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第4話 織田信長、降臨!

★ 当作品は忠実を基にしたフィクションです。実在の人物、事件、団体名などは一切関係ありません。

★ 当作品は他の小説作品とは異なった、オリジナル新スタイルの小説です。人によってはご不満などが出る場合がありますが予めご了承下さい。

★ 当作品の全話を、作者の許可無く無断で他所で全文公開・一部転載・改変などの行為を一切禁じます。



 ≪ 前回(第3話)までのあらすじ ≫

 お父さん、お母さん、そしてクラスの皆、担任の広沢美咲ひろさわみさき先生。

 私、神宮寺紗耶じんぐうじさやは、ひょんな事から自宅の蔵に保蔵されてあった巻物を見たことから、突然、戦国時代へとタイムスリップしてしまいました。

 右も左も分からない戦国の世で、私はサスケ君という少年と、小さな村を守る長の鹿之助さんに助けてもらいましたが、桶狭間おけはざまの戦いで敗れた今川義元いまがわよしもと軍の残党が、鹿之助さん達の村を急襲。サスケ君、鹿之助さん、そして村の人々は全員が命を落としてしまいました。

 【鹿之助】「い、生きて下さい。い、生きて、あ、アナタの元の時代へ、帰れるよう、祈っています…。あ、ありがとう…。」

 私は、泣きました。私を助けてくれた人が、目の前で死んでしまう光景を目の当たりにしました。

 そんな時、泣いている私の横に長髪の戦国武将・明智光秀あけちみつひでが私の前に姿を現しました。

 【明智光秀】「私の命を懸けて、今度は私がアナタを守ります! …それが、民である鹿之助の最後の望みです。」

 そして今、私の横には明智光秀がいます。

 【神宮寺紗耶】「私、絶対に生きて、元の世界へ戻ってみせるから! 絶対に、生きて帰ってやる!!」」


 【神宮寺紗耶】「う〜〜ん…。」

 【明智光秀】「・・・・。」

 【神宮寺紗耶】「う〜〜ん…。」

 【明智光秀】「…あの、先程から何をしているのですか?」

 【神宮寺紗耶】「うるさいわね。今が大事な時なんだから話しかけないでよ!」

 【明智光秀】「大事な時って…。草の上に仰向けで寝転がっているアナタの姿は、どう見ても大事な時には見えないのですが…。」

 この戦国時代にタイムスリップしてから3日後の昼、私と光秀(明智光秀)さんは、鹿之助さん達の村から少し離れた場所にある深い森の中、私がこの時代に出現した場所にいた。

 とにかく、今すぐにでも元の時代へ戻りたかった。こんな危険な時代は、すぐにでも去りたい。でも、どうやったら戻れるのだろうか…。

 私は、とりあえず自分の両目を閉じて、必死に念じた。何回も、何回も。だが、何も変化は無い。

 今度は、草の地面に寝そべって両目を閉じ、まるで寝ているような状態になった。気持ちを落ち着ければ、目を開けた時にはきっと元の時代に帰ってきているハズだ。

 それなのに、光秀さんの呆れたような声で、気持ちを落ち着けることが出来なかったのである。

 【明智光秀】「…もしかして、アナタは昨夜の戦いでどこか頭を打たれたのですか?」

 それを聞いて、私はムッとした。

 【神宮寺紗耶】「私はどこも悪くないわ。ただ、元の時代へ戻りたいだけなの! 邪魔だから、あっちへ行って!」

 【明智光秀】「…分かりました。」

 そう言って、光秀さんはその場を一旦去った。

 それから、どのくらい時間が経っただろうか。私は、何度も何度も諦めずに元の時代へ帰る方法を試していた。自分の頭をポカポカと叩いたり、自分の頬を手でつねったり…。だが、いずれも何の変化も無い。周囲から見れば、頭のおかしいバカな少女だ。

 ふと、私の目の前に落ちている小石に目がいった。そして、何を思ったのか、その小石を片手に取り、そのまま自分の頭を力強く殴ろうとした。

 と、その瞬間、間一髪のところで光秀さんが私の背後から小石を手に取った腕を掴んで止めた。

 【明智光秀】「何をしているんですか、紗耶さん!?」

 【神宮寺紗耶】「放して、放してよ!」

 だが、光秀さんは私の腕を力強く掴み放さず、その手に持っていた石を強引に奪って遠くに投げ捨てた。

 【明智光秀】「拾った石で自分の頭を殴るなんて、いったい何をするつもりですか!?」

 【神宮寺紗耶】「…して。」

 【明智光秀】「えっ?」

 【神宮寺紗耶】「…私を、殺して。」

 【明智光秀】「!」

 【神宮寺紗耶】「私が死ねば、きっと元の時代へ戻れる…。だから、私を今すぐ殺して!」

 パンッ!!

