第7話 稲葉山城攻略戦<後編>【完成版】
※この作品は忠実を元にしたフィクションです。実在の人物、事件、団体名は一切関係ありません。
※この作品は、作者による独自の新しいスタイルを採用しています。読者の方によっては、読みにくい等の支障が出る場合がありますので予めご了承下さい。
※2009年8月末付で公開開始となった本作「第7話 稲葉山城攻略戦<後編>【未完成版】」は2009年11月18日付で公開終了しました。なお、この【完成版】には【未完成版】の内容が全て含まれた状態で公開しています。
どこか深い森の中、夏服の高校の制服を着た若干茶髪の少年が、大きな木の根本で仰向けに倒れていた。どうやら気を失っているようだ。
しばらくすると、木々の間から入ってくる僅かな太陽の光が少年の顔を照りつけた。
【足立祐輔】「・・・う、う〜ん・・・。」
祐輔は、その太陽の光で気がつき、ゆっくりと目を開けた。
なんだか眩しい。
そりゃそうだ。太陽の光を直接見ているのだから。
それに気づいた祐輔はすぐに太陽の光から眼をそらして体を起こし、初めて周囲を見た。
四方八方が深い森で囲まれている。どちらが北か南なのかも分からない。
【足立祐輔】「・・・あ、あれ? 俺、何でこんな場所にいるんだ? ・・・って言うか、ココ、どこ!?」
祐輔は、必死に自分の中にある記憶を辿った。
【足立祐輔】「・・・確か、俺は神宮寺紗耶の家の蔵の中にいたはず・・・。」
でも、どう見ても周りは深い森だ。
【足立祐輔】「そんでもって、不思議な巻物を見つけて中を見た途端に大きな白い光に皆が包まれて・・・。・・・って、皆は!?」
祐輔は立ち上がって、再び周囲を見た。先程は地面に腰を下ろしたまま周囲を見ていたが、今度は立ち上がったので視点が高くなり周囲がよく見えるになった。
すると、すぐ近くの木の陰の根本に誰かの両足が見えた。どうやら誰かが倒れているようだ。祐輔はそれを確認しようと傍に駆け寄った。
【足立祐輔】「・・・藍? 藍じゃないか!」
目を閉じて倒れていたのは、祐輔と同じクラスに所属する森下藍だった。祐輔は、すぐに藍を抱きかかえて呼びかけた。
【足立祐輔】「おい! 藍、しっかりしろ! 藍! 藍!」
だが、藍は目を開けようとはしない。脈はあるから死んではいない。どうやら気を失っているようだ。
【足立祐輔】「藍、起きろ! 藍ってば!」
藍の体を軽く揺すっても、なかなか目を開けない。
【足立祐輔】「クソッ! 何で起きない!? ・・・ん?」
祐輔は、藍の顔に目をやった。
藍は、まるで意地悪な魔女によって深い眠りに陥った白雪姫のような顔で眠っている。それが何とも美しかった。もともと藍は学校で1、2を争う美少女だ。素顔も可愛いく、寝顔まで可愛いときた。それは、祐輔の心を大きく揺さぶった。
【足立祐輔】「藍の寝顔って、こんなに可愛かったんだ・・・。もしかして、藍の寝顔を見たのって、俺が初めてかも!?」
祐輔の本能は、いつまでも藍の寝顔を真横で眺めていたかった。
【足立祐輔】「・・・って、いかん、いかん! 本能に負けるな、俺! 藍を起こさなきゃ前に進めないだろ。・・・でも、どうやって藍を起こす!?」
藍の顔の頬を手で軽く叩くか?
いや、そんな事をしたら、藍本人や学校中の奴らに知られたら何言われるか分からない。
大量の目覚まし時計を使って目を覚まさせるか?
いや、そんなこと無理だ。そもそも、目覚まし時計を1つも持っていない。
誰か助けを呼びに行くか?
いや、どこだか分からない場所を地図も無しに彷徨うなんて自殺行為だ。叫んだとしても、誰も気づかないだろう。
だったら、どうする!? どうやって、この白雪姫を起こす!?
【足立祐輔】(・・・白雪姫?)
その時、祐輔はハッとした。
【足立祐輔】「・・・確か、深い眠りについた白雪姫を起こす方法って、王子様とキ、キ、キスだったよな?」
祐輔は、再び藍の顔を見た。そして、更に藍の唇を見た。その瞬間、祐輔の心がドキッとした。
【足立祐輔】「・・・も、もしかしたら、キスすれば目を覚ますかもしれない!」
またまた、祐輔は藍の唇をジッと見る。その瞬間も、祐輔の心はドキドキしている。
【足立祐輔】「い、いや、ダメだ! そんなお伽話、現実にあるワケがない!! キスなんか、絶対にダメだ! 普通に起こせば良いじゃないか! ・・・って、さっきから何をやっているんだ俺は!?」
またもや、祐輔は藍を見た。
【足立祐輔】「・・・何をやっているんだ、俺! こんなチャンスはもう2度とないぞ! やるなら今しかない!」
祐輔は、誘惑にあっさり負けた。
意を決した祐輔は、ゆっくりと己の唇を藍の唇に少しずつ近づけた。お互いの距離が10センチまでに近づいた時だった。
【森下藍】「う、う〜ん・・・。」
【足立祐輔】「いっ!?(お、起きちゃった・・・。キ、キスする前に・・・。)」
今にもキスしようとした瞬間に、藍が目を開けたのだ。そして、今、目の前にある現状を困惑しながらも理解しようとした。つい先程までドキドキしていた祐輔だが、藍が目を覚ました途端、全く違う意味のドキドキ感に変わった。
【森下藍】「・・・・・。」
【足立祐輔】「あ〜・・・、あ、藍。お、オマエの言いたい事は分かる。実に尤もだ。しかし、少しは俺の話を聞いてくれ。」
だが、藍は全く聞く耳を持たず、瞬時にトマトのように顔を真っ赤な泣き顔になった。
【森下藍】「きゃああああああ〜・・・ッ!!!!!!!!!」
【足立祐輔】「ゲフッ!!!!???」
深い森の中に、か弱き少女の悲鳴と、少女が拳で殴った音、そして殴られた男のやられ声が続けて響いた。
・・・ご愁傷様。
【森下藍】「ホント、ゴメンなさいッ!!」
【足立祐輔】「・・・・・(怒)」
しばらくして、藍は顔をタコ殴りにされた祐輔に向かって平謝りしていた。タコ殴りにされて出来たキズ口には、藍が所持していた絆創膏が幾つか貼られていた。コレは全て藍が貼り付けたものだ。
【足立祐輔】「・・・まったく、せっかく俺が起こしてやろうと思ったのに、コレ(タコ殴り)は無いぜ。」
【森下藍】「ゴメンなさいッ! 急に目の前に祐ちゃんの顔があったから、つ、つい・・・。」
【足立祐輔】「ふぅ〜ん・・・、“つい”でタコ殴りしちゃうんだぁ〜・・・。藍ちゃんって可愛い顔して凄い事をやるねぇ〜・・・。」
【森下藍】「・・・で、でも、よくよく考えたら、無防備な私にキスしようとしていたんだから、コレって正当防衛じゃないのかしら?」
【足立祐輔】「!(ドキッ)」
【森下藍】「・・・ゆ、祐ちゃん?」
【足立祐輔】「あ〜、タコ殴りされたキズ口が痛いなぁ〜!(ヤケクソ)」
【森下藍】「ゴメンなさいッ!」
結局、平謝りする藍だった。
【森下藍】「・・・ところで、ココはいったいどこなの?」
【足立祐輔】「さあな。見たとおり、周囲は深い森で囲まれている。それだけさ。」
【森下藍】「他の皆は?」
祐輔は、首を左右に振って答えた。
【足立祐輔】「あの不思議な巻物を見た時から、おかしくなったんだ。俺も気がついたら、この森の中にいた。」
【森下藍】「どうするの・・・、これから?」
【足立祐輔】「ココにずっといても仕方ない。動くしかないだろ。動けば、きっと委員長や広沢先生達にも会えるハズだし、この森からも出られるハズだ。」
【森下藍】「動くって言っても、どっちに向かって動けば良いの? 右も左も分からないのに、動くとかえって危険じゃない?」
【足立祐輔】「じゃあ、オマエはココで野宿するか? 今度は、どうなっても俺は責任を取らないぞ。」
藍は、先程の祐輔の思わぬ行動を思い出した。アレは未然に防げたから良いが、今度は分からない。しばらく考えた後、藍は力強く首を左右に振った。
【森下藍】「わ、分かったわ。行きましょう。」
【足立祐輔】「ああ。」
一方、コチラは稲葉山城付近。戦国武将の織田信長が率いる織田軍は、織田信長ら多数の武将達が率いる“主力部隊”と、後に豊臣秀吉となる木下藤吉郎と平成の時代から戦国時代に突如迷い込んだ女子高生の私(神宮寺紗耶)など少数の部隊で編成された“奇襲部隊”の二手に別れて、城の天守閣で待ち受ける斎藤軍の総大将である斎藤龍興の首を狙って行動を開始した。
まず“主力部隊”が稲葉山城の正門から突入し城内に侵入。“奇襲部隊”が正門から突入する頃を見計らって、城の裏から城内に奇襲攻撃を掛けるという織田信長による直伝の作戦である。
【明智光秀】「どうしました、紗耶さん。不安そうな顔をしていますね。」
不安な顔をしている私を、白馬に乗った光秀が横から声を掛けた。
【神宮寺紗耶】「え、ええ・・・。私にとって初の戦だし、しかも正真正銘の本物・・・。不安や心配にならないほうが変よ。そういう光秀さんはどうなの? 不安じゃないの?」
【明智光秀】「いいえ、全然。」
【神宮寺紗耶】「なぜ?」
【明智光秀】「あの御方・・・、信長様が考えたこの策を信じているからですよ。信長様の策ならば、絶対に負けはしません。」
【神宮寺紗耶】「・・・・・。」
【明智光秀】「大丈夫ですよ、紗耶さん。イザとなったら、藤吉郎が助けてくれます。ですよね、藤吉郎?」
と、光秀さんは私の前で馬に乗って前に進んでいる藤吉郎に向かって言った。
【木下藤吉郎】「ええ! 出来る限りワシが応戦するんで、安心じゃよ。それに、もしも紗耶殿にキズ1つでも付けられたら、ワシが光秀殿に鬼のように怒られるんでな!」
【神宮寺紗耶】「え? 何で?」
【木下藤吉郎】「あれ、知らぬで御座るか? それは、光秀殿が・・・。」
【明智光秀】「そこから先は言うな、藤吉郎!」
【神宮寺紗耶】「?」
この時、私はなぜ光秀さんが突然怒ったような顔をしたのか分からなかった。
進軍を続ける織田軍は、“主力部隊”と“奇襲部隊”の二手に別れる分岐点にやって来た。ここからお互い別行動を取ることになる。光秀さんは“主力部隊”の一員なので、ここでしばらくお別れだ。
【明智光秀】「それでは藤吉郎、後は頼みましたよ?」
【木下藤吉郎】「承知!」
と、藤吉郎はガッツポーズをして答えた。
【明智光秀】「紗耶さん。」
【神宮寺紗耶】「なに?」
【明智光秀】「忘れ物です。」
そう言って、光秀さんは私に鞘に収められた刀を1本差し出した。私は、それを受け取り、鞘から刀を抜き取った。キズ1つない凄く綺麗な刃だ。
【明智光秀】「その刀は、織田軍で一番の刀鍛冶に作らせた、この世に1つだけのもの。それは、もう貴女のものです。その刀が貴女の命を守ってくれるでしょう。」
私は、刀を両手で構えると、そのまま一振りした。ヒュッと風を切る音がした。そして、カチンと刀を背中に身に付けた鞘に収めた。
【明智光秀】「良いですか? これは本物の戦です。相手も己の死を覚悟した上で容赦なく向かってきます。くれぐれも無理をなさらぬよう・・・。」
【神宮寺紗耶】「ええ、分かっているわ。・・・ありがとう、光秀さん。」
【明智光秀】「お気をつけて・・・。天守閣で会いましょう。」
そう言って、光秀は私に背を向けて主力部隊の群の中に消えていった。私は、なぜか悲しそうな表情でそれを見送った。
【木下藤吉郎】「さあ、紗耶殿。参りますよ。」
【神宮寺紗耶】「・・・はい。」
私はキリッと身を引き締めた。
織田軍が稲葉山城の城門前まで進軍している時、城主の斉藤龍興は家来に用意させた鎧兜を身につけて城内の一室にいた。
敵である織田軍が進軍してくるとあって、城内はいつもより慌ただしかった。龍興がいる部屋にも何処か落ち着きがない武将らが何人かいたが、龍興だけは意外にも冷静だった。
