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第6話 稲葉山城攻略戦<前篇>

※この作品は忠実を基にしたフィクションです。実在の人物、事件、団体名などは全て一切関係ありません。

※この作品は、他の小説作品とは異なる独自の新スタイルを採用した「全く新しいタイプの小説」です。読者の方によっては、表現方法など読みにくい場合がありますので予めご了承下さい。



  ≪ 第5話までのあらすじ ≫


 私は、剣術と弓道を得意とする普通の女子高校生、神宮寺紗耶じんぐうじさや

 ある日、自宅の横の蔵を掃除していたら、奇妙な巻物を発見。その巻物には、明智光秀あけちみつひでと思われる長髪の男と、なぜか制服姿の私が描かれていた。

 その奇妙な巻物を見た瞬間、気がつくと私は戦国時代へとタイムスリップしていた!

 戦国時代の日本をさ迷っていた私は戦国武将の明智光秀あけちみつひでと出会い、あの有名な戦国武将で尾張(現在の愛知県)にある「墨俣すのまた城」の当主である織田信長おだのぶながに家臣として拾われた。

 この時代に飛ばされてから数日が経過するけれど、未だに現代の日本へ帰る方法は見つかっていない…。

 そんなある日のこと、織田信長は尾張の北の美濃(現在の岐阜県)にある斉藤龍興さいとうたつおきが居城する「稲葉山いなやばやま城」にいくさをすると宣言したのだった。

 翌朝。 

 朝早くから墨俣城内にカンッ、カンッという音が響いていた。城内にいた誰しもが、最初は「何の音だ?」と不思議に思っていた。

 明智光秀あけちみつひでさんも、そのうちの1人だ。 光秀さんはその音で目を覚まし、その音の出所を探し出した。その途中で、信長の家臣で後に豊臣秀吉とよとみひでよしとなる木下藤吉郎きのしたとうきちろうと出会った。

 【木下藤吉郎】「おや明智殿、随分と早いお目覚めでございますね。」

 【明智光秀】「城内に響き渡るこの音に目が覚めてしまいましてね。どこから鳴っているのですか?」

 【木下藤吉郎】「ああ、この音でございますか。中庭に行ったら、何の音か分かりますよ。」

 【明智光秀】「中庭?」

 光秀さんは藤吉郎と一緒に中庭へとやって来た。そこで、光秀さんは驚くべき光景を目の当たりにした。 

 それは、制服姿の私(神宮寺紗耶)が木刀を持った大勢の織田家の家臣に囲まれながら、木刀1本で戦っているのだ。それを見て、光秀は愕然となった。

 【明智光秀】「な、何事ですか、これは!? …まさか、ケンカ!?」

 私の周りに木刀を持った家臣たちが真剣そうな顔で睨みつけているのを見て、どうやら光秀さんは家臣たちが私にケンカでも仕掛けたのかもしれないと感じたようだ。

 【木下藤吉郎】「違いますよ、明智殿。実は、家臣の者たちが紗耶殿に稽古の相手をしてくれと頼まれたんですよ。」

 【明智光秀】「稽古の相手?」

 【木下藤吉郎】「ホラ、紗耶殿が柴田勝家しばたかついえ殿と1対1の試合をしたことがあったでしょ? 織田家の中でも剣の腕前は1、2を争うくらいの強さを持った柴田殿が、どう見てもか弱い小娘の紗耶殿に負けてしまった…。これを見た家臣たちが紗耶殿の力に惚れ込み、紗耶殿と稽古するという名目で1つ手合わせしているんです。」

 【明智光秀】「…そうですか。」

 それを聞いて、光秀はひとまずホッとため息をついた。光秀と藤吉郎は再び、家臣たちと1対大勢で戦っている私の姿を見た。

 【神宮寺紗耶じんぐうじさや】「さあ、どこからでもかかってきなさい!!」

 【家臣たち】「むう…。」

 【明智光秀】「…それで、紗耶殿の戦勝はどのくらいですか?」

 【木下藤吉郎】「見ての通り、紗耶殿の圧勝ですよ。さすが、柴田殿を打ち負かした娘です。紗耶殿にとって1対1では割に合わないから、全員まとめて相手しているんです。」

 私は一度に向かってくる家臣たちに容赦なく応戦した。家臣たちもそのつもりで戦っているのだろう。手加減など一切ない。でも、私にとっては、それが丁度良い。

 私は、木刀片手に家臣たちを次々と倒していった。そして、最後の1人を倒した。

 【神宮寺紗耶】「さあ、次は!?」

 【家臣たち】「…ま、参りました。」

 負けた家臣たちは地面に腰をつき、ハアハアと息切れをしていた。普通の女の子なら私も息切れをしていただろうし、家臣たちや柴田勝家にも負けていただろう。でも、私は高校の剣術部での体力づくりなど汗水たらして日々頑張っているため、これくらい私にとって朝飯前だ。

 【明智光秀】「さすがですね、紗耶さん。」

と、光秀さんが私の傍にやって来た。

 【神宮寺紗耶】「あ、おはようございます、光秀さん。…もしかして、私の試合を見ていたんですか?」

 【明智光秀】「ええ、見ていましたよ。本当、さすがですね。柴田殿だけでなく織田家の家臣たちまでの打ち負かせてしまうんですから…。」

 【神宮寺紗耶】「いやはや、それほどでも…。」

 【????】「…おい、女。」

 【神宮寺紗耶】「えっ?」

 その時、後ろから誰か男の声がしたので、私は振り向いた。なんと、振り向いた先には刀を手にした織田信長おだのぶながの姿があった。

 【神宮寺紗耶】「信長!?」

 【明智光秀】「信長様!」

と、光秀さんや近くにいた家臣たち全員が信長に頭を下げた。私もつられるように頭を下げた。

 信長は鋭い目つきで私を睨みつけながら、手にしていた刀を私にズンッと差し出した。

 【神宮寺紗耶】「えっ?」

 【織田信長】「…受け取れ。」

 私は言われるがまま、恐る恐る刀を信長から受け取った。

 【織田信長】「…うぬに出陣を命じる。」

 …えっ? しゅ、出陣!?

