ラスボスの切り札にして最強の衣装〈ファンタジアレインボーワンピ〉
蓮丈院 AP-50 VS フェズ・ホビルク AP0
「私のターン、ドロー」
微妙な誤差は優劣に勘定しない。
するのはステージの上よりも、プレイヤーが握っている手札の量だ。
今のドローで、それでも相手の手札は一枚。
よほどの酷い効果が込められたカードさえ手になければ、ジリ貧で押し切れるか。
予知や手札公開で圧倒され続けていたが、物量戦に移行したとたんに緊張がゆるみ始めた。
「〈スプラッシュエスニックワンピ〉をコーデ」
出してきたのは、相変わらず効果もなくAPも四桁に届かないほど火力に乏しい低レアのコスチュームだった。
勝てるか。
過ぎる僅かな期待。
だが、自身に緑色の衣装を纏った直後に、フェズは次なるカードを読込板に叩き付けた。
「そしてミュージックカード〈エクスプレスソリッドアイス〉を発動」
出現と同時に何度も回転しながら姿を見せたのは、鈍重な冷気が濃く漂う紙カップのアイスクリームのイラストが描かれたミュージックだった。
「自分ステージ上のノーマルコスチュームをランドリーに送ることで、デッキからカードを二枚ドローする」
結局、儚い希望だったか。
目の前で自ら脱ぎ捨てる衣装が粒子となって退場する様のように、俺の浅はかな危険予測が崩れてゆく。
期待が外れて、結局フェズに二枚のカードが追加される。
相変わらず、フェズは引いた手札を確認するまでもなく、じっと俺ばかりを見つめ続けている。
「ミュージックカード〈レインボーグレインコア〉」
新たに手に入れた二枚目のうち、片方のカードを発動させる。
「自分のランドリーに色が異なるカードが七枚揃っている場合、デッキ・手札・ランドリーから〈レインボーフェザー ファンタジアレインボーワンピ〉を追加コーデできる」
「なに⁉」
「清めの泡渦より姿を現せ、〈ファンタジアレインボーワンピ〉」
魔法陣から使役獣を召還するように手を翳した時、片手に握られたマイク型スキャナーからネオンのような七色の輝きが放たれた。
あまりの眩しさに思わず顔ごと目を覆っている間に、フェズの身体に神々しくも幻想的としか表現できないほど美しい衣装を身に纏っていた。
「AP1400⁉ なんだ……あの衣装は……」
驚きと感嘆に感動、そして押し寄せる恐怖。
全ての感情が心と頭の中で混ざり合う。
ただ唖然と目を丸くした刹那、今までとは違う軽い頭痛が一瞬だけ走った。
〈レインボーフェザー ファンタジアレインボーワンピ〉
思い出した。
たしか、あれは【メガミ・リンカネーション】の最終決戦回。
優勢から一気に猛進する主人公を前に、フェズ・ホビルクが繰り出した切り札だ。
あれがもう出てくるというのか。
特に苦戦させた訳でもないのに。
「私がこの衣装を着ている限り、〈レインボーフェザーブランド〉以外のコスチュームのAPは強制的に200ポイント下がる」
電車のアナウンス嬢の如く機械的なほどサラリと説明しながら、とんでもない効果を携えたカードを涼しい顔で発動させやがる。
「あれ? そんな効果だったっけなぁ」
わざとおどけて見るも、対戦相手として目の前に佇んでいる限り、どんなに美しくても驚異的な存在としか思えない。
仄暗い空間故に余計に眩しく目を灼く極彩色の翼を前に、冷や汗が拭っても無意味なほど止めどなく流れ続ける。
こんなことなら、沼にハマるほど見とくんだった。
ただ、普通に生活しているなら、まず女児向けアニメの世界に飛ばされるなんてありえないのだが。
ただし、幸いにもあれは主人公にうち負けたカードであることには変わりない。
出された後でも打ち負かす手段は必ずある。
攻略の突破口には効果の内容を覚えていることが必須。
だけど覚えていないのは、まだフェズによってロックがかけられているのか、それとも本当に覚えていないかのどっちかだ。
「最後にカードを一枚準備して、ターンをチェンジする」
蓮丈院 AP-50 VS フェズ・ホビルク AP1400
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