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ブラッデルセン VS ゴルドアプフェル

 蓮丈院遊月 AP0 VS 藤丸エルド AP1300



「俺のターン!」



 後攻一ターン目。俺の番が巡り、迎えたドローフェイズでカードを一枚引き、五枚目として加わる一枚を横目で確認する。


 運命の誘導か、それとも意志が通じたことでデッキもすっかりやる気なのか、持ち主がちょうど望むカードをデッキトップによこしていた。



「こっちもエースで迎え撃つ! 行くぞ! 〈ブラッデルセン エヴォルスワンワンピ〉!」



 開幕で引き加えたその一枚をスキャナーに読み込ませたことで、遊月の体に白鳥の雛鳥の如く醜い色のワンピースが着せられる。



「まずは【飾血】だ! 目覚めろ! 〈エヴォルスワンワンピ〉!」



 襟に備えられた摘みを弾き、内側から立った細い針が首筋に刺さる。


 一瞬のこそばゆさを感じた頃には針を伝って、コスチュームへと鮮血が流れ、着主の血を布地へ吸われてゆく。


 自分の血を与えること=自身のAPを代償にしたことで、寝ぼけた色のまま舞台に出たコスチュームがようやく覚醒し、起きがけの餌への歓喜を表現するかのように陽炎を放出させながら〈エヴォルスワンワンピ〉が本来の色に戻った。



「さらに、ミュージックカード〈二十歳の紫鏡〉を発動!」



 発動すると、自分か相手にAPが200下がる呪い紫鏡トークンをアンダーとして強制的に追加コーデさせる効果を持つ妨害用カード。


 ここでエルドのAPを直接200下げるのも手だが、半端に下げるくらいならコストも使わずタダでアクセサリーが出せる性能だけを逆手に、もっと友好的に使わせてもらう。



「この効果で出せる紫鏡トークンを、俺の〈エヴォルスワンワンピ〉のアンダーとして追加コーデさせる!」



 発動を終えて消えるカードと入れ替わるように、俺の手に異様なオーラを纏う紫色の手鏡が握らされる。


 これで俺自身のAPは200ダウン。


 ただし、呪いの鏡を持ち続けている限りの話だ。



「そして! 【飾血】した〈エヴォルスワンワンピ〉の特殊効果! アンダーコスチュームかアクセサリーを捨離することで、相手の場のカード1枚をランドリーに送る!」



 鷲掴みにした手鏡が砕けるほど握りしめると、鋭い鏡の欠片を握る拳の隙間から、傷ついた皮膚から流れる血ではなく、欠片を糧に燃える炎がたぎりだす。


 デメリット付きのトークンをコストにするこの戦法。


 たしか従妹のマイリーと対決した時にもこのコンボを決めた覚えがあるが、そいつの従姉の前でもすることに成るとは妙な巡り合わせだ。



「対象は貴様のエースコスチュームだ!」



 思い切り踏み込み、右拳の中で砕いた鏡を糧に燃える焔が消える前に、俺はエルドの一張羅をめがけて限界まで引き絞る。


 別に着主の身体能力の高さや力の込め具合が効果に影響するわけではないが、真剣に挑戦を受けた割には楽勝だと言わんばかりに澄ましている顔に一喝いれるべく、腰を入れた懇親の一撃をエルドに向かわせた。



「――アクシデント発生」



 エルドの凛とした声が割り込む。


 その囁き声が何かを唱えたのか、炎の鉄拳が純白の鎧にふれる一歩手前で、気中が一瞬だけ捻れるほど見えない何かと衝突する。


 ぐにゃりと歪んだ空気が元に戻ったとき、一拍遅れて行き場を失った衝撃が放出された。


 その波動はもはや爆風ともいえる波を起こし、俺達を爆心地に狭い生徒会室にあるありとあらゆるものを吹き飛ばして壁に追いやった。


 エナメルのソファーや来賓用の机、会長用のデスク、さらには床にのしていた役員共まで。まるで紙吹雪か送風機に吹かれた落ち葉の如く無惨にも弾き飛ばされる。



「カードの効果がぶつかり合うだけでこの衝撃!」


「これが本物のトップアイドルの風格! 普通に戦うだけでも気迫に吹き飛ばされそうです!」



 同じ空間の中で傍観しているマーサとセイラにも余波があたり、ただ立ち会っているだけなのに嵐の中に放り込まれたかのように迫り来る暴風を前に堪え忍ぶ羽目に。


 衝撃を起こした震源でもある俺の拳は、どれほど力を込めてもエルドのコスチュームの一歩手前から先に進まなかった。


 それどころか、見えない壁に包まれて行く手を阻まれているうちに、右拳にたぎらせていた焔がふっと鎮火されてしまった。



「なんだと!」


「私が発動させたアクシデントは〈ホルツアプフェル〉。このカードは、相手がこちらのカードをランドリーに送る効果を発動させた時、その効果を無効にする」



 エルドが発動させたカードを説明していくうちに、エルドと俺の本当に紙一重という間で拳を受け止めた透明の壁が徐々に正体を表した。宣言通りのカード名が記された畳一畳分まで拡大化されたアクシデントカード。


 そのイラストには、青青とした葉の中でたくさんリンゴが実った大木の絵が描かれていた。


 プリズムストリームによって等身大になるまで立体化されたカードが完全に姿を空かしたとき、生意気にもそのカードは持ち主であるエルドから邪魔者を退かす様に俺をいなした。



「このカードが防衛に成功した時、相手はカードを一枚引く。さらに、このカードの持ち主が〈ゴルドアプフェル〉ブランドを着ている場合、私もカードを一枚ドローできる」



 強力な防御効果故の代償なのか、攻撃をいなして突き放した後で、俺の持つスキャナーが効果に応じてプレイヤーにドローさせるべく、ご丁寧にデッキトップの一枚を差し出した。


 同時に、代償からのボーナス効果の恩恵を受けたエルドの持つスキャナーも同じようにカードを差し出す。



「バカ正直に通るとは思ってなかったが、脱がしそこねたか……。俺はカードを二枚伏せてターンをチェンジする!」



蓮丈院遊月 AP1250 VS 藤丸エルド AP1300

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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