 【神宮寺紗耶】「…え、えええええええええええッ〜!?」

 私の驚いた大きな声が城内に響き渡った。あまりの声の大きさに、城中が敵襲かと勘違いして一時騒然となった。

 【明智光秀】「さ、紗耶さん…、信長様の前で叫ぶのは無礼ですよ。」

 【織田信長】「・・・・。」

 【神宮寺紗耶】「だ、だって、出陣って言ったら、私も皆と一緒に戦場に出るって言う事ですよね!? わ、私、ただの普通の女子高生だし、きっと足手纏いになるし…。」

 【家臣たち】「…ジョシコウセイ? 何だ、それ?」

 【神宮寺紗耶】「と、とにかく、私に出陣は無理です!」

 私は、必死になって出陣を拒否した。それを、信長は目を閉じて黙って聞いていた。

 【織田信長】「…うぬは、この信長の命令を拒否すると言うのか?」

と、信長はギロリと私を睨んだ。私は、それにビクッと怯えた。

 【織田信長】「…うぬには、この信長の貸しがあるのを忘れているのではあるまいな? 正体不明のうぬを、この信長が織田家家臣として拾い、当面の寝床と食事を与えた…。与えたものは体を張って返すのが当たり前、だ。それが嫌と応えるのなら、即刻この信長の前から消え失せろ!」

 【神宮寺紗耶】「そ、そんな…。」

 この城から追い出されたら、私はどこに行けばいいのだろう。現代へ帰る方法さえ分からないのに…。

 【織田信長】「織田家の家臣となった以上、うぬにも他の家臣と同様の働きをしてもらう。文句が言えるのは、それらの責務を全て果たし、かつ信長の期待以上の働きをした者だけだ。…分かった、な?」

 確かに、信長の言うとおりである。今の私には居場所がココしかない。今、この場所を離れれば、本当に帰れなくなるかもしれない…。だったら、信長の期待に応えられるように働かなければならない。(ちょっと信長の態度がムカつくけれど…、それはガマンしよう…)

 【神宮寺紗耶】「…分かりました。私も、出陣します!」

 【明智光秀】「紗耶さん?」

 【神宮寺紗耶】「今の私に出来るのは、コレしかない!」

 【明智光秀】「紗耶さん…。」

 【織田信長】「…ならば、すぐ支度を致せ。直ちに、出発する。その刀は、うぬの者だ。他に必要なモノがあるならば、出発までに自分で用意しろ。光秀、お市と一緒にこの者の戦支度を手伝ってやれ。」

 そう言って、信長は私に背を向けて去って行った。

 【明智光秀】「…かしこまりました、信長様。」

と、光秀さんは頭を下げて見送った。



 その頃、現代の日本。時は、既に夕方になっていた。

 紗耶が消えてから学校の授業も抜け出して1日中探していた私の幼なじみの指宿健斗いぶすきけんとの体は、もうヘトヘトになっていた。

 【指宿健斗】「…ハアハア、クソッ! 本当に、どこに消えたんだ、アイツは!? アイツが行きそうな所は全て探したが、アイツの姿を見たと言うヤツはいねぇ…。」

 だが、これで分かった事があった。それは、間違いなく紗耶が何かの事件に巻き込まれている可能性が高くなったことだ。だが、それは同時に紗耶の身に危険が迫っていることも意味している。

 急いで紗耶を探さなければならないが、今、動いているのは健斗だけ。担任教師の広沢美咲ひろさわみさきも探してくれているらしいが、それでも限度がある。

 【指宿健斗】「…また、同じ場所をよく探してみるか。」

と、その時だった。

 【????】「健斗!」

 後ろから誰かが呼んでいる声がした。男の声だ。健斗は、すぐに振り向いた。

 【指宿健斗】「お、オマエら…。」

 そこにいたのは、健斗や紗耶と同じクラスの生徒達全員の姿だった。

 【指宿健斗】「…何をしに来たんだよ?」

 【橋崎浩太はしざきこうた】「何をしに来た、は無いだろう!」

 【中村若菜なかむらわかな】「私たちも、紗耶ちゃん探しを一緒に手伝うよ。」

 【指宿健斗】「…どういう風の吹き回しだ? オマエ達全員が手伝うなんて…。」

 【槌田里絵子つちだりえこ】「…広沢先生に頼まれたのよ。」

 【指宿健斗】「広沢先生に?」

 【足立裕輔あだちゆうすけ】「ああ…。オマエが必死になって紗耶を探している、って頭を下げてまで俺達を説得してきたからな。」

 【森下藍もりしたあい】「“紗耶さんは、仮にも同じクラスメイトでしょ!? 同じ仲間、友達じゃないの!?”、…ってね。」

 【藤田慶一郎ふじたけいいちろう】「美咲ちゃんに頭を下げられたらなぁ…。なあ、酒匂?」

 【酒匂義人さこうよしと】「聞かないワケがないよな?」

 【指宿健斗】「でも、オマエ達には勉強だってあるんだろ?」

 【福本未来ふくもとみく】「ず〜っと勉強しているのも楽しくないわよ。たまには、運動もしないとね。」

 【久住瑠璃くすみるり】「ダイエットの運動にはちょうど良いかなぁ〜、なんてね?」

 【指宿健斗】「オマエら…。」

 ふと、健斗はクラスメイト達に隠れながら健斗に背を向けている者を見つけた。その者は、昼間、学校で健斗の事をからかっていた同じクラスメイトの久須美草太くすみそうただ。