 その時、誰かが何かを力強く叩く音が森の中に響いた。

 その音の正体は、怒りに満ちた光秀さんが私の頬を平手で強く叩いた音だった。

 【神宮寺紗耶】「…えっ?」

 私は、何が起こったのか分からず叩かれた場所を自分の手で押さえたまま、光秀さんを見た。

 【明智光秀】「何をバカな事を…。そんな事をしても、元の時代へ戻れるハズが無い。ただ、アナタがこの時代で自らの命を落とすだけです! それに、私はアナタが目の前で命を落とすところを黙って見過ごすワケにはいきません!」

 【神宮寺紗耶】「だったら、どうすれば良いのよ!? どうすれば、私は元の時代へ帰れるの!? アナタなら帰れる方法を知っている、とでも言うの!?」

 【明智光秀】「それは…。」

 これに対しては、光秀さんも返答に困ったようだ。

 【神宮寺紗耶】「もういい! ほっといてよ!!」

 そう言って、私は突然その場を走って去って行った。

 【明智光秀】「あ、待ちなさい! 今1人になると危険です!!」

 だが、光秀さんの忠告は私の耳に受け入れられなかった。

 私は振り向きもせず、ただ深い森の中を駆け抜けた。いつの間にか、私の目から涙が出ているのに気がついた。

 私は、どうしたら良い? こんな時代に突然飛ばされて右も左も分からない、帰るスベも分からない。本物の真剣を持ち平気で村人達を襲い殺すような野蛮な人達もいる。出来れば、すぐにでも元の時代に帰りたい!

 私の心の中は、もう帰りたい一心だった。そのうち、私はこんな事を思うようになってきた。

 【神宮寺紗耶】(もしかしたら、この深い森を抜ければ、元の時代へ戻れるかもしれない!)

 根拠は無い。ただ、私の思考回路がそう感じさせたのだ。

 しばらくして、私は森を抜けた。すると、小さな小川が横に流れる砂利道じゃりみちの林道に出た。

 【神宮寺紗耶】(…元の時代へ戻れたの?)

 周囲を見回したが、ここが現代の世界なのか野蛮な世界なのか分からない。とにかく、私は無我夢中で森の中を駆け回ったので、体がヘトヘトになってしまった。すぐ傍に小川が流れていたので、そこで休むことにした。

 私は小石が並ぶ小川のほとりで腰を下ろした。

 静かな林道だ。川のせせらぎの音しか耳に入らない。のどかだ。まるで癒しだ。先程までの想いをふと無にさせてくれる。でも、やっぱり心の何処かに不安がある。

 【神宮寺紗耶】「ハァ〜…、何でこんな事になっちゃったの?」

 私は、大きくため息をついた。と、その時だった。

 【????】「ほう…。こんな山奥に、女が1人いるぞ。」

 見ると、そこに真剣を片手にした汚い皮で出来た服を着た、ニヤニヤと不気味な顔を見せる男たちがいた。

 【神宮寺紗耶】「な、何なの、アンタ達…。」

 【野盗のかしら】「俺達は、野盗やとうだ。オマエが着ているその変わった衣、そして持っているモノすべて出せ。」

 【神宮寺紗耶】「…イヤだと言ったら?」

 【野盗の頭】「フッ…。俺らだって、命まで奪おうとは考えていない。しかし、あまりに抵抗するのであれば、少々手荒になるがな…。」

 そう言って、野盗は手に持った刀を私に見せた。

 【野盗の頭】「…さあ、どうする? 女、オマエの答えは?」

 私は、自分の目で野盗達の人数を数えた。人数は5人。皆が刀を持っているが、果たしてそれを完全に使いこなせるのか…。

 私は、しばらく考え込んだ後、小川のほとりに落ちていた太い木の棒を手に持った。

 【野盗の頭】「それがオマエの答えか…。良いだろう。オマエがそのつもりなら、俺達も容赦はしない。オマエが選んだその行動、後悔させてやる。…たっぷり遊んでやりなッ!」

 そう言って、まず野盗の1人が私に向かって攻撃を仕掛けてきた。その野盗が刀を上から振り下ろそうとしてきたので、私は瞬時にそれをかわし、同時に野盗の腹に力強く太い木の棒を叩きつけた。

 【野盗】「ぐはっ!!」

 その野盗は、そのまま地面に倒れた。私は、それに目を向けず、残っている野盗達をにらみつけた。

 【野盗の頭】「やるじゃないか、小娘…。少しは楽しませてくれるようだ。だが、今度の相手は2人だぞ。」

 今度は2人の野盗が前に出てきた。その内の1人が先に刀を右から左へ一振りしてきたので、私はしゃがんでかわした。その瞬間、もう1人の野盗が私に向かって縦に一振りをしてきた。

 【神宮寺紗耶】「!」

 私はギリギリのところで、手にしていた太い木の棒を盾にして、後からの攻撃に対処することができた。だが、相手の攻撃が強すぎたのか、私が持っている太い木の棒の一部が欠けてしまった。私は、ハアハアと息切れをしていた。

 【野盗の頭】「なかなか良い動きをするじゃないか。…しかし、武器がそれでは時間の問題だ。」

 先程の2人の野盗がまた攻撃を仕掛けてきた。でも、2人同時による攻撃ではなかった。私は相手の攻撃をかわし、時には攻撃を太い木の棒で受け止めたりしながら2人を倒した。残るは、野盗の頭と思われる男と手下と思われる男の2人。これなら勝てる!