龍興の前には、稲葉山城周辺の地図が記された模造紙のような大きくて古い和紙があり、その地図の上には凸の形をした黒と赤の駒が数個ずつあり、それぞれの色で固まって置かれていた。
この地図と色の異なった数個の駒は、いわば現在の戦況を表すもの。自軍と敵軍の武将達の現在位置や誰と誰が戦っているのかを物見などからの情報を把握し、それにより策を実行したりするなど便利なモノなのだ。
自軍である斉藤軍は黒の駒であり、地図上での城内敷地内全てに黒駒が沢山置かれており、その中の1つの駒が他の黒駒より少し大きい黒駒が城の天守閣部分に置かれ、それは総大将である斉藤龍興を表していた。また、赤い駒は敵軍である織田信長軍を表し、それらは稲葉山城の城門付近に集中して置かれていた。
斉藤軍の武将らはその戦況を見ながら武将同士で策を色々と議論していた。龍興は真剣な顔をして両目を閉じ、家来達の議論を黙って聞いていた。
【斉藤龍興】「一鉄、信長の様子はどうじゃ?」
【稲葉一鉄】「はい。報告によりますれば、織田は城の正面から進軍してくる模様とのこと。」
安藤守就、氏家卜全、そして稲葉一鉄は斉藤家に仕え、“美濃三人衆”と呼ばれ、長年続く織田家との戦いで織田家にとって脅威的な存在である。
【斉藤龍興】「敵の兵力は?」
【安藤守就】「我が兵力の半数にも及ばないようです。」
【氏家卜全】「殿、今が織田を潰すまたとない好機! ご命令を!」
3人の発言を聞いて、龍興はフッと鼻で笑った後、強い口調で言った。
【斉藤龍興】「城門付近に我が兵を配置、織田を一人たりとも城内に入れるな! 全員殺せーッ!」
その場にいた家来達は、龍興の命令を聞いた後、「オーッ!」と力強い声をあげて部屋を出ていった。氏家と稲葉が部屋を出ていこうとした時、龍興に突然呼び止められた。
【稲葉一鉄】「殿、お呼びで御座いましょうか?」
【斉藤龍興】「オマエら、ちと耳を貸せ。」
そう言って、龍興は2人の耳元で何やら小声で指示を出した。それを聞いた2人はニヤッと笑みを浮かべると、「承知しました」と言って部屋を出ていった。
龍興も、ニヤッとしながらギュッと拳を力強く握りしめた。
【神宮寺紗耶】「えっ? この戦い、10年も続いていたんですか?」
と、私は隣にいた奇襲ポイント近くの木陰から隠れながら奇襲のタイミングを見計らっている木下藤吉郎さんに聞いた。
【木下藤吉郎】「お主、そんな事も知らぬのか?」
【神宮寺紗耶】(当たり前でしょ、この時代の人間じゃないんだし・・・。)
【木下藤吉郎】「この稲葉山城は、信長様の妻であられる帰蝶(別名:濃姫)様の父で“美濃のマムシ”と怖れられた斎藤道三の難攻不落の名城じゃ。信長様の父である信秀様は、これまで何度も斎藤道三に戦いを挑んだのじゃが、手痛い敗北ばかりなされておった。お2人の対立は、信長様と帰蝶様の縁組みでとりあえず解消されようにも見えた。じゃが、ある事件が起こって再発したんじゃ。」
【神宮寺紗耶】「ある事件?」
【木下藤吉郎】「道三殿の息子で龍興殿の父にあたる斎藤義龍殿の裏切りにあい敗死したのじゃ。」
【神宮寺紗耶】「裏切り・・・。」
藤吉郎さんは、道三が没前に遺言書を残しており、それには婿の信長の器量をみこんで、“美濃を譲る”と遺言書に明記されていたと言う。つまり、それが信長が美濃に攻め入る名文(理由)ともなったワケだ。
藤吉郎さんは、真剣な顔つきをして私に言った。
【木下藤吉郎】「良いか、紗耶殿。信長様は、この戦いで龍興殿と決着を付けるつもりでいる。信長様の天下統一や民のためにも、この戦いは何としてでも勝たなければならん。紗耶殿に重圧を付けるつもりはないのじゃが、皆のためにも分かってくれ。」
それを聞いて、私は緊張したような顔でツバを飲んだ。
【神宮寺紗耶】「それにしても、ずいぶん詳しいんですね。」
【木下藤吉郎】「当たり前じゃ! ワシは信長様のお側で仕える身、このくらいの事は知っておかなければならん!」
【神宮寺紗耶】「あの・・・、藤吉郎さんって、おいくつなんですか?」
【木下藤吉郎】「ワシか? ワシは17になる。」
【神宮寺紗耶】「17って事は、私と同い年か・・・。って、17ッ!?」
【木下藤吉郎】「何をそんなに驚いておるのじゃ?」
【神宮寺紗耶】「17で信長の下に仕えて、戦にも出ているの!?」
【木下藤吉郎】「お主こそ、(同い年なのに)こうして戦に出ているではないか。何も驚くことではないぞ。」
【神宮寺紗耶】「あ・・・。」
【木下藤吉郎】(この者、もしかして頭が少し鈍いのじゃろか? 柴田勝家殿とあんなに互角に渡り合ったと言うのに・・・。)
【神宮寺紗耶】「どうして、信長の下へ?」
【木下藤吉郎】「ワシは貧しい農民の出じゃ。家族や他の仲間達そして国の民の為に、ワシは信長様に仕えたんじゃ。・・・ワシには分かる。あの方なら、きっとそれが出来る、と。」
どうやら、藤吉郎さんは信長を絶大に信頼しているようだ。まさか、豊臣秀吉となって国を治める事になろうとは、この時の藤吉郎さんは思わなかったに違いない。
信長への絶大な信頼・・・。それは、藤吉郎さんだけではなく他の武将や家来の人々だって同じだ。もちろん、光秀さんも。彼らは、信長に大きな期待と信頼を寄せている。信長ならば、きっと世界を変えられるのではないか、って・・・。そう思うと、信長って大変な人なんだな、って思う。信長は気難しいイメージがあるけれど、何だか少し・・・見直した。
その時、遠くでホラ貝を吹く音が聞こえた。
【木下藤吉郎】「(戦が)始まったぞ!」
私は、一層、気を引き締めた。
【前田利家】「門を開けよ。突入だ!」
信長の配下である武将の前田利家の先陣部隊が、利家の掛け声と共に稲葉山城の開門を始めた。
まず部隊の兵らが数人、城を取り囲む高い塀を縄などを使って駆け上った。塀に登った兵士らは、城内の様子を目にしようとした瞬間、敵の弓攻撃で一斉に倒れた。
【前田利家】「やっぱり、待ち伏せしておったか! 構わん、続けろ!」 次の瞬間、森の中から、身を潜めていた斎藤軍(敵)の兵士らが一斉に前田利家らに向かって攻撃を仕掛けてきた。
【前田利家】「チッ、伏兵か!」
馬に騎乗していた利家は自分の鞘から抜刀し、向かってくる敵兵らに応戦した。その間にも、利家の兵士らがタイミングを見計らって、塀を乗り越えようとする。しかし、またしても城内にいる敵の弓攻撃に遭い、次々と倒れていく。これではキリがない。
一方、その城門付近で待ちかまえているのは、斎藤軍の武将で“美濃三人衆”の1人、安藤守就が率いる部隊だ。安藤は、主に弓攻撃を得意としている。塀から城内に入ろうとする織田軍の兵士を、外すことなく1人残らず己の弓で倒していく。
【安藤守就】「織田を何人たりとも城内に入れるな! 殿と美濃国を守れ!」
【前田利家】「クソッ・・・! このままじゃ城内に入れないぜ!」
と、そんな時だった。
白馬に乗った1人の武将が利家の傍まで勢い良く駆け上がってきて、そのまま高い塀を馬ごと飛び越えていった。そして、彼は着地も馬に乗ったまま、華麗に成功した。彼は、一瞬怯んでいる安藤に向かって鋭い目つきで睨みつけた。
【安藤守就】「あ、明智光秀!」
【前田利家】「おいしい所を持っていきやがったぜ、まったく・・・。」
光秀は、騎乗したまま抜刀し、次々と敵の弓兵を倒していった。
【安藤守就】「単身突破させるかッ! これでも、くらえ!」
安藤は、自分の弓を光秀に向かって連射した。光秀は、それを自分の剣を使って次々と避けていった。 すると、安藤が放った数発の弓矢が、今度は正面から光秀に向かって飛んできた。光秀は、それを背面ジャンプで避けて、そのまま地面に着地した。次の瞬間、光秀の目の前に2本の短剣を両手に隠し持っていた安藤が飛び込んできて、その短剣で攻撃を仕掛けてきた。光秀も瞬時に刀で応戦する。さすがは、美濃三人衆の1人。攻撃が他の兵らよりも桁違いに全然違う。一瞬の隙が命取りになるくらいだ。
2人はお互いに刀と剣で攻撃を続け、しばらくして鍔迫り合い(打ち合わせた刀を鍔もとで受け止めたまま互いに押し合うこと)になった。
【安藤守就】「クッ!」
2人とも、鍔迫り合いをしたまま、お互いを睨みつけている。刀と刀の押し合いで、両者の刀がギリギリと音がしている。
しばらく鍔迫り合いが続いたが、少しずつ安藤が光秀を押すようになった。
【安藤守就】「これで終わりだ、光秀ッ!」
【明智光秀】「・・・!」
その時、閉ざされていた門がドーンと言う大きな音が数回響き、ついに頑丈な門が倒れた。それを2人は鍔迫り合いをしたまま横目で見た。
倒れた門の先に立っていたのは、織田家の武将の1人である柴田勝家だ。どうやら、体のでかい柴田がなんと体当たりで頑丈な門をぶち破ったらしい。
【柴田勝家】「光秀! 無事か!?」
柴田の大きな声に、光秀は内心ホッとした。
【明智光秀】「遅いですよ、勝家。」
倒れた門の前で仁王立ちをしている横から、次々と織田の兵士が城内に突撃した。
【安藤守就】「おのれ・・・。織田の犬どもが!」
悔しながらも、安藤は更に力を増し、光秀の刀を押し続ける。それを見た柴田が、自分の武器である大きな槍を持って、安藤を横から突きつけた。その瞬間、安藤が柴田の攻撃を避けたと同時に、安藤と光秀の鍔迫り合いが終わった。光秀は力負けしたのか、ガクリと地面に片足をつけた。その前を柴田が立った。
柴田は、光秀に背を向けた状態のままで安藤を睨みつけながら言った。
【柴田勝家】「光秀、ここは俺に任せて先へ行け。」
【明智光秀】「し、しかし・・・。」
【柴田勝家】「城内であの娘と合流するのだろ? オマエが行かなくて誰が行くんだ! 立て、行け、光秀!」
あの娘とは、神宮寺紗耶の事だ。出撃前に、光秀は紗耶と約束した。稲葉山城内で会おう、と。光秀は、それを思い出した。その瞬間、息切れをしていた光秀は深呼吸をしてから立ち上がった。
【明智光秀】「・・・分かりました、勝家。この恩、必ず!」
【柴田勝家】「俺様の礼は高くつくぜ。あの娘にも、そう伝えておいてくれ。」
そう言って、柴田は光秀に背を向けた状態のまま、少し光秀の方を見てニッと笑った。
【明智光秀】「ええ、伝えておきます! 勝家、お気を付けて。」
【柴田勝家】「俺様を誰だと思っているんだ? 俺は、織田で一番の剣の腕前を持つ男だぜ?」
それを聞いて、光秀はフッと笑った。
【明智光秀】「後は頼みましたよ!」
【柴田勝家】「おう! 安藤を倒したら、俺様も合流する!」
光秀は、前田利家や主力部隊と合流して、出てくる敵兵を倒しながら進んでいった。それを柴田は目で見送ると、安藤に再度睨みつけて怒号をあげた。
【柴田勝家】「おうおう! 今度はこの俺様、柴田勝家が相手だッ!」
安藤も真剣な顔つきで、柴田に飛びかかった。
【森下藍】「・・・い!・・・生! 先生、起きて!」
【広沢美咲】「・・・ん?」
広沢美咲は、ゆっくりと目を開けた。目の前には、美咲の生徒である森下藍と足立祐輔の姿があった。
【森下藍】「あ、先生、気がついたんですね! 良かった・・・。」
【足立祐輔】「やっと気がついたか。」
【広沢美咲】「森下・・・さん? 足立・・・君?」
美咲が2人の顔を見た時、突然、顔の頬に痛みを感じた。美咲は、思わず虫歯になったかのように手で頬を押さえた。
【森下藍】「あ・・・、先生、ゴメンなさい!」
【広沢美咲】「・・・え?」
なぜ森下が突然謝ったのか、美咲には分からなかった。
【広沢美咲】「どうして・・・、森下さんが謝るの?」
【森下藍】「何度呼びかけても、先生、ちっとも気がつかなかったから、つい・・・。」
