橄欖の翼〈ミネルオリーヴァワンピ〉
蓮丈院遊月 AP0 VS 藤丸エルド AP0
「先攻は私だ。ドロー」
教習、初陣を越えたと思いきや突然のラスボスとの死闘ときて、今度はそれ以上にヤバい主人公のライバルキャラとの対決。
最後のは自分で選んだ道とはいえ、この世界で二度目の勝てる気がしない戦いがエルドのドローで幕をあけた。
開幕のドローフェイズで加わった一枚と、先に手札として握っていた4枚の手札にエルドが目を下ろす。
ほんの一瞬の少考の後で、引いた合計五枚は完璧な手札だったのか、エルドは澄ました様に口角をあげて俺に視線を変える。
「蓮丈院、つかぬ事を聞くが、まさか私が駆るコスチュームのことまで忘れたわけではないだろうな?」
「悪いが、そのまさかだ。だが、別に俺が覚えていなくとも、覚えている奴や記録している奴はこの世界にごまんといるんでね。例えばあんたの可愛い従妹とかな」
事実上、藤丸エルドは学園の内外問わず本物の有名人。
トップアイドルともなれば対戦記録や使用カードといった情報は、テレビ番組だの雑誌だのと記録されているから、かき集めら留こと自体は簡単だ。
しかし、それを以てしても、常に首を狙っている従妹のマイリーどころか年末の全国大会で誰もエルドの二連覇をくい止められなかったところを鑑みると、いくら過去のエルドに対策を練ろうとも今や未来のエルドに対して通じるような相手じゃないのは確か。
「天下の藤丸エルド様が相手となると、分析された程度で劣勢になるとは思えないが、こちらも流石に無対策で挑もうとするほどバカじゃない。なんでも好きなモノを着ればいい。可愛い系だろうがエグいのだろうが。どんな格好であれ、ここで俺があんたを討てば、この蓮丈院遊月を本物にしてやれるって訳だ」
本物になれる。
今になって、よく似た台詞を吐くほど、血縁上のコンプレックス故に目の敵にしていた従妹のマイリーの気持ちがわかった。
「ならば“本物”を見せてやろう」
藤丸エルドの織指が手札の一枚をそっとつまみ上げたかと思うと、素早くも豪快な勢いでスキャナーにカードを読み込ませた。
虹色の読込盤にカードが載せられたことで、スキャナーの継ぎ目に同じ七色の光が走る。
礼服並に豪華なブレザーの学生服が光の収支となって霧散し、再び着主の胴体に集うと、別の衣装へと形を変えてゆく。
現れた衣装の分類はトップスとボトムスが一体化したワンピース。
アイドルの衣装というよりもやたら面積が小さくて露出部だけが異様に広い甲冑の様なデザインで、その意匠から魅せることよりも戦いを求めてそうな意志が伝わる。
だが、目をつんざくほど眩しい白銀の服から伝わる闘志には、闇雲に暴力を求めるような野蛮さではなく、冷静で理知的というか気高さを感じる。
俺にはそれに加えて、肉眼で現物をみたとたんに記憶が呼び起こされた想起の衝撃まで脳裏を駆けめぐった。
この目で見てやっと思い出した。
このコスチュームは、藤丸エルドが対決する回で度々着ていたエースコスチュームだ。
「あぁ、そうだったな。この神々しさといい、無慈悲な気迫といい、今改めて思い出したよ。そいつがあんたのエースだったな!」
「そう! これが我が主戦衣装〈ミネルオリーヴァワンピ〉! 我が最愛の戦友として選び抜いた銘柄〈ゴルドアプフェル〉が作り出した最高傑作の姿を、そのまっさらになった脳に刻みなおすがいい!」
アイドルの心に反応して形にするプリズムストリームによる作用なのか、まるで贔屓でもしているかのように鬱陶しいほど奴のコスチュームがキラキラと輝きを放っている。
それどころか、純粋を通り越して厳格なほど真っ白なワンピの背後から、まるで相対するように背部から淡い萌黄色の翼が一対生えていた。
翼を生やしたワンピを持つアイドルは、フェズ=ホビルクに次いで二人目。
だが、フェズが生やしていた虹色を帯びた蝶の様なのとは違って、エルドの生やした翼は、実の付いた植物のシルエットが羽の形に成るように伸びたような形状だった。
画面越しから真っ正面で対面してから初めて奴のエースである衣装が込められたカードを見たが、現物のカードには、背部から生える羽のような飾りまではイラストに描かれていなかった。
教習でつきあったセイラや喧嘩を売ってきたマイリーのコスチュームには生えて無かったし、当の俺=蓮丈院遊月が背中に生やしたのは、高熱から発した陽炎で無理矢理作ったまさに蜃気楼の如き偽物。
対して、ラスボスだったフェズや目の前にいるエルドには本来のデザインにはない翼が生えているところを見ると、やはり作中最強なのは伊達じゃないということらしい。
「私はカードを一枚準備して、ターンをチェンジする」
蓮丈院遊月 AP0 VS 藤丸エルド AP1300
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