 【神宮寺紗耶】「あと2人! さあ、掛かってきなさい!!」

と、私は残りの野盗たちに向かって力強く言った。

 【野盗の頭】「…2人? 小娘、俺達が5人で動いていると思っているのか?」

 【神宮寺紗耶】「えっ?」

 その瞬間、私は後ろから羽交はがめをされた。私は、もう1人の野盗が背後から迫ってくるのが気づかなかった。実は、この野盗は5人組ではなく6人組だったのだ。

 手に持っていた太い木の棒を叩き落され、さらに羽交い絞めもされて私は身動きが取れない。必死に抵抗して振りほどこうとしたが無理だった。

 【神宮寺紗耶】「は、放して!」

と、私は大きな声で叫んだが、羽交い絞めをした野盗に片手で口を押さえつけられてしまった。

 【野盗の頭】「…俺は無駄な殺しは好きじゃない。しかも、相手がまだ若い小娘なら尚更なおさらだ。このまま黙って持っているモノを引き渡せば、余計な屈辱を受けずに済むぞ?」

 私が倒した野盗や残りの野盗たちが、不気味な笑顔でジワリジワリと私に迫ってきた。武器も無く、身動きすら出来ない。私はこの状況を受け止め、覚悟を決めた。

 と、その時だった。

 森の中から何かが飛んできて、それが私を羽交い絞めにしている野盗の顔面に当たった。思わぬ攻撃を受け、その野盗は「グアッ!」と悲鳴を上げながら思わず両手を顔にやった。その時、私は羽交い絞めから解放された。

 刀を納める黒いさやがカランカランと音を立てて地面に落ちていた。

 【神宮寺紗耶】「これは…。」

 私は、その刀の鞘に見覚えがあった。この鞘が森の中から飛んできたということは…。

 【野盗の頭】「だ、誰だ!? 出てきやがれ!!」

 野盗たちは鞘が飛んできた森の中を見た。すると、遠くから何かが近づいてくる音が聞こえる。その音の大きさが次第に大きくなっていく。

 と、次の瞬間、森の中を睨みつけていた野盗達の頭上を何かが飛び越えていった。馬である。そして、その馬の上に乗っていたのが…、

 【神宮寺紗耶】「あ、明智光秀…。」

 長い刀を手にした光秀さんが颯爽さっそうと馬に乗って現れた。そして、光秀さんが乗った馬は私の前にやって来て止まった。

 【明智光秀】「大丈夫ですか、紗耶さん?」

 【神宮寺紗耶】「え、ええ…。」

 【野盗の頭】「何だ、テメェは!? この小娘の仲間か!?」

 【明智光秀】「だから言ったじゃないですか。1人で行動するのは危険だ、って…。」

 【神宮寺紗耶】「で、でも…。」

 【野党の頭】「…って、無視するなぁッ!! 構わん、コイツもやっちまえ!!」

 野盗たちが頭を含めて6人全員で一斉攻撃を仕掛けてきた。光秀さんは長い刀を手にしたまま馬から飛び降り馬から離れて、6人全員の攻撃を刀1本で全て受け止めた。そして、颯爽と野盗達を刀のやいばではなく刀のつかの部分を使って倒していった。

 そして、野盗たちは私にも本気で攻撃を仕掛けてきた。野盗の1人が勢いよく私に向かって刀を縦に振り下ろしてきたので、それを私は咄嗟とっさにかわしながら先程叩き落された太い木の棒を拾い上げて、瞬時に顔面にそれを力強く叩きつけて倒した。

 続いて私に向かってきたのは、なんと野盗の頭だった。頭は刀を横に一振りしてきたので、それを私は後ろに少し下がって攻撃をかわした。次に頭は縦に振り下ろそうとしてきた。もちろん、私はそれを横に避けるつもりでいたが、その時、私が倒した野盗が精一杯の力で私の片足を握り締めた。このままでは頭の攻撃をかわすことができない。

 【野盗の頭】「スキありぃーッ!!」

 頭は、そのまま刀を縦に構えて振り下ろしてきた。私は咄嗟に両目をつぶった。

 その時、ドンッと何かが鳴り響く音が聞こえた。

見ると、頭が手に持っていた刀の刃が粉々に割れている。その背後には、小さな火縄銃を構えた光秀さんの姿があった。光秀さんが相手をした野盗たちは全員倒したようだ。

【明智光秀】「…ふぅ〜。やはり、私にはコレ(銃)は向いていませんね。」

それを見た私は、私の片足を掴んでいた野盗の手をもう一方の足で何度も踏みつけて、野盗の手から足を解放した。そして、私は太い木の棒を野盗の頭に正面から突きつけた。頭の背後からは光秀さんの火縄銃が狙っている。

【神宮寺紗耶】「勝負あったみたいね。」

【明智光秀】「大人しく降参しなさい。」

【野盗の頭】「…く、クソッ!」

野盗の頭は、ギリギリと歯軋りをしている。頭の目はしばらく私を睨みつけていたが、時々チラッと横にそらしている。何を見ているのだろう。

すると突然、頭が何かに向かって走り出した。頭が向かった先には、光秀さんの馬がいた。

【神宮寺紗耶】「しまった!」

頭は、光秀さんの馬に乗って逃げるつもりだ。私は咄嗟に明智光秀を見た。だが、光秀さんは動こうとしない。なぜ?

