第9話 決戦前日
※ この作品は忠実を下にしたフィクションです。実際の忠実とは異なる部分が多々あります。また、実在の人物、事件、団体名などは一切関係ありません。
※ この作品では、従来の一般的な小説スタイルとは異なった、独自の新しいスタイルを取り入れています。読者の方によっては読みづらい等の支障が出る場合が考えられますのでご注意下さい。
≪ 前回(第8話)までのあらすじ ≫
私の名前は、神宮寺紗耶。都内の私立高校に通い、武術部に所属する容姿端麗な明るい少女。実家が昔から代々伝わる由緒正しい神社で、私はその神社の巫女でもある。
そんなある日、私は家の蔵の中を整理していた時、見覚えのない奇妙な巻物を発見。それを見てみると、そこには大きな刀を持った長髪の男の人と、何故か高校の制服姿の私の絵が描かれていた。
気がついたら、私は蔵の中におらず、いつの間にかどこかの深い林の中に。林の中をさ迷っていた私は、そこで出遭った人達から自分が戦国時代にタイムスリップしていた事を知った。
帰る方法もなく助けてくれた人達も次々と死に、1人途方に暮れていると、そこに有名な戦国武将である織田信長の家来、明智光秀と出遭う。その人物は、あの巻物に書かれていた長髪の男とソックリだったのだ。
1人ぼっちだった私は行く当てもなく、光秀さんの提案で私は織田信長の家来に加わることになった。
城では大勢の人達と出会い、少しずつ意気投合していったのだが、私は信長に刀の腕などを見込まれ、初めての戦に出ることになった。
それが、現在の岐阜県である美濃の国主の斉藤龍興が居城する稲葉山城を舞台にした戦い。
苦戦を強いられながらも、信長の鮮やかな策で敵を一気に攻略。総大将の斉藤龍興を逃したが、この戦いに信長は勝利した。
そんな戦いの中で、私は久しぶりに仲間たちと再会する。私が現代で行方不明になった事を知り、同じ方法で戦国時代にタイムスリップしてきた私のクラスメイト5人と担任の先生の全部で6人だった…。
現代へ帰る方法や私たちがこの時代へタイムスリップした謎は、未だに分からない。
だけれど、私たちはこの時代で戦い続けて生き続けなければならない。
それが、今の私たちに出来る最善の方法だ。
大変だった“稲葉山城の戦い”が今日で終わった。
自分達の居城である“墨俣城”に帰ってきて、つい先程まで勝利の宴会をしていた織田信長軍の人々も、夜も更けてきた為か、今はもう静まり返っている。
今日まで、私(神宮寺紗耶)は、織田の人々が私を助けてくれるが、どちらかと言えば孤独だった。私が戦国時代の人間ではなく、現代の人間だからだ。周りに私と同じような現代の人間はもちろん誰一人いない。
だが、今は違う。もう私1人ではない。
私の周りには今、私を助けにきてくれた現代の「仲間たち」がいる。
私の高校のクラスの担任である広沢美咲先生。クラスの学級委員長である楠山太陽君。同じクラスの友達である森下藍ちゃん、中村若菜ちゃん、足立裕輔。そして、私が幼い頃からの幼なじみである指宿健斗の6人だ。
彼らは現代で行方不明になった私を心配して探してくれ、そして私と同じ方法で戦国時代へタイムスリップしてきたのだ。彼らは戦国時代の中をさ迷い続け、ついに私がいる織田へと辿り着いたのだ。
そして、今、彼らは織田から貸し与えられている私の部屋と襖を挟んだその隣の部屋で、男女それぞれ別れて布団で眠っている。大変な1日だった為か、皆は疲れ果ててグッスリと眠っているようだ。
私もその横で眠りについていたが、しばらくして目を開けた。
まだ時は深夜だ。当然、城内は静まり返っている。隣の男の部屋から裕輔のイビキと歯ギシリしか聞こえない。私は、それに起こされたような感じだ。無視して再び眠りにつこうとしたが、うるさくて少しも眠れない。と言うか、逆に目が覚めてしまった。
私はため息をついて、少し外の風にでも当たろうかと思って、部屋の外に出た。
部屋の外に1歩出れば、そこは長い廊下だ。右も左にも廊下が長く続いている。墨俣城は一見すると小さいように見えるが、敷地は意外と広い。この城に来てしばらく日が経つ私なら大丈夫だが、この城に来たばかりの健斗達はきっと城内で迷子になってしまうに違いない。でも、私も城内を全て把握しているワケではないので、私も迷子になる可能性は少なからずあるだろう。
私は、しばらく廊下を歩くと、城の中庭に出た。夜なのに、よく晴れた月明かりで灯りがなくても視界は良好だ。
ふと見ると、中庭の廊下の縁側で誰かの姿が見える。私は、敵かと思って恐る恐る近づいた。すると、相手は私の気配に気づき、私を見た。
【指宿健斗】「…紗耶?」
【神宮寺紗耶】「その声は、健斗?」
そこにいたのは、健斗だった。
【神宮寺紗耶】「何をしているの、こんな所で?」
【指宿健斗】「どこかのバカのイビキで眠れなくてな…。」
と、健斗は苦笑した。
【神宮寺紗耶】「裕輔のイビキね。実は私もなの。うるさくて眠れなくて…。」
【指宿健斗】「いや、俺が言っているのは、オマエのイビキだ。」
【神宮寺紗耶】「私!? 私じゃないわよ!」
【指宿健斗】「いいや、アレはオマエだ。俺、オマエと一緒に寝たことがあっただろ。その時のオマエのイビキと同じだった。」
【神宮寺紗耶】「“寝た”…って、それは幼稚園の頃の話でしょ!? たまたま寝る場所が隣同士だっただけじゃない!」
【指宿健斗】「あの時のオマエの寝顔は面白かった!」
【神宮寺紗耶】「もう、からかわないでよ!!」
そう言って、私たちはお互いの顔を見て笑った。なんだか久しぶりの会話に思えた。
しばらくして、私たちは隣同士で、一緒に中庭から見える月を見た。その月の美しさに私たちは見惚れてしまった。
【神宮寺紗耶】「綺麗な月ね…。」
【指宿健斗】「ああ…。こんな月、東京じゃ絶対に見られないからな。」
【神宮寺紗耶】「東京、か…。なんだか久しぶりに聞いたなぁ~。」
【指宿健斗】「そうかぁ~? 俺達が戦国時代に来たのは昨夜だったし、オマエが消えたのだって一昨日のことだぜ?」
【神宮寺紗耶】「たぶん、時間の経つ早さが違うのよ。実際、私はもう何日も過ごしているワケだし…。」
【指宿健斗】「…寂しくなかったか? 戦国時代の世界にいて…。」
【神宮寺紗耶】「そりゃあ、もちろん寂しかったわよ。たった1人で、右も左も分からない場所に突然送り込まれて、しかもワケも分からずに、戦に1人の兵として参戦することになったんだから…。」
すると、急に健斗が黙ってしまった。何だろうと思ったその時、健斗は口をあけて言った。
【指宿健斗】「…その、…なんだ? わ、悪かったな。」
【神宮寺紗耶】「…何で謝るの?」
【指宿健斗】「…ほ、ほら、俺がオマエをすぐに迎えに行くことが、で、出来なかったじゃんか。そ、それで、オマエの身に危険が出てしまって…。」
【神宮寺紗耶】「…なぁ~んだ、そんな事か。」
【指宿健斗】「そ、そんな事って、オマエ…!?」
【神宮寺紗耶】「聞いたよ、健斗。私が行方不明になった事を知ったとき、最初に動いたのは健斗なんだってね。」
【指宿健斗】「え!?」
【神宮寺紗耶】「“学校で勉強をしている暇があったら、私(紗耶)を探す”って、先生に言ったそうじゃない?」
【指宿健斗】「そ、それは…。」
どこか照れくさそうな健斗を見て、私はフッと笑った。そして、そのまま黙って、健斗をギュッと優しく抱きしめた。
【指宿健斗】「いっ!? さ、紗耶!?」
【神宮寺紗耶】「…ありがとうね、健斗。私を助けに来てくれて…。」
【指宿健斗】「@*○★△×◇◎…!!!???」
健斗は私の突然の行動に半分パニック状態になっていた。両手のやり場にも困惑していた。
【神宮寺紗耶】「…私ね、嬉しかったんだ。この時代で健斗の姿を初めて見たとき…、夢にも思わなかったんだもの。」
【指宿健斗】「…!!!???(※自分の咄嗟の行動で余計にパニック中)」
【神宮寺紗耶】「でもね…。私、どこかで信じていたところがあったの。きっと、健斗が私を助けにきてくれる、って…。覚えている? 幼い頃、近所の家の猛犬に吠えられていた私を、健斗が身を挺して守ってくれたこと…。」
【指宿健斗】「あ…、ああ!」
【神宮寺紗耶】「私の身に何かあったとき、絶対に健斗が助けに来てくれていたものね。そして、今回も…。私はアレから自分で身を守る方法を掴んでいって強くなっていったけれど、結局、あの時のまんま。何にも変わらなかった…。」
【指宿健斗】「いや、オマエは強くなったよ、ホント…。オマエのこの世界の戦いぶりをみて、そう思った。」
【神宮寺紗耶】「本当に?」
【指宿健斗】「ああ! 俺が保証する!!」
それを聞いて、私はクスッと笑った。
【神宮寺紗耶】「でも、健斗は昔と何も変わっていないね。」
【指宿健斗】「ああ!?(怒)」
【神宮寺紗耶】「そうやって、すぐ怒るところが変わっていないのよ。」
そして、また私たちはアハハ…と再び笑った。そして、お互いを深く見つめ合った。そのまま良い雰囲気になるハズだった…。
【足立裕輔】「ん~…。」
【神宮寺紗耶&指宿健斗】「いっ!?」
突然、私たちの背後に、寝ぼけ顔の裕輔が姿を現した。私たちはビックリして思わずお互いの距離を置いた。
【足立裕輔】「むにゃむにゃ…。ねえ~、紗耶にぃ健斗ぉ~、…便所はどこぉ~?」
【神宮寺紗耶】「この廊下の突き当たりを右に曲がって、まっすぐ行ったところよ!」
【足立裕輔】「そぉ~…。ありがとうさん♪ グ~…。」
そう言って、そのまま最後まで寝ぼけたままの裕輔は、その場をフラフラと去って行った。
【神宮寺紗耶】(ホ、ホントに寝ぼけているのかしら?)
