小夜啼鳥のあがく声
蓮丈院 AP-50 VS フェズ・ホビルク AP1400
まだスタンバイは宣言しない。
まさに命拾い。
首の皮一枚繋がったってところだ。
あれだけ人の引くカードを宣言しておきながら生殺しとはな。
逆に言えば、今の俺のカードで逆転されるおそれが普通にあるのか。
それとも、今の総APに自信が身がないから、まだ上げてげてゆくつもりなのか。
煽りもしなければ、独り言どころか喜怒哀楽も見せない。
そのせいで相手の出方や戦略がまったく読めない。
「次に引くカードはミュージックカード〈エンジェルソング〉」
「うるさい。どうせ引くんだ。俺のターン!」
言ったものの、ここでこのカードを引いたのは好都合だ。
その前に、伏せがないがら空きなところを狙えるチャンスだ。
「俺はミュージックカード〈武曲:瓦割人形〉発動!」
相手が強力なカードを出現させている今こそ、温存していたカードを使うときだ。
「このカードは、相手ステージ上に存在するレアリティが一番高いコスチュームを、問答無用で破壊する!」
このステージで一番高いレアリティを誇っているのは、言うまでもなくフェズの切り札のみ。
仮に防がれたとしても、無駄遣い誘発されれば儲けもんだ。
俺の足下で立ち上がったカードが、フェズに向かって謎の光線を放った。
だが、破壊させる光線が派手なワンピが迫る寸直前に、また虹がかった透明な膜が遮る。
シャボン玉のように薄そうに見えるが、俺のカードが放った衝撃波をあっさりと弾く。
「なんだと⁉」
「〈ファンタジアレインボーワンピ〉は、相手の総APが低い場合、いかなる手段を持っても破壊されることはない」
これが風格――ラスボスにのみ許される最強の効果。
「そして、相手がこのカードをランドリーに送る効果を発動させて無効にされた場合、このカードのAPを200ポイントアップさせる」
「しまった!」
半端な除去が仇になってしまった。
手薄なのを確信して放ったおかげで、無駄撃ちされたあげく、余計なバンプアップまで。
しかし、まだ俺のターンだ。
おまけに相手がスタンバイをしなかったのも幸いだ。
「だったら次の手を引き当てるまで。ミュージックカード〈エンジェルソング〉!」
〈エンジェルソング〉は、デッキからカードを二枚引くかわりに、その後で手札の中から一枚をランドリーに送る手札交換カード。
まずは二枚引き、既に見通されたアクシデント〈強制リクエスト〉を代わりに捨てる。
良し。リクルーターがやってきた。
「俺は〈エヴォルメイフライディフィニ〉をコーデ!」
出したのは、デッキからカードを呼び出す能力をもつリクルーターと呼んだ一式。
【飾血】が必要なエヴォルシリーズだから色こそないが、元は新緑色のスケスケが妙に色っぽいコスチューム。
「【飾血】をして効果を発動! このカードをランドリーに送ることで、デッキから【飾血】が必要なコスチュームを、既に色付き状態で追加コーデさせる!」
コーデされた直後に即座に把手を倒して血を送り、覚醒と同時に効果ですぐにランドリーに送らせる。
もう、あんな要塞並にやっかいな効果を携えた奴が相手なら、正攻法であるポイントの競り合いでは歯が立たない。
ここは別の手段にシフトを試みる。
「俺が呼び出すのはこいつだ! 〈エヴォルナイトゲールワンピ〉!」
選んだのは蓮丈院遊月の第二の切り札だ。
「〈ファンタジアレインボーワンピ〉が存在する限り、レインボーフェザーブランド以外のコスチュームは全て200ポイント下がる」
「ならば既に【飾血】を得た〈エヴォルナイトゲールワンピ〉の効果! このカードにチャージカウンターを一つのせ、そのカウンター一つにつきAPを200ポイントアップさせる!」
地道だが、バンプアップできて素のAPが高いコスチュームは今のところこいつしかいない。
あとは、このカードに委ねるだけだ。
「カードを一枚伏せて、ターンチェンジだ」
蓮丈院遊月 AP1100 VS フェズ・ホビルク AP1600
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「いいから早く決闘しろよ」
と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。
また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、
思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。
あとブックマークもいただけるとうれしいです。
細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!