【広沢美咲】「つい?」
【足立祐輔】「起きるまで、頬を何度も手で叩いたんだ。痛かったぜ〜!」
そう言って、足立はズボンのポケットに突っ込んでいた、赤くなった両手を見せた。どうやら、足立が美咲の頬を何度も叩いたらしい。
【広沢美咲】「た、担任教師を生徒が叩くなんて、何事ですか!(怒)」
【足立祐輔】「だって、ちっとも起きないんだもん、先生。」
【広沢美咲】「違う方法で起こしてくれれば良かったじゃないのよ! 例えば、体を揺するとか・・・。」
【足立祐輔】「だ〜か〜ら、言っているだろ!? アンタちっとも起きかった、って!」
【森下藍】「私達だって、仮にも相手は担任教師だから叩くなんていう行為はしたくなかったんですが・・・、仕方なく・・・。」
反省している顔を見せる森下を見て、美咲はハァと息をついた。
【広沢美咲】「・・・まあ、今回は見逃すわ。気を失っていた私を必死になって起こしてくれたんだし。・・・2人とも、ありがとうね。」
【森下藍】「お、お礼なんて、そんな・・・。」
【足立祐輔】「お礼なら、今度の成績表の赤点をチャラにしてくれる、って言うんだったら良いぜ。」
【????】「調子に乗るな!」
【足立祐輔】「痛ッ!」
足立は、後ろから誰かにポカッと殴られた。
【広沢美咲】「楠山君!」
【楠山太陽】「先生、気がついたのですね?」
足立をポカッと殴ったのは、美咲のクラスの学級委員長である楠山太陽である。秀才タイプのしっかり者で、黒縁メガネがよく似合う。
【楠山太陽】「祐輔のヤツ、自分には最初から両手て頬を叩いて強引に起こしたみたいなんですよ。なのに、起こしたお礼として、来年も引き続き学級委員長を引き受けてくれる、と言う条件を提示してきて・・・。」
【足立祐輔】「だって、学級委員長なんてやりたくないし・・・。最初からオマエが引き受けてくれるんだったら、放課後に残って委員長の選出会議をしなくて良いんだし。」
【楠山太陽】「まったく、オマエってヤツは・・・。」
と、楠山は呆れたような顔をした。
【広沢美咲】「みんな、無事?」
【森下藍】「今ここにいるのは私達だけです、先生。」
【広沢美咲】「他の2人(指宿健斗と中村若菜)は?」
【楠山太陽】「分かりません・・・。」
【広沢美咲】「深い森の中にいるようだけれど、ココはどこなの? 何で私達はココにいるの?」
【足立祐輔】「一度に全部聞くなよなぁ〜。」
【森下藍】「私達、紗耶ちゃんの自宅の蔵にいて、巻物を見ていたら白い光に呑み込まれて、気がついたらココに・・・。」
【広沢美咲】「瞬間移動しちゃった、と・・・。」
【足立祐輔】「よく冷静に言えるよな、そんなこと。瞬間移動なんて、そんな非現実的な事を・・・。」
【楠山太陽】「だったら祐輔、説明してくれよ。つい先程まで紗耶の蔵にいた僕達が、どうしてこんな深い森の中に迷い込んでいるのかを。」
【足立祐輔】「みんな寝ぼけてココに来た、とか?」
【楠山太陽】「・・・・。」
【足立祐輔】「それじゃあ、コレは現実じゃなくて“夢”だとか?」
それを聞いて、楠山は足立の頬を手で力強く抓った。
【足立祐輔】「痛でででで・・・!!!!!」
【楠山太陽】「コレでも夢って言えるか?」
【足立祐輔】「痛ででで・・・。わ、分かったよ。分かったから、手を離してくれ!」
楠山は、パッと抓るのを止めた。
【足立祐輔】「もう! 力強く抓りすぎッ!!(怒)」
【楠山太陽】「・・・少しでもオマエに聞いた僕がバカだったよ。」
【森下藍】「ところで先生、これからどうするんですか?」
【広沢美咲】「どうする、って言われたって・・・。」
【楠山太陽】「今、この状況で頼れるのは先生しかいないんです。」
【足立祐輔】「そうだ、そうだ! だから、先生は24歳なのに未だに独身なんだ〜!」
【広沢美咲】「とりあえず、大きいガムテープ無いかしら? この子の口を塞ぎたいんだけれど(怒)」
と、美咲は祐輔を指さした。
【森下藍】「祐ちゃん。お願いだから、しばらく黙っていてね。」
藍はニッコリと優しい笑顔で祐輔にそう言ったが、祐輔はその笑顔の裏に怒った鬼のような顔が見えたので、ビックリして怯えながら黙り込んでしまった。
【足立祐輔】(・・・お、鬼!? お、怒らすと、おっかねぇ〜!!)
【森下藍】「先生、気にせず続けて下さい。」
【広沢美咲】「そ、そうね・・・。」
と、美咲はブルブル震えている祐輔を見て苦笑しながら言った。
【広沢美咲】「・・・ゴ、ゴホン! とにかく、この森から抜け出さないと。それから、もしかしたら道中に中村さんと指宿さんがいるかもしれないから、2人を捜しながら行きましょう。」
【楠山太陽】「とりあえず、どちらの方向へ進みます? 四方八方は深い森で囲まれているんですが・・・。」
【広沢美咲】「それはね・・・。」
そう言って、美咲は自分の人差し指をペロッと軽く舐めてから、空に向かって立てた。たぶん、それで風を感じて方向を定めるつもりなのだろう。
【広沢美咲】「こっちへ行きましょう!」
と、力強く言った。それを見ていた3人は、美咲が何だか頼りになるように見えた。
【森下藍】「先生、分かるんですか?」
【広沢美咲】「分かるわけないでしょ。勘よ、勘!」
【森下藍&楠山太陽&楠山太陽】「え?」
【広沢美咲】「さあ、行きましょう! 急がないと日が暮れちゃうわ!」
美咲は元気よく前に向かって歩き出したが、他の3人はハァ〜とため息をつきながらトボトボと美咲の後を歩き始めた。
【足立祐輔】「前途多難だ、こりゃ・・・。」
【木下藤吉郎】「さて、そろそろワシらも動き出そうかの〜。」
そう言って、藤吉郎さんは腰を上げた。そして、数十人の兵士らも立ち上がり、己の鞘から刀を取り出した。
少し遠くの方で、男達の大きな声が聞こえる。今、あの声の下に、光秀さん達が主力部隊として斎藤軍を引きつけて戦っているのだ。その声につられて、稲葉山城内にいる斎藤軍の兵士らが続々と出てきて、その場所に向かっている。
奇襲部隊である私達は、城の裏側に位置する深い森の中に隠れて身を潜めているが、どうやら斎藤軍の兵士らは誰も私達に気がついていないようだ。今なら絶好の機会である。
【木下藤吉郎】「紗耶殿・・・、行くぞ!」
【神宮寺紗耶】「うん!」
私達の部隊は、今にも斎藤軍兵士らに向かって奇襲を掛けようとしたその時だった。
【兵士ら】「う、うわあああああ!」
【木下藤吉郎&神宮寺紗耶】「!?」
突然、私達の背後にいる兵士達の叫び声がした。見ると、次々と私達の兵士らが倒れていくのが分かる。そして、その奥には数十名の斎藤軍兵士らがいた。
【氏家卜全】「オマエ達の策、破れたりッ!」
その声と共に、氏家が真っ先に私と光秀さんに、手にしていた刀を使って飛びかかってきた。それを私達は瞬時に刀で受け止めて氏家を押し返した。
【木下藤吉郎】「なぜお主が!?」
【神宮寺紗耶】「誰なの?」
すると、相手はフッと鼻で笑った。
【氏家卜全】「・・・失礼。そちらの奇妙な衣を身にまとった娘はお初目ですな。ワシは、龍興様をお守りする“美濃三人衆”の1人、氏家卜全と申す! 龍興様の命によりお主達の命、頂戴致す! 覚悟ッ!!」
氏家は再び私達に攻撃を仕掛けてきた。私達も負けずと攻撃を回避したり、逆に相手に攻撃を仕掛けた。
私が刀で氏家に向かって突き、それを氏家が瞬時に避ける。その瞬間を狙って藤吉郎さんが攻撃をするが、それさえも容易に避ける。
さすが“美濃三人衆”の1人だ。なかなか手強い。
それもそのはず、私達は2人一緒になって戦っているのに、相手は1人で立ち向かっているのだ。1人で2人を相手に出来るほど力を持っているのだろう。
しばらく戦っていた後、私達と氏家との戦いに気づいたのか、斎藤軍の兵士らが背後から攻めてきた。私達の兵士らがそれらを相手にしているが、策が崩れた為に兵士らの士気は低く混乱も若干している。これでは私達が負けてしまう。
氏家の攻撃を私が避けた次の瞬間、氏家が私のお腹を力強く蹴り飛ばした。それにより、私は数メートルほど後ろに蹴り飛ばされ地面に倒れた。
【神宮寺紗耶】「うっ・・・!」
お腹を蹴られた私の全身に激しい痛みが襲った。
【木下藤吉郎】「紗耶殿!」
すぐに藤吉郎さんが私に駆け寄ってきた。
【木下藤吉郎】「大丈夫か!?」
あまりの痛さに、私は声が出なかった。
【木下藤吉郎】「くっ・・・!」
【氏家卜全】「ワシは例え女であろうと容赦はせん! やはり、お主達も信長もこの程度だな!」
【木下藤吉郎】「信長様を馬鹿にするな!」
そう言って、藤吉郎さんが氏家に飛びかかった。しかし、何度か刃を交えて、藤吉郎さんも氏家の蹴りが顔に直撃して、そのまま地面に片膝をつけて倒れた。
気がつくと、周囲はすっかり敵の兵士らに取り囲まれていた。私達の兵士らは数えられるほどしか残っていない。
【氏家卜全】「・・・どうやら、ここまでのようだな。」
【神宮寺紗耶】「藤吉郎さん!」
と、私はお腹を片手で抑えながら自ら立ち上がろうとしたが、敵の兵士らに槍の刃先を突きつけられて立つことができなかった。
【木下藤吉郎】「・・・す、すまぬッ、紗耶殿!」
【神宮寺紗耶】「そ、そんな・・・。」
氏家は私の前に立ち、刀を構えた。
一瞬、私は仮面の男を思い出した。あの時も、仮面の男に殺されかける直前だった。その時は鹿之助さんが間一髪の所で助けにきてくれたが、今度は助けてくれる人は誰もいないだろう。
やはり、私はココで不運にも命を落とす運命なのだ。
【氏家卜全】「覚悟ッ!」
次の瞬間、氏家は私の首に目掛けて刀を振り下ろした。
【神宮寺紗耶】「・・・ッ!」
思わず、私は両目を閉じた。
【神宮寺紗耶】「・・・・。・・・・。・・・?」
私は、恐る恐る自分の目をゆっくりと開けた。すると、目の前には驚くべき人物が私に背を向けて立っていた。
【神宮寺紗耶】「・・・の、信長?」
なんと、私の前に刀を手にした甲と鎧を身に付けた織田信長がいた。さらに信長は、氏家の刀を片手だけで持っていた己の刀で受け止め、そのまま氏家を力で押し返した。押し返された氏家は、そのままバランスを崩して片膝を地面に付けて倒れ込んだ。
【木下藤吉郎】「信長様!」
思わぬ人物の登場により、氏家や敵の兵らは一瞬ひるんだ。それをチャンスと見切った私と藤吉郎さんは、すぐに周囲にいた兵士らを反撃を開始して全員を倒した。そして、残るは氏家ただ1人となった。
【氏家卜全】「の、信長だと!? な、なぜ貴様がここに!?」
【織田信長】「消え失せよ、氏家。」
【氏家卜全】「く、クソッ!」
氏家は歯軋りをしながら立ち上がり、織田信長に攻撃を仕掛けた。しかし、信長は氏家の攻撃を素早い動きで簡単に避け、そして氏家の腹を片足で横蹴りした。よろめいた氏家はすぐに態勢を立て直そうとしたが、既に信長の刀の矛先が氏家の首に向けられていた。
【織田信長】「この信長に抗うなど無価値!」
【氏家卜全】「・・・クッ!」
観念したのか、氏家は刀を捨て、その場に崩れ落ちた。
私と藤吉郎さんの2人で戦っても苦戦した相手なのに、それをたった1人でいとも簡単に負かせてしまうとは・・・。やはり、信長は想像以上の強さを持っている。
【織田信長】「サル、この者を捕らえよ!」
【木下藤吉郎】「は、ハイッ!」
藤吉郎さんは、信長の兵らと一緒に氏家を捕まえた。それを横目で見ながら、信長は自分の刀を鞘に収めた。
まさに九死に一生だ。信長が助けに来てくれなければ、今、私はここにはいなかっただろう。
それにしても、主力部隊にいたはずの織田信長が、どうして奇襲部隊の私達のところにいるのだろう?