【指宿健斗】(どこまでバカなんだ、アイツは!?)
しかし、タイミングの良いところで現れたものだ。
寝ぼけながらも、裕輔は私の言われたとおり、廊下の突き当たりを右に曲がった。と、そのとき、壁際で誰かとぶつかった。裕輔は寝ぼけながらも、その人物の顔を見て言った。
【足立裕輔】「あ~…。こ、こりゃどうも、スイマセンね~。ボク、ちょっと寝ぼけちゃってて…。そ、それじゃあ、ボ、ボクはトイレに行ってきますので、コレで…。…お、お休みなさい、“光秀さん”。」
【明智光秀】「・・・・。」
なんと、そこにいたのは光秀さんだった。どうやら、光秀さんは私たちの話をたまたま盗み聞きしてしまったようだ。それを私たちは最後まで気がつかなかったが、この時の光秀さんは怒りに満ちていたような顔だった。
同じ頃、墨俣城から少し遠く離れた大きな河。晴れた月の光が、深夜にも関わらず遠くまでよく見渡せるくらい河が明るく見える。
この河のほとりで、僅かな灯りを頼りに、大勢の人々が集めた木材などを湖上に浮かべ、何か大きなモノを造っていた。
その人々の中に、あの男達の姿があった。今日まで織田と長きに渡り対立をしてきた現在の岐阜県である美濃の国主・斉藤龍興、龍興の家臣である斉藤利三と、そして同じく家臣の強豪と恐れられた“美濃三人衆”の唯一の生き残りである稲葉一鉄だ。
龍興は、居城だった稲葉山城での織田の猛攻から一鉄と共に逃亡してココに辿り着いたのだ。龍興の心は、織田への復讐心で満載だった。今度は何をしようとしているのだろうか。
【斉藤龍興】「どうだ、一鉄。準備の進み具合は?」
【稲葉一鉄】「問題なく順調に進んでおりまする。これならば明日にも完成する勢いかと…。」
【斉藤龍興】「そうか、そうか。ご苦労。」
【斉藤利三】「殿。」
【斉藤龍興】「ん?」
【斉藤利三】「“百地三太夫”殿と“音羽の城戸”殿がお見えです。」
【斉藤龍興】「通せ。」
【斉藤利三】「ハッ!」
しばらくして、龍興の前に百地と音羽が姿を現した。
【斉藤龍興】「これはこれは…、百地殿と音羽殿。此度は何の御用ですかな?」
【音羽の城戸】「例のモノが完成間近だと聞いてな。百地殿と見に来た。」
そう言うと、長い白髪の年老いた百地は龍興に黙って頭を下げた。
【斉藤龍興】「ご覧のとおり、早ければ明日、…いや今日の夕刻にも完成するでしょう。」
【百地三太夫】「これで今度こそ織田を倒せるのじゃろうな?」
【斉藤龍興】「もちろん。斉藤、百地、音羽の強豪連合軍、そしてこのモノがあれば、必ずや織田を敗者に出来ますぞ。」
【音羽の城戸】「今度は大丈夫なんだろうな?」
【斉藤龍興】「ええ。ただし、それには1つ条件が…。」
【音羽の城戸】「条件?」
【百地三太夫】「申してみよ。」
【斉藤龍興】「此度の戦、この龍興に総大将の任、与えて欲しい。」
【音羽の城戸】「何だと!? 稲葉山では、お主は織田に負けておるではないか!」
【斉藤龍興】「確かに俺は信長に負けた。織田を甘く見ていたからな。それに、心強い味方を引き入れたようだ…。」
【音羽の城戸】「それゆえ総大将を貴様に任せろ、と申すか!?」
【百地三太夫】「…良かろう。」
【音羽の城戸】「なに!?」
音羽はビックリして百地を見た。百地は、不気味な笑い顔をして言った。
【百地三太夫】「此度の戦で十分な勝ち目がある、と見た。そうじゃろ?」
【斉藤龍興】「さすが百地殿。察しが良い…。」
【百地三太夫】「ワシも織田との幾度の戦で敗北し続けた。じゃが、コレらと龍興の指揮そして力量があれば織田を倒せる。…ワシは織田に勝てるのならば、誰が総大将になろうと構わんよ。音羽殿も織田に勝てれば良いのじゃろ?」
【音羽の城戸】「それは…。」
【百地三太夫】「決まりじゃな。」
それを聞いて、龍興がニヤッと不気味な笑みを見せた。
彼らから少し遠く離れた草むらの茂みに、隠れて彼らの様子を覗いている者がいた。織田信長の家臣の1人である丹羽長秀である。丹羽は、信長の命令で、逃亡後の龍興を尾行し、龍興の行動を信長に報告する任務についていた。
丹羽は、彼らの会話を聞き終えると、隠し持っていた伝書鳩を取り出し、その足首に小さな紙切れを結びつけて空に放った。
伝書鳩は夜空の空の旅を終え、しばらくして織田が居城する墨俣城の信長の部屋に辿り着いた。その時、信長は眠りにも付かず、畳の上にキチンと正座をして、僅かな灯りの中で書物を真剣な眼差しで読んでいた。
そして、伝書鳩が信長の下にやって来ると、信長はフッと鼻で笑った。
夜が明けた。今日も雲が少ない晴れた良い天気で、山々の間から顔を出した太陽の光が墨俣城を明るく照らす。
私は、スズメがチュンチュンと泣く音で目を開け、上半身を起こした。
【神宮寺紗耶】「ふぁ~あ…、もう朝?」
私は大きな欠伸をした後、そのまま何気なく横を見た。そこには、まだ寝ている若菜、藍、広沢先生の姿があった。
【神宮寺紗耶】「…そっか。もう私、1人じゃないんだっけ…。」
しかし、私なんかの為に、この時代まで助けに来てくれるなんて…。無茶をするよね、ホント…。
私はそう思いながら、誰も起こさないように気をつけながら布団から出た。
【森下藍】「…う、う~ん…。」
そう言って、藍が目を覚ました。どうやら起こしてしまったようだ。
【神宮寺紗耶】「あ、ゴメンね。起こしちゃったね、藍。」
藍はまだ眠たそうな顔をしながら、左右を見回した。
【森下藍】「あ、アレ? …紗耶? なんで私の家の部屋に?」
【神宮寺紗耶】「寝ぼけないでよ。ココはお城の中よ?」
それを聞いて、やっと藍はハッとして我に返ったようだ。
【森下藍】「…あ、そうだよね。私たち、戦国時代にいるんだったんだよね。」
【神宮寺紗耶】「うん…。」
【森下藍】「目が覚めたら自分の家の部屋にいた、…なんて事が起こったら良かったのに。」
…本当、私もそう思うよ。
すると、藍は眠そうな目をゴシゴシとこすった。
【神宮寺紗耶】「…大丈夫? まだ眠たそうだけれど…。」
【森下藍】「う、うん…。ちょっとね…。」
【神宮寺紗耶】「昨日は色々とあったものね。体が疲れちゃっているのよ、きっと。…まだ朝も早いから、もう少し寝ていたら?」
【森下藍】「悪いけれど、そうさせてもらおうかな?」
そう言って、藍は布団の掛け布団を掴んで、再び横になろうとした。すると、何か違和感を感じた。
【森下藍】「…ね、ねえ、紗耶?」
と、布団をたたんでいる私に向かって、震えたような声で言った。
【神宮寺紗耶】「ん? 何?」
【森下藍】「…わ、私の布団の中に…、な、何かいる!」
【神宮寺紗耶】「えっ!?」
私は、すぐさま藍の布団を見た。確かに、外から見ると、藍の体の膨らみ以外の大きな膨らみが見える。“何か”がいるのは間違いない。
藍が怖がって布団から逃げ出そうとしていた。
【神宮寺紗耶】「待って! 動かないで!!」
【森下藍】「!」
【神宮寺紗耶】「ジッとしていて…。」
【森下藍】「う、うん…。」
私は、傍にあった自分の刀を手にして、鞘から抜刀した。そして、右手で刀を構えると、左手で藍の布団の掛け布団の先端を掴んだ。一気に布団を退かして、中にいる“何か”をこの目で見る為だ。
【神宮寺紗耶】「・・・・。」
私は、ゴクリと唾を飲んだ。もし布団の中に“敵”が潜んでいたら…。
藍はブルブルと身震いしながら、私を見ている。