 【指宿健斗】「…オマエも一緒に探してくれるのか、草太?」

 【久須美草太】「べ、別に、ただ皆が一緒に探してくれ、って頼まれて仕方なくな。」

 【中島悠子なかじまゆうこ】「素直になったら?」

 【久須美草太】「な、何を言う!? お、俺は、生まれた時から素直な人間のつもりだ!」

 健斗は、それを見て、フッと笑顔になった。なんだか久しぶりに笑った気がするな。

 【指宿健斗】「…サンキュー、みんな!」

 【楠山太陽くすまやたいよう】「お遊びはここまでにして、さっさと探そうぜ。もうじき、夜だ。これだけ人数がいれば、何とかなるんじゃないか?」

 【指宿健斗】「ああ、手分けして紗耶の行方を捜そう!」

 健斗たちは「オッー!」と拳を挙げて、それぞれ手分けして捜索を開始した。



 一方、戦国時代。美濃(現在の岐阜県)の国主である斉藤龍興さいとうたつおきが居住する「稲葉山いなばやま城」。その天守閣に、斉藤龍興の姿があった。

 【斎藤家家臣】「殿、物見から報告が入りました。」

 【斉藤龍興】「…それで? どうだったんだ、アイツの動きは?」

 【斎藤家家臣】「はい。織田信長は、この稲葉山城へ戦を今日にも仕掛けるようです。」

 【斉藤龍興】「…来るか。やはり、な。」

 【斎藤家家臣】「どうされますか、殿?」

 【斉藤龍興】「決まっておろう、信長を迎え撃ち、そして返り討ちにしてくれるわッ!!」

 【斎藤家家臣】「ハハッ!」

 そう言って、家臣は急いで天守閣から去った。

 【斉藤龍興】「見ておれ、信長…。この戦、俺様が勝つッ!!」



 そして、私がいる墨俣城。戦に出ると言う事で、城内は準備などで大忙しだ。

 信長の命令により私も戦に出陣することになり、信長の妹のお市さんや明智光秀さんと共に私の部屋で戦の支度をしていた。

 【お市&明智光秀】「う〜ん…。」

 私の前で、先程からお市さんと光秀さんが悩んだ顔をしている。それを私は心配そうな顔で黙って見ていた。

 【お市】「…どうしましょうか?」

 【明智光秀】「…いささか困りましたね。」

 2人とも真剣な顔をして悩んでいる。私は、何だか申し訳なさそうな気持ちになった。

 【神宮寺紗耶】「あ、あの…、私が着る防具で、そんなに悩まなくても…。別に、身を守れるモノだったら何でも良いですから…。」

 私やお市さん達の前には沢山の防具が置かれていた。どれも、すべて私のために用意されたものらしい。

 【お市】「そんなワケにはいきません!」

 【明智光秀】「アナタは女だし、まだ子供。敵から見れば、格好の獲物ですよ。それに、これはアナタにとって初の出陣だ。アナタは戦がどんなに危険なものかご存知ない!」

 【お市】「私たちは、アナタに危険な目に遭ってもらいたくないから、こんなに真剣に悩んでいるのですよ?」

 【神宮寺紗耶】「あ、ありがとうございます…。(気持ちだけは嬉しいんだけれどなぁ…)」

 【明智光秀】「じゃあ、この防具を身につけてみましょう。」

 取り出したのは、首から下全体を守るいかにも頑丈そうな防具だ。しかし、私が身につけてみると、

 【神宮寺紗耶】「お、重いッ〜!!」

 私にとって、この防具は体にズシッときて重すぎて動きづらい。剣道の防具よりも凄く重たいのだ。便利なんだけれど、出来れば使いたくない。

 【お市】「やはりダメでしたか…。」

 【明智光秀】「この防具のほとんどは男用ですからね。女で子供にも使える防具などありませんよ。そもそも、戦に女や子供は基本的に出陣しません。」

 【神宮寺紗耶】「…お、お、おも…。」

 【お市】「兄上は、どういった理由で紗耶さんを戦に出陣させようなどと思ったのでしょうか?」

 【明智光秀】「それは、まだ私にも理解できませんが、きっと信長様には何か考えのことがあっての事でしょう…。」

 【神宮寺紗耶】「あのぉ〜…。お2人とも真剣なお話の最中に申し訳ないんですが、早くこの防具を脱ぐのを手伝ってくれます〜!? さっきから重たくて重たくてしょうがないんですがッ!!(怒)」

 【お市】「あ、ゴメンなさいッ!」

 【明智光秀】「すっかり忘れていました。」

 【神宮寺紗耶】「まったく、もう…。」

 2人は頼りになるのか、ならないのか…。

 その2人に手伝ってもらって、やっと重たい防具を脱ぐことができた。2人で手伝ってもらわないと脱ぐことができない防具を、私に着せるなんて…。心配してくれるのは嬉しいんだけれど…。ハッキリ言って、2人とも私に対して心配しすぎ?

 【お市】「でも本当に困りましたわ…。紗耶さんに合う防具が見つからないなんて…。ここにある防具全てが合いませんでしたし…。」

 【明智光秀】「ちょっと他に紗耶さんに合う防具があるか探してきます。」

 そう言って、光秀さんは私の部屋を出て行った。


 光秀は1人廊下を歩いていた。と、その時、曲がり角で1人の女性に出会った。

 【????】「…光秀。」

 【明智光秀】「帰蝶きちょう殿。」

 帰蝶は、あの織田信長の妻。これから戦を仕掛ける斉藤龍興の祖父・斉藤道三さいとうどうざんの娘であり、斎藤家がある美濃から織田家に嫁いだことから“濃姫のうひめ”と呼ばれることもある。美しき蝶の如く、かなりの美人。ちなみに、光秀よりも少し年上である。

 【明智光秀】「どうされたのですか?」

 【帰蝶】「…あの娘に、随分と力を入れているようね、光秀。」

 【明智光秀】「あの娘とは、紗耶殿のことでございますか?」

 【帰蝶】「あの娘は、いったい何者なの? 家臣の噂によると、遠い未来の国から来たと言うのを聞いたのだが…。」

 【明智光秀】「…さあ、私にはよく分かりませんが。」

 その時、帰蝶は怒った顔をして光秀を廊下の壁に押し付けた。

 【帰蝶】「ウソを申すな、光秀! アナタがあの娘をココに連れてきたのでしょう!?」

 【明智光秀】「…なぜ、帰蝶殿はあの娘の事を、そんなに気にするのです? あの娘は、敵ではありません!」

 【帰蝶】「なぜ、そう思う!?」

 【明智光秀】「それは、あの娘が昔、私が幼い頃に戦で生き別れになった少女に、面影があるからです!」

 【帰蝶】「…!」

 【明智光秀】「アナタもご存知の事かもしれませんが、私はとある小さな村で生まれました。優しい父上と母上がいて村の人達も明るくて、その中に“おつね”という少女もいました。友達などいなかった私を“おつね”はいつも誘い出してくれて、毎日のように一緒に楽しく遊んでいました。しかし、ある日、村が急襲されて、父上と母上も死に、私は“おつね”と共に村を脱出したのです。ですが、その途中で“おつね”とは生き別れになってしまいました…。」