【氏家卜全】「の、信長・・・。なぜオマエがここに・・・?」
氏家も私と同じ疑問を持っていたようだ。
【木下藤吉郎】「なぜって、ワシらがいる部隊のほうが主力部隊じゃからだ。」
【神宮寺紗耶】「えっ? 主力部隊は光秀さん達がいるほうじゃ・・・。」
【木下藤吉郎】「それは敵を混乱させる為の策じゃ。実際は、ワシらが本当の主力部隊で、光秀殿達がいる部隊は、あくまで敵を引きつける前線部隊じゃ。」
つまり、こういう事だ。
城門から城内に攻め入る部隊“A”と、その反対側の裏から城内に攻める部隊“B”の2つの部隊があった。
“A”は兵や武将の数などの兵力が非常に多い構成に。“B”はその逆で、少人数で構成され兵力はかなり少ない。そして、信長はワザと“A”の部隊に総大将として紛れ込む。これを見た敵は当然、城門付近に多くの兵を並べて“A”の部隊を迎え撃つ。そして戦が始まったと同時に、信長は密かに“A”の部隊から離脱し、敵に気付かれないよう“B”の部隊と合流する。
こうすることで、いずれ敵は“A”の部隊に信長がいない事を知り、また“B”の部隊に突然信長が出現したので、両方を相手していた敵は一気に混乱する。これが勝機となって総攻撃が出来るのだ。
ちなみに、この作戦はこの戦いが始まる前から既に決まっていたようだ。
【神宮寺紗耶】「・・・って事は、藤吉郎さんは初めから(作戦を)知っていたワケ?」
【木下藤吉郎】「もっちろん! ワシは、こう見えても信長の右腕じゃ。知らぬワケがないじゃろう。」
と、自信満々にエッヘンとした顔を見せた。
【神宮寺紗耶】「それならそうと早く言ってよ! コッチは本当に死ぬかと思ったんだから~ッ!!」
と、半泣きしながら藤吉郎にポカポカ叩きながら怒った。
私だって、一応、信長軍なんだからね!
【織田信長】「・・・サル、いつからこの信長の右腕となった?」
それを聞いて、藤吉郎さんはドキッとした。
【木下藤吉郎】「えっ!? そ、それは・・・、その・・・。」
“信長の右腕”っていうのは自称、ってワケね・・・。
【氏家卜全】「フッ・・・。バカな奴らだ。こんな者達に負けるとはな・・・。」
【木下藤吉郎】「なに?」
【氏家卜全】「たかが小僧が俺を倒したくらいで喜びおって・・・。その喜びがいつまで続くかな?」
【織田信長】「・・・・。」
【氏家卜全】「我が主、斎藤龍興様を甘く見るなよ。あの方は我らとは違う。あの方ならば、貴様らなんぞ簡単に平伏せてくれるわ! 信長・・・、貴様の野望もここまでだ。」
【織田信長】「・・・うぬに何が見える?」
【氏家卜全】「は?」
次の瞬間、信長は手にしていた刀で、氏家の首を斬り落とした。
【神宮寺紗耶】「!」
私はビックリして、思わず両手で口を塞いでしまった。
氏家の首が体からゆっくりと地面に落ちた。そこから大量の血が火山が噴火したかのように飛び出ていた。
【織田信長】「我は信長ぞ! この信長に滅せぬ者など居らぬ!」
【木下藤吉郎】「信長様・・・。」
【織田信長】「・・・サル。」
【木下藤吉郎】「ハッ!」
【織田信長】「光秀らと合流する。向こうも片づいて居る頃だろう・・・。合流後、直ちに城内に突入。龍興を見つけ次第、倒せ。」
【木下藤吉郎】「承知!」
そのまま、藤吉郎さんは私を見て言った。私は、黙ったまま死んだ氏家を見ていた。
【木下藤吉郎】「紗耶殿、参るぞ。」
【神宮寺紗耶】「・・・・。」
【木下藤吉郎】「どうした、紗耶殿。顔色が悪いで御座るよ?」
【神宮寺紗耶】「だ、大丈夫・・・。ちょっと昔の事を思い出しちゃって・・・。」
昔のこと。それは、この時代に来てサスケと出会ったこと。そして、サスケが私の目の前で斬り殺されたこと。死んだ氏家の倒れた姿がサスケが殺された時と似ていたので、少し気分が悪くなったのだ。それに、まだ私は死体を間近で見るのが慣れていないのだ。
でも、この時代で生き抜いていく為には我慢して慣れるしかないのだ。
【織田信長】「・・・・。」
稲葉山城の天守閣。ここに斎藤軍総大将の斎藤龍興と、美濃三人衆の1人である稲葉一鉄がいた。敵の攻撃を防ぐ為なのか外へ出る扉や窓は全て閉じており、部屋の中は暗い。四隅に置かれた数本のロウソクの灯りだけで、かろうじて目の前が見える程度だ。
【斎藤龍興】「・・・そうか。氏家が信長に敗れたか。」
【稲葉一鉄】「はい・・・。」
【斎藤龍興】「氏家・・・。少しは使える物だと思ったのにな・・・。」
【稲葉一鉄】「・・・!」
【斎藤龍興】「それはそうと、安藤の方はどうなっておる?」
【稲葉一鉄】「報告によれば、城内から攻めてきた柴田勝家に立ち向かっているようです。」
【斎藤龍興】「ほう・・・。どれ、外に出て高みの見物でもするか。」
【稲葉一鉄】「・・・・。」
同じ頃、稲葉山城の中庭付近で、信長軍の柴田勝家と斎藤軍の安藤守就が戦っていた。2人とも互角の戦いをして勝敗がなかなか決まらない為、お互いが深い息切れをしていた。
【安藤守就】「・・・なかなか、やりおるではないか。」
【柴田勝家】「・・・お主もな。」
【安藤守就】「なぜ貴様は、そこまでして我と戦う?」
【柴田勝家】「・・・そう言うお主もなぜじゃ?」
2人は、しばらく黙り込んでしまった。2人とも同じ答えだったからだ。
それは、自分の主が望む天下を一緒に見るため。その為には、この戦いが絶対に負けられないのだ。
2人は深呼吸をして、それぞれの武器を構え直した。2人とも、次の一手で決着を付けるつもりだ。
柴田勝家の武器は大きな槍、対する安藤守就は小刀2本による2刀流、さらに背中には弓を背負っている。槍では少し離れた場所からでも敵に攻撃することが出来るが、1回ごとの隙が大きい。小刀2本では1つの動作が素早いが、敵の懐まで入り込まないと攻撃することは出来ない。逆に言えば、お互い共に、それぞれのもつ短所を上手く長所にもっていければ相手を打ち負かすことができる。
【柴田勝家】「行くぞ!」
【安藤守就】「来い!」
柴田が「ウォー!」と声を上げながら、安藤に目掛けて槍を縦に振った。それを安藤は横飛びで右に軽々と避け、そのまま小刀で柴田を攻撃した。柴田は、そのまま安藤の攻撃を槍で受け止めて相手を押した。安藤は間合いを取り、両手にそれぞれ持った小刀で再度攻撃を仕掛けた。相手の動きが予想以上に素早いので、柴田はなかなか反撃に転じることができない。柴田は相手に自分の懐に入らせないようにガードするのが精一杯だ。やっと隙を見つけて反撃しても、簡単に攻撃を避けられてしまう。
【柴田勝家】(・・・どうすれば良い? どうすれば、奴を倒すことが出来る?)