【神宮寺紗耶】「…い、いくよ、藍。」
藍は、震えながらコクンと黙って頷いた。
そして次の瞬間、私は藍の布団の掛け布団をバッと勢い良く退かした。
【神宮寺紗耶&森下藍】「!」
私と藍は、謎の“何か”の正体に目を疑った。
【神宮寺紗耶】「・・・・。」
【森下藍】「・・・・。」
【神宮寺紗耶】「…裕輔?」
なんと、そこにいたのは隣の男子の部屋で寝ていたハズの裕輔だった。それが何故か、いつの間にか藍の布団の中でグッスリと心地良さそうに眠っていたのだ。
私と藍は、それを見て、お互いに声を失った。
【足立裕輔】「…ハ、ハックション!! う~、寒ッ! …って、掛け布団がないじゃん!!」
そのとき、裕輔は私たち2人に気づいた。
【足立裕輔】「あ、2人とも、おはよう。もう、朝?」
【森下藍】「…“もう朝?”、じゃないわよ(※怒り度:95%)」
【足立裕輔】「…アレ? ここ、男部屋だよね。どうして、2人がココにいるの?」
【神宮寺紗耶】「まだ気がつかないの?」
【足立裕輔】「へ?」
そう言って、裕輔は私の横にいる藍を見た。藍は、今にも鬼のような顔をして怒りそうだ。
【足立裕輔】「…なんで怒っているの?」
【神宮寺紗耶】「…ココ、女部屋なんだけれど。しかも、アンタは何故か藍の布団の中で寝ていた。」
【足立裕輔】「ええっ!?」
これは、絶対に確信犯だろう。
【森下藍】「…アンタ。昨夜のお風呂といい、今回の事といい…(※怒り度:98%)」
【足立裕輔】「ま、待って! ち、違うんだよ!! 何かの間違いだよ!!」
【神宮寺紗耶】「グッスリ眠れた?」
【足立裕輔】「うん、グッスリ♪ …ハッ!」
…自白したか。でも、その代わり、藍の怒り度は更に増したようだ。藍の体のどこからか、ゴロゴロと地響きが鳴っているような大きな音が聞こえる。
【森下藍】「へぇ~…、私の布団の中がそんなに気持ち良かったんだぁ~…(※怒り度:99.999…%)
【足立裕輔】「ち、違う! こ、コレには深いワケが…!!」
【森下藍】「問答無用~ッ!(※怒り度:計測不能の超激高値)」
そう言って、藍は鬼よりも更に怖い恐ろしい怒った顔をしながら、いつの間にか私が持っていた刀を奪い取り、それを使って裕輔に斬りかかろうとした。裕輔は咄嗟にその場から飛び起きて一目散に走って逃げ、それを藍が「待てぇ~!!(激怒)」と言いながら刀を構えたまま追いかけていった。
【神宮寺紗耶】「あ、アハハ…(苦笑)」
【中村若菜&広沢美咲】(…朝早くから騒がしいわよ!(怒))
しばらくして私たち女子は、墨俣城内にある井戸へ向かった。この井戸で顔を洗う為だ。井戸に到着すると、もう既に太陽君や健斗たちの姿があった。
【楠山太陽】「おはよう、みんな。」
【中村若菜】「おはよう、委員長。」
【広沢美咲】「楠山君、昨夜は寝れた?」
【楠山太陽】「いいえ、あまり…。」
【中村若菜】「そうよねぇ~…。私もあまり眠れなかった。」
【楠山太陽】「いや、疲れていたのはもちろんだけれど、実際はコイツのイビキのせいなんだ。」
そう言って、太陽は隅っこにいるボコボコ顔の裕輔をチラッと見た。それを聞いて、若菜は黙って納得した。
【指宿健斗】「何でオマエは、朝っぱらからケガを沢山しているんだ? それに、オマエ、便所に行ってから自分の布団に戻ってこなかったじゃないか。どこに行っていたんだ?」
【足立裕輔】「別に…。」
【森下藍】「…。(怒&赤面)」
【指宿健斗】「?」
【????】「…まったく、朝早くから賑わっている奴らだな。」
と、突然、私のすぐ横で男の人が呆れたような声で言った。私は、「あっ、ご迷惑をお掛けしてスイマセン」とペコペコ頭を下げながら、その男の人を見た。すると、私は目を疑った。
【神宮寺紗耶】「あ! 勝家さん!?」
【柴田勝家】「よう、小娘。」
少し太っているけれど体格の良い男の人、その人は織田信長の家臣の1人である柴田勝家さんだ。
【神宮寺紗耶】「か、勝家さん、い、生きていたんですか!?」
【柴田勝家】「ヘッ、何を言うか、小娘。俺様を誰だと思っている? あれくらい、ヘッチャラさ。」
私がこう聞くのは、先日の稲葉山城攻略戦で、勝家さんは敵軍である斉藤軍の家臣で“美濃三人衆”の1人だった安藤守就と1対1で試合した。その結果、苦戦を強いられながらも勝家さんが勝利し、安藤は戦死した。しかし、その戦いの最中、安藤の策略により勝家さんは猛毒を浴び、戦場から離脱していたのだ。あれから、安否が不明で心配していたのだが、私の前にこうして姿を現したと言う事は、とりあえず大丈夫そうだ。
【明智光秀】「藤吉郎、柴田殿の容態は大丈夫そうですね。」
と、中庭に面した廊下から私たちを見ている光秀さんが、隣で同じように私たちを見ている木下藤吉郎(※後の豊臣秀吉)に尋ねた。
【木下藤吉郎】「実際は、どうだか…。あれでも、勝家殿は無理しておられるよ。」
【明智光秀】「えっ?」
【木下藤吉郎】「色々な解毒剤を使って何とか一命は保っておるが、まだ完全には完治しておらん。よほど強い毒なのだろう。ああして元気に立って話をしておるが、本当は立つことさえ無理なハズじゃ。」
【明智光秀】「では、何故?」
【木下藤吉郎】「紗耶殿にこれ以上の心配は掛けたくなかったのじゃろう。紗耶殿が一番心配しておったからな…。勝家は紗耶殿の優しさに心を打たれて応えようとしておるのじゃ。それに、自尊心が人一倍強い勝家じゃ。このまま休んでいるだけではダメだと思ったのじゃろう。」
【明智光秀】「・・・・。」
2人は、そのまま黙って遠くから、賑やかに話す私たちを見ていた。私は、元気そうな勝家さんを見て、いつの間にか笑顔になっていた。
【柴田勝家】「よぉ~し! オマエら、俺様が今から刀と武道を直伝してやる!!」
と、突然、笑顔で簡単そうに言う勝家さんに、私たち全員が「えっ!?」とビックリしていた。
【指宿健斗】「い、今から?」
【柴田勝家】「ああ。俺様直々の指導が終わるまで、今日の朝飯は抜き(無し)だ!」
それを聞いて、健斗たち男子が「えぇ~ッ!?」と落胆していた。
【足立裕輔】「僕らは、教えてもらわなくても間に合っていますぅ~!」
【柴田勝家】「何を言うか! 織田軍でも1、2を争うほど強い腕前を持つ俺様が直々に教えてやると言っておるのだ。ありがたく思え、小僧。」
【足立裕輔】(こ、小僧…。)
【中村若菜】「頑張ってね、男子たち~。」
【柴田勝家】「バカを言うな。オマエ達、小娘も同様だ。」
【女子全員】「え!?」
【広沢美咲】「(この子達の担任教師である)私も?」
【柴田勝家】「無論じゃ。オマエ達は今、織田家の仲間なのだ。仲間である以上、戦にも出陣するし、万が一だが殿様に何かあったら自らの命を使って守らねばならん。幼い男だろうが女だろうが、織田の仲間になった以上は、やってもらう。もしも、途中でやる気が無い者がいたら、容赦なくビシバシと扱くから、そのつもりで。」
【全員】(そ、そんな~…。)
この時、私たちの誰もが、今すぐにでも現代の日本へ帰りたいと強く願ったであろう。
【柴田勝家】「さあ! まずは、体慣らしの為に、城の外周を10周走れ!」
【全員】「10周!?」
これなら、まだ部活の朝練の方がマシだった。
【明智光秀&木下藤吉郎】(頑張れ。自分が生き続ける為だ!)
