東京物語
監督 小津 安二郎
製作年 1953年
制作国 日本
云わずと知れた小津安二郎監督の代表する映画です。私は小津作品を何作か観賞しましたが、東京物語を観たのは最近のことでした。
改めて感想を述べると素晴らしいですね。冒頭に写る広島は尾道の風景。そこを貨物列車が鉄道模型のように通り過ぎる。またその絶妙な距離からの撮影も最高ですね。
ストーリーは尾道に住む老夫婦が東京に住む息子、娘夫婦に会いに行く。しかし子供たちは仕事に追われ、老夫婦をもてあまし、しまいには邪険に扱う。一方戦死した次男のお嫁さんは積極的に老夫婦と交流するというお話です。ネタバレをになるのでこれ以上ストーリーの流れは述べません。
この作品は公開が1953年と今から70年ほど前にも関わらず、非常に現代的なテーマだと思います。核家族と老いた親世代との人間関係。親というものは大切にするべき。でも…と葛藤。まだ当時は三世代家族が基本で儒教的な考えが強かった当時としては革新的で現代でも問題になるテーマですよね。
そして娘の老夫婦を邪険に扱う演技や台詞が毒がありながらも秀逸なんですよ。兄のお嫁さんが「お義父さん達が来たからすき焼きの他にお刺身にしようかしら?」と言うと、「いいのよ、お刺身なんて、お肉だけでたくさん!」と言ったり、娘の旦那が浅草で白餡の御菓子を買ってきたからお義父さん達にどうだろう?と言うと「そんなの贅沢よ。お煎餅で充分!お父さん達はお煎餅好きなんだからいいのよ。」と言ったりする具合です。いや~実際ありそうですよね。こんな会話。ましてやお父さんが昔の知りあいと呑んで酔っ払って帰ってくると本当に嫌そうにするんですよね。
いや、そんなに嫌な顔せんでも、と思わずツッコミたくなります(笑)
そんな娘もとあることで本気で涙を流す場面もあるので、いや~人間って奴はよ~と唸ってしまいましたよ。そこは流石小津監督です。
その一方で次男のお嫁さんと老夫婦を通じて家族に血は関係ない、改めて家族に成れたんだなと思わせる描写も素敵でした。
そしてそんなことがありながらもまた家族が揃って昔話に華を咲かせる描写もしみじみとしましたね。
そして良い意味でも悪い意味でもこれはキツイな~と思う場面がありました。それは主人公のお爺ちゃんが東京に来たついでに昔の知り合いと居酒屋でお酒を呑む場面なんですけど、そこで知り合いがお爺ちゃんの息子を引合いに出して本気で自分の息子が優秀じゃなくて不器用かを嘆くんですよ。「いや~あんたの息子は器用良しで立派じゃ。それに比べてうちのせがれは本当に不器用で出世しなくて、情けなくて…」と泣きながら本気で嘆くんですよ。いや、普通こういうのは相手の息子をたてて社交辞令を含ませて言うことだと思うんですよ。いや、そうは言ってもうちの息子が一番と。でもそうじゃなくて本気で泣きながら嘆きます。いや、別に道を踏み外したわけでもないだろうにそこまで言ってくれるなと思います(笑)それを聞いて冷たい息子達について悩んでいたお爺ちゃんも「あんた、いくらなんでもそれは言い過ぎじゃろ。」と突っ込んでいます(笑)
そう考えると、私の親父もそんな風に私を思っているんだろうな~と考えてしまいますね。すまんな…出来が悪くて。
話は変わってやはり時代を感じる描写もあります。今では老人ホームでよく流れている曲が映画では若者達が今時の曲として麻雀をしながら流していたり、戦前に建てられて空襲で焼け残った建物と戦後に建てられた建物が混在する東京の町並みだったりまだコンクリートが敷かれていない土ぼこりがたつ上野公園が写されていて時代だなと感じました。
最後に、映像的にも物語的にも秀逸な映画について思います。此れから歳を重ねるとまた違った好さが分かる映画だなと思いました。また機会があれは観てみたいですね!