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運命のラストターン

蓮丈院遊月 AP1200 VS 藤丸エルド AP2650



「私のターン! ドロー!」



 この戦いにエルドまで興奮しているのか、デッキからカードを引くだけで、ドローしたカードからテールランプの如くキラキラとした輝きが瞬いていた。



「〈ミネルオリーヴァワンピ〉の効果発動!」


「この瞬間! 〈エヴォルフェネクスワンピ〉の効果発動!」



 こちらのAPを削る聖剣を振りかざすエルドの一閃に、俺は砕けたハートの片割れを燃やして纏った炎の鉄拳で応戦する。


 萌黄色の翼に押された剣撃と、炎の翼に押された鉄拳が空気をゆがませるほどぶつかり合い、火花とは違う何かを散らし合っている。



「こんなもんじゃないだろ藤丸エルド! お友達のジェネトモを出してみろよ!」


「うぬぼれるな! 貴公ごときのためにあの子達が割く出番はない!」


「だったら意地でも出してもらうぞ!」



 剣と拳、そこから額同士を鍔迫り合いの如く俺達はぶつけ合あう。


 それでも本気を出そうとしないエルドに、俺は挑発を叫んだ。



「ジェネともを使った本気の貴様に勝てなければ、意味が無い!」



 先に鍔迫り合いを解いて距離を取り、〈エヴォルフェネクスワンピ〉の効果を込めた鉄拳を鳩尾めがけて振り上げた。


 スドンと鈍い音が立つほど、エルドの腹部に一撃が入り、その弾みでようやく〈ミネルオリーヴァワンピ〉が粉々に砕けた。


「――くッ!」


 だが、炎の拳がストレートに入ったはずなのに、エルドは怯まないどころか、その場から反撃に転じるべく数歩ほど後ろに下がった。



「すでに勝った気でいるな、無頼者め!」



 吠え返しながら、エルドが肘を曲げて引き絞った握り拳を下から突き上げるように放ちながら、伏せていたアクシデントカードを起こした。


「ぐぉッ!」


 天へ突き上げられた拳に代わって、一枚のアクシデントカードという跳ね戸のごとく勢いよく立ち上がりながら発動したカードに顔どころか全身にぶつけられたことで、俺の纏っていたコスチュームもかき消される。


 その拍子に鼻を強打したのか、片穴から赤い滴が数滴ほど飛び散った。


「〈ゴルドアプフェル〉ブランドコスチュームがランドリーに送られたことで、アクシデント〈テイレシアスへの天罰〉を発動! 互いの着ているコスチュームを全てデッキに戻す!」



 破壊をトリガーに発動する、まさに罠のようなアクシデント。


 本人にとっても苦肉の策だったようで、蓮丈院遊月の新たな切り札を完全に封じるためにはデッキに戻すという強硬手段を取らねばならなかったようだ。


 だが、エルドが警戒するほど強力な防御効果をもっていても、一ターンに一度という制約によって、コストにできる素材はあっても発動できず、お互いにあれほど着込んでいた俺やエルドも、一瞬で一糸纏わぬ姿に戻される。



「その後、私はデッキの一番上を捲り、発動条件を満たしているなら効果の発動ができる!」



 やっと素っ裸を拝めるようになったエルドがスキャナーからカードを一枚引いた。



「私が発動できるのは――ミュージックカード〈シンデレラリトライ〉!」



 それは、自分のランドリーに置かれたコスチュームなら、何でも復活という追加コーデができる万能ミュージックカード。



「蘇れ! 〈ミネルオリーヴァワンピ〉!」



 なるほど、そういうわけか。


 〈エヴォルフェネクスワンピ〉に防がれると解っていながら、犠打として一掃効果を持つ〈ミネルキルシェシューズ〉ではなく、〈ミネルオリーヴァワンピ〉を発動させたのは、復活に手間取るデッキへ戻させるのではなく、手段さえあれば何度でも蘇らせるランドリーへ転送させるために。



「三味線引いている奴が言うなぁあ!」



 すかさず俺も伏せていた一枚――アクシデント〈桶底の一枚布〉を叩き起こす。


 発動条件は〈ブラッデルセン〉コスチュームが相手コスチュームをランドリーに送る効果の発動に成功したこと。


 その効果は、ランドリーに置かれた〈ブラッデルセン〉ブランドコスチュームを、色付きの状態で追加コーデさせること。


 新たなる切り札である〈エヴォルフェネクスワンピ〉はデッキに戻されたが、こいつがエルドの衣装を破壊した結果だけは確かに残っていた。



「もう一踏ん張りだ! 〈エヴォルスワンワンピ〉!」



 これで互いに出したコスチュームは一着ずつ。


 ワンピのみというフルコーデじゃなくなったことで、エルドもミュージックステージによるアップ効果の恩恵も受けられなければ、〈アイギスバレッタ〉という厄介物もない。



「私はカードを一枚伏せて、スタンバイだ!」



 そして手札の枚数によるスタンバイの制限もなくなった。



蓮丈院遊月 AP550 VS 藤丸エルド AP1300



「これが最後のターンだ! 俺のターン!」



 現状、手札も伏せもない状態で引く、最後のドローフェイズ。


 引いたカードは、まさしく何かを暗示する運命なのか、アクセサリーカード〈ブラッデルセン タンクルハートポーチ〉が手札に来た。


 互いの着ているコスチュームは一着のみ。


 エルドの方は手札がなくなり、伏せているカード一枚のみ。


 笑っても泣いても、この一手で全てが決まる。



「手札から〈ブラッデルセン タンクルハートポーチ〉をコーデ!」



 首から腰に下がる真っ赤な液体が詰まった小さいポーチ型のアクセサリー。


 俺はその容器を鷲掴み、容赦なく手の中で粉々に砕いた。


 プラスチックの脆い容器の中に入っていた赤い液体が、まるで血液のように手から溢れて滴り落ちる。



「〈エヴォルスワンワンピ〉の効果! 〈タンクルハートポーチ〉を捨離し、貴様の〈ミネルオリーヴァワンピ〉をもう一度ランドリーに送る!」



 最後の一撃。


 迸る血のように赤い液体に手が湿りながらも、握りしめる拳は熱く燃えている。


 魂を燃やしたこの一撃を拳に込めて、俺はエルドの一張羅に向かって吶喊した。

次回、(いったん)最終回です


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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