【柴田勝家】「コラ~ッ! もっと走る速度を上げんか~!! 罰として、全員1周増し!(怒)」
【全員】「ひぇ~ッ!!!(泣)」
しばらくの間、城の周りでは、朝早くから、勝家さんの怒号と私たちの悲鳴が響き渡ったと言う…。
【柴田勝家】「よぉーし、そこまで!」
その後しばらくして、勝家さんの力強くて大きい声で、ようやくハードな持久走が終わった。これまで当初よりも半分以上多く城の周りを走らされたような気がする。学校の部活の体力づくりよりキツかったので、私はもちろん、他の皆も既にボロボロの状態だ。
【指宿健斗】「ハァハァ…。さ、紗耶~! な、なんで、俺達、ハァハァ…、せ、戦国時代まで来て、走らされているんだ?」
それは、私じゃなくて勝家さん本人に聞いて欲しい。
でも、なんだかんだ言って、文句をブツブツ言いながらも結局は全員が最後まで走りきった。私のクラスの担任の広沢先生も、フラフラになりながらも頑張った。運動は苦手そうなのに…。
【柴田勝家】「皆、よく頑張ったな。それじゃあ、ご褒美に朝飯…。」
【足立裕輔】「やった! やっと朝飯か?」
【森下藍】「良かった~。」
【柴田勝家】「…と言いたい所だが、次は手分けして城の掃除をやってもらう。朝飯はその後だ。」
【全員】「えっ!?」
私たちは、ようやく開放されたと思って一安心していたが、一瞬にして再び地獄へ連れ戻された。
【足立裕輔】「鬼だよ、アンタ…(涙)」
【柴田勝家】「さ~、さっさと終わらせないと、朝飯じゃなくて昼飯になっちゃうぞ~!! ガハハハッ…!!」
勝家さんの甲高い笑い声と共に、私たちはハァ~と深いため息をついた。
勝家さんの提案で急遽、私たち7人は城の中を手分けして掃除することになった。
広沢先生は城の中庭を、健斗と太陽君そして若菜は城内の廊下を掃除していた。
【中村若菜】「もう! 何で私たちがお城の掃除までしなければならないワケ!? 掃除機や窓拭きワイパー、無いの?」
【楠山太陽】「ここは、戦国時代。そんな便利なモノがあるワケないだろ。」
【指宿健斗】「まあ、俺達は城内の廊下を掃除するだけ、まだマシさ。裕輔なんか、ヒドイもんだ。」
【中村若菜】「どういうこと?」
その頃、その裕輔はと言うと…。
【足立裕輔】「くっそー! なんで俺だけ便所掃除しなきゃならんの!? 俺、なんか悪いことでもしたか~? しかも、この時代は水洗じゃないから汲み取り式だし! 俺、1人じゃ無理ぃ~! 誰か手伝って! ヘルプ・ミーッ!!」
【楠山太陽】「アイツには、良い薬になるんじゃないか?」
【中村若菜】「かもね?(笑)」
【柴田勝家】「オイ! 口を動かすんじゃなくて、手を動かせ。」
【中村若菜】「はぁ~い…。(何で見張っているのよ。見張っているだけなら少しは手伝ってよ!)」
一方、私と藍ちゃんは、水の張った木製の桶と乾いた布を持って、城の天守閣を目指していた。天守閣へと続く階段は思ったよりも傾斜がきつい。重たい水の桶を女性2人で持ち運ぶのも大変だった。健斗か誰かを連れて来れば良かったと、今さらながら思ってしまう。
【????】「何やら頑張っているようじゃな、紗耶殿。」
と、私は背後から誰かに声を掛けられた。私は振り向いて相手の顔を見た。
【神宮寺紗耶】「藤吉郎さん。」
そこにいたのは、ニヤニヤと笑っている木下藤吉郎さんだった。
【木下藤吉郎】「朝早くから精が出ておるな。勝家殿に言われて城の外を走ったり、こうして城内を掃除したり…。」
【神宮寺紗耶】「えっ、何で知っているんですか?」
【木下藤吉郎】「ずっと見ていたんだよ。」
【神宮寺紗耶】「み、見ていた!?」
【木下藤吉郎】「貴方達が、必死に走っているのを見て、笑いを堪えるのに必死じゃったよ。」
【神宮寺紗耶】「見ていたんだったら、(暴走する柴田さんを)止めさせてよ~。」
【木下藤吉郎】「まあ、たまには、こんなモノも良いかと思ってな。」
【神宮寺紗耶】「“たまには”って、昨日、私は戦に出たばかりよ!」
【木下藤吉郎】「そうじゃったかのぉ~?」
そう言って、藤吉郎さんは再びニヤニヤした顔を見せた。
【森下藍】「…ええと、紗耶ちゃん。この人は?」
【神宮寺紗耶】「ああ、藍ちゃんは会うのは初めてね。この人は、織田軍の家臣の1人で、木下藤吉郎さん。後の豊臣秀吉よ。」
【森下藍】「えっ!?」
【木下藤吉郎】「えっ、後の…何て言った?」
【神宮寺紗耶】「えっ!? …あ、ううん。何でもない。コッチのこと…。」
【木下藤吉郎】「?」
危ない、危ない。この時代の人に対して、未来を話す事はご法度だった。
それにしても、藤吉郎さんが豊臣秀吉と知った時点から、藍ちゃんが鳩が豆鉄砲を食らったかのように驚いている。
まあ、それもそのはず。豊臣秀吉と言ったら、織田信長の次くらいに有名な人なんだから。そんな偉い歴史上の人に対して、私が敬語を一切使わず友達感覚に話しているからビックリしているのだろう。きっと、藍ちゃんは「紗耶、度胸があるわね…」とでも思っているのかもしれない。でも、敬語で話していないのは、たぶん藤吉郎さんと年代が近いからではないだろうか。しかも、背丈などの格好も一見すれば中学生の男子くらいだし。最初は敬語を使っていたけれど、何かね…。時々お茶目なところもあるけれど、戦に出た時は頼もしい男に変貌するんだから。
【木下藤吉郎】「どれ、ワシもヒマじゃから手伝おうか。」
と言って、藍ちゃんが持っていた水の張った桶を自ら持った。
【森下藍】「あ、ありがとう、ございます…。」
【木下藤吉郎】「気にするな、で御座るよ。これくらい何でもない。」
そう言って、藤吉郎はニコッと藍ちゃんに笑顔を見せた。
【森下藍】「・・・・。」
【神宮寺紗耶】「?」
私たち3人は、そのまま城の天守閣に到着した。ここから四方八方を見渡すことが出来る。城が小高い丘の上に立っている事もあり、景色は抜群だ。ふと、その天守閣に誰か人影が見えた。
【神宮寺紗耶】「誰かいるよ。」
【木下藤吉郎】「えっ?」
藤吉郎さんはビックリして、私より先にその人影が見えた場所に向かった。
【木下藤吉郎】「殿!」
【神宮寺紗耶&森下藍】「えっ?」
そこにいたのは、この城の主である織田信長とその妻である帰蝶さんだった。信長は私たちが来た事に気づくと、景色を眺めながら黙って横目で私たちを見た。帰蝶さんは私たちに向かって黙って一礼したので、私たちも咄嗟に一礼した。
【森下藍】「ど、どうも…。」
【神宮寺紗耶】「あ、あの…、お、お掃除に…。」
信長は横目で私たちを見ているのに、相変わらず鋭い目つきだ。その目を見ると、どうしても私たちは恐れてしまう。人々が信長には逆らえなかったと聞くが、その理由が何だか分かるような気がする。
【木下藤吉郎】「ここにおられたのですか…。帰蝶様も…。」
【帰蝶】「この人、明け方からココにいたようで…。」
そう言って、帰蝶さんは信長を見た。
【木下藤吉郎】「あ、明け方!? な、なぜ…。」
【織田信長】「・・・・。」
信長は私たちを横目で確認すると、再び最初の目線の位置に戻した。黙ったままの口と鋭い目つきは、そのままだ。しかし、キョロキョロとせず、ただ一直線に遠くの何かを見ているようだ。城下町とは反対の方角だ。私たちは気になって、その視線の先を追いかけた。
【神宮寺紗耶】「…何か見えた?」
【森下藍】「…さあ?」
どう見ても、見えるのは大きな河だけだが。私たちの目からは、それしか見えない。
すると、突然、信長がスッと動き出し、最後まで黙ったまま天守閣から出て行った。帰蝶さんも私たちに一礼をしてから、信長の後を追いかけて行った。
【神宮寺紗耶】「信長は何を見ていたの?」
と、思わず藤吉郎さんに聞いてみた。ふと見ると、藤吉郎さんが神妙な顔つきをしていた。
【木下藤吉郎】「これはワシの感なのじゃが…、もしかしたら近いうちに戦が起きるかもしれん…。」
【神宮寺紗耶&森下藍】「戦!?」
【木下藤吉郎】「あの目は…、そういう目じゃ!」
私は再び信長が見ていた方向を見た。あの河に何があると言うのだろうか…。
【足立裕輔】「メ、飯だぁ~ッ!!(嬉涙)」
掃除も終えて、私たちは自分達の部屋でやっと朝飯を食べることを勝家さんから許された。あまりにお腹が空いていたので、私たちの為に用意された朝飯を見るや否や、裕輔が飛びつくようにガツガツと朝飯を食べ始めた。
【森下藍】「ちょ、ちょっと裕輔! もっと落ち着いて食べてよ。」
【足立裕輔】「だってぇ~。もう、お腹ペコペコで…。」
【森下藍】「今は私たちだけだから良いけれど、他の皆の前では絶対にしないでよね。現代人の恥だから!」