 【帰蝶】「・・・・。」

 【明智光秀】「私は、悲しみました。父上と母上を失っただけでなく、唯一の友である“おつね”まで失った!」

 そう言いながら、光秀は上着から何かを取り出した。

 【帰蝶】「…それは?」

 【明智光秀】「生き別れになった“おつね”から貰った、手作りのペンダントです。私は、あの日から、“おつね”の形見としてずっと大切に守ってきたモノです…。」

 【帰蝶】「!」

 光秀は、草と綺麗な石で出来たそのペンダントを、癒されるような顔で見ていた。

 【明智光秀】「私が信長に拾われて織田家の家臣となって数年後の先日、紗耶殿と出会いました。私は、紗耶殿の顔を見た瞬間、懐かしい気持ちになりました。それは、紗耶殿に“おつね”の面影があったからです。それを見て、私は決心しました。 何があっても紗耶殿を守る! それは同時に、“おつね”を守ることでもあります。あの時に叶えられなかった想いを、紗耶殿を通じて守っているのです!」

 話を終えた光秀は、帰蝶の顔を見た。すると、なぜか帰蝶が今にも泣きそうな顔をしていた。

 【明智光秀】「どうされました、帰蝶殿。私の過去の話を聞いて、ご気分でも悪くなされたのですか?」

 【帰蝶】「い、いえ、大丈夫です…。もうお行きなさい。戦の準備が残っているのでしょう?」

 【明智光秀】「え、ええ…。」

 先程までの帰蝶の態度が突然変わり、光秀はビックリしていた。

 【帰蝶】「…ゴメンなさい、準備の邪魔をして。」

 【明智光秀】「い、いえ…。それでは、失礼します。」

 そう言って、光秀はその場を去った。

 【帰蝶】「…光秀。」

と、帰蝶は何だか悲しそうな顔をした。



 【お市】「…これで最後なのね。」

 【神宮寺紗耶】「えっ?」

 光秀さんが私の部屋を出て行った後、お市さんがふと私に言った。

 【神宮寺紗耶】「これで最後、って…?」

 【お市】「アナタのお世話をするのも、これが最後になるかもしれないのです。」

 【神宮寺紗耶】「えっ!? それは、どう言う事ですか?」

 【お市】「浅井長政あざいながまさ様という人物をご存知ですか?」

 【神宮寺紗耶】「浅井長政?」

 …誰、それ? 聞いた事が無い。 とりあえず、人の名前だと思うんだけれど…。 あ〜あ、こんな事になるのなら、歴史の授業をマジメに聞いておくんだった…。私にとって歴史の授業は、(部活の朝練で疲れて)居眠りタイムだったからなぁ〜…。

 【お市】「昨日、この城に客人が来ましたよね?」

 【神宮寺紗耶】「あっ、あの金髪で格好良い男の人ですよね?」

 【お市】「その人が、浅井長政様です。近江おうみ(※現在の滋賀県周辺)の国主なんですよ。」

 【神宮寺紗耶】「へぇ〜…。でも、その人とお市さんに、どんな関係が?」

 【お市】「私、その人の妻になるんです。」

 【神宮寺紗耶】「えっ!? ええええええええええええ〜ッ!?」

 私が突然大きな声で驚くので、お市さんはビックリした顔を見せた。ちなみに、私が驚くのは今回で2回目だ。

 【お市】「どうして、そんなに驚かれるのですか?」

 【神宮寺紗耶】「つ、妻になるって事は…、そ、その、つ、つまり…、け、結婚!?」

 【お市】「ええ、そうです。」

 【神宮寺紗耶】「し、失礼ですけれど、お市さんは今、何歳ですか?」

 【お市】「アナタと同じ17歳です。」

 【神宮寺紗耶】「17歳で結婚!? しかも、私と同い年!?」 それを聞いた途端、私はガクッと肩を落とした。

 【神宮寺紗耶】「ま、負けた…。」

 【お市】「どうして、そんなにガッカリなさられるのですか?」

 【神宮寺紗耶】「じゅ、17歳で、け、結婚ッ!?(わ、私なんか、まだ彼氏も出来たことないのに…)」

 【お市】「アナタの住む国では、そんなに驚かれることなのですか?」

 【神宮寺紗耶】「え? そ、それじゃあ、この時代では当たり前なのですか?」

 【お市】「ええ。特に、私たちのような一国を治める者たちにとっては…。」

 【神宮寺紗耶】「な、なんで?」

 【お市】「一言で言えば、政略結婚ですよ。」

 【神宮寺紗耶】「政略結婚?」

 【お市】「ええ。自己や織田家の利益のために、私たち当人の意見を無視してさせる結婚の事です。この度の浅井家との行いも政略結婚の為です。」

 お市さんの話によると、信長は稲葉山城に住む斉藤龍興を倒して美濃みのを自分の手中に収めると同時に、京(※現在の京都府)へ上洛。これを機会に、信長は“天下布武てんかふぶ”の印と共に全国統一を目指すみたいだ。

 その手始めとして、「最強の同士」として、お市さんを近江の浅井長政へ妻として嫁がせ、織田家と浅井家との同盟を結ぶらしい。そんなお市さんを信長は、実の妹を政治の“道具”のように扱っているとしか私には思えないのだが…。

 【神宮寺紗耶】「お市さんは、それでも良いんですか?」

 【お市】「何がですか?」

 【神宮寺紗耶】「信長の戦略のために、道具の1つとして扱われていることに…。」

 【お市】「私は構いません。むしろ喜ばしい事だと思います。」

 【神宮寺紗耶】「なぜ!?」

 【お市】「今は戦国の世。民は、一刻も早く平和な世を望んでいます。私もそれを望んでおりますし、それを兄上が実現させてくれるのならば、私は喜んで浅井長政様に身請けします。」