必死にガードしながらも、柴田は攻略法を考えた。
【柴田勝家】「・・・見切った!」
【安藤守就】「?」
次の瞬間、柴田は手にしていた槍を地面に手放した。それには、安藤も驚きだった。今の柴田に武器は無く、完全なる丸腰だったからだ。
【安藤守就】「どうした? 観念するのか? だが、もう遅いッ!」
安藤は問答無用で柴田の懐に飛び込んだ。
【安藤守就】「もらった!」
安藤は、そのまま柴田の腹を小刀で斬り刻もうとした。
その瞬間、バキッと鈍い音がした。
柴田が己の拳で安藤を勢い良く殴り飛ばしたのだ。
【安藤守就】「えっ?」
何が起こったのか分からないまま、安藤はそのまま中庭にあった物置の中にまで飛ばされた。圧倒的な拳の強さだ。
【柴田勝家】「武器は槍だけじゃねぇんだよ! 拳も立派な武器だぜ。」
柴田は、なかなか安藤に攻撃を当てることができなかった。どうすれば相手を倒せるか考えた末に導き出したのが、相手をワザと自分の懐まで潜り込ませて相手が攻撃を始める前に殴り飛ばす、と言うものだった。それが一瞬たりとも遅れれば自分に確実に大ダメージがくるというリスクが非常に大きいが、そのかわり成功すれば非常に効果がある。それを承知の上で、柴田は行動に移したのだ。
なかなか安藤が姿を見せない。もしかして、殴り飛ばされた衝撃で気絶でもさせたのだろうか。
そう思った柴田は、フゥ~と大きく深呼吸した。
と、次の瞬間、安藤が殴り飛ばされた物置から、小刀1本が飛んできて、それが柴田の右足に刺さった。柴田の右足に衝撃が走った。そして、刺さった右足を軸に、ガクリと片膝を地面に付けてしまった。
【柴田勝家】「・・・クッ。」
痛みを堪えながら、柴田は小刀が飛んできた方を見た。
【安藤守就】「・・・見事にやられたよ。まさか、自分から武器を捨てて、相手を懐に飛び込ませるなんてね・・・。」
そう言って、物置から口から血が出した安藤がよろめきながら姿を現した。
【安藤守就】「だが、忘れないでもらいたいね。小刀は2本あって、小刀を投げ飛ばして攻撃する方法もあるんだってことを・・・。」
柴田は、必死で痛みを堪えている。しかし、何だか意識が朦朧としてきた。安藤は柴田のすぐ傍まできて言った。
【安藤守就】「・・・苦しいかい? 貴様の足に刺さった小刀には少し毒を塗っておいた。意識が朦朧としていて動けないだろう? でも、今すぐ楽にしてやるよ。」
そう言って、安藤はもう片方の小刀を握りしめて、刃先を柴田の後ろ首筋に向けた。すぐにでも安藤は柴田の首を突き刺すつもりのようだ。柴田は朦朧としながらも、覚悟を決めた。
【安藤守就】「・・・覚悟を決めたか。・・・貴様ほどの者を殺してしまうのは惜しい。だが、これも運命。」
【柴田勝家】「・・・・。」
【安藤守就】「さらばだ、柴田勝家!」
そう言って、もの凄い勢いで、柴田の首を斬り落とそうとした。
その瞬間だった。どこからか1本の弓矢が飛んできて、安藤の右肩に命中した。
【安藤守就】「ぐあッ!」
【柴田勝家】「!?」
安藤は右肩に激しい痛みを感じて蹌踉めきながら、矢が飛んできたと思われる方角を見た。柴田も、その方角を見た。
見ると、城の裏手の森の方で、弓を構えた1人の少女が立っていた。その横には、木下藤吉郎ら織田軍本隊の姿もあった。
【神宮寺紗耶】「あっちゃ~。やっぱり右に逸れたわ~。」
【木下藤吉郎】「凄い! 凄い腕前で御座るよ、紗耶殿。」
【神宮寺紗耶】「そんな事ないですよ。私だって、これでも神社の巫女なんだから。もっと練習しないと・・・。」
【安藤守就&柴田勝家】「!」
なんと、安藤目掛けて弓を一発放ったのは紗耶だった。その姿を見た安藤は驚いて悔しみ、柴田は思わぬ助けが着た事で若干の希望が出てきた。そして、横で蹌踉めいている安藤に、渾身の力を使って槍を手にして、それを横に一振りした。
【安藤守就】「ぐっ!」
柴田の渾身の一撃は安藤の胸に斬り刻まれ、破れた服から真っ赤な血が流れ出た。
【柴田勝家】「・・・お主などには負けぬ。・・・俺様は、不死身の柴田勝家だッ!」
【安藤守就】「・・・柴田、・・・勝家!」
そう言って、安藤は大量の血を流したまま、その場にドサッと倒れて息絶えた。そして、柴田も力尽きたのか、その場に崩れ落ちた。それを見た紗耶と藤吉郎が周囲に敵がいないのを確認しながら、急いで柴田の元へ駆け付けた。
【木下藤吉郎】「勝家殿ーッ!」
【神宮寺紗耶】「勝家さん!」
【柴田勝家】「・・・藤吉郎、・・・来てくれたのか?」
【木下藤吉郎】「待っていろ、勝家殿。すぐに傷口の手当てをするで御座るからな!」
【柴田勝家】「・・・俺のことは・・・良い。」
【木下藤吉郎】「良いワケないじゃろ!」
【柴田勝家】「・・・良いから、さっさと行け。は、早く城内に行って、光秀と前田利家の手助けを・・・してやれ。」
【神宮寺紗耶】(光秀さんが・・・)
【柴田勝家】「・・・敵は予想以上に手強い。・・・きっと苦戦しているだろう。・・・だから、俺を置いて、早く助けに・・・!」
【木下藤吉郎】「じゃが、ワシはオマエを見捨てては行けぬ!」
【柴田勝家】「・・・お、俺の方は大丈夫だ。・・・俺様は不死身の男、・・・柴田勝家。こんなことでは・・・絶対に・・・死なぬ。」
だんだん柴田の声が小さくなっていく。それに併せて、藤吉郎も必死に柴田へ呼びかける。だが、柴田を襲う毒の勢いは止まらない。
【神宮寺紗耶】「勝家さん、しっかり!」
【柴田勝家】「・・・こ、小娘か?」
柴田は顔をフルフルと震わせながら、ゆっくりと紗耶の顔を見た。
【柴田勝家】「・・・小娘、・・・先程の矢、見事だった・・・。アレが無かったら、・・・さすがの俺様も・・・ダメだった。オマエに・・・大きな借りを・・・作らせてしまったな・・・、この俺様が・・・。」
そう言って、柴田は口を閉ざした。そして、柴田の両目もゆっくりと閉じた。
【木下藤吉郎】「勝家殿? ・・・おい、勝家殿?」
呼びかけても勝家は一切返答しない。
【木下藤吉郎】「おい、しっかりしろ、勝家殿! しっかりするんだ、勝家! 目を開けろ!」
【神宮寺紗耶】「返事して、勝家さん!」
何も言わない柴田を見て、2人は次第に泣き声になっていった。
【木下藤吉郎】「目を覚ませ、勝家! 起きるんだ、勝家!」
【神宮寺紗耶】「しっかり! 勝家さん!!」
だが、何度呼びかけても柴田は目も開けず、口も開かなかった。
【木下藤吉郎】「・・・くそ! クソッ、クソッ、クソッ!!」
藤吉郎は、悔しみながら何度も地面を手で叩きつけた。この時、紗耶はある出来事を再び思い出していた。紗耶がこの時代に来て初めて出会ったサスケ達である。紗耶にとって彼らは大事な人だった。だが、彼らは既にこの世にいない。紗耶は大事な人を失った。そして、今回も・・・。
紗耶は、今度は柴田との出来事を思い出した。織田の城の中庭で、初めて柴田と戦ったときの事などを・・・。それらを思い出す度に、紗耶は激しい憎しみを抱いた。
【神宮寺紗耶】「・・・藤吉郎さん、ここを頼みます。」
【木下藤吉郎】「承知、・・・って、えっ?」
紗耶は真剣な顔をして弓と刀を手にした。
【木下藤吉郎】「どこへ行くんじゃ、紗耶殿?」
【神宮寺紗耶】「仇を・・・討ちます。」
そう言って、紗耶は稲葉山城の入り口に単身走って向かって行った。藤吉郎が紗耶の行動を止めようとする声が聞こえるが、紗耶は耳を貸さなかった。
【木下藤吉郎】「・・・まったく。活発な女子じゃのぅ~。なあ、勝家殿?」
【柴田勝家】「・・・・。」
【斎藤龍興】「クソッ!」
斎藤軍総大将で稲葉山城の主である斎藤龍興は、悔しそうに拳で床を何度も強く叩いた。小太りのためか、拳を握る力は強い。悔しがる様子を稲葉一鉄は少し遠く離れた場所で座って見ていた。悔しがって暴れている龍興とは違い、稲葉はかなり落ち着いている。
【斎藤龍興】「織田軍め・・・。よくも・・・、よくも~ッ!!」
【稲葉一鉄】「・・・・・。」
【斎藤龍興】「一鉄、行け。オマエの強さ、アイツらに思い知らせてやれ!」
稲葉は、黙ってスッとその場に立ち上がった。
【斎藤龍興】「・・・一鉄。」
【稲葉一鉄】「・・・何でしょう?」
【斎藤龍興】「氏家も安藤も美濃3人衆の1人だと言うのに、まったく使えぬ“物”だった。・・・一鉄、オマエは違うよな?」
少し間をおいて、稲葉は龍興に向いて言った。
【稲葉一鉄】「お任せ下さい、殿・・・。必ず!」
【斎藤龍興】「期待しておるぞ。」
稲葉は龍興に一礼すると、黙ってスッと天守閣を出て行った。
【斎藤軍兵士】「グアッ!」
稲葉山城に単身突入した私(神宮寺紗耶)は、刀の柄の部分などを使って、次々と立ち向かってくる敵軍兵士を華麗に倒していった。
【斎藤軍兵士2】「な、なんなんだ、こ、この小娘は? ・・・グアッ!」
と、その兵士は、壁に叩き飛ばされて、床にドサッと倒れた。その兵士の胸ぐらを私はギュッと手で掴んで言った。
【神宮寺紗耶】「アナタの総大将はどこ?」
【斎藤軍兵士2】「・・・う、上だ・・・。て、天・・・守・・・閣・・・。」
そう言って、その兵士はガクリと気絶した。
天守閣・・・。
そこに行けば、先に突入した光秀さん達と合流できる。
急がなければ・・・。今ごろ、もしかしたら苦戦しているのかもしれない。
その時、廊下の奥から誰かが走ってくる音がした。もしかしたら、敵の兵士かもしれない。
その廊下は、少し先に進むと直角に左へ曲がっている。私はその角の壁際に背中をつけて身を潜めた。出会いがしらに先手をついて、相手を倒すつもりだ。
息を潜めて耳を澄ますと、走ってくる音はしないが、ゆっくりと気配を消して静かにジリジリと向かってくる音が聞こえた。
【神宮寺紗耶】(・・・気づかれた?)
どうやら、相手も廊下の向こうに誰かいる気配を感じ取り、警戒しながらゆっくりと進んでいるようだ。
私は、ギュッと刀の柄を握った。一瞬一秒の闘いだ。いつの間にか、私の心臓はドキドキと大きく鼓動していた。
相手は、すぐ傍までやって来ている。
私はタイミングを待った。きっと相手も同じ事をしているだろう。
私は足下を見た。すると、床に、相手の影がくっきりと映っていた。思ったよりも、それは小さい。もしかしたら、私と同じ若い人なのかもしれない。でも、敵かもしれない。
私は目を閉じながら、フ~っと小さく息を吐いた。
【神宮寺紗耶】(・・・今だ!)
