女神の髪飾〈アイギスバレッタ〉
「これにより条件は揃った! 〈ミネルオリーヴァワンピ〉の効果を発動!」
パチンと指を鳴らした拍子にこちらに指を差して狙いを定めた直後、石床が敷き詰められているはずのエルドの足下から一本の細い剣が植物の様に延びてきた。
発動する効果の演出に使うらしい虚像の剣らいが、エルドは柄を質量があるかのごとくぐっと握りしめる。
「〈ミネルオリーヴァワンピ〉のAPが元々の数値より高い場合、一ターンに一度だけ、その上回った数値分、相手のAPを下げる!」
開幕で出したターンに発動しなかったのは、そういう為だったのか。
ここまでガンガンアニメを見ていなかったから、デザインや名前はうろ覚えだったが効果に冠しては本当に記憶になかったが、搭載された効果はまさかのドレイン系だ。
両手に剣を握り切っ先をこちらに向けて一刀を振るべく引き絞る状態で構えるエルド。
「させるかぁ!」
このままケーキの様に入刀される前に、俺はとっさに手札の一枚を取って右手の掌を切る。
ためらわずに空ごと切った一閃によって、小さいが掌にぱっくりと一筋の切り傷が入り、そこから真っ赤な血が玉を作るほどあふれてくる。
「アクシデント発生! 〈ブラッド・スプラッター〉!」
血が滴る右手を掲げて俺はアクシデントを起動させる!
「このカードに【飾血】をする事で発動! 俺が減らしたAPと同じ数値だけ相手コスチューム全てのAPを下げる!」
この【飾血】によって減らしたー50ポイント含めると、俺が捧げたAPの合計は100ポイント。
つまり、エルドが舞台効果で上げたポイントがそのまま相殺されることになる。
起こされたアクシデントカードが怪しいほど蒼いオーラをまといながら、俺の手に流れる鮮血を綺麗になるまで吸収すると、十分な血液を得たことでエルドにむかって、スプリンクラーの如くドス黒い血を噴射させた。
まさにカード名の通り返り血が飛ぶ。
血を浴びたことで、元のAP1300に戻った〈ミネルオリーヴァワンピ〉が、元のAPより高い場合という発動条件を満たせず不発に終わるかに思えた。
「無駄だ」
エルドの一声が割り込む。
その声に高じたのか、こめかみのヘアアクセが神々しい輝きを放ち、迫り来る血の雨を全て弾いた。
「なんだと!」
「私が〈アイギスバレッタ〉をつけている限り、相手からAPを干渉させる効果は全て数値が0になる!」
「ちゃんと先に効果をいわないところは、従妹そっくりだな!」
従姉妹そっくり。
そういえば、マイリーとエルドの関係は最初だけ従姉妹という設定だったが途中で何か隠されていた真実があったような。
「嘆かわしいな! その効果ですら記憶にないとは!」
「ぐおぉおッ!」
ふっと沸いた所感から、覚えていないはずの記憶と結びつきそうになる瞬間、さらしてしまった隙をつかれる。
結局発動条件が成立した〈ミネルオリーヴァワンピ〉の効果というエルドの剣から放たれる斬撃が放たれる。
剣撃を正面から受けたが、単なる演出でしかないのか衝撃自体は自分で手を切ったのと比べると痛みはない。
しかし、確実にこちらのAPを下げた証なのか、傷らしい痕跡をペイントの如くつけられた感触は頬から確かに伝わった。
「この瞬間! 〈ミネルオリーヴァワンピ〉の効果を発動!」
こちらのAPが下げられただけでも戦術的にも身体的にも痛いのに、エルドはさらに自身の着ているワンピースの効果を重ねて発動させる。
「まだ何かあるのか!」
「〈アイギスバレッタ〉をつけた状態で、〈ミネルオリーヴァワンピ〉が相手のAPを下げることに成功した時、下げた数値分だけ〈アイギスバレッタ〉のAPをアップし、さらにカードを1枚ドローできる!」
相手に直接ダメージを与えた後、役目を終えた剣は変形し、一枚のカードとなってエルドの手札に加わった。
「ダメージを恒久的に与えられる上に、カードを毎回ドローできるのは少しズルくないか!」
「そう思うだろうが、残念ながら代償も大きくてな。〈アイギスバレッタ〉の恩恵を受けた〈ミネルオリーヴァワンピ〉は、私の手札が七枚集まるまで、私から先にスタンバイをさせてくれるのを許してくれないのでな」
不条理な効果内容を訴えられることになれたのか、エルドは自嘲とうか皮肉めいた笑みでデメリット効果を説明する。
確かに重たい制約だが、それでも相手に反撃の機会を与えているとは言い難いし、自身の効果でドローすら加速できる以上は、対してデメリットにもなっていない気がする。
「私はカードを三枚伏せてターンをチェンジする」
蓮丈院遊月 AP1150 VS 藤丸エルド AP2450
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