 【神宮寺紗耶】「そ、そんな…。」

 【お市】「アナタは、どうやらこの結婚が反対のようですね。」

 【神宮寺紗耶】「わ、私は、お市さんと長政さんと言う人が結婚するのは嬉しい事ですけれど、それが誰かの利益の為の結婚と言うのがイヤです。絶対にイヤ! そんな結婚をさせる人、もの凄く信じられない!! 結婚は、やっぱりお互いが好きである事を確認してするべきよ!」

と、私はプンプンと怒った顔をした。それを見て、お市さんがクスッと笑った。

 【お市】「…私、アナタとアナタの時代が羨ましい。アナタの住む所は、さぞかし平和なんでしょうね。」

 【神宮寺紗耶】(確かに、日本で戦争がない分、平和って言ったら平和だけれど、ここ最近は単なる建て前的なだけかもしれないなぁ〜)

 【お市】「私、アナタの住む場所へ一度でも良いから行って見てみたいなぁ〜…。アナタの世界が、どんなに素晴らしい場所なのか…。」

 お市さんは羨ましそうな顔でそう言った。 私も出来ることなら、お市さんやココにいる皆を、平成という時代へ連れて行かせたい。

 この時代より、今の時代がどんなに素晴らしい場所なのか、を。

 でも、それは決して叶えられることの出来ない“夢”でしかないのだ。

 お市さんや皆は、この時代で生き、この時代で生涯を終える。それが逃れられることができない運命なのだから…。

 【織田信長】「・・・・・。」

 そんな時、私とお市さんがいる部屋の外の廊下で、秘かに立ち聞きをしている信長の姿があった。

 私たちの会話を盗み聞きした信長は、そのままその場を黙って立ち去った。



 【お市】「…紗耶さん、本当に“鎖かたびら”だけで良いのですか?」

 私が最終的に選んだ防具は、私が最初から着ていた高校の制服の下に“鎖かたびら”という防具と両手を守る籠手こてのようなものという非常に軽装備。男性でも可能な限りの防具を装備するので、まだ幼い女性である私には少なすぎる装備なのだ。だから、お市さんはとても心配していた。

 【神宮寺紗耶】「はい、私は動きやすい防具であれば良いので、これで十分です!」

 【お市】「…そう。」

 私は目を閉じ、深く深呼吸をした後、パッと両目を開けた。

 【神宮寺紗耶】「…では、行ってきます!」

 【お市】「お気をつけて…。」

 【神宮寺紗耶】「はい、ありがとうございます。」

 私は、お市さんに頭を下げて、部屋を出て行った。お市さんは、それを心配そうな顔で見送った。

 【お市】「父上、母上・・・。どうか、あの子をお守り下さい・・・。」



 墨俣城の城門前には既に大勢の武装した兵士や武将達、それに馬に乗った織田信長の姿があった。 私の周りにいるのは、大勢の男の人達。その中に、どう見てもか弱そうな女の私がいる。

 【神宮寺紗耶】(大丈夫かな、私…。)

 何だか、今更になって、すごく不安になってきた。こんな私が、本物の戦場に出て良いものなのか。私がいることで、皆に迷惑を掛けるかもしれないのに…。

 【????】「ビビッているのかい、お嬢ちゃん?」

 私は、後ろから誰かにそれを言われてドキッとした。振り向くと、そこには私より少し年上で、派手な服装でヤンチャそうな男の人が、馬の上からニヤッとした顔で私を見ていた。

 【????】「あれぇ〜、もしかして図星かな?」

 明らかに、他の武将達と違って態度が軽すぎる。馬に乗っているから、この人も武将の1人なのだろうか。

 【神宮寺紗耶】「…あ、あの、アナタは?」

 【前田利家】「あ〜、スマン、スマン。自己紹介がまだだったな。俺は、前田利家まえだとしいえ。槍を自由に扱う、信長の家臣の1人さ。ヨロシクな、お嬢ちゃん!」

 【神宮寺紗耶】「あ、コチラこそヨロシクです。ええと…、私は…。」

 【前田利家】「知っているぜ。アンタ、紗耶っていう名前の子だろ。」

 私の名前を知っているのなら、“お嬢ちゃん”じゃなくて名前で呼んで欲しい…。

 【前田利家】「不安そうな顔をしているけれど、キミなら大丈夫だ。俺は、キミと勝家が戦っている姿をこの目で見ている。キミのあの力が戦場で発揮できれば、きっと大丈夫さ。ガンバレ、お嬢ちゃん!」

 【神宮寺紗耶】「は、ハイッ!(だから、名前で呼んで!」

 しばらくして、織田信長が出陣を待つ私たち兵の前に立った。

 【織田信長】「皆の者、よく聞け。これより美濃の稲葉山城を奪還し、斎藤龍興を討つ! 物見の報告によれば、敵はこの信長が攻撃を仕掛けるのを事前に察知し、可能な限りの兵士を集めたようだ。その数、約5千!」

 5千と聞いて、織田家の兵士たちが驚いた。

 【神宮寺紗耶】「5千・・・。」

 【明智光秀】「私たちの軍は、敵の兵士の半分にも満たしません。敵の足元にも及ばないのです。」

 【神宮寺紗耶】「全然勝ち目が無いのに、それでも信長はどうして戦うの?」

 【明智光秀】「さあ…。たぶん、信長様は何か策でも考えているのでしょう。一見、勝ち目の無いこの戦を、たった1つの策で逆転するような素晴らしいモノを…。」

 私は、そのまま信長を見た。信長の目は、いつもと変わらない鋭い目つきをしている。あの目の中に、戦局を一変させる策が眠っているのだろうか。

 【織田信長】「まずは、これより兵を二手に分かれる。1つは、この信長と勝家などの主力部隊が、稲葉山城の正面から攻める。もう1つは、抜け道から城の裏へ回り攻め込む…。」

