第一話 産まれ落ちる其の名は
鼓動が聞こえる…それは生命が産まれる音。
鼓動が聞こえる…それはこの世からの祝福の音。
鼓動が聞こえる…それは物語が始まる音。
どうかこの子に祝福あれ…
ここはメルムング王国内の田舎村『バニマング』。
今となっては田舎村だがかつてメルムング王国が無く、小さな村同士の集まりしかなかった頃、この村で生まれた一人の青年が『エクスカリバー』なる剣に認められ、村をまとめ、そしてこの世を荒らす魔物に対抗するべく自身と同じ『特殊な武器』を持つものを集め、王国を作った。
そんな田舎村に、今生命の産声が上がる。
小さな小さな彼は後の世で『王国史上最悪の騎士』と語り継がれるが…それはまだ先のお話。
「おぎゃー!おぎゃー!」
部屋の中いっぱいに赤ん坊の声が響く。
「お前!ついに産まれたか!
」
上から急いで階段を降りる音が聞こえた後にドアが勢いよく開かれ、夫が喋る。
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ」
人生の中でも指折りの大仕事を終えた妻の代わりに付き添いをしていた助産婦が答える。
「そうかそうか!…可愛らしい顔だ…よく頑張ったな」
「…え、えぇ…!」
息を整えた妻が今度こそ夫に返事をする。
「この子、なんて名前にするんです?」
助産婦が『両親』に聞く。
「あぁ、もう決めてるんだこの子の名前を」
「ふふっ、あなたったら結婚した時からずっと言ってますものね」
「…っ…〜〜…いっいいだろ、それよりもこの子の名前は…」
妻に昔のことを掘り出され顔が赤くなる夫、でもその顔はどこか誇らしげに見える。
「この子はリーフェル、リーフェル・デオン」
「リーフェル…いい名前ですね!」
助産婦が顔の赤い父親を見て笑顔で話す。
「おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!」
部屋の中が幸せな空気で満たされる。
それから18年後…
「忘れ物とかないかい」
「大丈夫だよ、母さん」
「道に迷わないようにね」
「それも大丈夫だよ」
家の玄関口で母親と息子が話をしている。
あの産まれた時から早くも18年、産まれた当時の事を思いながら母親は大切な息子を送り出す。
「いってらっしゃい」
「うん、いってきます。父さんによろしくね」
「えぇ…」
見送る背中に愛したあの人の背中が重なった気がした。
「……騎士になりたいだなんて…ふふっ、やっぱりあなたの子ね」
見送られた彼はいつになく上機嫌な風に見える。
「向かう先は王都、ふふっ、どんな人に会えるのかな」
彼は今騎士団に入るための試験場に向かっている。
どんな手練に会えるかどんな出会いがあるか期待に胸を膨らませて彼は真っ直ぐ道を進む。
その先が修羅の道と知らずにただひたすらに。
初めまして、Reigonと申す者です。
えぇこの物語は週一で投稿する予定です。
ゆっくりマイペースの更新です、ご了承くださいな。
あ、感想批評(罵詈暴言でなければ)お待ちしております