【明智光秀】「大丈夫ですよ、紗耶さん。」

【神宮寺紗耶】「えっ?」

【明智光秀】「私の馬は、私以外の者が乗ると…。」

今にも馬に飛び乗りそうな頭だったが、その時、ポカッと馬に前片足で顔面を蹴られ、フラフラしながら頭はそのまま小川にダイブした。

【明智光秀】「(足で)蹴られるんですよ。」

私は、あ然とした顔で、小川にダイブして倒れている頭を見た。お気の毒に…。

私の後ろで光秀さんは刀を手にしたまま、黙って自分の馬に乗り、そして私に向かって言った。

【明智光秀】「紗耶さん、お怪我は無いですか?」

【神宮寺紗耶】「えっ!? …あ、ハイ。」

【明智光秀】「そうですか。それは良かった。」

と、光秀さんは私にニコッと笑顔を見せた。

 【神宮寺紗耶】「あ、あの…、助けてくれて、ありがとうございます。」

 私は光秀さんに向かってペコッと頭を下げた。それを見て、光秀さんはフッと笑った。

 【明智光秀】「言ったじゃないですか。私の命を賭けてでもアナタを守ります、って…。」

 【神宮寺紗耶】「!」

 【明智光秀】「私がこのような事を言っても、今のアナタは突然この時代に現れて孤独の身。アナタが今の現実を受け入れられない気持ちも良く分かります。ですが、今のアナタは独りじゃありません。いつだってアナタの周りには助けてくれる人がいた。鹿之助さん、サスケ、…そして私。私がアナタを助けます。今も、そしてこれからも…。」

 【神宮寺紗耶】「でも、私はこれからどうすれば良いの? 住むところも無いし、食べるモノもない。野宿するのにも、こんな野盗たちがいて危険だわ…。」

 【明智光秀】「ふむ…。」

 そう言って、明智光秀は何か考え事を始めた。

 【明智光秀】「…それなら、私の家に来ませんか?」

 【神宮寺紗耶】「家?」

 【明智光秀】「正確に言えば、“しろ”って言った方が正解ですね。ココから少し遠いですが、1日も掛かりません。そこで、ゆっくりアナタが元の時代へ帰れる方法を探しましょう。きっと、何か見つかるハズです。」

 【神宮寺紗耶】「・・・・。」

 私は、しばらく考え込んだ。そして、ついに決断した。

 【神宮寺紗耶】「…分かったわ。アナタが住む“城”に私を連れて行って!」

 【明智光秀】「そう言ってくれると思っていました。」

と、再び明智光秀はニコッと笑顔を見せた。

 【明智光秀】「じゃあ、行きましょうか。」

 【神宮寺紗耶】「あ、ちょっと待って!」

 【明智光秀】「え?」

 私は、近くに落ちていた明智光秀のさやを拾って、明智光秀に差し出した。

 【神宮寺紗耶】「はい、忘れ物。刀を持ったままでは危険でしょ?」

 【明智光秀】「!」

 この時、明智光秀はニコッと笑顔を見せる私の顔を見てドキッとした。何かを思い出したようだ。

 【明智光秀】「…おつね。」

 【神宮寺紗耶】「え?」

 【明智光秀】「…あ、い、いえ、何でも。生き別れになった昔の“友”をふと思い出しまして…。」

 そう言って、明智光秀は私から鞘を受け取って、それに自分の刀を納めた。

 【神宮寺紗耶】「ふ〜ん…。」

 【明智光秀】「さっ、行きましょうか。神宮寺殿、私の馬に乗って下さい。」

と、明智光秀が私に手を差し出した。走ったり戦ったりで疲れてしまった私は馬に乗りたかったけれど、ちょっとした不安があったからだ。

 【明智光秀】「どうしました?」

 【神宮寺紗耶】「この馬、アナタ以外の人が乗ろうとすると(馬に)蹴られるのよね? あんな感じみたいに…。」

 そう言って、私は今も倒れたままの野盗の頭を指差した。それを見た明智光秀はアハハ…と大声で笑った。

 【神宮寺紗耶】「な、何よ!?」

 【明智光秀】「大丈夫ですよ。アナタなら蹴りませんよ。それに、鹿之助さんの村からこの森に来るまで、アナタは普通にこの馬の背中に乗って来たじゃないですか。」

 あ、確かに…。

 【明智光秀】「さ、どうぞ。」

 再び、明智光秀が手を差し出した。私はそれに捕まって、明智光秀の馬に乗った。私のすぐ後ろには馬の手綱たづなを引く明智光秀が乗っている。時折、明智光秀さんの息が私の髪に触れ、ちょっと私の心はドキドキしていた。

 そして、私と明智光秀が乗った馬は、ゆっくりと明智光秀が住むというお城へ向かいだした。

 