 なるほど、城の中に立て篭もる敵を正面と裏から挟み撃ちする戦法なのか。

 【織田信長】「この裏から攻めは、藤吉郎、うぬに任せる!」

 【木下藤吉郎】「ハッ!」

 【織田信長】「…そして、もう1人、藤吉郎と一緒に行動する者を、この信長が命ずる。それは、うぬだ。」

 そう言って、信長が鋭い目つきで私を見た。一斉に、他の兵士たちも私に向く。

 【神宮寺紗耶】「…わ、私ッ!?」

 【織田信長】「うぬ達は、いわば援軍、だ。主力部隊が前線で戦い敵を引き付け、頃合を見て裏から奇襲を掛けるのだ。」

 【木下藤吉郎】「よろしく、紗耶殿。」

 【神宮寺紗耶】「こ、こちらこそ…。」

 後に豊臣秀吉となる人と一緒に戦うなんて…。皆に言ったら、絶対に信じてくれないだろうなぁ〜。まあ、この時代にいること自体、信じてもらえないと思うけれど…。

 【織田信長】「目指すは、稲葉山城の天守閣にいる斉藤龍興の首! この信長に刃向かう全ての者を…根から絶やせ。全軍、出陣!」

 【兵士たち全員】「ハハッ!」



 一方、現代の日本。時は、既に夜になっていた。

 駅前の広場には、紗耶を捜し続ける制服姿のクラスメイト達5人の姿があった。皆、辺りを走り回ったのが、息切れを起こしていた。残りのクラスメイト達は、まだ他を探し回っているようだ。

 【指宿健斗】「…クソッ! 見つからねぇな!!」

 【中村若菜】「駅、ショッピングモール、映画館、ゲームセンター…。ほとんど探し回ったけれど、見つからないね。」

 【楠山太陽】「学校にも戻っていないらしい…。他を捜しているクラスメイトのヤツらからの報告も、全然見つからないって話だし…。」

 【森下藍】「私のお父さん、警視庁捜査一課の課長で、ワケを話して捜してもらっているけれど、今のところ何の手がかりも無いって…。」

 【足立裕輔】「どこ行っちまったんだよ、アイツはッ!! 手がかりも無い、捜しても見つからない! もう、お手上げだぜ!! 学級委員長、ノド渇いたから何かジュースでも買ってきて!」

 【楠山太陽】「それくらい、自分で行けッ! 学級委員の俺をパシリに使うな!!」

 【足立裕輔】「だってぇ〜、もう足腰ヘトヘトで動けないんだも〜ん!」

 これ以上、闇雲に捜しても一向に見つからない。だったら…。

 【指宿健斗】「こうなったら、一度、原点に戻るしかない。」

 【中村若菜】「原点?」

 【指宿健斗】「アイツの…、紗耶の家だ。そこに、きっと何か手がかりがあるハズだ!」

 そう言って、健斗は紗耶の家に向かって走り出した。彼らは、ヘトヘトになりながらも健斗の後を追った。

 【楠山太陽】「…アレ? 裕輔、オマエ足腰ヘトヘトで動けないんじゃなかったのか?」

 【足立裕輔】「気にしない、気にしない♪」

 【楠山太陽】「・・・・。」

 しばらくして、健斗たち5人は紗耶の自宅にやって来た。ちなみに、紗耶の家は由緒代々続く“神宮寺”と言う神社でもある。やっぱり、神社なのに“寺”は変だ。 紗耶の母である神宮寺杏子じんぐうじきょうこは訪れた5人を見るなり、居間に通してお茶を出した。

 【神宮寺杏子】「…そうなの。紗耶の行方を皆で捜してくれているのね。皆、こんな夜遅くまでありがとう。」

 【楠山太陽】「いえ、同じクラスメイトとして当然の事をしたまでですよ。」

 【森下藍】「…それで、紗耶からの連絡とか、何かありましたか?」

 【神宮寺杏子】「いいえ、まだ何も…。いつも何かあったら連絡してくれる子なんだけれど、それが全然無いし…。コチラから携帯電話に掛けても電源が入っていないか、圏外のようで…。」

 【森下藍】「…そうですか。」

 5人は、居間の隅々を見渡した。8畳一間の居間の壁には数々の写真が飾られており、そのほとんどがこのお寺で開かれた祭りの様子を写したものだ。中村若菜は、その中から気になる写真を発見した。

 【中村若菜】「あ、この写真って、紗耶ちゃんですか?」

 【神宮寺杏子】「えっ? …ああ、巫女の格好をした紗耶ね。」

 その写真は、周りに大勢の人が見守る中、紗耶が巫女の姿をして、真剣そうな顔で弓を構え今にも矢を放とうとしている写真だった。

 【神宮寺杏子】「紗耶は、この神社の巫女でね。いつも祭りの時には、ああやって巫女の姿をして弓矢を的に撃つ事をやっているの。遠く離れた的の中心に矢が当たれば、その1年は良い1年になるって言われている重要な儀式なのよ。確か、この時は、紗耶の放った矢が的の中心に見事命中して、けっこう良い年になったのよね…。」