【足立裕輔】「ふぁ~い…。あ、コレ、美味しい!」
【森下藍】「もう!」
【広沢美咲】「えっ? 近いうちに戦がある、って言ったの?」
と、藍ちゃんがハァ~とため息をついている向かい側で、広沢先生が自分の箸を止めて私の顔を見て聞いてきた。
【楠山太陽】「本当なのか、それ?」
【神宮寺紗耶】「う、うん…。あくまで感なんだけれど近いうちにあるかもしれない、って藤吉郎さんが言っていた…。」
【中村若菜】「ウソォ~!?」
【指宿健斗】「マジかよ…。」
【中村若菜】「戦になるかもしれないって事は、私たちも織田軍の1人としてその戦に出なければならない、って事だよね!?」
【神宮寺紗耶】「そ、そうなるね…。」
【森下藍】「そんなぁ~…。私、まだ死にたくないよぉ~!」
そう言って、皆がガックリと肩を落とした。
【足立裕輔】「…あれ? どうしたの、みんな?」
【指宿健斗】「オマエは気楽で良いな。羨ましいよ。」
【足立裕輔】「アハッ! 俺、初めて健斗に褒められちゃった!!」
【指宿健斗】「そういう意味じゃねぇよ…。」
裕輔と私以外は、すっかり意気消沈している。それを見た広沢先生が口を開いて言った。
【広沢美咲】「みんな、元気を出してよ。戦に出れば必ず死ぬってワケではないじゃない!」
【中村若菜】「でも、今のままだったら、確実に命を落とすわよ…。」
【森下藍】「うん…。」
やはり、まだ意気消沈している。空気も何だか重たくなっているような気がする。このままではいけない。
【神宮寺紗耶】「“今のままだったら”の場合でしょ、それは。だったら、1つだけ良い方法があるわよ。」
【指宿健斗】「良い方法?」
【神宮寺紗耶】「相手と戦う術を皆で学べば良いのよ!」
【楠山太陽】「戦う術を…学ぶ?」
それを聞いて、太陽君がハッとした。
【楠山太陽】「そうか! 今、勝家さんに命じられてやっている体力造りを続けて、同時に戦う術を一人一人に教えてもらえば良いんだ。少なくとも護身術でも身につけられれば、戦に出でも死ぬ危険は低くなる!」
【中村若菜】「そんなの無理よ。」
【指宿健斗】「じゃあ、何もしないまま戦に出るのか? 何もしないで戦に出るのと、戦う術を学んで戦に出るの、どちらが良いんだ?」
【中村若菜】「そ、それは…。」
【指宿健斗】「俺は、それで良いと思う。と言うか、それしか今は方法が無い。」
【森下藍】「…私も、紗耶ちゃんの案で良いと思う。一生懸命頑張って学べば、きっと大丈夫よね?」
【足立裕輔】「あ、俺も、(何だか分からないけれど)賛成!」
【神宮寺紗耶】「あとは…。」
そう言って、私は広沢先生を見た。広沢先生は「来たか…」と言うような顔をしていた。
【広沢美咲】「私は、アナタ達の1人の担任として、アナタ達を最後まで守りぬくという責任がある。でも、私1人だけでは限界がある…。けれど、皆も自分で自分の身を守るという強い意志と皆の助け合う力があれば、それは何があっても可能だと思うの。だから、私は反対しないわ。」
それを聞いた皆の視線が、今度は若菜に向かった。
【中村若菜】「わ、分かったわよ。…戦う術を学んで、皆で絶対に生きて帰りましょう! 帰ってやるんだから、絶対ッ!」
【指宿健斗】「決まりだな。」
それを聞いて、私の中に何かが込み上げてくるような感じがした。
【神宮寺紗耶】「皆、手を差し出して。」
私は、皆を集めて自分の片手を差し出した。そして、皆の手が私の手の上に次々と重ねていった。
【指宿健斗】「…言えよ。」
【神宮寺紗耶】「私が言うの!?」
【広沢美咲】「アナタは、私たちのリーダーよ。」
【神宮寺紗耶】「リーダー…。」
すると、また先程よりも強く、何かが私の中にこみ上げてきた。それは、強い「やる気」だ。
【神宮寺紗耶】「よぉ~し! 皆で絶対、生きて現代へ帰るわよ~ッ!! ファイトッ~!!」
【全員】「オーッ!!」
私たちは強い意気込みをした後、そのまま真っ直ぐに勝家さんの場所に向かった。勝家さんの隣には多くの家臣たちの姿もあった。勝家さんは、私たちの顔を見るなりビックリしていた。
【柴田勝家】「どうしたんだ、オマエら?」
【神宮寺紗耶】「勝家さん、私たち全員に体力づくりと、敵と戦う術を教えて下さい。」
【柴田勝家】「…良いのか。俺様の授業は相当キツイぞ?」
【神宮寺紗耶】「構いません!」
勝家さんは私たち全員の目を見た。皆、力強いやる気に満ちている。
【柴田勝家】「分かった…。教えてやろう!」
【全員】「お願いします!!」
と、私たちは全員頭を下げた。光秀さん達を含む家臣達全員がフッと感心していた。そして、たまたま通りかかった“あの人”も…。
【織田信長】「…フッ。」
こうして私たちは、自分達の体力づくり、そして戦う術を学ぶことになった。それは、この時代で生きていく為、未来へ帰る為、仲間を助ける為だ。まだ戦に出るとは決まっていないけれど、何もしないよりは全然良い。
私たちを見て、勝家さんだけでなく、他の家臣や家来の人達も応援してくれるようになった。皆、私たちの気持ちに心を打たれたのだ。
私たちは彼らの指導のもと、大勢の兵士と共に、次々と色々な術を学んでいった。滝での冷たい水に打たれながらの精神統一や、山の頂上にあるお寺までの急な階段を駆け抜けるのも何のそのだ。今朝までは私たち全員が文句ばかり言っていたが、今では誰も文句を言う人はいない。私たち全員が同じ気持ちを持ち、一生懸命に取り組んでいる。
刀を使った剣術の指導、馬術、弓術…。やる気に満ちた私たちだったが、最初はやはり苦戦した。誰しもが簡単に体へ身につけることは出来なかったが、数日立つと次第に上達していった。
例えば、藍ちゃんはの場合、背後からコソコソと獲物を狙うかのように近づいてくる裕輔に対し、一瞬の隙を突いて裕輔の手首をサッと掴み、そのまま1本背負いを与えるハズが最初は持ち上げることすら出来ず、奇しくも裕輔にスカートをめくられていた。しかし、ある日を境に、藍ちゃんは完璧に上達し、裕輔が簡単に背後に近づけなくなってしまったのだ。
防具選びも慎重だ。私の時と同じように、光秀さんと信長の妹であるお市さんが真剣そうな顔をして、防具選びをしてくれる。
【お市】「これは、どうかしら?」
そう言って、お市さんが若菜に1つの防具を身につけさせた。
【中村若菜】「お、重い~ッ!!」
【明智光秀】「やっぱり無理か…。」
結局、防具は私と同様に、軽いが防御性が高い鎧や籠手などを身につけることになった。
刀は織田の鍛冶職人の方が、私たち全員に1本ずつ特製の刀を作ってくれた。それを勝家さんが真剣な顔で出来上がった刀を1本1本見極め、私たちに藁で出来た人形に向かって試し斬りをさせた。ズバッと切れ味良く人形が真っ二つに斬れると、周りにいた家臣や家来たちから「オーッ!」と歓声が起こった。
【木下藤吉郎】「ワシも、あんな刀が欲しいのぉ~。」
【前田利家】(まえだとしいえ)】「頑張って出世しな。(笑)」
こうして、私たちは数日を掛けて、一通りの術を学び終わった。後は実戦で、自分の判断で学んだことを臨機応変かつ確実に実行しなければならないのだ。戦場で甘えは断じて許されない。1つの油断が自分または仲間に危険が迫ってしまう。それだけは絶対に防ぎたいものだ。
私たちが城内で戦術を学んでいる間のある日の昼、明智光秀は墨俣城近くの竹林で囲まれた林道にいた。普段は町と町を繋ぐ街道であり人通りも多いが、今日に限ってはあまり人が通らなかった。
光秀がこの場所に来たのには、ある目的があった。この街道を、とある人物が今日歩いて通ることを聞きつけたのだ。
【明智光秀】(信長様は、ここを通る人物を説得するようにと私に命じられた。どんな人物にせよ、説得して何の意味があるのだろうか…。)
信長は、こんな光秀の疑問に対し、こう答えるばかりだった。
【織田信長】『うぬは、ただ、この信長の命令に従えば良い。この意味は、いずれ分かろうぞ…。』
いずれ分かる…。光秀は、この言葉に今は信じるしかなかった。
光秀は竹林の陰に隠れて、その人物が通るのをひたすら待った。
冷たい風が時折吹く様になり、しばらく経ったその日の夕刻。とうとう、その人物が姿を現した。
【明智光秀】(…あれは!)
その人物の姿を見て、光秀はハッとした。
数人の手下の兵を引き連れた、敵軍である斉藤龍興の家臣で“美濃三人衆”の唯一の生存者である稲葉一鉄だ。まさか敵軍の一兵士が、織田領内であるこの場所を通るとは思いもしなかった。
【明智光秀】(信長様は、この事を予期していたのか…!)
