最後の希望は小夜啼鳥の唄
「俺は〈ブラッデルセン エヴォルナイトゲールワンピ〉をコーデ!」
こいつが俺の新しい鎧。
遊月の扱うコスチュームである以上、出たての色は仕方ないが、おそらくサヨナキドリと偉人ナイチンゲールの二つを兼ね備えた羽に飾られた看護服のような衣装だ。
「来てたんですね! 遊月さんの第二のエース!」
「よし、あれを着たなら勝ったのも同然だ!」
最初のエースコスチュームである〈エヴォルスワンワンピ〉と同じ名前を一部冠している通り、こいつにも同じ手順で目覚めさせる必要がある。
その為に、変わらず襟部分には針刺しの突起が備わっている。
「【飾血】――夜を裂く産声を上げて目覚めよ、〈エヴォルナイトゲールワンピ〉!」
与える着主の血を吸った衣装は、嬉々として活力を取り戻し、元の色へと自ら染め上げる。
相変わらず進化する鳥の名を冠しているのに、全部焼いて無視するかのごとく布面を焔色へと色づけてゆく。
翼に変わって透明な陽炎の翼となって一帯をはためかし、着者とともに対決に臨む。
「効果を得た〈エヴォルナイトゲールワンピ〉の効果! 1ターンに一度、このカードにチャージカウンターを持たせる!」
「カ、カウンターだって!?」
カードゲームにおいて、〈エヴォルナイトゲールワンピ〉のように、トークンとは別に効果によって得られる目印が存在する。
例を挙げて簡単に説明するなら、パワーをあげる源を一つ得られると考えればいい。
他にも得ることで様々な効果を得られるが、それはカードの内容次第。
「〈エヴォルナイトゲールワンピ〉は、乗せられたチャージカウンター一つにつき、APが200ポイントアップする。つまり、一つ乗ったことで、このコスチュームのAPは1400ポイントとなる!」
胸元に両手を添えると、開いた掌同士の空間に粒子が集い、徐々に光の弾へと成長してゆく。
「たかが1400! おまけにあんたが無駄遣いした効果のせいで、元々のAPが下がっていることも忘れないでよね!」
言うとおり、効果を使っても俺の総点はマイリーに遠く及ばない。
だが……もう一つ、カウンターを乗せるタイプの効果には、バンプアップとは別にさらなる能力が備わっている。
「〈エヴォルナイトゲールワンピ〉の特殊効果は、単にパワーをあげる源を生み出すだけじゃない。このカウンターを、相手にぶつけることだってできる!」
「――!」
カウンターを乗せるタイプのカードが持つ、真価ともいえるもう一つの特徴。
それはカウンターという燃料を消費することで解き放たれる効果が発動させること。
「さぁ、ラブレター代わりだ。受け取ってもらおうか!」
相手が近代兵器ならこちらは魔法。
今まで食らった弾丸の代わりに、俺はマイリーに向かって貯め込んだ魔法の一発を放った。
「今更何をしようが無駄! アクシデント発生〈シャワークラッカー〉!」
ここでマイリーが、最後に伏せていた防御札を起き上がらせる。
「相手が効果を発動させたとき、その効果を無効にしてランドリーにおく――」
勝ちを確信して誇らしげにカードの説明をしている間に、立ち上がった肝心のそのカードは、いきなり爆音と灰色の煙をたてて消滅した。
「そんな……どうして、不発!?」
「相手が発動に失敗したカードの存在を忘れるとは、詰めが甘いな」
懇親のダメ出しを不発に追い込ませたのは、俺が伏せていた1枚のカードの発動によって。
アクシデントカード〈ダメージハンデ〉
自分の総APとステージ上のカードに記されたAPの合計値がかみ合わない場合、相手のカード効果を無効にして破壊する。
発動条件が違ったせいで失敗どころかチョンボまで晒してしまったが、おかげで良い懐刀となってくれた。
これでもう、撃ち放ったチャージ弾を止める術はない。
「言い忘れてた。〈エヴォルナイトゲールワンピ〉がチャージカウンターを取り除いた時、どちらかのプレイヤーの総APを200ポイントアップさせる効果を持っている」
カウンターを取り除いて自分の数値を上げても意味がない。
だが、このゲームの場合は相手の方に塩を送るほうがより効果的だ。
「ご立派な銃を揃えても、暴発にはご用心だ」
銃弾や光線よりも遅い速度で進む魔弾がマイリーに触れた刹那。
特撮番組でやられた怪人の死に様の如く、大爆発が起きた。
仮装映像による効果とはいえ、アイドル同士のカードゲームで用いるには、あり得ない規模の爆発だった。
蓮丈院 AP950 VS マイリー BURST
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