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召喚①

 昼食後の、ちょっとした昼休憩。

 午後の予定を思い浮かべていた時だった。


 突如、足下に魔法陣が発生した。


(魔法陣!?これは、召喚陣か!)


 魔法陣、または魔術陣と呼ばれるそれらは、魔力という不思議エネルギーを用いる技術大系の一つ。

 そのなかでも召喚陣とは、遠く離れた場所から物を時空を越えて引っ張ってくるというもの。

 故に俺は、陣を破壊しようとしたのだが…


『待つんじゃ。』

(ちょ!?なんでだよ!)


 空に止められてしまった。


『なぜとな。そんなの決まっておろう?その方が面白そうじゃからじゃよ。』

(やっぱりかよちくしょー!)


 実は空は生粋の快楽主義で、面白そうなことがあれば積極的に首を突っ込んでいく。

 それだけならばまだ良かったのだが、必ずと言っていいほど俺を巻き込む。というか渦中の中心に置こうとする。

 俺というイレギュラーが状況を引っ掻き回す様を見るのが楽しいらしい。

 勘弁してほしい。

 そしてそんな空の暴挙を、誰かが止めることはまず無い。

 なぜなら…


 《今度はどんなショーが見れるのか、楽しみですね!》

 【期待してる。】

 〈気をつけて頑張るのよ~〉

 {楽しくなりそうです}

 [久しぶりに、面白いことになりそうじゃん!]

 〔頑張ってねー〕


 他の奴らも似たような性格してるからだ。

 だいたい空か夜が思いつきで面倒事を起こしたり首突っ込んだりして、そこに他の奴らが悪乗りしてくるのがいつものパターンだ。


『そうじゃ。せっかく召喚されるんじゃ。ビシッと決めようではないか!風格を出せ風格を!』

 《いいですね!それなら、女体の方が華があっていいのでは!》

【衣装ももっと豪華にする。】

 〈髪型もちょっと変えましょうか。〉

 {従者もいた方がいいですね。}

 [口調も、それっぽくした方がいいんじゃね?郭言葉とかどうよ。]

 〔顔を隠したら、ミステリアスでかっこいいよ!〕

『そうじゃのう他には…』


 と、俺が口を出す暇も無くあれよあれよと方針が決められ、一瞬にして準備が整えられた。

 魔法陣が現れてから、1秒に満たない間であった。

 そして、俺は光に呑み込まれていった。







 //////////






 この日、魔王城にはかつてない危機が迫っていた。


「陛下!水剣王のテュース様がご帰還なさりました!」

「なに!?通せ!」


 魔王の言葉のすぐ後、魚が二足歩行したような生物が謁見の間に入って来た。しかしその姿はかなり痛々しい。体中を覆っていたであろう鱗は所々剥がれ落ち、体中に無数の傷を負っている。

 片足は膝から下が無く、片足でバランスを取っている。

 見るからに重傷である。


「テュース!?なにがあった!」


 魔王の問いかけに、二足歩行の魚…四天王の一人

 である水剣王テュースは、自らの体験を語る。

 残った二人の四天王が託してくれた使命を全うするため、敵の情報を伝えるために。




 事の始まりは、半年程前。

 聖神王の納めるノーラウスの女神ルーティアが、異界の勇者達を召喚したことから始まった。

 異界の勇者達は召喚当初から、凄まじい功績を上げた。

 戦闘訓練初日で、聖神王直属の近衛騎士相手に勝ち。

 超高難易度の魔法を易々と発動させ。

 神の奇跡をも使いこなす。


 修行期間が終わるとともに、国内外にひそむ人類の脅威を排除してまわった。

 とある街の住人を苦しめていた強大な魔物の打倒。とある村に蔓延した疫病の根絶。とある国の麻薬を売り捌いていた裏組織の壊滅。

 これらは異界の勇者達の功績のほんの一部でしかない。

 数えれば十は下らない功績を、彼らは挙げている。

 何よりこれらをなしたのが、たった6人の少年少女達だというのだから驚きだ。


 人類は彼らを、希望と呼んだ。


 そして二月程前、ついに事件は起きる。

 勇者達が、魔王国に攻めこんできたのだ。彼らは魔王軍を蹴散らし、ついにノーラウスとの国境を守っていた四天王、炎鎚王シャーテルをたおしてしまった。

 そして勇者達は、そのまま魔王城に向かって来ている。


 話を聞くためにノーラウスと勇者に使者を送ったところ、ノーラウスに送った使者は殺され、勇者に送った使者は…

『人類圏にいる魔物全てを魔王国に連れ戻し、今まで人類に行ってきたことに対し償いをしろ!さもなくば魔王を倒す!』

 という無茶苦茶な要求をされ、それ以上は話も聞いてもらえなかったという。


 この要求に魔王と幹部達は頭を抱えた。そんなの無理に決まっていると。魔王は確かに魔物の王ではあるが、別に全ての魔物が魔王の言うことを聞くわけではない。魔物の中でも知能の高い者達、魔族がつくった国の代表をしているというだけだ。


 知能の低い魔物まで支配しろというのは、犬猫に言うことを聞かせろというのに等しい。

 一匹二匹なら、捕まえたりしつけたりはできるかもしれない。しかし国中に散らばった魔物を魔王国に集めろ?できるわけがない。


 よって、魔王と幹部は勇者達を撃退することに決めた。

 魔王国の中でも有数の実力者である四天王の一人がすでに殺されているため、残りの四天王三人と精鋭数十名が対応することに。

 これでなんとかなると思われていた、しかし。


 精鋭数十名は何もできずに殺され、四天王は奮闘するも水剣王テュースは満身創痍になり、情報を持ち帰るため戦線離脱。

 つい先程、貴重な転移魔道具で帰還してきた。

 風槍王トカエルと土拳王メシュエラは、少しでも勇者の消耗と時間稼ぎのため勝ち目のない戦いをしている。


 謁見の間は、重苦しい空気につつまれた。




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