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第三話 その者、強敵と相対す

ウィッグの魔物を返り討ちにしてから一時間が経ったくらいか、入団試験のためにラビュリントスに挑戦するが同時に全員で突入するのではなく時間を置いて一人づつ中に入って行ってる。リーフェルの前の人が中に入り次は自分の番になった。


「そろそろいっかな…んじゃ頑張ってきな」


背中をウィッグに叩かれ中に進む。入口は石畳で舗装されていたが少し進むと一気に空気が変わる。

赤みを帯びたピンク色のした弾力のある道に変わり何かの粘液が天井、壁に滴っている。ふと壁に手を付いて離すとヌチャァとした音と共に手についた粘液が橋をかけ不快な気持ちになる。

ある程度歩くと右左真ん中と分かれ道がある広い空間に出る。直感で右に進む。

どこから言語化するとブッブーというふうに聴こえる音が鳴った気がする。

さらに進むとまた先程と似たような部屋に出る。次は左の道に進む。先程と同じ音が聴こえた気がする。

奥に行くとまたまた似たような部屋に出る。次は真ん中の道に進む。先程とは違いピンポーンとそんな風な音が聴こえた。


奥の部屋はさっきほどの部屋と、とても似ている部屋に出たが、さっきとは違い分かれ道が三つから五つに増えている。

「うわぁ…」と思わず嫌な予感が頭を巡り溜息のようなものが口から零れた。

さっきのようなことは繰り返したくないのでなにかヒントがないかと音を聞いたり何か印がないか探してみる。

真ん中の道からは水が滴る音が、他からは何も聞こえず無音。特に形が変わっているということも無く肉々しい弾力のある壁があるだけ。

ここにいても何がある訳でもないので仕方なく奥に進む。

奥に進むと生々しいイカのようなそんな気持ち悪さのある臭いが漂ってくる。そしてそれは進めば進むほど濃くなっていく。

しばらく進むと先程よりも広い空間に出る。

まばらに壁とおなじ材質の肉の柱が立っている、がそれよりも気になるのは水音の中に何かを咀嚼する音が加わったことである。

柱に身を隠しながらその音が発するところを覗く。


「ッ!」

モシャ…バキッ…クチャクチャ…モニッ…クチャ

(な、なんなんだよあの生き物は)


背中しか見えなかったが胡座で座りながら自身よりも遥かに大きいウィスパーが雑に解体されその肉を食っている姿が見えた。

その背中は肩からボロボロの廃れた赤いマントを羽織り腰には剣のようなものが見える。

背中の形を見るに人間のように感じる…がウィスパー然り全ての魔物の肉は人にとって猛毒そのもの、如何なる解毒剤を持ってしても食べる事が出来ない代物とされている。

なのに、この人らしき者は食っている…つまりこの人のようなものは魔物となる。しかし魔物にも人型がいるとは知らなったとリーフェルの脳内にそんな考えがよぎった。

そんな時である、ふと咀嚼の音が消えそして何かがリーフェルに向かって投げつけられる。

もっともそれがウィスパーの前足だと分かる時には既に彼の顔面にそれが当たってしまってるが。

「っぶ!」と血を噴きながら後ろに大きく吹っ飛ぶ。鼻から垂れる血を腕で拭き取り、立ち上がると投げてきたあの魔物がこちらを向いて仁王立ちしている。

正面から見たその魔物はまるで没落した一国の王のようなそんな威厳のあるオーラを纏っている。が、あのメルムング国王とは違いその本質は狂気だと感じる禍々しさがある。体は一切の鎧を纏わず赤を基本とした軽そうな布の服でできており、右から左腰にかけて袈裟斬りされた傷口と心臓に刺傷を負った痕があり、顔は憤怒を纏ったような表情のまま変わらず紅蓮の眼をこちらに向け、頭にはボロボロに欠けた王冠らしきものが乗ってあり、腰には汚れた宝石で装飾された剣を携えている。


(やっばい、バレたっ…)


そう思うが早いか腰から剣を抜剣肩に乗せるように構え、背中から槍を引き抜いて敵に刃が向くように構える。

相手は腰から剣を引き抜くとそのまま剣先を地面に突き刺し仁王立ちで構える。

(さて、どう攻めたものか)と考え、槍を片手でクルクルと回し先程自分の顔面にぶち当てられたウィスパーの前足を槍先で相手に向けて弾き飛ばす。その軌道は相手の顔面に絶対当たるコースだと確信し当たると思ったその時、相手の腕が一瞬消えたように見える。

その瞬間相手の顔に飛んだ肉片が真っ二つになりそのまま後方に飛んでいく。

顔に迫る障害を切り伏せた相手はその宝剣を片手で持ちこちらに走ってくる。

その圧に一瞬気圧されほんの一瞬判断が遅れる。その隙間を縫ってリーフェルの懐に魔物が入り込む。

横一閃。


(あっぶないぃぃ…)


正しくギリギリで槍を地面に突き刺し押すことで、後ろに体を飛ばすことが出来たため体の上下が泣き別れせずに済んだ。

リーフェルの咄嗟の判断は素晴らしいものだがそれ以上に驚くべきはあの魔物の身軽さである。腕が消えたかのように見えるほどの速度で振るわれる剛剣、雷速かと思うほどの身のこなし、思わず逃げ出したくなる程のオーラ、その全てがただの魔物とは思えないほど洗練された動きだった。

明らかにこんな1階層で出会うような敵ではない。そう確信せざるを得なかった。

(よし…逃げよう)そう思い後ろをちらりと見る。

壁である。先程あったはずの道は無くなっている。

心の中で思わず唖然する。背水の陣ならぬ背肉の陣と言ったところか。笑えない冗談だと心の中で苦笑し、再び前を注視する。

逃げ道無し、負ければ即ち死、実力差は圧倒的の一本勝負。


強敵と相対す(戦闘に入るとは言ってない)

来週の更新は少しばかり遅れるかもです。すみません

もし良かったら感想いろいろお待ちしております。

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