ディフィニ――一式
蓮丈院 AP-50 VS マイリー AP2500
「俺のターン!」
状況は壊滅的。数値もゼロより下。
しかし、ここで何もしないわけにはいかない。
それに、今ので引いた一枚を見るに、俺の悪運もまだ尽きていない。
「俺は〈パラダイスサイト ロイコクロリディフィニ〉をコーデする!」
引き当てた希望の一枚。
ディフィニ。
それはファッションの都パリを首都とするフランスの言葉で一式を意味する、文字通り一枚でトップスとボトムスとシューズを兼ねる万能の衣装。
出すだけで全て揃う上に、アンダーコーデする場合はどのカテゴリーにも対応できるが、どうにもAPが頼りないのが欠点。肌色を基本に黄緑色と橙色のラインがネオンの如く光りつつも脈打つように胎動している視覚効果を与えられたコスチュームの持つAPは500。
これだけでは太刀打ちできないが、この衣装の真価はAPやディフィニの特性よりも効果の方にある。
「〈ロイコクトリディフィニ〉のコスチューム効果! こいつを直接ランドリーに送ることで、ランドリーに送られたノーマルコスチューム1着を復活差させることができる!」
前回の〈ヤマトカミカゼ オスシワンピ〉と同様、蓮丈院遊月の操るカード群には血を与えられるまでは役に立たない【飾血】コスチュームをサポートする、ノーマルコスチューム専用のカードが備わっている。
そっちが殲滅なら、こっちは復活だ。
「蘇れ! 〈エヴォルスワンワンピ〉!」
着せた後ですぐ脱いだコスチュームの退場直後に、俺の素肌にまた色を失った〈エヴォルスワンワンピ〉が戻ってくる。
「さらに! 効果を発動させた〈ロイコクトリディフィニ〉は、コスチュームの蘇生に成功した時、そのコスチュームのアンダーとして復活する!」
こちらも急ピッチでAPをあげてゆくが、まだマイリーには及ばない。
だからといって地道に上げるようではマイリーに脱がされる。
そうなる前に、もう一つの手段を強行せざるをえない。
俺は躊躇うことなく、輸血用の刺針を起こすツマミを倒す。
「〈エヴォルスワンワンピ〉――【飾血】!」
二度目となる輸血によって〈エヴォルスワンワンピ〉が元の色を取り戻す。
流石に自身のAPが3桁になるまで下がるのは痛いが、丸裸を避けるためには致し方ない。
「効果を得た〈エヴォルスワンワンピ〉の効果! アンダーコスチュームをコストに相手ステージ上のカードを確実に破壊する! 標的はもちろん〈ヴェルデバスワンピ・コルト〉だ!」
ランドリーへ送られる表現として、小さな橙色の光となって自ら手の平へと浮いてゆくそれを、俺は豪快に握り潰して焔の糧にする。
マイリーが最後に伏せた一枚が気になるが、万が一、それがコスチュームをランドリーへ送る効果だったとしても、幸いにもさっき不発にとどまったアクシデントが残ってくれている。
燃やすなら今しかないのだ。
ゴムが音を立てるほど床をすり、再度バネのごとく肉薄する俺。
せめて普通にランドリーへ送る効果であることを願って、俺は拳を引き絞る。
「アクシデント発生――〈牽制射撃〉!」
「やはり来るか!」
「〈牽制射撃〉は、相手がこちらに何らかの効果を及ぼすときに反応して発動するカード。その効果は、相手ターン中でも〈カラミリタリティー〉ブランドの効果を発動させることができる!」
「発動させるのはコスチュームの方だと!」
当てが外れたことに呆気にとられている隙に、もう鼻先まで迫っていた俺の腹には〈コルト〉に備えられた砲身が密着されていた。
マズルフラッシュと銃声とともに放たれる弾丸に圧されて、俺は派手に吹き飛ばされる。
当然、コスチュームも無惨に脱がされながら。
「バヨネ、追撃よ」
冷酷にマスコットへ命じて、衣装を瞬時に変化させたマイリーが続け様に効果を発動させる。
〈コルト〉から〈スナイプ〉へ衣装が替わり、二撃目の弾丸が倒れたままの状態から、正確に手札の一枚だけを打ち抜く。
もちろん、再び葬られたのは〈エヴォルスワンワンピ〉。
「よし! エース二度目のご退場!」
「バヨネ!」
蓮丈院 AP-100 VS 藤丸マイリー AP2500
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