 【神宮寺紗耶】「オエエエエ…。」

 私は、明智光秀さんの馬に乗って、見渡す限り広い田圃が続く街道をゆっくりと進んでいた。

 【明智光秀】「大丈夫ですか、紗耶さん? 随分と顔色が悪いですよ?」

 【神宮寺紗耶】「しょうがないじゃないのよ!私、本物の馬に乗るのは初めてなんだから!」

 【明智光秀】「あまり騒がない方が良いですよ。ただでさえ、その不思議な着物で目立ってしまうんですから…。」

 不思議な着物、それは私が着ている高校の制服。確かに、この時代には似合わない。

 【神宮寺紗耶】「遊園地のメリーゴーランドの馬には何度も乗ったことがあるけれど、本物の馬に酔ってしまうなんて…。友達が聞いたら笑われるだろうなぁ、きっと。」

 【明智光秀】「“めりーごーらんど”って何ですか?」

 【神宮寺紗耶】「あ、ううん。なんでもないの…。」

 【明智光秀】「アナタの時代には、着物だけでなく不思議なモノまであるんですね。」

 私は、それを聞いてアハハ…と苦笑いして誤魔化した。

 【神宮寺紗耶】「ところで、光秀さんが住む“お城”って?」

 【明智光秀】「信長様が居城している墨俣城すのまたじょうです。もうじき着くと思います。まあ、そこまでの辛抱ですよ、紗耶さん。」

 何か光秀さんはもの凄く重要な言葉を言った気がするが、気分がもの凄く悪い私にはその肝心な部分が聞こえなかった。

 【神宮寺紗耶】「う〜…。」

 だんだん気分が悪くなってきた。それに気づいた光秀さんは、目の前に茶屋を見つけ、

 【明智光秀】「じゃあ、あそこの茶屋で少し休憩をしましょう。」

と、私に言った。

 茶屋の外の長椅子に私は腰を下ろして、気分を和らげていた。その時、光秀さんが茶屋の中からお団子とお茶を2人分持って出てきた。

 【明智光秀】「お団子とお茶です。気分が良くなりますよ。」

 【神宮寺紗耶】「あ、ありがとう…。」

 私は、光秀さんからお団子とお茶を受け取った。光秀さんは、私の横に座って、お茶を一口飲んだ。

 【神宮寺紗耶】「…あ、このお団子、おいしい!」

 【明智光秀】「それは良かった。この茶屋のお団子は美味しいと評判で、よく私も食べに来るんですよ。気に入ってもらえて良かったです。」

 お茶も一口飲んだ。温かくて美味しいお茶だ。

 【明智光秀】「顔色、先ほどより良くなってきましたね。」

 【神宮寺紗耶】「そうですか? この美味しいお茶とお団子が効いたのかな。」

 それを聞いて、光秀さんはフッと笑って、またお茶を一口飲んだ。

 【神宮寺紗耶】「わっ!」

 その時、私の前に光秀さんの馬が顔を出した。私のお団子をジッと見ている。

 【神宮寺紗耶】「…お団子、食べたいの?」

 その馬が、何だかお団子を食べたそうな顔をしていた。

 【神宮寺紗耶】「いいよ、お食べ。」

 そう言って、私は私のお団子を馬に食べさせた。馬は、美味しそうにお団子をパクリと食べた。

 【神宮寺紗耶】「おいしい?」

 私は笑顔で馬に問いかけた。馬は、ヒヒーンと声を上げた。

 【明智光秀】「とても喜んでいますよ。」

 【神宮寺紗耶】「本当に?」

 【明智光秀】「ええ!本来、私しかなつかないのですが、私以外でこんなに喜ぶホウロク見たのは初めてですよ。」

 【神宮寺紗耶】「ホウロク?」

 【明智光秀】「この馬の名前ですよ。」

 【神宮寺紗耶】「そっか!キミ、ホウロクって言うのね? なんだか、カワイイ!」

と、私はホウロクに笑顔を見せて、頭を優しく撫でた。

 【明智光秀】「・・・・・。」

 【神宮寺紗耶】「…どうしたの? 私の顔をジッと見て…。私の顔に何か付いている?」

 【明智光秀】「えっ!? あ、いや…、紗耶さんは笑顔がとても素敵ですね。」

 【神宮寺紗耶】「えっ!? そ、そう…?」

 急に笑顔が素敵と言われ、ドキッとしてしまった。

 【明智光秀】「その笑顔を見ていると、その人の性格が分かります。アナタの笑顔は本物です。」

 【神宮寺紗耶】「あ、ありがとう…。」

 【明智光秀】「アナタの、その笑顔は、いったいどこから出てくるのですか?」

 【神宮寺紗耶】「・・・・・。」

 【明智光秀】「・・・?」

 【神宮寺紗耶】「…この笑顔は、私が一番尊敬する人から貰った笑顔なの。」

 【明智光秀】「一番尊敬している人?」

 【神宮寺紗耶】「そう…。私は、以前まで本当に笑ったこと、無かったの…。でも、その人に出会ってから、私は本当の自分を見せる事が出来た。今の私の姿があるのは、その人のおかげなの…。」