思わず感心してしまうが、まだ信長の命令は達成していない。光秀は意を決して、竹林の影から姿を現した。
【稲葉一鉄】「オマエは…!?」
突然の敵軍の登場により、一鉄の兵士たちは咄嗟に腰に身につけた刀に手をやり、今にも抜刀する構えをした。
【明智光秀】「待て。今日は決着を付けに来たワケではありません。」
【稲葉一鉄】「…?」
【明智光秀】「単刀直入に聞きます。アナタは、自分の主の事をどう思いますか?」
一鉄にとっての主、それは斉藤龍興だ。
【稲葉一鉄】「いきなり、何を言い出すのかと思えば…。」
【明智光秀】「どう思っているんです? 龍興は、自分の味方を“物”同然に扱っているのではないのですか?」
その言葉に、一鉄は思わずドキッとした。一鉄には、少し心当たりがあった。今までの龍興の言葉を思い出したのだ。
【斎藤龍興】『氏家…。少しは使える物だと思ったのにな…。』
【斉藤龍興】『氏家も安藤も“美濃三人衆”の1人だと言うのに、まったく使えぬ“物”だった…。』
それらの言葉は、一鉄にとって信じがたいものだった。以前は、そんな事を言う人ではなかった。一鉄や他の三人衆たちにとって、龍興こそが一番信頼ができ、最後まで付いて行こうとした人物だ。しかし、最近の戦続きによって龍興が一変した。それと同時に、少しずつ龍興に対する不信感も募ってきた。だが、一鉄はそれを決して信じたくなかった。
【稲葉一鉄】「そんな事はない! あの方は、そんな事は絶対に無い!!」
【明智光秀】「それを本当に思っているのですか?」
一鉄はこの言葉にカチンときて、咄嗟に一鉄の味方の兵の刀を奪い取って、刃の矛先を光秀の首に突きつけた。
【稲葉一鉄】「黙れ! これ以上言うと、オマエの首をこの場で斬る!!」
【明智光秀】「斬りたければ斬りなさい。ただし、ここは織田領内。何かがあれば、すぐに我々の仲間がやって来ますよ?」
【稲葉一鉄】「…クッ!」
一鉄は、やむ得ず刀の矛先を光秀の首から遠ざけた。
【稲葉一鉄】「ご忠告ありがたいが、某は誰にも屈せぬ! 某の主は、ただ1人。斉藤龍興様だけだ!!」
【明智光秀】「…そうですか。分かりました。…ですが、考えておいて下さい。斉藤龍興は、そう長くは保たないでしょう…。」
【稲葉一鉄】「…オイ、行くぞ。」
そう言って、一鉄はお供の兵士たちを引き連れて、その場を去った。光秀は、一鉄らの姿が見えなくなるまで、その場で黙って見送った。
一鉄は、振り向きもせず、ただ真っ直ぐに歩き続けた。その最中、一鉄は光秀の言葉を思い出していた。
【明智光秀】『龍興は、自分の味方を“物”同然に扱っているのではないですか?』
【明智光秀】『考えておいて下さい。斉藤龍興は、そう長くは保たないでしょう…。』
しばらく考えていた一鉄だったが、
【稲葉一鉄】「…フン。誰が織田なんぞに…。」
と、ボソッと呟いた。
【明智光秀】「…これで、種は蒔き終えました。後は、芽が出るのみ…。」
光秀も、そう口にすると、その場を立ち去った。
その日の夕方も、私たちは引き続き、柴田勝家さんが直接指導する中で、自分で戦う力を蓄え続けていた。
【柴田勝家】「良し! オマエ達の腕前もだんだんと上がってきたな!」
【指宿健斗】「そりゃあ、これまで頑張って練習してくればな…。」
【中村若菜】「腕前が上がらないほうが変よ。」
【足立裕輔】「俺も、何回、藍ちゃんに一本背負いされ続けたことか…。」
【森下藍】「アンタが、しつこすぎるのよ!(怒)」
【広沢美咲】「皆、ご苦労様。大変だったわね。」
【神宮寺紗耶】「良いですよね、先生は。戦うほうじゃなくて…。」
【広沢美咲】「私は、戦に出陣している人達に食事などを提供する係に任命されたからね。」
任命は、勝家さんと信長が相談して決めたそうだ。広沢先生はコチラの方が良いそうで、逆に言えば何も戦力にはならないと言う事だ。
【足立裕輔】「それは、もう歳のせいかもね(笑)」
【広沢美咲】「…足立君、今日の夕食は抜き決定ね!(怒)」
【足立裕輔】「あ~! それだけは勘弁してぇ~…!!(泣)」
こんな感じで、城の中庭は終始和やかだった。しかし、この男の登場で、空気が一瞬のうちに一変した。
【織田信長】「勝家…。どうだ、この者達は?」
突然の大物の登場に、空気が今までとまるで逆になったような感じが、手に取るように分かる。さすが、あの織田信長だ。信長の隣には、森蘭丸や帰蝶さん、お市さんに、そして光秀さん達を含めた他の家臣達の姿もあった。
【柴田勝家】「ハッ! この者達の腕前、次第に上達しておりまする。戦に出しても問題ないかと…。」
【織田信長】「であるか…。」
【足立裕輔】「え~、俺、まだ戦に出るほど力を身につけてない~!!」
その時、信長がギロッと鋭い目で裕輔を睨んだ。
【楠山太陽】「バカ! 場を慎め!!」
と、すぐに太陽が裕輔の口を両手で塞いだ。
【森下藍】「ど、どうぞ、続けて下さい…。」
しばらく信長は裕輔を見ていたが、今度は勝家に目を移した。
【織田信長】「…皆の者、聞け。」
【家臣全員】「ハッ!」
すると、家臣の人達全員がサッと信長に向かって跪ずいた。咄嗟に、私たちも後に続いた。
【織田信長】「…明日の早朝、この信長の妹、市を浅井長政の下へ届ける。」
【お市】「!」
その場にいた誰もがビックリした。私もビックリした。
信長は、織田の勢力拡大の為に、近江(※現在の滋賀県)の国主である浅井長政の下へ、自分の妹であるお市さんを近いうちに妻として長政と結婚させることを言っていた。その日がとうとうやって来たのだ。
【お市】「…とうとう、この日がやって来たのですね。兄上…。」
【織田信長】「分かっておるだろうな、市…。」
【お市】「…はい。覚悟はできております。」
それを聞いて、織田は再び家臣達を見て言った。
【織田信長】「すぐに準備せよ。明日の早朝、近江へ発つ!」
【家臣全員】「ハハッ!」
信長がその場を去るのを、その場にいる全員が頭を下げて見送った。信長、蘭丸、帰蝶さんの姿が見えなくなると、家臣達は早速準備に取りかかった。私は、自分の部屋に戻ろうとするお市さんに駆け寄った。
【神宮寺紗耶】「お市さん!」
【お市】「紗耶さん?」
【神宮寺紗耶】「良いんですか?」
【お市】「何がですか?」
【神宮寺紗耶】「浅井長政との結婚ですよ!」
それを聞くと、お市さんはフッと軽く笑った。
【お市】「紗耶さん…。前にも言ったと思いますけれど、私は例えこの結婚が兄上の政略の為のものだとしても、私は決して反対しません。兄上を慕う家臣や多くの民たち、私もその中の1人です。皆に幸せが訪れるのならば、喜んで長政様の下へ嫁ぎます。それに…。」
【神宮寺紗耶】「それに?」
【お市】「私は、政略や他の事を問わず、長政様を心から愛していますから…。」
【神宮寺紗耶】「でも、浅井長政と同盟を結んだとしても、仮に敵対することになったら…。」
【お市】「大丈夫です。長政様は決して兄上を裏切ったりはしません。心配は無用です。」
【神宮寺紗耶】「けど…。」
すると、お市さんがクスッと笑った。
【お市】「やはり、アナタはお優しい方ですね。アナタのご友人が迎えに来られた理由が分かる気がします…。」
【神宮寺紗耶】「えっ?」
お市さんはニコッと笑みを見せて、自分の部屋に戻って行った。
その日の深夜、私たちは自分達の部屋で、それぞれ自分の布団で就寝していた。城内も、すっかり静まり返っている。
明日は、お市さんを浅井長政の下へ送らなければならない。私たち7人も、信長の命令により同行することになった。
お市さんが、今晩限りで私たちの元からいなくなるのは寂しい。けれど、これはこの時代の運命なのだ。私たちが変えられるものではない。私たちの誰かが何と言おうと、もう決定事項なのだ。
【中村若菜】「…紗耶。起きてる?」
と、私の隣の布団から、小さな声で若菜の声がした。私も同じくらい小さな声で返事した。
【神宮寺紗耶】「うん、起きてるよ。もう寝たんじゃなかったの?」
【中村若菜】「うん…。何だか眠れなくて…。」
【神宮寺紗耶】「そう…。」
【中村若菜】「ねえ、紗耶。聞いてもいい?」
【神宮寺紗耶】「なに?」
【中村若菜】「明日、お市さんを浅井長政って言う人の所へ、皆で送り届けるんだよね?」
【神宮寺紗耶】「そうだけれど…。それが、どうかした?」
【中村若菜】「あくまで私の勘なんだけれどね。…何だか、明日はそれだけじゃ済まないような気がするの。」
【神宮寺紗耶】「…どういう事?」
【中村若菜】「嫌な胸騒ぎがするのよ。今、私たちは7人全員いるんだけれどさ。誰かが私たちの傍からいなくなるような気がして…。」
【神宮寺紗耶】「私たちの誰かが? 誰?」
【中村若菜】「分からない。ただ…、そんな予感がするの。」
若菜の嫌な予感と言うのは、大概当たる。例えば、若菜が「今日、抜き打ちテストがあるような予感」と言えば、実際にその通りになってしまうし…。けれど、今回の場合は少し違うようだ。でも、いずれにせよ、あくまでも若菜の予感に過ぎない。
【神宮寺紗耶】「…考えすぎだよ、若菜。」
【中村若菜】「そうかな…?」
【神宮寺紗耶】「大丈夫! 明日の夜も、こうして皆で隣同士、グッスリ眠るんだから!!」