私は、瞬時に角の向こうに向かって刀を大きく横に振った。
すると、ほぼ同時に、向こうからも刀が大きく縦に振られてきた。そして、私と相手の刀が縦と横でぶつかり合った。そのまま私は角を曲がり、相手に初めて私の姿を見せた。相手が誰なのかを見るつもりだ。
【神宮寺紗耶】「・・・!」
相手は、男だ。予想通り、意外と若い。私と同じくらいの年代で、私が通っている高校の制服を着ている。どこか見覚えのある顔だ。
【神宮寺紗耶&????】「・・・え?」
私と相手は刀越しにお互いの顔を見て、少しビックリしていた。そして、自分の目を疑った。
【神宮寺紗耶】「・・・け、健斗?」
【指宿健斗】「・・・さ、紗耶?」
【中村若菜】「・・・え、ウソ!?」
なんと相手は、私が通っている高校の同級生で幼なじみ、家も近所の、指宿健斗だった。健斗の背後には、同じく同級生で友人の中村若菜の姿もあった。
でも、この時の私はどこか変だった。2人を偽者だと思ったのだ。2人がこの戦国時代にいるハズがないからである。だから、私は2人の顔を見た瞬間、
【神宮寺紗耶】「きゃあああああ~ッ!!!!????」
と、城内に響くくらいの大声で悲鳴を上げてしまった。そして、私は健斗に向かって再度、刀を構えた。
【指宿健斗】「・・・って、なぜ俺に刀を向ける!?」
【中村若菜】「ちょ、ちょっと、紗耶、落ちついて!」
【指宿健斗】「そ、そうだ。落ちつけって!」
【神宮寺紗耶】「2人がココにいるワケない! これは、夢よ。・・・そう、夢! 夢なのよッ!!」
【指宿健斗】「夢なんかじゃない。現実だ! 俺たちは本物だ!」
【神宮寺紗耶】「・・・現実?」
私はハッとした。でも、まだ確信できなかった。だから、私は(念のために)2人の顔を手でペチペチと触った。
【指宿健斗】「何すんだ!?」
【神宮寺紗耶】「・・・ほ、本物?」
【指宿健斗】「当たり前だ! 立体映像にでも見えたか?」
【神宮寺紗耶】「で、でも・・・、何でココに?」
【中村若菜】「アナタと同じよ。私達は紗耶を助ける為に、あの奇妙な巻物を見たの。そして、気がついたら、この城の中に迷い込んでいたと言うワケ。」
奇妙な巻物・・・。私も、それを見たら、この時代に迷い込んでいたのだ。
【指宿健斗】「ところで、俺たちが本物だと分かったら、さっさと刀をしまってくれないか?」
【神宮寺紗耶】「あ、ゴメン・・・。」
私は、急いで自分の刀を鞘に収めた。
【中村若菜】「でも、元気そうで本当に良かった! 急に行方不明になるもんだから、みんな心配したんだから。」
【神宮寺紗耶】「ご、ゴメンね、心配かけて・・・。」
【中村若菜】「けれど、一番最初に“紗耶を探そう!”って言ったのは、実は健斗なんだよね。」
【神宮寺紗耶】「えっ?」
【中村若菜】「血相を変えて、四方八方を手当たり次第に探し回っていたわ。」
【指宿健斗】「う、うるせー。そんなこと・・・、言うな・・・。」
と、健斗が恥ずかしそうな顔をした。それを若菜がニヤニヤ顔で眺めていた。
【神宮寺紗耶】(健斗が、私を助けに来てくれた・・・。)
いつも私にお節介を掛けている幼なじみの健斗。あの健斗が今、こうして私の目の前にいる。
私は何だか無性に嬉しくなった。そして、思わず健斗を前から抱き締めた。
【指宿健斗】「・・・って、お、オイッ!」
【中村若菜】「お~、やるわねぇ~。」
【指宿健斗】「は、恥ずかしいから、や、止めろって! こ、この非常時に!?(※意味不明)」
健斗の顔は恥ずかしながらも、トマトのように赤面だ。
【神宮寺紗耶】「・・・ありがとう、健ちゃん。助けにきてくれて・・・。」
【指宿健斗】「お、おう・・・。ど、どういたしまして・・・。」
そして、そのまま私と健斗はしばらく黙って抱き合っていた。と言っても、抱きついているのは私だけだが。でも、健斗の胸は何だか懐かしく温かかった。先程までの憎しみも忘れてしまうくらい・・・。
【中村若菜】「・・・あのぉ~、熱々のところを非常に申し訳ないのですが、・・・もしかして私のことをお忘れですか?」
【神宮寺紗耶&指宿健斗】「いっ!?」
若菜のその一言で、私と健斗はパッと距離を取った。私と健斗は赤面だった。
【神宮寺紗耶】「わ、若菜! ご、誤解しないでね。こ、これは、あくまでも幼なじみの健斗が助けに来てくれたのが嬉しくて・・・。」
【中村若菜】「へぇ~・・・。苦しい言い訳だこと。みんなに言っちゃおうかなぁ~?」
【神宮寺紗耶】「も、もう、やめてよ~、若菜~!」
【指宿健斗】「・・・オ、オホン。・・・そ、それにしても、ココは一体どこなんだ? 時代劇の撮影か何かか? 向こうが俺たちに向かって襲い掛かってきたから、咄嗟に気絶させて倒したが・・・。」
【中村若菜】「あれ? 健斗は、あの巻物を見て“紗耶は戦国時代にいる”って言わなかったっけ?(※第6話参照)」
【指宿健斗】「あ、アレは、例えで言っただけだ。まさか、ここが本物の戦国時代なワケないだろ。」
【神宮寺紗耶】「あ、あのぉ~・・・。」
と、私は恐る恐る小さな声で言った。
【神宮寺紗耶】「・・・ココ、本物の戦国時代、なんだけれど・・・。」
【指宿健斗&中村若菜】「・・・えっ?」
健斗と若菜はお互いの顔を見て、しばらく黙っていた。そして、いきなり笑い出した。
【中村若菜】「アハハ・・・。ちょっと紗耶、ウソ言わないでよ~。」
【指宿健斗】「ココは、どこかの時代劇の撮影所なんだろ? この廊下も壁も天井も、全部セットなんだろ?」
【神宮寺紗耶】「違うんだってば~! 本当よ!」
【指宿健斗】「どっちだよッ!?」
【神宮寺紗耶】「ええ~と・・・、時代劇の撮影でもセットでもなくて・・・。で、でも本当なんだってば!」
【中村若菜】「ちょ、ちょっと意味分からないわよ。もう少し落ちついて説明してくれる?」
【神宮寺紗耶】「だから、ココは本物の戦国時代なんだってば!」
【指宿健斗】「ウソをつくな!」
【中村若菜】「ウソをついて、紗耶と健斗の抱きつきを誤魔化そうとしていない?」
【神宮寺紗耶】「ウソじゃないんだってば~ッ! 信じてよ~!!」
私が必死に説得しても、2人は全く信じてくれない。当たり前だ。現実的に考えれば、私の言っていることが明らかにウソに聞こえるもの。でも、どうしたら信じてくれるのだろう。
【????】「・・・紗耶さん?」
と、後ろから誰かに声を掛けられた。振り向いてみると、そこに銀の鎧を装着した明智光秀の姿があった。
【神宮寺紗耶】「光秀さん! 無事だったのね?」
【明智光秀】「え、ええ・・・。アナタも無事で何よりです。」
【指宿健斗】「・・・明智?」
【中村若菜】「・・・光秀?」
その時、私はパッと閃いた。明智光秀さんなら、2人を信じらせることができるかもしれない。
【指宿健斗】「も、もしかして、明智・・・光秀か?」
【神宮寺紗耶】「う、うん・・・。(やった! 効果あり!!)」
すると、健斗は「へぇ~」という顔をしながら、ジロジロと光秀さんの体を眺めていった。これで、信じてくれるハズ!
【指宿健斗】「へぇ~、歴史の教科書に出てくる明智光秀にソックリじゃん!」
【中村若菜】「また、よく似ている役者を見つけてきたものねぇ~。」
2人の言葉を聞いて、私はガクリと肩を落とした。もう、泣きたい・・・。
すると、突然、光秀さんが腰に身に付けた刀を抜いて、刃先を2人に向けた。
【明智光秀】「オマエたち、何者だ? ・・・まさか、斎藤軍の新手の手下か?」
【指宿健斗】「エエッ!? ちょ、ちょっと・・・!」
【明智光秀】「2人でか弱い小娘を攻撃しようなど、武士のすることではない!」
【指宿健斗】「ちょ、ちょっと待てってば! 俺らは斎藤軍じゃない、って!」
【中村若菜】「私だって、か弱い小娘よ~ッ! そ、それに、明智光秀になりきって演じるのは良いけれど、練習相手を間違えているんじゃないの~ッ!?」
【明智光秀】「黙りなさい、斎藤軍の手下め!」
【中村若菜】「だ、だから、違うって言っているでしょ!?」
光秀さんは、今にも2人を斬ってしまいそうだ。
【指宿健斗】「紗耶、ボーっと見ていないで早く助けてくれ~ッ!」
【明智光秀】「覚悟ッ!」
その時、光秀さんが刀で健斗を上から下へ縦に斬ろうとした。
私は、ハッとなって、大声で、
【神宮寺紗耶】「光秀さん、止めて!」
と、叫んだ。
その声を聞き、光秀さんはピタッと動きを止めた。光秀さんの刀の刃先が、健斗の目の前ギリギリで寸止めされていた。健斗は口を大きくポカーンと開けたまま目が仰天しており、若菜は目をビシッと閉じて身構えていた。
【神宮寺紗耶】「刀をしまって、光秀さん。」
【明智光秀】「なぜですか、紗耶さん?」
と、光秀さんは顔だけ私を向いて尋ねた。
【神宮寺紗耶】「その2人は敵じゃない。私の大切な友人よ。」
それを聞き、光秀さんはしばらく黙ってしまった。そして、ゆっくりと刀を引いて自分の鞘に収めた。健斗と若菜は、まだ固まったままだ。あまりの迫力に声と動作を失ってしまったらしい。
【明智光秀】「・・・友人、ですか?」
【神宮寺紗耶】「ええ、そうよ。この2人は私を探していた時に、ココに迷い込んでしまったようなの。ホラ、見て。」
と、私は若菜が着ていた制服の襟を少しだけ触って、光秀さんに見せた。
【神宮寺紗耶】「彼女、私と同じ服を着ているでしょ?」
【明智光秀】「た、確かに・・・。しかし、こちらの男は真っ黒な衣を着ていますが・・・。」
【神宮寺紗耶】「男と女では着ているものが違うのよ。」
【明智光秀】「・・・そうでしたか。」
どうやら、光秀さんは納得してくれたようだ。とりあえず、片方の問題は解決した。
私は、もう片方の問題を解決する為、まだ固まっている2人を見て言った。
【神宮寺紗耶】「良い? 2人とも、よく聞いて。」
2人は、その恰好のまま、コクコクと小さく2回黙ってうなずいた。
【神宮寺紗耶】「信じてもらえないかもしれないけれど、ココは時代劇の撮影なんかじゃない。正真正銘、本物の戦国時代。もちろん、この人も役者なんかじゃない。・・・本物の戦人、明智光秀よ。」
それを聞いて、固まっていた2人が少しずつ動き始めた。
【指宿健斗】「ほ、ホントに、せ、戦国時代・・・なのか?」
【神宮寺紗耶】「うん!」
と、私は真剣な顔をしてコクリとうなずいた。
【指宿健斗】「・・・若菜。悪いけれど、俺の頬を抓ってくれないか?」
【中村若菜】「・・・う、うん。」
そう言って、若菜は健斗の頬を力強く手で抓った。
【指宿健斗】「痛てててて・・・ッ! オマエ、強く抓りすぎ!!」
しばらくして若菜は、抓るのを止めた。そして、健斗は自分の手で抓られた箇所を触った。
【指宿健斗】「・・・痛い。痛すぎる・・・。」
【中村若菜】「健斗、私の頬も抓ってくれる?」
【指宿健斗】「お、おう・・・。」
今度は健斗が若菜の頬を抓ろうとした。その瞬間、若菜がサッと顔を退けて、健斗を見て言った。
【中村若菜】「強く抓らないでよね。優しくよ、優しく!」
【指宿健斗】「・・・わ、分かったよ!」
そう言って、健斗は若菜の頬を軽く抓った。抓られた後、若菜も同じように自分の抓られた箇所を手で触った。
【中村若菜】「・・・夢、じゃないんだ。」
やっと2人は信じがたい現実を分かったようだ。
【神宮寺紗耶】「残念だけれど・・・、これが現実よ。」
と、2人に向かって言った。2人は、またポカーンとした表情をしていた。
とにかく、こちらの問題も一応解決したようだ。
【明智光秀】「紗耶さんのご友人達よ、刀を向けてすまなかった。」
と、健斗と若菜に向かって深々と頭を下げた。
【指宿健斗】「い、いえ、良いんスよ、謝らなくて・・・。」
【中村若菜】「間違われても無理ないですから・・・。」
【指宿健斗&中村若菜】(ひぇ~! 俺(私)、あの明智光秀に謝られている~!?)