 【明智光秀】「そうですか…。」

 光秀さんは、そう言って雲一つ無い晴天の空を見上げた。

 【神宮寺紗耶】「ねえ、アナタなら誰なの?」

 【明智光秀】「え?」

 【神宮寺紗耶】「一番尊敬する人!」

 【明智光秀】「私ですか? …私がこの世で尊敬する御方、それは信長様です。」

 【神宮寺紗耶】「信長様って、あの織田信長おだのぶなが?」

 それを聞いた光秀さんは、黙ってコクリとうなずいた。

 【神宮寺紗耶】「えええええええええええッ〜!!!!????」

 私は、ホウロクがビックリするくらいの大声で驚いた。

 【神宮寺紗耶】「あ、あの信長がこの時代にいるの!?」

 【明智光秀】「え、ええ…。私たちが今向かっている墨俣城の城主ですよ。…って、先程言いましたよね?」

と、光秀さんは不思議そうな顔をして言った。私が聞き取れなかった“肝心な部分”とはコレの事だったのだ。

 【明智光秀】「“あの織田信長”って、アナタの国では信長様はそれ程有名なのですか?」

 【神宮寺紗耶】「え、ええ、まあ…。大の大人なら知らない人はいないくらいです。」

 【明智光秀】「そうですか…。それは良かった。私が仕える主がそんなに力を持った人であったとは…。どうやら、私の目に狂いはなかったようですね。」

 【神宮寺紗耶】「…どういうこと?」

 【明智光秀】「私の望みは、この戦国乱世の終結。それを成し遂げうる主を求め、私は流浪るろうの旅に出ていました。そして、その道中で“あの御方おかた”に出会い、その器を見た。“あの御方”なら、この乱世を終わらせてくれる、と…。」