 【足立裕輔】「…って事は、紗耶の弓の腕前って凄いんですか?」

 【神宮寺杏子】「ええ。弓を放つ力は私たちの中でもずば抜けているわ。祭りの時に、わざわざ遠くの方から紗耶の放つ弓の凄さを見に来る人もいるから…。」

 【足立裕輔】「初めて知ったぞ、そんな事…。アイツ、剣術だけが得意じゃなかったんだな。」

 【中村若菜】「コラッ、紗耶ちゃんのお母さんの前で失礼な事を言わないの!」

 【神宮寺杏子】「良いのよ、気にしないで。私だって自分の子供がそんな力を持っているなんて思わなかったから・・・。」

 その時、この家に来てから沈黙し続けていた健斗が突然立ち上がった。

 【楠山太陽】「いきなり立ち上がって、どうしたんだよ?」

 【指宿健斗】「小母おばさん、ちょっと紗耶の部屋を見させてもらっても良いですか?」

 【神宮寺杏子】「え、ええ…。」

 彼らは、家の2階にある6畳一間の紗耶の部屋にやって来た。茶色いタンスに机、ベッドなどが置かれ、床にはネズミ色の絨毯じゅうたんがひかれている。

 【森下藍】「ココが、紗耶ちゃんのお部屋?」

 【中村若菜】「私の部屋よりも綺麗に整頓されているわね…。」

 【足立裕輔】「何だ? 若菜の部屋は汚いのか?」

 【中村若菜】「べ、別に、そんなワケじゃないけれど…。」

 【指宿健斗】「小母さん、この部屋は紗耶が消えた時と同じ状態なんですか?」

 【神宮寺杏子】「え、ええ…、まったく手をつけていないわ。」

と、その時、家の呼び鈴が鳴った。どうやら、誰がやって来たようだ。

 【神宮寺杏子】「あ、ちょっと誰か来たみたいだから、ちょっと小母さん、玄関に行って来るわね。皆、ゆっくりしていって。」

 【中村若菜】「あ、はぁ〜い。」

 母の部屋から無くなると、健斗は机の引き出しを片っ端から開けて中を確認していった。

 【足立裕輔】「お、オイ、何勝手に開けているんだよ。本人が知ったら、きっと怒るぞ。」

 【指宿健斗】「今は、そんな事を言っている状況じゃないだろ? 何も手をつけられていないのなら、この部屋のどこかに紗耶の手がかりが残っているハズだ。オマエ達も何か手がかりを捜せ!」

 【楠山太陽】「あ、ああ…、分かった。」

 そう言って、彼らは紗耶の部屋をまるで警察が家宅捜索するかのように、それぞれ手分けして手がかりを捜し始めた。

 【足立祐輔】「こ、これは・・・!」

 【指宿健斗】「何か見つかったか!?」

 【足立祐輔】「ホラ、これぇ〜!」

と、祐輔はタンスから紗耶の下着を取り出して、顔を赤らめながら皆に見せた。

 【指宿健斗】「マジメに探す気が無いのなら、とっとと帰れ!(激怒)」

 【中村若菜&森下藍】「サイテーッ!」

 【横山太陽】「ハァ〜・・・。」

 【足立祐輔】「じょ、冗談だよ! な、何だよ、皆して・・・。冗談が通じない奴らだな〜。」

 【森下藍】「アナタは空気が読めない大バカよ!」

 【横山太陽】「そのとおり!」

 【中村若菜】「ホラ、さっさと下着を元の場所へ戻す、戻す!」

 【足立祐輔】「分かった、分かったよ・・・。」

 紗耶の母は階段を降りて、そのまま玄関にやって来て、玄関の扉を開けた。

 【神宮寺杏子】「はぁ〜い、どちら様?」

 【広沢美咲ひろさわみさき】「こんばんは。」

 【神宮寺杏子】「あ、先生! どうも。」

 やって来たのは、紗耶や健斗たちクラスの担任教師である広沢美咲先生だった。

 母は、やって来た先生を、そのまま紗耶の部屋へと案内した。そして、部屋に入るなり、先生はギョッとした。

 【広沢美咲】「アナタ達、何をしているの?」

 【森下藍】「あ、先生!」

 【足立裕輔】「何を、…って、見れば分かるでしょ? 紗耶の手がかりを探しているんですよ。」

 【森下藍】「アンタのやっている事は下着探しじゃないの?」

 【広沢美咲】「下着探し?」

 【足立祐輔】「シーッ!(冷や汗)」

 【楠山太陽】「先生こそ、どうしてココへ?」

 【広沢美咲】「もちろん、行方不明になった神宮寺さんについて、ね。」

 【指宿健斗】「紗耶、見つかったんですか!?」

 【広沢美咲】「いえ、全然…。」

 【指宿健斗】「そうですか…。」

 健斗は、ガッカリした顔をしながら、ベッドの上に腰を下ろした。

 【広沢美咲】「神宮寺さんのお母さん、紗耶さんがいなくなった当時の事を詳しくお聞かせ願いますか?」

 【神宮寺杏子】「え、ええ…。」

 そう言って、神宮寺杏子は紗耶がいなくなる直前の出来事を話し始めた。

 【神宮寺杏子】「確か、夕方頃だったかしら…。紗耶は、一度家に帰ってきて…。」

 【指宿健斗】「え、アイツは一度、家に帰ってきているんですか?」

 【神宮寺杏子】「ええ。家の玄関で紗耶本人と直接会って会話しているし、その証拠にホラ、アナタが今座っているベッドの上に、学校のカバンが置かれているでしょ?」

 健斗は、自分が今座っているベッドを見た。確かに、ベッドの上に紗耶の学校カバンが無造作に置かれていた。どうやら、いなくなる直前まで紗耶は一度この部屋に戻ってきているようだ。

 【広沢美咲】「玄関で紗耶さんと直接会話されているんですよね? 何の会話をされたんですか?」

 【神宮寺杏子】「くらの掃除を紗耶に頼んだんですよ。」

 【森下藍】「蔵?」

 【神宮寺杏子】「ええ、この家と神社の敷地内に蔵があって、もうすぐ祭りの日が近いから紗耶に蔵の中にある備品の整理や掃除を頼んだんです。いつも私や夫がする事なんですが、あの日ばかりは急な仕事で出来なくなってしまって…、それで紗耶に頼みました。紗耶の姿を見たのは、それが最後です。」

 【指宿健斗】「そこだ!」

 突然、健斗が走って部屋を飛び出していった。

 【中村若菜】「え、ちょ、ちょっと、健斗!」

 【足立裕輔】「今度は、どこに行くんだよ!?」

 健斗の後につられるように、若菜たちも健斗の後を追った。

 【広沢美咲】「ちょ、ちょっと、みんな!」

 広沢美咲が叫んでも、もう彼らには聞こえなかった。たぶん、向かった先はこの家の敷地内にある蔵だろう。

 【広沢美咲】「スイマセンが私も蔵に行って来ます。紗耶さんのお母さんは、この家で待っていてくれますか? もしかしたら、紗耶さん本人から連絡が入る可能性がありますから。」

 【神宮寺杏子】「わ、分かりました…。」

 そして、広沢美咲も蔵へ走って向かった。



 健斗や広沢美咲達は蔵の前にやって来て、蔵の重い扉をガラガラと開けた。中は真っ暗だったので、入り口の近くにあったスイッチで明かりを点けた。その途端、目の前に沢山の様々な箱や物が彼らの前に姿を現した。

