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※注意 流血してますがアイドルの(略)

「いってぇな……」



 痛む尻と背中に悩まされながら立ち上がる俺の手にも、ランコと同じマイクを握り、展開されたプレートの上に乗せられているカードがある。


 もちろん乗せたカードのデータを読み込ませたことで、この体にイラスト通りの衣装が纏われている。


 だが、今の俺のコスチュームは普通に灰色と言うには烏滸がましいほど酷い色をしていた。



「……っ」



 ふらつきながら立ち上がる俺を見て、ランコがより一層顔を顰める。



「確実に脱がせたと思ったのに。そんな見るに堪えない色のコスチュームなんて、自分の身を犠牲にして守る価値があるの? それとも、自分よりも下の位置にいる私に対してのハンデのつもりかしら?」



 紫色の花の妖精みたいな格好をしたお姫様は、どうもしぶとい俺の根性よりも、意地でも着た衣装のデザインがお気に召さないらしい。



「ハンデなんて余裕かませるものか。見ての通り俺は常に必死だ」



 荒い息をあげて、顔が土汚れと血痕でベタベタに汚れた顔で本気を示す俺だが、確かに相手の目から見ても、どう例えていいかわからない色の衣装を着ていては、流石に力尽きる寸前の死に損ないにしか見えないだろう。


 事実、かなりギリギリなんだけど。



「あらそう? それで本気だって言ってくれるなら、こちらも悪くない気分だわ」



 曇った眉が溶けたかと思いきや納得したように澄まし顔になった途端、ランコの着ていた薄紫の衣装が稼働し始めた。


 スカート部を派手に飾り囲っていたフリルが突然一房の花となって分離し始め、装備者のランコに付き従うように頭上周りの宙を飛び交う。


 くるくると宙を踊りながら浅黒い中身を晒すあの花の種類はシクラメンっぽいが、その動きは植物ではなく、まるでロボットアニメのオールレンジ兵器のよう。


 いや、「よう」ではない。


 兵器と言っても差し支えない。


 先ほど、その花達から放たれた光線によって、俺はさっき派手にふっ飛ばされたのだから。



「次の私のターンで今度こそ、その汚らしい衣装を焼き消した上で、あなたの魅力をゼロになるまで叩き落としてあげるわ!」



 自分の番を終えて明け渡した割には、すでに浮遊している花房達が先端に光球をたぎらせて発射準備を整えている。


 花の命は短命とはよく言うが、気が早すぎて既に勝った気でいるらしい。



「まだ終わったわけじゃない! 俺のターンだ!」



 握りしめたマイクを持ち上げ、俺は新しいカードをデッキから引く。


 その刹那、空中に浮かぶ一房のシクラメンから光線が放たれ、完全に攻めの体制で構えていた俺の腹部に向かって綺麗に打ち込まれた。


 貫通もしなければ火傷もしない安全な一発。


 だが、逆を言えば普通の打撃と何ら変わりは無い。


 突然鳩尾に殴り込まれた拳の如く、強烈な一発を食らってしまった俺は、俺の体の形に合わせて穴が作られた瓦礫の中に再びぶち込まれる羽目になる。



「あら、ごめんなさい。プリズムストリームの調子が悪かったみたい。まぁ、発動させたカードの効果じゃないから悪く思わないでね」



 わざとらしく、そして悪びれる素振りもなく、ランコは人の神経を逆撫でするように口を尖らせ、俺に不意打ちを食らわせたシクラメンのビットを、おいたをした猫を叱るが如く抱き寄せてあやす。


 二度も後頭部をぶつけられる蓮丈院遊月の体。


 強く打ったせいでツンとしたなんとも行けない痛覚が頭中に走り、止まっていた血が決壊して新しい鮮血が顔中に流れる。


 頭抱えて悶絶してしまうくらいの激痛が走るが、そんなことがどうでも良くなるくらい、頭の中で何かが千切れた。



「調子に――」



 ガクガクとおぼつかない膝を無理矢理動かして立ち上がり、俺は怒鳴りあげた。



「乗るんじゃねェ!」

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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