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Revenge30  作者: 彗心
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人の世を生きる

人生とは、自分が何者であるかを知る事だ。

男はきっと気づいていた。


そしてずっと知ろうとしてこなかった。


他人の目が、評価が気になっていたから。そしていわゆる「普通」というレールから外れていく勇気も妥協も無かったのだ。自分を試す事が怖かったのだ。自分の実力を知っていたから。


みんなが大学に行くから大学に行き、みんなが就職をするから就職をし、みんなが会社を辞めないから続けてきた。

色んな地方に飛ばされても、なんとかやってきた。

それなりの昇進もした。評価してくれる先輩や上司に慕ってくれる後輩達もいた。大きな仕事も任されて結果も残した。そしてこれからは駆け上がっていくだけ。

その状況に自分は満足しているとずっと思っていた。


しかし、30歳を迎える年に大きな転勤があった。


地方に行くのはもう何回もやっていたので、またかという気持ちしかなかった。

慣れ親しんだ上司、先輩、後輩、部下と別れ田舎から田舎へ旅立った。

どこも似たようなもので、もう希望も信じられなくなっている末期感のただよう転勤場所で、

いつものように仕事をこなす…はずだったのだが、


田舎の社宅でお酒を1人飲みながらコンビニで買ったつまみを食べ、遊ぶ相手もいない中で1日を惰性に生きている時に、

よりにもよって

あと30年強もこの生活が続くと考えてしまった。


ずっと外れないようにしてきた「普通」というレール、


正社員になって安定した生活を続ける…と言ったものが唐突に虚無であると感じたのだ。


これまで同じことを考えてこなかったのかというとそんな事は無い。何度も似たような、同じような事は考えた記憶はある。

しかし、見下していたのだ。「普通」から外れた人間を。

失敗する事を。


勝負もしない癖に、生きもしなかった癖に、生きている人間を。


そして今外が大雨の中で、友達もいないような田舎で、自分はこれを繰り返していくだけの人生と考えた時とてつもなく羨ましいと思った。


例え自己中心と言われても、少数派に属しても、かつての自分に見下されても、自分の為に生きていきたい。


そしてそれから一週間後、渋谷の高層ビルのエレベーターエントランスから一枚の写真を撮った。


自分の人生に一度ピリオドを打つ為に。


何者かになる為に。

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