 【指宿健斗】「紗耶のカバンが自室の部屋のベッドの上に置かれていた…。けれど、紗耶が着ていた制服が部屋のどこにも無い…。」

 【楠山太陽】「紗耶さんは制服を着たまま行方が分からなくなった、と言う事か…。」

 【指宿健斗】「そして、紗耶はこの蔵の掃除を頼まれた…。とすれば、きっとこの蔵の中に、紗耶が行方不明になった最大の手がかりが残されているハズだ!」

 健斗達は己の拳をギュッと握り締め、それぞれ手がかりを捜し始めた。

 【足立裕輔】「委員長、何か見つかった?」

 【楠山太陽】「いや、全然…。そっちは?」

 【足立裕輔】「コッチもダメだ。ホコリしか見つからん…。」

 そう言って、裕輔はセキをした。

 【広沢美咲】「ちょっと足立君、マジメに捜しなさい。」

 【中村若菜】「そうよ、ふざけているんじゃないわよ。」

 【足立裕輔】「でもよぉ〜、いくら捜しても見つからないぜ。出てくるのは古い書物や巻物ばかり。ホント、由緒代々続いている神社なんだな。こんな物ばかりで手がかりなんか見つかるのか?」

 【指宿健斗】「口ばっかり使っていないで、手を使え!」

と、健斗は足立に背中を見せながら強い口調で言った。もう手がかりを捜すのに夢中らしい。

 【足立裕輔】「…ったく、分かったよ。」

 そう言って、足立は手がかり探しを再開した。

 それから、しばらく経った頃だった。

 【森下藍】「…え? ね、ねえ、みんな、ちょっとコレ!」

 森下が何か驚いた声を上げたので、皆が森下の周りに集まった。

 【森下藍】「コレ、見て!」

 【足立祐輔】「絆創膏ばんそうこうなんか巻いて、小指ケガしたのか?」

 【森下藍】「そうなのよ。慣れない料理でちょっとね・・・。」

 【広沢美咲】「森下さん?」

 【森下藍】「・・・って、違うわよ! コレよ、コレ!」

 森下は、発見したモノを皆に見せた。

 【足立裕輔】「…って、ただの古びた巻物じゃんか! これが、どうしたんだよ!?」

 【森下藍】「私が見てって言っているのは、この巻物に書かれた絵よ!」

 【指宿健斗】「絵?」

 【森下藍】「そう、コレ!」

 森下藍は、巻物を広げて、中に書かれている絵を見せた。左右に大勢の兵士が互いに戦っている様子の絵である。

 【広沢美咲】「…何かの戦いを描いたものね。いつの時代かしら?」

 【楠山太陽】「たぶん、戦国時代だと思いますよ。歴史の教科書の写真で見た事があります。…って、アレ?」

と、楠山がその絵を見て何かに気がついたようだ。

 【森下藍】「気がついた?」

 【楠山太陽】「この女の人が着ている服って、僕達の学校の女子生徒の服装だよな?」

 【広沢美咲】「え?」

 楠山が見たものは、数多く書かれた兵士たちの中に1人だけ女性らしき人物が書かれていて、その女性が着ている服が自分達の通っている学校の女子生徒用の制服と似ているのだ。

 【中村若菜】「…本当だ、ソックリ。」

 【足立裕輔】「でも…、何で?」

 女子高生の制服を着た人の隣には、長髪の男と見られる人物が確認できる。

 【広沢美咲】「ちょっと待って。その女の人の横に名前らしき文字が書かれていない?」

 【楠山太陽】「あ、書かれていますね。ええと…、…紗、…耶。」

 【指宿健斗】「…紗耶だ。」

 【中村若菜】「えっ、ウソッ!?」

 その女の人の顔を見てみると、どこか紗耶に似ているような気がする。

 【広沢美咲】「ちょ、ちょっとコレって…。」

 【指宿健斗】「…間違いない。紗耶は、今、戦国時代にいる!」

 【足立裕輔】「お、オイ、ウソだろ? マジ勘弁してくれよ。そんな映画や漫画じゃあるまいし…。現代にいる人間が、どうやったら戦国時代に行けると言うんだよ。タイムマシンも現実化していないんだぜ!? それに、なぜ紗耶が戦国時代にいる、って言い切れるんだよ? ただの偶然じゃないのか!?」

 【指宿健斗】「偶然だったら、こんな絵に女子高校生の制服を着た人物が描かれていないッ! それに、この人物は、あまりにも紗耶に似すぎている。これは、きっと偶然なんかじゃない!!」

 【足立裕輔】「…だったら、絵の中にいるその人物を助けに行くか? どうやってッ!? 警察に行って相談するか? まあ、相手にされないだろうけれどな…。」

 【広沢美咲】「2人とも落ち着いて! 指宿君に反対するワケじゃないけれど、私にも神宮寺さんが戦国時代にいると決め付けるのは早いと思うし信じられないの。…とにかく、今日の捜索はここまでにして、また明日にでも考えましょう。」

 【森下藍】「…ま、待って! ま、巻物が光っている!」

 【広沢美咲】「えっ?」

 見ると、森下藍が両手で持ち続けていた巻物が白く激しく光だしている。

 【中村若菜】「な、何なの、この光!?」

 【楠山太陽】「早く巻物を手から離せ!」

 【森下藍】「手から離せないの!!」

 激しい光は、どんどん勢いを増して光り続ける。その光は、今にも森下の姿を飲み込みそうだ。

 【指宿健斗】「早く助け出せ!」

 そう言って、その場にいた全員が森下の手から光る巻物から助け出そうとした。だが、その時でも光の強さは勢いを増し続けている。

 【全員】「うわぁ〜〜〜!!」

 そして、ついに光は衰えることなく、その場にいた健斗達全員を飲み込んでしまった。

 健斗達を飲み込んだ光は、突然輝きが減り、最終的に光自体も消え、蔵の中に健斗達の姿が全員忽然と消えてしまったのだった…。




 ≪ 第7話に続く ≫

※この続きは、2009年7月頃の公開予定です。なお、制作状況の都合により、予告無く公開延期または公開を早める場合がありますので予めご了承下さい。

※この作品に関するご意見・ご感想などがありましたら、お気軽にメッセージでお送り下さい。今後の参考にさせていただきます。

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