。」

「それもあったね。」

「部活大変だったけど、終わったら、楽しかったな。」

「そうだね。終わって気づくこともあるんだね。」

「テニスの応援も来てくれてたね。」

「手を振って、ふり返してくれたのって覚えてる?」

「そう、覚えているよ。嬉しかったし。」

「そう、でも一番印象にあるのは、自己紹介のときかな。」

「自己紹介?はじめのとき?」


ひとみんは、はっきりとは覚えていないようだ。


「そう、自己紹介のとき。」

「あまり思いだせないなぁ。」

「ほら、部活中に、陸上部にこない、みたいな会話した。その次の日。」

「そうだったかな。」

「そっか。あまり覚えてないか。」

「そうだね。」

「でも、現在(いま)ならわかる。そこが始まりだった。次の日の自己紹介のときからだ。初恋だったんだよ、きみが。」

「わたしが?」


これにはひとみんはびっくりしたようだ。


「だって、一度もそんなことは話し聞かなかったよね。」

「ホントそうだね。」

「でも、言えなかっただけかも。」

「そう、あの頃には言えなかったよ。」

「どうして。」


それから、話した。

あのころの中学二年のトーヤのこと。


「あのころテニス部では、走るのは好きだったけど、うまくならないことにふてくされていたんだ。」

「なかなか大会でも勝てないことが多くて。」

「練習は嫌いではなかったけどね。」

「勉強面では数学英語コンプレックスに落ちていて、成績がよくなくてね。」

「よくからかわれた。」

「ともだちもほとんどいなくてね。」

「はっきりと意見をいうのが、きっと怖かった。」

「テニス部は楽しかった。相棒にもめぐまれて。」

「でも、もう少し頑張れたのかも。」

「きっと、あのころは保留が多かった。」

「だから、ひとみんのこともきっと保留しておきたかった。」


ひとみんがようやくきく。


「わたしのことが、保留?」

「そう、保留ばかりで、今日その続きだね。」

「なさけないでしょ。ごめんなさい。」


ひとみんが口を開く。


「じゃ、仲直りだね。」


トーヤは少し困惑してこたえる。


「仲直り?」

「そう。わたしはあのころから、いまでも感謝しているよ。」

「体育祭のときも、バス旅行も楽しかった。」

「部活も頑張ってる姿みてたよ。」

「トーヤくん、ありがとう。」

「こちらこそ、ありがと。そうか、仲直りか。」

「仲直り、じゃダメなの?」

「やっぱり、今日話せてよかった。そうだね。仲直りだ。」

「でも、もう一つだけ。りぃちゃんっていうひとに逢えたから、決心がついたんだよ。」

「話しきいてくれてありがとう。」

「ひとみん、これまでありがとう。」

「いくつもの大切に書いてくれた、花束のような手紙、持っていていい?」

「大切にしたいものなんだ。」

「ここで、再会の言葉をいえたのも、自己紹介からの話しを言えたのも、きっと手紙で本当のことを伝え続けてくれた、ひとみんのおかげ。」

「きっと、りぃちゃんにも、もっと大切なこと、たくさん伝えることがある。そのときに、支えとしたい。」

「ダメかな。」


すると、


「わかった。ちゃんと持っていてね。」


そう、ひとみんは言ってくれた。


「りぃちゃんっていう子、今度紹介してね。」

「あ、連絡先も確認だね。交換しよう。」


お互い電話番号とメールアドレスを交換しあった。


「再会の花、じゃ、次は桜かな。」

「再会の花っていうのは、何?」

「そう、あのころ、帰り道の畦道。よく花の道ができていた。」

「そうだね。たしかに。はじめは紫陽花だった。」

「よく覚えているよ。」

「じゃわたしもひとつ。トーヤくんわたしも彼氏できたからね。」

「桜の季節とか、ダブルデートでもしようかな。」

「そうか。よかった、おめでとう。わかった。それにしよう。」

「再会の花は、次は桜かなぁ。」


こうして


「じゃっ。またね」


て言って、ひとみんはその場から、自転車をこいで、離れていく。

そして、少し走ってから、振り返って止まって、手をふってくれた。

トーヤも、手をふってから、自転車を同じようにこぎだす。

今度は、伝えられた。

次は、再会のダブルデート編かな。

トーヤは、りぃちゃんに桜デートを提案しようと決めた。

きっと、ヒカルさんもついてきそうな気がする。

もう、再会の花をふりかえらずに、前を向けるかも。

そんな気がする。


(おわり)


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