 【????】「それは無理だね。この乱世を治めるのは、あの“ウツケ”ではなく、この俺様だ!」

 【神宮寺紗耶&明智光秀】「!」

 気がつくと、私たちのすぐ傍に、大きな体をしたチョンマゲ男が立っていた。

 【明智光秀】「オマエは、斎藤龍興さいとうたつおき!」

 【斎藤龍興】「よう、光秀!」

 光秀さんは、私を体で隠すように、私の前に出た。

 【神宮寺紗耶】「この人、誰なの?」

 【明智光秀】「斎藤龍興。美濃みの(※現在の岐阜県)の国主です。」

と、私に小さな声で言った。

 【明智光秀】「龍興! ここは、信長様の領地、尾張(※現在の愛知県)ですぞ!」

 そう言って、光秀さんは腰の刀に手をやった。

 【斎藤龍興】「おっと、戦いに来たんじゃないぞ。散歩だ、散歩。」

 【明智光秀】「ここは、オマエの領地では無い! すぐに立ち去りなさい!!」

 【斎藤龍興】「分かっているって! すぐに立ち去るから、そう怒るなよ!」

 すると龍興は、私の存在に気がついた。

 【斎藤龍興】「お、見ない顔だな。この女は、オマエの女子おなごか?」

 【明智光秀】「それは、アナタに関係の無い事です!」

 【斎藤龍興】「ほぅ〜…。」

 そう言って、龍興は私を不気味な目でジロジロと見ていた。

 【斎藤龍興】「…ま、いっか! それじゃあ、俺は帰るから、オマエんとこの大将にヨロシクな!」

 そう言い残し、斎藤龍興は去って行った。それを確認した光秀さんは、

 【明智光秀】「…これは、ただちに城へ戻ったほうが良さそうですね。」

 【神宮寺紗耶】「え?」




 その頃、現代の日本。

 私が姿を消してから1日が経ち、私が通う学校では、ちょっとした騒ぎになっていた。

 【藤田慶一郎ふじたけいいちろう】「おい、健斗! 紗耶が家出をしたって言うのは本当か!?」

 【指宿健斗いぶすきけんと】「家出って、まだ決め付けるなよ!」

 【酒匂義人さこうよしと】「でも、昨日から姿を見せないんだろ?」

 【青梅おうめあい】「健斗、紗耶から何か連絡はあったの?」

 【指宿健斗】「まだ、何も…。紗耶が行きそうな所は、全部確認したけれど、見つかっていない…。」

 健斗は、ガックリと落ち込んでいた。

 【久住瑠璃くすみるり】「大丈夫よ。きっと紗耶ちゃん、すぐに帰ってくるわよ。」

 【指宿健斗】「だと良いんだけれどな…。」

 一方、その学校の職員室では、私のクラスの担任の広沢美咲ひろさわみさき先生が、知人の警視庁の警視である佐野孝一さのこういちに電話をしていた。

 【広沢美咲】「もしもし? 何か進展はありましたか?」

 【佐野孝一】『ああ、美咲ちゃん? いや、それがさ、全然ダメだね。コッチも行きそうな所は全て確認したんだけれど、何も手がかりは無し。』

 【広沢美咲】「そう…。」

 【佐野孝一】『そんなに落ち込むなって、美咲ちゃん。キミらしくない。』

 【広沢美咲】「だって、また私の生徒達に何かあったら、いてもたってもいられなくて、本当に心配で…。」

 【佐野孝一】『それは、美咲ちゃんらしいね。…まあ、とにかく、何か手がかりを発見したら、すぐに連絡するよ!』

 【広沢美咲】「うん! 忙しいところを、ありがとうね!」

 【佐野孝一】『良いって、良いって、これくらい! 美咲ちゃんの頼みだったら、いつでも引き受けるぞ。』

 【広沢美咲】「ありがとう!」

 【佐野孝一】『あ、そのかわり、今度、一緒に食事でも…。』

 佐野がまだ話し中だと言うのに、広沢先生は気づかずに、ピッと電話を切った。

 【佐野孝一】「…(電話を)切るなよ。」

【堀 幸也】「何をガッカリしているんですか、佐野警視?」

 【佐野孝一】「…別に。」

 【堀 幸也】「?」

 広沢先生は、ハァ〜とため息を出すと、そのまま授業のために教室へ向かった。


 【広沢美咲】「はい、みんな席に着いて。授業、始めるわよ!」

 広沢先生の姿を見たクラスの生徒達は、一斉に美咲の周りに集まった。

 【中島悠子なかじまゆうこ】「先生! 紗耶の事で、何か進展がありましたか?」

 【深田光男ふかだみつお】「紗耶さんは、無事なんですか!?」

 【伊吹彩音いぶきあやね】「何か手がかりは!?」

 教室は、生徒達の声で一時騒然となった。

 【広沢美咲】「みんな、とりあえず落ち着いて! 他のクラスの迷惑になるから、静かに!!」

 広沢先生のその一言で生徒達は静まり返り、それぞれ自分の席に戻った。それを目で確認した広沢先生は、教室の教壇に立った。

 【広沢美咲】「…みんなも知っているとおり、今このクラスには生徒の神宮寺紗耶さんが不在です。私たちも警察と協力して必死に捜索をしたのですが、残念ながら一向に手がかりは掴めていません。」

 【久須美草太くすみそうた】「アイツ、授業がイヤになってサボったんじゃねえの?」

 【指宿健斗】「アイツは、そんな事をするヤツじゃねえよ!」

 【久須美草太】「アレ? 何でオマエ、そんなに怒っているの? …まさか、アイツに惚れているのか?」

 【指宿健斗】「そ、そんなんじゃ、ね、ねえよ…。」

 【久須美草太】「お〜、図星かぁ〜? オマエ、いつもアイツの事を見ていたもんなぁ。」

 【指宿健斗】「違うって、言っているだろ!!」

 すると健斗はガバッと立ち上がって、久須美に怒って、顔を殴った。

 【久須美草太】「痛ってぇ〜! 何をするんだ、このヤロウッ!!」

と、久須美も怒って、指宿の顔を殴り返した。そして、たちまちケンカになり、教室は再び大騒ぎになった。周りにいた生徒達が、必死に彼らのケンカを仲裁しようとした。広沢先生も仲裁したが、彼らのケンカは、なかなか治まらなかった。

 【広沢美咲】「やめなさい、2人とも!!」

 最終的に、あまり怒った姿を見せない広沢先生が本気で怒り、その瞬間、2人を男子生徒が強引に取り押さえ、やっとケンカは治まった。

 【広沢美咲】「いい加減にしなさい、2人とも!」

 広沢先生は怒った顔で、互いを睨みつけている2人を見た。

 【広沢美咲】「久須美君、アナタは調子に乗りすぎよ。」

 【久須美草太】「えっ!? 先生、俺のせいッスか!?」

 【金村美奈】「どう見ても、アンタが悪い!」

 【楠山太陽くすやまたいよう】「少しは、健斗の気持ちも考えてやれよ! 健斗は、紗耶の幼なじみなんだから…。」

 【久須美草太】「…チッ!」

 【指宿健斗】「良いよ、もう…。」

 その途端、健斗は走って教室を出て行った。

 【広沢美咲】「あ、健斗君!」

 広沢先生は、走って出て行った健斗を追いかけようとした。

 【広沢美咲】「ちょっと悪いけれど、自習していてくれる? すぐに戻ってくるから!」

 そう言い残して、広沢先生は教室を出て行った。



 茶屋を後にして、私と明智光秀さんは織田信長が居城している墨俣城すのまたじょうへ向かっていた。

 街道を少し外れた林道をしばらく進むと、林の中から小さなお城が見えてきた。

 【神宮寺紗耶】「…あれは?」

 【明智光秀】「あれこそ、“あの御方”が居城されている『墨俣城』です。」

 私は、明智光秀さんと共に城の中へ入った。

 一見すると、そんなに大きくないお城だけれど、城の中は意外と広いんだなぁ〜。

 城のお庭のような場所(?)には、大勢の兵士たちの姿があって、皆、高校の制服を着ている私をジロジロと見ている。当然と言ったら、当然よね…。

 私は、城の中の大広間に通された。奥は、床が一段少し高くなっており、殿様など偉い人がそこに座るのだろう。

 私の左横には、明智光秀さんが座った。私たちの周りには数人の兵士と武将達の姿があった。彼らは、やっぱり私をジロジロと見ている。

 しばらく待っていると、大広間に1人の美少年が入ってきた。

 【神宮寺紗耶】「…かっこいい。」

 【明智光秀】「信長様のお世話をしている森蘭丸もりらんまるです。」

 その森蘭丸が、私の右横を通り過ぎて行った。

 私と同じくらいの年で、私よりも背が高い。なのに、あの織田信長のお世話をしているなんて、何か凄く感じる…。

 その後、2人の綺麗な女性が大広間に入ってきた。

 【明智光秀】「先頭を歩いているのは、信長様の妻である帰蝶きちょう様。その後ろから歩いてくるのは、信長様の妹である、おいち様です。」

 “帰蝶”と言う人は、光秀さんよりも少し年上くらい。“お市”と言う人は、私と同じくらいの年代で、お姫様のような素敵な姿をしている。2人とも、私がウットリと見惚れてしまうくらい美人…。あ、もちろん私も美人よ(それなりに…)。