健斗と若菜も申し訳なさそうな顔で、ペコペコと光秀さんに何度も頭を下げていた。私は、それを見てクスッと笑った。
と、その時、敵である斎藤軍の兵士の1人が私の背後に刀を構えながら静かに近づいていた。しかし、私はそれに気づいていなかった。その兵士は、今にも私に斬りかかろうとしている。
【中村若菜】「紗耶、後ろ!」
【神宮寺紗耶】「え?」
と、私は顔だけ振り向いた。そして、初めて敵兵が私のすぐ目の前まで迫ってきていることに気がついた。
私は自分の刀を抜いて立ち向かおうとするが、もう遅い。相手は、刀を打ち落とそうとする動作をしている。
【神宮寺紗耶】「ッ!」
【中村若菜】「やめてぇ~ッ!」
【明智光秀】(間に合わない!)
その時、健斗は何かを感じたのか見たのか分からないが、
【指宿健斗】「しゃがめ、紗耶!」
と、大きな声で言った。
私は、その声と同時に、その場にサッとしゃがみ込んだ。と同時に、私の頭上スレスレのところを弓矢が飛んできて敵兵の左胸に命中した。
【明智光秀】(弓矢!?)
敵兵は、手にしていた刀を手放し、そのまま大量の血を放出しながらドサッと床に倒れた。
【指宿健斗】「うわぁ~ッ!」
【中村若菜】「きゃッ!」
私の前にあるのは、倒れた敵兵の死体。あまりに生々しく、死体を全く見慣れていない私や若菜そして健斗にとっては唖然としていた。
光秀さんは、すぐに倒れた敵兵の左胸に突き刺さった弓矢から飛んできた方角を瞬時に判断し、その方角を見た。すると、そこに弓を構えた前田利家の姿があった。
【前田利家】「フゥ~、間一髪!」
【明智光秀】「利家、アナタでしたか?」
【前田利家】「ここは敵さんの住居だぜ。呑気にお話している場合かよ。」
と、光秀さんの肩をポンッと軽く叩いて横を通り過ぎた。光秀さんは、横を通り過ぎていく利家に「・・・すいません。」と謝った。利家はそれを聞いていたのか聞いていなかったのか分からないが、そのまま私に向かってきて言った。
【前田利家】「大丈夫だったかい、お嬢ちゃん?」
【神宮寺紗耶】「あ、は、ハイ。だ、大丈夫です。」
【前田利家】「もし今度、何か危険な目に遭ったら、すぐに呼んでくれ。駆け付けるから。」
と、ニカッと笑顔を見せた。
【神宮寺紗耶】「ハ、ハイ。ありがとうございます。」
そんな私と利家さんを見て、若菜はヒソヒソ声で健斗に言った。
【中村若菜】「ちょっと、良いの?」
【指宿健斗】「何が?」
【中村若菜】「あの前田利家って言う人、絶対に紗耶に目を付けているわよ。今どきのギャル男みたいに少し軽そうだけれど、意外と頼りになりそうだし・・・。早くなんとかしないと、紗耶を取られちゃうわよ?」
【指宿健斗】「若菜。」
【中村若菜】「なに?」
【指宿健斗】「紗耶は、あんな軽そうな男に引っ掛かるほどバカじゃねえよ。」
【中村若菜】「あ、そう・・・。」
【指宿健斗】(それより俺が気にしているのは・・・。)
と、健斗は黙って睨みつけるような目で光秀さんを見ていた。
【神宮寺紗耶】「なに、真剣な顔で見ているの?」
【指宿健斗】「えっ!?」
突然、私が顔で健斗の視線の先を塞いだので、健斗はビックリした顔をした。
【指宿健斗】「な、なんでも、ねえよ・・・。」
【神宮寺紗耶】「?」
一方、黙っている光秀さんに横から利家が顔を出した。
【前田利家】「おい、光秀。何なんだ、あの者達は? いつの間にか人数が増えているようだが?」
【明智光秀】「紗耶さんのご友人だそうです。敵ではないですよ。」
【前田利家】「まっ、俺は敵かどうかは気にしていないけどな。あの2人はまだ子供だし。」
【明智光秀】「他に何か気になることでも?」
【前田利家】「アイツだよ、アイツ。」
【明智光秀】「アイツ?」
と、利家と光秀は、少し離れた場所で話をしている私たち3人の顔を見た。話に夢中になっていた私達は、光秀さん達がジッと見ていることに気がつかなかった。
【前田利家】「アイツだよ、男のほう。」
【明智光秀】「あの若者が何か?」
【前田利家】「アイツ、俺が敵兵を弓矢で攻撃することを事前に察知していたようだぜ。」
【明智光秀】「え?」
そう言いながら、光秀さんは利家の顔を見た。
【前田利家】「俺が弓矢を放つ前に、お嬢ちゃんに『しゃがめ!』と的確な指示していた。」
【明智光秀】「それは、アナタが弓を放つところを、あの若者に見えていたからなのでは?」
【前田利家】「いや、それはない。俺は敵兵に不意打ちで攻撃するつもりだった。だから、敵兵はもちろん、誰にも気づかれずに弓を放つ。現に、光秀。オマエも俺が弓を放ったことに気づかなかっただろう? それを、あの小僧は、どうやってかは分からないが事前に察知して、お嬢ちゃんに指示を出した。」
【明智光秀】「利家、アナタの考えすぎなのでは?」
【前田利家】「いや、違う・・・。俺の6感がそう呼んでんだ。俺の6感は真実しか言わない。今まで、いつもそれに頼ってきたんだ。」
【明智光秀】「そうですか・・・。」
【前田利家】「気ぃつけな、光秀。あの若造、味方ならば頼もしいが、逆は少々面倒な事だ・・・。」
【明智光秀】「・・・・。」
光秀さんは、真剣な顔をして再び健斗を見た。
【敵兵】「おい、敵だーッ!」
その叫び声を聞いて、私達はビクッとした。どうやら敵兵に見つかったようだ。
すると、城内の至る場所から刀を手にした30人を超える大勢の敵兵が、一瞬の内に私達の周りを取り囲んだ。私と光秀さん、利家の3人が自分の鞘から刀を取り出して構えた。そして、私を含む3人は、武器を持たない健斗と若菜を守るように背中合わせに取り囲んだ。
【前田利家】「どうやら、お話はココまでのようだぜ。」
【明智光秀】「そのようですね。」
【前田利家】「おい、オマエら!」
と、利家は顔だけで健斗と若菜を見て言った。
【前田利家】「俺たちだけじゃ全員を相手にすることは出来ない。2人とも刀を使ったことはあるか?」
【中村若菜】「使ったことあるワケないでしょ!!」
【指宿健斗】「俺はあるぜ。」
【神宮寺紗耶】「あ、ちょっと!」
健斗は、私が持っていた刀を強引に奪って、格好良く構えた。
【前田利家】「ヒュ~、頼もしいぜ。」
【神宮寺紗耶】「ちょっと、健斗。私の刀を奪い取らないでよ!」
【指宿健斗】「オマエは刀にまだ慣れていない。ここは俺に任せて、オマエは弓で攻撃するんだ。刀より、弓のほうが得意だろ? それに、オマエに刀を持たせると別の意味で危ないからな(笑)」
【神宮寺紗耶】「どういう意味よ! もう!!」
私はプンプンと怒りながら、しぶしぶ弓を構えた。
【敵兵】「かかれーッ!!」
その声と同時に、周りにいた大勢の敵兵たちが一斉に私達に攻撃を開始した。
【前田利家】「行くぞ!」
【明智光秀&神宮寺紗耶】「ハイ!」
【指宿健斗】「・・・・。」
そして、私達も各自、周囲に散らばって応戦を開始した。
【中村若菜】「ちょ、ちょっと! 私、武器を持っていないわよ!」
若菜の声を無視し、私達は迫り来る敵兵の相手をしていった。
利家は、向かってくる敵兵を次々と倒しながら、城の離れへ続く渡り廊下へと単身進んで行った。渡り廊下の中央部分に辿り着くと、前と後ろを刀を構えた敵兵に囲まれてしまった。
利家の背後にいた敵兵の1人が刀で突き攻撃をしてきた。それを間一髪のところで横に避け、利家はそのまま刀の矛先を自分の脇に挟んだ。その直後に、今度は利家の前にいた敵兵も刀を大きく縦に斬りつけるように攻撃してきた。利家は、まず前から向かってきた敵兵を自分の刀で斬り倒し、続いて自分の脇に刀を挟まれて一瞬身動きができなくなった敵兵を蹴り倒した。そして、その拍子に床に落ちた敵兵の刀を足で蹴って拾い上げて、空いている片方の手に持ち二刀流の構えをとった。
【前田利家】「さあ、死にたい奴は、かかってきな! この俺様の二刀流捌きをたっぷり味わせてやるよ!!」
そう言って、利家は目にも見えぬ早さで華麗な刀捌きを見せた。それをみた敵兵たちは一斉に怯んだ。
健斗は、城内の大広間のような広い場所で、四方八方から向かってくる敵兵に対し、華麗なる剣術で1人ずつ確実に敵を倒していった。その健斗と少し離れた場所で、光秀さんも独自の剣術を使い、敵を次々と倒していった。すると、たまたま2人が背中合わせの状態になった。周りは、すっかり敵兵に取り囲まれている。
【明智光秀】「あなた、意外とやるようですね。」
【指宿健斗】「ヘッ、ただの小僧だと思って甘く見るなよ!」
【明智光秀】「敵は倒せど倒せど増えるばかり・・・。どうします? ここは2人で協力し合うというのは・・・。」
【指宿健斗】「もちろん、大賛成だよ!」
【明智光秀】「私の背中、お任せしますよ?」
【指宿健斗】「それは俺のセリフだぜ!」
そう言うと、2人は背中合わせの状態のまま、目の前にいる敵兵を次々と倒していった。
私は、先程いた場所から上へ続く階段がある場所まで走ってきた。すぐ背後には刀を持った多数の敵兵が追いかけてきている。その階段を途中まで登ると、私はバック宙で飛び上がり、すぐ背後にいた敵兵の1人の後ろにサッと着地し、同時にその敵兵が刀を手にしている腕に目掛けて弓矢を放った。矢を射たれた敵兵は刀を地面に落とした。私はそれを拾い上げ、残りの敵兵を次々に倒していった。
【中村若菜】「キャー! ちょっと、誰か助けてよ~!! 私は武器を持っていないんだから~ッ!!」
若菜は、武器を持っていないので、とりあえず無我夢中で「助けてぇ~」と大きな悲鳴を上げながら逃げていた。3人の敵兵が若菜の後を追いかけていた。しばらくして、若菜は謝って袋小路に侵入してしまった。
【中村若菜】「えっ、ウソ! 行き止まり!?」
若菜はバッと振り向いた。追いかけてきた敵兵が若菜の逃げ道を塞いで立っていた。
【中村若菜】「ちょ、ちょっと、私は武器を持っていないし、そもそも私は、紗耶たちと違って、か弱い女の子よ! 戦う相手を間違っているんじゃないの?」
若菜が必死に説得を試みるが、敵兵らは全く耳を貸さなかった。それどころが、ジリジリと若菜に少しずつ近づいてくる。それに合わせ、若菜もジリジリと相手から距離を取るが、若菜の背後は行き止まりの為、そんなに距離は取れない。
【中村若菜】「きゃッ!」
と、その時、若菜は何かを踏んで少し蹌踉めきそうになったが、すぐに立ち直した。足下を見ると、刀を収める鞘が床に無造作に落ちている。どうやら、ここで誰かが鞘から刀を抜き取って鞘を捨てていったのだろうか。それを見た若菜は、とっさに鞘を拾い上げて大声で叫んだ。
【中村若菜】「さ、さあ、か、掛かってくるなら来なさいよ!」