しばらく若菜は口を閉ざして考え込んだ。
【中村若菜】「…そうだよね。ただの予感だもんね。」
【神宮寺紗耶】「そうよ。」
【中村若菜】「…ゴメンね、紗耶。嫌なことを言っちゃって…。」
【神宮寺紗耶】「ううん…、平気。」
【中村若菜】「思ったんだけれど、紗耶って女の子なのに本当に強いよね。」
【神宮寺紗耶】「それって、どういう意味よ?」
【中村若菜】「だってさあ、私たちがここに来るまで誰も仲間がいなかったワケじゃん。右も左も分からない場所でさ、1人ぼっちよ。私だったら耐えられないな、きっと。」
【神宮寺紗耶】「そんなこと無いよ。」
私が耐えられていたのは、大切な人達の事をどんな時でも想い続けてきたからだ。
私は1人じゃない。私の傍には、いつも大切な人達がいる。
だから、ここまで私は頑張って来れたのだ。
【中村若菜】「フフ…。やっぱり紗耶は紗耶だなぁ~。」
【神宮寺紗耶】「褒めているの、それ?」
【中村若菜】「もちろん!」
そう言って、私たちはお互いクスクスと笑った。
【神宮寺紗耶】「さあ、もう寝よう。明日は早いわよ。」
【中村若菜】「そうね。…お休み、紗耶。」
【神宮寺紗耶】「お休み、若菜。」
それを聞くと、若菜は眠りについた。若菜の寝顔を横で寝て見ながら、しばらく天井に目線を移した。
【神宮寺紗耶】「…お休み、みんな。」
そして、私も眠りについた。
皆が寝静まった頃、お市はまだ寝床に就いていなかった。その時、誰かがお市の部屋の前までやって来た。お市は、その気配を感じ取っていた。
【お市】「…そこにいるのは誰ですか?」
【織田信長】「…市。入っても良いか?」
【お市】「兄上…。どうぞ。」
その言葉の後、信長がお市の部屋に入った。襖を自分で閉めると信長は、お市と布団を挟んだ反対側に座った。
【お市】「こんな夜更けに何用ですか、兄上…。」
【織田信長】「この城で寝るのは今夜で最後…。市はどう思って眠りに就くのかと思ってな…。」
【お市】「兄上が、私の様子を伺いに来るとは思いませんでしたわ…。」
【織田信長】「どうなんだ、市…。」
【お市】「兄上や大勢の民の為ならば、この市、長政殿の下へ喜んで身請けするつもりです…。」
【織田信長】「それは誠の気持ちか?」
【お市】「はい…。」
信長は鋭い目つきで、お市の目を見た。お市の言葉に偽りがないかを確認する為だ。例え口で偽りを言ったとしても、目だけは正直だ。だから、信長はいつも相手の目を必ず見るようにしている。そして、お市の目を確認すると、信長は言った。
【織田信長】「…この信長、始めは市を長政の下へ送るのは躊躇した。」
【お市】「…え?」
【織田信長】「父上と母上が死に…。多くの兄弟が死に…。残るは市だけになった…。例え戦国の世とは言え、たった1人の妹を他所へ行かせたくはない…。だが、これも戦国の逃れられぬ運命故…。うぬにはすまぬ事をさせた…。」
【お市】「…いいえ。この戦国乱世が一刻も早く終結するのならば、私はその運命に従うまでです。」
【織田信長】「…市。この先、どんなに大変な事が待っているのかもしれぬ。だが…、どんな事があってこそ、生きろ! うぬの信じる道を往け!!」
【お市】「…そのお言葉、嬉しゅうございます。」
そう言って、お市は信長に深く頭を下げた。その目には、うっすらと涙が出ていた。それを見た信長はお市をギュッと抱きしめた。
【織田信長】「うぬと一緒に過ごせた日々、楽しかったぞ…。」
【お市】「兄上…。私もです…。」
お市は、信長の胸元で泣いた。それを信長は、黙って優しく抱きしめ続けた。
墨俣城に朝がやって来た。いつもは少し賑やかだった城内だが、今朝は違った。
城の城門付近には、大勢の武装した織田軍兵士や家臣、黒馬に乗り鎧を身に纏った信長の姿があった。まるで、これから戦に出陣するかのような光景だ。
その中に、同じく武装した私たち7人の姿もあった。と言っても、7人全員は重い鎧を一切身につけておらず、刀などの武器は所持しているが、誰もがこの時代にやって来た時と同じ姿をしている。つまり、担任教師である広沢先生を除いた私たち6人は学校の制服姿だと言う事だ。これが、やはり一番動きやすい格好なのだ。
しばらくして、私は光秀さんと一緒に、お市さんの部屋にやって来た。お市さんを迎えに行く為だ。
部屋に入るなり、お市さんは私たちに背を向けたまま、部屋の中央で静かに立っていた。
【神宮寺紗耶】「…お市さん?」
そっと呼びかけてみたが、お市さんは最初気がつかなかった。どうやら、自分が長きに渡って過ごした部屋に、最後のお別れをしているのだろう。この部屋だけでもお市さんにとっては、数多くの思い出があるに違いない。そう思うと、声を掛け辛かった。すると、光秀さんは私が躊躇しているのに関係なく、お市さんに呼びかけた。
【明智光秀】「市様…。」
【お市】「光秀殿…。」
【明智光秀】「お呼びに参りました。」
と、お市さんに向かって深く頭を下げた。私も、上目でお市さんを見ながら、つられるように頭を下げた。私たちが頭を上げると、お市は頷いて言った。
【お市】「分かりました。もう仕度は出来ております…。」
【明智光秀】「では、行きましょう…。」
【神宮寺紗耶】「待って!」
光秀さんは、ビックリした顔で私を見た。
【神宮寺紗耶】「もう少し、お市さんをこの部屋にいさせてあげて!」
【明智光秀】「えっ?」
【お市】「紗耶さん…。」
どうやら、お市さんは私の気持ちが通じたらしい。それにやっと気がついた光秀さんは、「分かりました。少しだけですよ。」と言って許可した。
許可を貰ったお市さんは、再び、自分の部屋をぐるりとゆっくり見回した。
【神宮寺紗耶】「この部屋には、お市さんの良い思い出が詰まっているんですよね?」
【お市】「ええ…。それは、数え切れないくらい沢山の…。特に、幼少時代の兄上と一緒に楽しく過ごした事を思い出します…。」
今でこそ、皆から恐れられている信長だが、お市さんにとっては唯一の兄として、今も昔も変わらずに信長のことが好きだったのかもしれない。この部屋には、そんな2人の良き思い出が、私が知らないくらい沢山あるのだ。それが今日でお別れになるとは、どんなに辛いことだろうか…。
【お市】「…行きましょう。」
【神宮寺紗耶】「もう良いんですか?」
【お市】「ええ。もう思い残すことはありません。紗耶さん…、ありがとう…。」
【神宮寺紗耶】「いえ…。」
【明智光秀】「では、参りましょう。もう皆、お待ちです。」
そう言って、私たちは信長たちの下へ向かった。
歩き出そうとした時、お市さんは黙って立ち止まり、振り向いて自分の部屋を見た。そして、小さな声で言った。
【お市】「ありがとう…。」
城門前では、既に大勢の兵士たちが、私とお市さんの到着を待っていた。私たちが姿を現すと、多くの家臣達がお市を出迎えた。
【帰蝶】「市…。」
信長の妻、帰蝶さんがお市さんの下へやって来た。その隣には、広沢先生の姿もある。この2人は、数人の家臣や兵士らと共に、お城で留守番のようだ。
【お市】「お義姉様…。」
【帰蝶】「ご武運を…。」
【お市】「お義姉様も達者で…。兄上を宜しくお願いします。」
【帰蝶】「ええ、分かったわ…。」
【お市】「広沢殿…。」
【広沢美咲】「はい…。」
【お市】「短い間でしたけれど、共に過ごせて良かったです。貴方たちの故郷に無事に帰れる事を、私はいつまでも願い続けています…。」
そう言うと、広沢先生はうっすらと涙が出ていた。
【お市】「泣かないで下さい。皆が見ていますよ?」
言われたまま、広沢先生は私たち6人の顔を見た。ニヤニヤ顔をしている裕輔を含めて、私たちは2人の様子を見ていた。そして、何も言わず広沢先生はお市さんに顔を戻した。
【広沢美咲】「ありがとう…ございました。お元気で…。」
【お市】「貴女も…。」
広沢先生は、お市さんに向かって深く頭を下げた。今度は完全に泣いていた。それを藍ちゃんが宥めた。
そんな中でお市さんは、ふと信長を見た。信長は、黙って頷いた。お市もそれを頷いて返すと、そのまま兵士らの指示に従って、黙って輿(※人を乗せる、屋形の下に2本の轅をつけた乗り物のこと)に乗りこんだ。
【神宮寺紗耶】「お市さん、私たちが責任をもって送り届けますから!」
と、輿に乗ったお市さんに声を掛けた。私以外の6人もお市さんの下へ駆け寄った。私たち6人が、お市さんが乗っている輿を守るようにと、信長に命じられたのだ。もちろん私たちだけではなく、万が一の為に白馬に乗った光秀さんもすぐ前についている。それに、前も後ろも大勢の仲間たちで一杯だ。これなら何があっても大丈夫だろう。
【お市】「ありがとう…。お願いしますね。」
それを聞くと、私たち6人はウンと強く頷いてガッツポーズをした。お市さんはクスッと笑うと、輿の幕を下ろした。
【広沢美咲】「みんな!」
そう言って、広沢先生が私たちのところへ駆け寄ってきた。もう泣いていなかった。
【足立裕輔】「先生、嫁入り前に大泣きしちゃって良いんですか?」
からかう裕輔を無視して、広沢先生は私たちを見て言った。
【広沢美咲】「気をつけてね、みんな。」
【中村若菜】「大丈夫ですよ、先生!」
【楠山太陽】「そうですよ、先生。僕達はただ、お市さんを浅井長政の下へ無事に送り届けるだけですから。」
