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東京五人男

監督 斎藤 寅次郎


制作国 日本


制作年 1945年

 この作品は終戦直後の1945年12月に公開された映画です。東京でロケが行われています。ウルトラマンで有名な円谷英二も撮影に参加しています。齊藤寅次郎監督は戦前から戦後にかけて数多くの喜劇映画を製作した巨匠でした。


内容は戦地から帰ってきた5人の男たちが、家族との感動の再会をするのも束の間、あらゆる生活苦に右往左往します。そのなかでずるをして良い思いをする立場の強い人たちへ仕返しをするというものです。


私事を言いますと、この映画は私が本格的に映画を鑑賞するきっかけとなった作品です。BSで「山田洋次監督が選んだ名作百選」というシリーズが昔あり、その中にこの作品がありました。僕は古い作品をこの時まであまり見たことがなかったため、とても新鮮で衝撃を受けたことを覚えています。


この作品のロケは東京で行われました。そのため、空襲で焼け野原となった街並みがそこまま映し出されています。今まで歴史の資料映像しか見てこなかった私にとっては新鮮だったのです。


そして、アメリカのGHQの統治が始まったばかりで、日本がどうなるか分からない時代の世相を良く描けていました。焼野原を客がぎゅうぎゅうに詰め込まれて走る路面電車。車内ではくつが盗まれ、無賃乗車は当たり前。主人公も怪我人を装った人に自転車を盗まれてしまいます。映画で描かれるくらいなので、実際はもっと酷い有り様だったことでしょう。現在の日本とは比べ物にならない状況です。


そしてすぐに復興事業を推し進めてもらいたいものの、役所に行っても何時間も待たされた挙げ句にたらい回しにされます。当時の状況ではいたしかたないものの、文句の一つ言いたくなるような公務員の態度も上手く描かれています。


しかし、作品は喜劇のため、とてもユーモラスに描かれています。ですがそのユーモラス、とても痛々しいとも思いました。絶望からなんとか身を守るために仕方なく出る笑みを表現しているかのようでした。来年まで生きていけるのかということを、ユーモラスに描くのは、今では中々出来ないと思いました。


しかし、疎開から帰ってきた息子と久しぶりのお風呂のシーンはとても印象に残りました。親子水入らずでドラム缶の風呂に入り、父親が高らかに唄を歌っていました。そのなかに「〽️痩せた~けど、良かったね~。」というかしがありました。食糧不足でこんなに痩せてしまった。しかし、生きていてよかった。家族を失った人が大勢いた時代に、こういう気持ちになる日本人が大勢いたんでしょうね。私も涙が出てきます。


そしてこの映画からは、改めて戦中の同調圧力、弾圧が無くなり自由に映画が撮影できたと実感できます。同時に戦中のギスギスとした雰囲気も感じとりました。それは現在のコロナ渦でみられるバッシングなどにも少し似たところがあると感じます。具体的にはこの貧しい中でズルをしている人たちへ一泡吹かせる場面です。戦中のギスギスした中で、非国民などとレッテルを貼ったり必要以上に反戦を不謹慎なものとして一般人の間で叩きあったことと心理的には似ていると思いました。


しかし、荒廃した東京を上も下も関係なく復興させようと前向きなメッセージも表現していました。新しく女性にも参政権が認められ、選挙に立候補しやすくなった。そして庶民の意見も戦前より断然政治に反映されるようになる。このような希望がこの映画で表現されていました。この戦後の礎を築いた人達の頑張りを見習わなくてはいけないと思いました。



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