14 フランソワ襲来
フランソワ=クラウス。
見事な金髪。
村の女の子より明らかに秀でた体格をしていて、まるで海外のモデルが交じっているようだ。
異世界に来て外国というのも変だが、それくらい彼女は異質な存在だった。
「今日は髪を隠して仕舞っているのね。とても綺麗な髪なのに残念だわ」
部屋に訪ねて来るなり彼女は私の格好を採点し始めた。ビッツィーの前を無断で横切って、部屋の中をあちこち掻き回している。
此所はクラウス家の敷地内なのだから、部屋の物をどうしようとフランソワ=クラウスの勝手ではあるのだが、彼女はそれ以外の私達の私物の入っている棚やなんかも平気で開け放して行くのだった。
「さあ、これを着て。早くね。行く所がいっぱい在るのだから」
「行くって何処へ」
「さあ、さあ。此れも。此れも」
お嬢さまは話を聞かない。それに服ならビッツィーに着せてもらったばかりなのに。
「ノリコ貴女、頭のスカーフ如何しても取りたくないの? 嫌? 私、皆に貴女の髪を見せびらかしたいのだけれど」
「これは……ちょっと」
私の拒絶にあう、フランソワはしばらく黙ったが、如何にか諦めてくれた。
「……そう。今日の所はまあ良いわ。こんなの特別よ。さあさあ、それより早くそのみっともない服を着替えて」
これは云う通りにするまで譲らない人なのだな、と私は察した。せかされながら服を脱ぐというのは変な気がするものだ。
「出来て? 出来たら行くわよ」
「ええと。何処へかな」
「だから、ノリコに村を案内してあげるって私云ってるじゃない」
云い終える前から、フランソワはすでに歩き出していた。よほどせっかちなお嬢さんだ。この時点ではまだ、彼女があんなに悪い令嬢だとは想像もつかなかったのだ。
「行ってらっしゃあい」
ビッツィーは笑って私たちを送り出した。
この人はずっと面白そうにしていた。