【森下藍】「それに、戦い方を学んだ私たちは強いんだから!」
と、拳で殴るポーズをして笑顔で言った。
【指宿健斗】「心配するだけムダだよ。」
【神宮寺紗耶】「絶対、みんな一緒に帰ってきますから!」
【広沢美咲】「…分かったわ。皆の帰り、先生、待っているからね!」
私たちはウンと強く頷いた。
【中村若菜】「あ、そうだ! 景気付けに、また“アレ”、やっとく?」
【足立裕輔】「“アレ”?」
【森下藍】「ああ、“アレ”ね!」
【指宿健斗】「今、ココでやるのかよ。恥ずかしいッ!」
【神宮寺紗耶】「良いんじゃない? 皆で、やろう!」
健斗は横にいる太陽君を見た。そして、お互いの顔を見合わせると、フッと笑った。
【指宿健斗】「ま、いっか!」
【神宮寺紗耶】「じゃあ、皆、手を出して。先生も一緒に!」
そう言って、私は自分の片手を出した。それに続いて、皆の手が次々に重なって置かれていく。
【神宮寺紗耶】「それじゃあ、皆さん、ご一緒に~。ファイトォ~!」
【全員】「オーッ!!」
力強い掛け声が城内に響き渡った。その声に、周りにいた兵士たちが唖然とした顔で見ていた。思わず、お市さんも輿の幕をあげて私たちを見た。
【前田利家】「…何だ、アレ?」
【木下藤吉郎】「紗耶殿たちの故郷では、流行っておるのかの~?」
信長も私たちの力強い掛け声を聞いていて、思わずフッと小さく笑った。そして、私たちの掛け声以上の大きな声を出して叫んだ。
【織田信長】「進め~ッ!!」
その声と共に、先頭にいた兵士たちが城門を開けて、ゆっくりと前へ歩き出した。それに続いて、大名行列のような長い列がゆっくりと前に進みだす。私たちも急いで自分の配置に戻った。そして、ついに私たちやお市さんが乗っている輿が動き出した。城で留守番をする家臣や家来たちが、頭を下げてそれを見送った。広沢先生は、少し不安そうな顔で、私たちの姿が見えなくなるまで見送った。
私たちの長い列は、城下町を横切り、林道を横切り、街道を歩き続けた。途中、裕輔が小便をする為に突然立ち止まったという恥ずかしいハプニングも起きたが、ここまで特に何もなく進んできた。
道中、道行く民や畑仕事などをしている民たちが私たちの行列に気づき、大人子供問わず深く頭を下げて見送っていた。一部で、私たち6人のこの時代では変わった服装(高校の制服)を不思議そうに見ていた民たちもいて、ちょっと恥ずかしかった。
城を出発してから1時間程度歩いた頃、私たち一行は長くて広く大きな河に辿り着いた。すると、晴れていた天気が一変し、薄暗い曇り空になり、そして周囲には深い霧に包まれた。
【森下藍】「お市さん、大丈夫ですか?」
と藍ちゃんが、お市さんが乗っている輿に向かって声を掛けた。すると、輿に垂れ下がっていた幕が上がり、お市さんが顔を出した。
【お市】「私は大丈夫です。ありがとう。」
【森下藍】「そうですか。それは良かったです。」
【お市】「…霧が出てきたわね。」
【森下藍】「はい…。」
【お市】「このまま、何事も無ければ良いのですが…。」
【神宮寺紗耶】「・・・・。」
【明智光秀】「これより先は用意した船に乗って川を渡ります。河を越えて山を抜ければ、その先は近江。浅井領です…。」
光秀さんは指を指して方向を示したが、深い霧に包まれている為、その先が全く見えない。だが、その先に道があるのは間違いないだろう。
私たちがこれから乗る船は、木製ではあるが頑丈でとても大きな船。それが河岸に幾つも停泊していた。いつの間にこんな船を用意していたのか、不思議で一杯だ。
後から気づいたのだが、この河は、先日、信長が城の天守閣から見ていた河だ。何かが起こるとすれば、この河だろう。
その時、乗船準備をしている私たちの下に、一人の男が合流した。
【織田信長】「長秀…。ご苦労であった…。」
【丹羽長秀】「ハッ!」
【織田信長】「どうだ、様子は…?」
【丹羽長秀】「はい…。どうやら信長様が正しかったと…。」
【織田信長】「そうか…。」
そう発すると、信長の顔がより一層険しくなった。それに気づいた藤吉郎が私たちに駆け寄ってきた。
【木下藤吉郎】「紗耶殿とそのご友人方、ご注意なされよ。」
【神宮寺紗耶】「えっ?」
【木下藤吉郎】「殿が一層険しい表情をなされた。これは、今から何か良からぬ事が起こるかもしれぬ前触れじゃ。乗船中や今も、周囲に警戒を決して怠るでないぞ。この深い霧の中、何が起こっても不思議ではないからな…。」
これを聞いて、私たちは一瞬にして緊張感を増した。“何かが起こる…”。この時、私は昨夜、若菜が言った言葉を思い出した。何か…、嫌な予感がする…。
【指宿健斗】「大丈夫か、紗耶?」
【神宮寺紗耶】「私は大丈夫よ…。」
【指宿健斗】「もし何かオマエの身に危険が迫ったら、何があっても真っ先に俺が助けに行ってやるからな!」
【神宮寺紗耶】「ありがとう、健斗…。」
【柴田勝家】「皆の者、聞けーッ!!」
その時、勝家が皆に聞こえるくらい大きな声で叫んだ。その声に、皆が一斉に勝家を見た。
【柴田勝家】「これから船で河を渡る。河を越えて山を過ぎれば浅井領だ。だが、油断は禁物だ! 見てとおり深い霧が出てきた。敵が攻めてくるならば、これが絶好の機会となるだろう。良いかーッ! 皆、心して用心するのだ!!」
全員が真剣な顔をして黙って聞いていた。その顔は、戦に出るときと似たような険しい表情だった。
乗船準備が整うと、私たち一行は全員、それぞれの船に別れて乗船した。私たち6人とお市さんが乗る船は同じだ。
6艘から10艘ある私たち織田軍の大きな船。先頭の船には藤吉郎や前田利家が乗船。中央の一番大きい船には織田信長。中央の船から少し離れた少々小さい船に私たちが乗っている。それから何艘もある更に後ろの船には柴田勝家が乗船している。もちろん、いずれの船にもその他の家臣や多くの兵士たちが乗船している。
【木下藤吉郎】「進めーッ!!」
藤吉郎の号令と共に、先頭の船からゆっくりと前に進みだした。
船はひたすら前進を続けているが、どこまで行っても深い霧は変わろうとしない。誰もが周囲に警戒していた。私たちも緊張感を増していた。
先頭の船の先端で、前方を何度も確認する藤吉郎。晴れていれば、いつも反対側の河岸が見えるのだが、こんなに深い霧に包まれたのは初めてだ。
【前田利家】「どうだ、サル?」
【木下藤吉郎】「“サル”って呼ぶな! そう呼んで良いのは殿とお市様だけじゃ!!」
【前田利家】「あ、そうなのか? それは、知らなかった。オマエがあまりにサルに似ているからな(笑)」
【木下藤吉郎】「悪かったな、サル顔で…(怒)」
【前田利家】「…で、どう思う、サル?」
【木下藤吉郎】「…ああ。」
【前田利家】(…って、返事しちゃっているじゃないか。)
【木下藤吉郎】「また、殿のあの顔じゃ。何かを感じ取っておるに違いない。殿にとっての災いは、ワシたちにとっても災いじゃ…。」
【前田利家】「ここ数日間、殿の様子はおかしかったものな…。」
【木下藤吉郎】「稲葉山で龍興に勝利した後からじゃった。毎日のように城の天守閣に登っては、この河を眺めておった…。」
【前田利家】「この河に、殿や俺達にとっての災いがある…。それは、間違いないようだな。」
【木下藤吉郎】「ああ…。」
【前田利家】「しかし…。こう霧が深くっちゃなぁ~…。俺達は呪われているのか?」
藤吉郎は、再び船の前方に視線を戻した。しばらくして、その視線の先に何かぼんやりと黒い影が少し見えた。最初は、反対側の河岸かと思ったが、どうやら様子が違う。
【木下藤吉郎】「おい、アレは何だ?」
【前田利家】「えっ?」
藤吉郎に言われ、すぐさま利家は藤吉郎が見ている方角を見た。何か黒い影が、深い霧の向こうから少しずつ姿を現し続けている。その黒い影は、それに近づくにつれて少しずつ大きく見えるし、また少し近づいたら、1つだけかと思った黒い影が幾つも現れた。ここまで来ると、2人は何かをハッキリと感じ取った。
【木下藤吉郎】「敵襲ーッ!!」
と、とてつもなく大きな声で叫び、傍にあった鐘を何度も鳴らして後ろの船に伝えた。それは、すぐに後ろの全ての船に伝わった。私たちの緊張感も最高潮になった。
前方の黒い幾つもの影が、やっと肉眼で確認できる位置まで来た。
黒い影に見えたそれは、反対側の河岸ではなく、黒く塗られた私たちと同じ大きさくらいの船団だった。その船団の先端には、あの男の姿があった。
【斉藤龍興】「着たか、信長…。待っておったぞ…。」
【織田信長】「龍興…。」
龍興の後ろの幾つもの船団には、以前の稲葉山城の戦いよりも倍以上に多い兵士たちの姿があった。
こうして、私たちは船上で再び斉藤龍興の軍団と刃を交えることになる。
そして、この戦いこそが、私たちの本当の物語の幕開けだったのです…。
≪ 第9話、完 ≫
次回(第10話)、『戦国乙女~第1章~』ついに最終話…。
“アイツ”が姿を消す…!?
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※ 最終話の公開予定日は、2010年2月17日時点で未定となっています。公開予定日が決定次第、「活動報告」にてお知らせ致します。




