マスコット〈ジェネトモ〉
蓮丈院 AP1250 藤丸マイリー AP1200
「あたしのターン、ドロー!」
二度目の手番が周り、僅かだがAPが低いマイリーが改めてカードを引く。
「……ッ!」
新たに加えられるカードに目を移した時、マイリーの目が一瞬だけ見開かれた。
何か良い札を引いたのか、さっきまで険しく歪んでいた口が動く。
こちらには聞こえない何かを独り口にしたまま。
「あたしはミュージックカード〈マスコットの産声〉を発動!」
「ま、マスコットだと!?」
唐突に口に出された意外な単語に、今度は俺が驚愕された。
「このカードが発動した時、あたしのデッキからマスコットカードを一枚手札に加える!」
そのカードの発動を皮切りに、マイリーのデッキから待ってましたといわんばかりに謎の輝きが放ち始める。
「来て! バヨネ!」
手を掲げるマイリーの声に応じて、デッキから一枚のカードが閃光となって飛び出した。
混雑したデッキの中から望みの一枚を手に入れるサーチカード。
便利だが同時に相手にも公開しないといけない、おおよそデメリットとはいえない欠点がある。
サーチした以上、対戦相手である俺も見る権利がある。
だが、掲げたマイリーの手にはどうみてもカードではない何かが乗せられていた。
元はカードのはずだが、そいつは手乗り程度の大きさをした生き物っぽいなにか。
後光でよく見えないが、あの胴体はどうも車か精密機械に搭載するジェネレーターっぽい何かにしか見えない円柱状の胴体。
それに飾りをつけた様に、犬であることを強引に主張する手足と耳。
明らかにゲームセンターで景品に相応しいデザインをしたマスコットではある。
どっかの県によって繁栄の宿命と血税をかけた責任ごと背負わされて生まれたゆるキャラではないのは確かだ。
「バ~ヨ、バーヨネッ!」
派手な演出とともに呼び出された動力犬は、鳴き声を発しながらマイリーの手から降りて、肩へと定位置を変える。
これまでに何度も摩訶不思議な体験をしてきた。
2種類のエイリアンが俳優として、国営の公共放送で笑いが飛び交う海外コメディドラマ番組が放送されていると言われても驚かない。
「さぁ、行くよ! バヨネ!」
「バ~ヨネッ!」
目を合わせたマイリーとバヨネが意気を揃えた途端、バヨネは大きく飛び上がった。
「あたしは〈ジェネトモ バヨネ〉を〈ヴェルデバスワンピ・コルト〉に接続!」
「マスコットを着るのか!?」
頭上高く飛び上がったそいつは、宙できりもみ状に回転し、マイリーの背中へと突進する。
明らかに衝突レベルの一撃に見えたが、マイリーは動じず背中でマスコットを受け止めた。
同時に、ガチンと何かがしっかりとかみ合う音まで響き渡る。
背中では本当に何が起きているのか、白煙を勢いよく噴射する音から、歯車的な何かが高速で稼働している音までもが聞こえてくる。
その何かの正体は見えずじまいだが、盤上では数値は確かにあがっているのだけは確か。
「〈ジェネトモ バヨネ〉の効果! バヨネがコスチュームとコネクトした時、ランドリーに置かれた〈ヴェルデバス〉シリーズ一着を、アンダーとして追加コーデする!」
「ランドリーから追加コーデだと!?」
現れたマスコットがスキャナーを再度輝かせ、ランドリー用の挿入口から一枚のカードが飛び出した。
一閃の光となったカードは、具現化するまもなくそのまま着ている衣装の中に吸収されてしまった。
一瞬だけ見えたカードの絵柄は、マイリーが今着ているのとよく似ていた。
今の追加召喚で、俺は改めて現在の数値差を暗算する。
マイリーのランドリーに置かれたコスチューム。
確か、破壊を防ぎたいステージ上のコスチュームと同じAPを持つ衣装を生け贄にすることで破壊を免れるアクシデントによって、確実に一枚送られていた。
そして今、マスコットを呼び出された上に、そいつの効果で、捨てたはずの同じAPを持つ衣装が再度ステージに舞い戻ってきたということは……
蓮丈院遊月 AP1250 藤丸マイリー AP2500
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