封じられる『魔法』枷となる『色』
蓮丈院遊月 AP1100 VS フェズ・ホビルク AP1600
「私のターン。ドロー」
空っぽになった手札に、また新たな一枚が加えられる。
吉と出るか凶と出るか分からないカードなのに、フェズが相変わらず見ようとしない。
「私のステージ上に〈ファンタジアレインボーワンピ〉が存在する場合にのみ、〈レインボーフェザー ストーミーコアブーツ〉は通常コーデすることができる」
珍しくフェズが足に履かせたのは、灰色のファーとエナメル、そして所々に透明な雨粒を模したプラ素材で飾られた長靴のようなブーツだ。
ブランドが〈レインボーフェザー〉なだけあって、味方からのダウン効果は受けない。
「そして、このシューズがコーデされたとき、互いのプレイヤーは、私のランドリーに置かれたコスチュームの色の数と同じ枚数になるように、デッキからカードをドローできる」
「……ッ?」
土壇場での手札増強に、俺は絶句した。
今まで手札不足のじり貧を期待していた自分がバカみたいだ。
互いに上限六枚になるように。
ということは現在手札が無いフェズは、丸ごと六枚引けるということだ。
俺も五枚とかなりの枚数を引けるが、今のところ勝ち筋につながる手段が思いつかない。
「そして手札からバックグラウンド・ミュージック〈スポットカラーソウル〉を発動」
バックグラウンド・ミュージック。
通常のミュージックカードは、手札から専用の場に置いて効果を発動させた後、すぐにランドリーに送られる使い捨てのカード。
その中で、バックグラウンド・ミュージック縮めてBGMカードは、効果を発動させた後もミュージック・アクシデントカードのゾーンに表向きで残り続ける特殊なカード。
条件こそはカード次第だが、この厄介者を排除するにはピンポイントで除去できるカードを使うしかない。
「〈スポットカラーソウル〉は、一ターンに一度、ランドリーに置かれた〈レインボーフェザー〉コスチュームをミュージック・アクシデントカードゾーンに置く。そして、置かれた衣装の色と同じ色のコスチュームは効果を発動することができない」
「効果を封じるロックか」
本来のロックとは、攻撃という概念が存在するカードゲームにおいて、相手カードを退場させる攻撃という手段を封じる防御手段の一つ。
主に相手からのダメージを極力封じつつ、効果によるダメージを与える一方的な戦略に使われる。
ただ、攻撃というフェイズが存在しないこのゲームの場合は、唯一攻撃手段である効果そのものを封じることにも、その名が使われる。
「ランドリーから〈スプラッシュセクシーワンピ〉をBGMとしてセット。これにより、赤色のコスチュームは効果を発動させることができない」
「赤色……まさか⁉」
嫌な予感がさらに積み重なる。
〈エヴォルナイトゲールワンピ〉の色は赤色。
だが、奴が対応できる色を除外させたのは、コスチュームを出す前のこと。
偶然の一致にしては不自然だ。
いや、問題はそこではない。効果を封じられたということは、チャージカウンターによるパワーアップが遮断されることになる。
計画が狂った。
いや、この計画ですら読まれていたということか。
頭を振って冷や汗を払い、対戦に集中する。
「させるか! アクシデント発生! 〈ダメハン・エグジット〉!」
効果を封じる呪いに蝕まれる直前に、妥協として反射的にアクシデントカードを起こす。
「自分ステージ上のコスチュームをデッキに戻す! その後、戻したコスチュームのAP分だけ互いのプレイヤーは総APを下げられる。ただし、ステージ上のコスチュームが持つAPの合計値よりも総APが低いプレイヤーは、そのダウン効果は受けない!」
本来はもっとバンプアップして重たい火力をぶつけるはずだったが、望めなくなった以上は仕方がない。
数値が四桁あるうちに〈エヴォルナイトゲールワンピ〉をデッキに戻す。
光のシルエットとなって俺の肌から離れた後、ステージに置き土産と入れ替わる。
それは、いかにも爆弾だとあらゆるマンガ的表現をふんだんに使ったダイナマイトだ。
「ダメージを食らうのは貴様だけだ!」
【飾血】の損失によって逆にダメージを受けない俺は、束となった赤い棒爆弾をフェズめがけて思いっきりけ飛ばした。
大きな放物線を描いてフェズの頭上へ落ちてゆく爆弾は、頭一つ分の高い位置で爆発。
赤黒い爆炎が、またフェズを飲み込んでゆく。
相手は防御札を発動させることなく、すんなりと効果の爆風を受け入れていた。
「通った……みたいだな……」
戻したコスチュームのAPは1100。
直接プレイヤーのAPを下げたことで、総APが見事に半分へと下がる。
ただし、怯むことも顔を歪めることなく、涼しい顔で直立したままだが。
「私はこれでターンをチェンジする」
蓮丈院遊月 AP-100 VS フェズ・ホビルク AP1100
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