だが、刀ならまだしも、たかが鞘1本で相手を倒せるはずがない。敵兵らはお互いの顔を見合わせたが、ニヤッと不気味に笑ってから、再びジリジリと若菜に向かっていった。
【中村若菜】「こ、来ないでよ! キャア~~~ッ!!!!!」
と、若菜は大きな悲鳴を上げながら、鞘を乱暴にブルンブルンと振り回した。あまりに乱暴に振り回し危ないため、敵兵はなかなか若菜に近づけなかった。それでも構わず、若菜は悲鳴を上げ続け、ブルンブルンと鞘を乱暴に振り回す。
すると、突然、なぜか若菜の前にいた敵兵らが次々と倒れていった。別に、若菜が乱暴に振り回した鞘が、たまたま敵兵に直撃したワケではない。誰かが敵兵の背後から攻撃して倒したようだ。
その倒れていく敵兵の背後には、刀をビシッと構えた利家の姿があった。
【前田利家】「大丈夫だったかい?」
と、利家はフッと若菜を見て言った。その姿が、若菜の目に頼もしく格好良く見えた。
【中村若菜】「は、はい!」
と、若菜は、まるで恋する乙女のようにウルウルとした瞳で利家の顔を見て言った。
【中村若菜】「あ、あの・・・。」
【前田利家】「ん?」
【中村若菜】「・・・わ、“若菜”って呼んで下さい。」
【前田利家】「えっ!?」
しばらくして、私たちは敵兵全員を倒し、大広間に集まった。あまりに多くの敵数を相手にしたので、私達は深い息切れを起こしていた。周囲の床には倒れた敵兵たちの姿があった。
【指宿健斗】「ハアハア・・・。こ、これで、終わりか?」
【明智光秀】「そのようですね。」
【神宮寺紗耶】「あ~もう! こんなにも大勢の敵兵、どこからやって来るのよ!!」
そう叫ぶ私の横で、光秀さんは黙って刀を鞘に収めた。
【指宿健斗】「大丈夫か、紗耶。ケガはないか?」
【神宮寺紗耶】「わ、私は大丈夫だけど、さ、さすがに疲れたわ・・・。」
【明智光秀】「でも、女1人で多くの敵兵を倒したんです。さすがですよ、紗耶さん。」
【神宮寺紗耶】「あ、ありがと・・・。」
【前田利家】「みんな、無事か~?」
そう言って、利家が私達の前に現れた。なぜか、若菜が利家の後にピッタリと付いている。
【神宮寺紗耶】「大丈夫か、若菜?」
【中村若菜】「大丈夫なんかじゃないわよ! コッチは武器もないし敵に追われるし危険な目にあうし、もう大変だったんだから!! ・・・でも、未来の旦那様が間一髪のところで助けてくれたのよね?」
【神宮寺紗耶】「未来の旦那様?」
若菜はウットリした目で利家を見た。
【前田利家】「え、俺ッ!?」
【中村若菜】「んもう! アナタ以外に誰がいるって言うのよぉ~。」
【前田利家】「は、ハハ・・・(苦笑)」
【指宿健斗】「・・・いったい、何があったんだ?」
【神宮寺紗耶】「・・・さあ?」
と、私は首を傾げた。
【明智光秀】「良かったですね、利家。素敵な嫁が見つかって・・・。」
【前田利家】「光秀。貴様、後で覚えておけよ・・・(怒)」
クスッと笑みを浮かべる光秀さんに、いつの間にか私は見とれていた。
【指宿健斗】「・・・・。」
私と光秀さんを見て、健斗は黙ったまま少しムッとした表情をしていた。
と、その時、またもや「ウォー!」と声をあげて大勢の刀を持った兵士らが大広間にやって来た。私達はそれにビクッと反応した。
【中村若菜】「今度は何?」
【指宿健斗】「新手か!?」
健斗は、彼らに向かって刀を構えた。
【神宮寺紗耶】「健斗、刀を下ろして。」
【指宿健斗】「え?」
【神宮寺紗耶】「大丈夫、味方よ。」
【指宿健斗】「味方?」
すると、その大勢の兵士たちの中から、黒い鎧を身にまとった背の高い男が現れた。それを見た瞬間、光秀さんと利家はサッと片膝を床について頭を下げた。私も同じように行動した。
【指宿健斗】「な、なんだ?」
【中村若菜】「何が始まるの?」
【神宮寺紗耶】「いいから、あなた達も!」
【指宿健斗】「あ、ああ・・・。」
ワケも分からず、健斗と若菜も私の行動を真似た。
【????】「現状を報告しろ、光秀。」
と、男が光秀さんに向かって言った。
【明智光秀】「ハッ、信長様。」
私達の前に現れたのは、織田信長だった。そして兵士らは、織田軍に所属している味方の兵士達だ。
【指宿健斗】「えっ!? ・・・の、信長!?」
【中村若菜】「ウソ!?」
2人は、思わず顔を上げて男の顔を見た。確かに、学校の歴史の教科書で見覚えのある顔だ。思わぬ人物の登場に、2人は自分の目を疑っていた。まあ、それは当然と言えば、当然だろう。
【中村若菜】「・・・ま、マジ?」
【指宿健斗】「あの信長が目の前に・・・。」
すると、私達と同じくらい若い美少年が、睨み顔で2人に長い細刀の矛先を向けた。織田信長を守る森蘭丸だ。
【森蘭丸】「オマエ達、殿の前で無礼だぞ!」
【指宿健斗&中村若菜】「ゴメンなさ~いッ!!」
必死に謝る2人を、織田信長は真剣な顔をして見た。
【織田信長】「構わぬ、蘭。下がれ。」
【森蘭丸】「ハッ!」
そう言って、蘭丸は刀を鞘に収めて信長の後ろに下がった。
【織田信長】「光秀、この者達は何者だ?」
【明智光秀】「この者達は・・・。」
【神宮寺紗耶】「私の友人です。」
【明智光秀】「紗耶さん?」
私は、信長を見続けた。信長も私の目を鋭い目つきで黙ってしばらく見ていた。そして、私の背後にいた健斗達を見て言った。
【織田信長】「・・・お主。」
【指宿健斗】「は、はいッ!」
信長に呼ばれてビックリしたのか、健斗はビシッと背筋を伸ばした。
【織田信長】「この者達はオマエがやったのか?」
と、床に倒れている多数の敵兵らを指さして尋ねた。
【指宿健斗】「は、はい、そうです・・・。」
【織田信長】「・・・・・。」
【指宿健斗】「・・・・?」
【織田信長】「・・・フッ。」
信長はフッと微笑した。それを見て、健斗はフゥ~と肩を落とした。なぜ微笑したのか、この時の私には分からなかった。
【織田信長】「光秀・・・。」
【明智光秀】「ハッ!」
【織田信長】「・・・勝家が倒れた。」
【明智光秀&前田利家】「!」
【神宮寺紗耶】「!」
私は、勝家が敵の攻撃で倒れた光景を思い出した。しかし、先に城内に侵攻していた光秀さんや利家は勝家が倒れたことを知らされていない。私が2人に伝えようとしたが、その機会が無かった。
【明智光秀】「・・・クッ。」
私は恐る恐る光秀さんを見た。光秀さんは悔しそうな顔をしていて、片方の拳がブルブルと震えていた。そして、深く深呼吸して心を落ち着かせたあと、真剣な目をして信長に言った。
【明智光秀】「・・・信長様、上へと続く階段を見つけました。おそらく、敵総大将の斎藤龍興は天守閣にいるものかと・・・。」
【織田信長】「・・・うぬは、どうしたい?」
【明智光秀】「・・・仇を。」
そう言って、光秀さんは拳をギュッと固く握りしめた。それを信長が鋭い目つきで見た。
【織田信長】「・・・良かろう。行け。」
【明智光秀】「御意!」
光秀さんと利家は信長に一礼したあと、自軍の兵を何人か引き連れて上へと続く階段へ向かった。私や健斗達も、その後に続いて行こうとした。
【織田信長】「・・・止まれ。」
その言葉で、私と健斗そして若菜の3人は歩を止めて、信長を見た。光秀さんと利家らはそのまま進んでいる。
【織田信長】「・・・お主達に任務を与える。」
そう言って、信長は私達3人に突然の任務内容を伝えた。それを聞いて、私達は自分の耳を疑った。
【神宮寺紗耶】「えっ? なぜ、そのような場所に!?」
【織田信長】「・・・行けば、分かる。」
私は信長を見た。信長はフッと微笑している。
【神宮寺紗耶】「・・・?」
【指宿健斗】「おい、断ろうぜ。俺たち3人だけじゃ無理だ。危険すぎる!」
【中村若菜】「私も、ここは私達以外の人に任せたほうが良いと思う。もし万が一の事があったら・・・。」
2人とも反対している。私は黙って考えた。
確かに、“コレ”は私たち3人にとって少し危険な行為だ。また、責任重大でもある。失敗する可能性だってある。なのに、信長は私達に命じた。あの信長の微笑の意味は・・・。
【神宮寺紗耶】「・・・そうだよね、私達じゃ危険すぎるよね。」
【指宿健斗】「そうだよ。」
【織田信長】「・・・・。」
そして、私は決断した。
【神宮寺紗耶】「・・・分かりました。私、1人で行きます!」
【指宿健斗&中村若菜】「えっ!?」
【指宿健斗】「ちょ、ちょっと待て! 紗耶、俺たちの話をちゃんと聞いていたか!?」
【神宮寺紗耶】「言いたい事は分かっている。・・・でも、私のせいで2人を巻き込んでしまったんだもん。その2人を、これ以上、危険な目にあわせるワケにはいかないよ・・・。」
【指宿健斗】「だからって・・・。」
【神宮寺紗耶】「ゴメン・・・、2人とも。」
【指宿健斗】「考え直せって、紗耶! ほら、若菜も何か言ってやれ。」
【中村若菜】「・・・分かったわ。私も一緒に行く!」
【指宿健斗】「へ!?」
【神宮寺紗耶】「若菜!」
若菜は、私の傍までやって来て、私の片腕をギュッと握った。
【神宮寺紗耶】「ホントに良いの? 危険だよ?」
【中村若菜】「良いの! 危険な事は、もう慣れているから。それに、紗耶の力強い武術があれば、きっと大丈夫よ。」
【神宮寺紗耶】「若菜・・・。」
私と若菜を見て、健斗は苛立ちを隠せなかった。そして、まもなく何かを覚悟したような顔をして言った。
【指宿健斗】「お、女の子を2人だけで行かせられるか! こうなったら、俺も地獄まで付き合ってやるよ!!」
そう言って、やりきれない顔をしながら、しぶしぶ健斗も私の隣にやって来た。
【織田信長】「・・・決まりだな。」
【神宮寺紗耶】「ありがとう、2人とも。」
【中村若菜】「なんの、なんの♪」
【指宿健斗】「い、言っておくけれど、コレは“貸し”だからな!」
【中村若菜】「いい加減、素直になりなさいよ(笑)」
【指宿健斗】「うるさい!」
その頃、光秀や利家たちは城の天守閣へとたどり着いた。
四隅しか柱と壁がなく、また戸が全て開いており、そこから外の景色が見える。それ以外に何もない部屋だが、意外と広く感じる。
また、下の階とは違ってココは静かだ。戦の最中だと言うことを忘れさせる。人の姿は、ほとんど見えない。ただし、目の前で立っている紅い鎧を身につけた1人の少し小太りな男を除いては・・・。
【斎藤龍興】「ようこそ、我が城へ。・・・逢いたかったよ。」
【明智光秀】「龍興!」
≪ 第7話 完。第8話に続く ≫
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※この続き(第8話)の公開予定日は現時点で未定です。また、第8話の公開前に「外伝(番外編)」を公開する場合がありますので予めご了承下さい。




