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戦場でワルツを

監督 アリ・フォルマン


制作年 2008年


制作国 イスラエル

 この映画は監督が実際に経験した戦争を描いたイスラエルのアニメ映画です。1982年にイスラエルが介入したレバノン内戦の凄惨な出来事が描かれています。


内容は、監督がレバノン内戦のとある凄惨な事件の記憶を思い出そうと、昔の戦友を訪ねては話を聴き、段々戦争の記憶が蘇ってくるというものです。


私自身はこの映画を鑑賞するまで、レバノン内戦のことは全く分かりませんでした。レバノン内戦とは、レバノン内でイスラム教徒とキリスト教徒が対立し、周辺国を巻き込んで1970年代から続いた内戦だそうです。日本ではあまり関心がないのか、あまり資料がありませんどした。


レバノンは元々ハワイみたいなリゾート地で綺麗な海の側には多くのリゾートホテルが立ち並ぶ観光地でした。しかし、この内戦でホテルは破壊され、その影響は現在も続いているそうです。ちなみに、昔、水道橋にレバノン料理屋があり、私も一度食べに行きました。ひよこ豆のコロッケや茄子のペーストなどがあり、ピタパンに付けて食べました。さっぱりしながら、素材の旨味が引き立つとても美味しい料理でした。


イスラエルのアニメというと、私は馴染みがありませんでしたが、非常に精巧に作られていました。欧米風のデフォルメではありましたが、細部の細かなディテールもしっかり描けていて、日本のアニメ映画ど同等のクオリティだと思いました。


やはり戦争映画てすので、辛い話が多いです。例えば前を通った車を部隊全員で銃撃したら、乗っていたのは子供を含めた家族連れだった。その車種は赤いメルセデスだった。という体験談です。民間人を殺した記憶が車の車種と結び付いて残っているというのはリアルがあります。


やはり辛いのは戦車兵だった人の話です。この人の思い出は本当に細部まで描かれていて、戦車の仲間と写真を撮ったり、スナック菓子を食べあったりして楽しそうにしていました。しかし、敵のゲリラから奇襲を受け、自分以外の仲間は戦死し、自分も死んだと思われ、友軍は撤退してしまいます。その人は敵の目をかいくぐり、なんとか自力で味方の陣地までたどり着いて生還しました。自分を置いていった軍を最初は恨みましたが、自分も仲間を助けずに一人だけ生き残ってしまったという罪悪感にさいなまれ、戦友の墓参りも最初の方だけ行っていたが、罪悪感から気まずなるため、今は行っていないと語りました。


ここの場面で私は、まだ戦争の記憶を綺麗に整理できない様子を感じました。なんだか話し方に戸惑いを感じました。私たちが大平洋戦争の証言を聞くときに、しっかりあのときは辛かった。もうこの戦争はしてはいけない。という言葉を聞きます。証言者は長い年月のなかで、重いでとして整理し、後世に残そうとした様子で、話されているようにかんじます。しかし、この戦車兵の人の話は戸惑うように証言していて、まだ思い出を過去として整理できていない苦しみを感じました。


そして、日本とイスラエルの戦争観の違いを感じました。イスラエルでは、男女共に根こそぎ徴兵され、いざとなったら戦争に行く国です。なので、戦争の証言をしても何処か淡々としていて、特別なこととして認識していないように感じました。学生時代の思い出を淡々と語るように証言していると思いました。元日本兵の人のするようなとにかく辛いと涙ながらに訴える様子とは違うなと感じました。しかし、戦争は二度とたくないという気持ちを持てるのは良いことだと思います。


そして、主人公である監督自身の戦争に関する戸惑いも感じました。監督は幼少時に中東戦争を経験していました。この戦争は防衛戦争であったため、父親は戦争に行き、絶えず空襲警報が鳴る生活を送っていました。そのため、生活も戦時体制で国民も一丸となって戦争をしていました。しかし、レバノン内戦の途中で監督が休暇のため故郷に戻ると、普通の生活があり、若者はゲームセンターにたむろっています。まるで戦争など無いかのような町の様子に監督は戸惑っていました。もう自国の領地が脅かされる戦争ではなく、対外戦争になった。そのため、国内に危機が無いため、戦争には無関心。今まで戦争にとは全員の問題だと思っていたのが、命がけの自分のことも無関心でいられることに戸惑っている様子を感じました。


このように、戦争を描いているため、明るい話ではないです。特にラストは衝撃的です。しかし、普段日本では知られない戦争について知れる良い映画だと思います。そしてアニメ技術も素晴らしいので、ぜひレンタルしてみてください。




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