 帰蝶とお市の2人が、奥の指定の場所に座ると、その場にいた私以外の武将達の全員が一斉に頭を下げた。

 【森蘭丸】「墨俣城城主、織田信長公のおなーりぃー。」

 “戦国の魔王”と呼ばれた、あの有名な戦国武将の織田信長が、ついに私の前に…。

 森蘭丸の声と共に、奥から織田信長がゆっくりと私の前に姿を現した。

 太く力強い眉毛、大きく鋭い目、鼻筋の通った高い鼻、引き締まった口、面長で鋭い輪郭りんかく、男らしく蓄えられた黒ヒゲ。歴史の教科書で見る織田信長の肖像画よりも意外と美男子だ。でも、私の体がブルブル震えるほどのオーラがある。

 一目見ただけで、織田信長の目つきが怖く感じる。

 【織田信長】「第六天魔王、降臨…。皆の者、面を上げい…。」

 【武将達全員】「ハッ!」

 そう言って、頭を深く下げていた武将達は全員同時に顔を上げた。

 信長は、奥の間に置かれた高級そうな座布団の上に腰を下ろして、そのまま光秀さんを見て言った。

 【織田信長】「光秀、うぬの武功、褒めおこう…。」

 【明智光秀】「ありがたきお言葉、感謝致します。」

と、光秀さんは再度、頭を下げた。

 【織田信長】「うむ…。」

 信長は、そのまま鋭い目つきで光秀さんの横に正座していた私を見た。

 【織田信長】「うぬ(オマエ)、か…。“未来”から来たと申す者は…。」

 【明智光秀】「はい…。」

 【織田信長】「うぬの名、何と申す。」

 【神宮寺紗耶】「神宮寺…紗耶と言います。」

 【織田信長】「紗耶、か…。うぬの名、覚えておこう…。」

 【神宮寺紗耶】「あ、ありがとうございます…。」

 【柴田勝家しばたかついえ】「信長様、この者は、きっと敵が送り込んだ使いに違いねぇ。ただちに、その首を切ってしまいましょう!」

 【神宮寺紗耶】「!」

 【明智光秀】「何を言うのですか、勝家!」

 【柴田勝家】「未来から来たって言うのも、きっとウソに違いない。そんな奇妙な衣を着て、このワシが騙されると思ったか!!」

 【明智光秀】「違う! この若き娘は、本当に未来から来たのです!!」

 【織田信長】「・・・・。」

 【柴田勝家】「違うと言う根拠はあるのか、光秀!」

 【木下藤吉郎(きのしたとうきちろう。※のちに豊臣秀吉に)】「じゃあ逆に聞くけれど、勝家。オマエが、この者を敵の使いだと言う根拠はあるのか?」

 【柴田勝家】「むっ…。」

 【木下藤吉郎】「根拠なんて無いんだろ?」

 【柴田勝家】「この生意気なサルが!!」

 そう言って、怒った勝家が藤吉郎に向かって殴りかかろうとした。だが、身軽な藤吉郎は、まるでサルみたいに軽々と攻撃をかわした。

 【明智光秀】「おやめなさい! 殿の前ですよ!!」

 【帰蝶】「・・・・・。」

 【柴田勝家】「…チッ!」

 舌打ちをした勝家は、すぐに元の場所へ座り、

 【柴田勝家】「申し訳ありませんでした、信長様。」

と信長に頭を下げた。

 【織田信長】「…無価値。」

と、勝家に向かって言った信長は、そのまま再び私を見た。

 【織田信長】「紗耶…、と言ったな? うぬは、何か特技でもあるのか?」

 【神宮寺紗耶】「弓道と武術を…。」

 【織田信長】「クク…、そうか…。」

 次の瞬間、信長は思いもよらぬ言葉を言った。

 【織田信長】「うぬを織田家家臣に任ずる。」

 【神宮寺紗耶】「えっ…!?」

 信長の一言で、その場にいた全員が一斉に驚いた。

 【柴田勝家】「信長様、コイツは幼き少女ですぞ! 正体が分からぬ者を織田家家臣に任ずるのは…。」

 【織田信長】「黙れ、勝家。この信長に抗うつもりか?」

と、信長はそう言って勝家を睨みつけた。

 【柴田勝家】「い、いえ、滅相もありません…。どうか、お許しを…。」

 【織田信長】「光秀、サル、市!」

 【明智光秀&木下藤吉郎】「ハッ!」

 【お市】「はい。」

 【織田信長】「この少女の世話は、うぬらに任せる。」

 【明智光秀&木下藤吉郎】「承知致しました。」

 【お市】「かしこまりました、兄上あにうえ。」

 そう言って、お市が立ち上がって、私の所へやって来た。

 【お市】「さあ、行きましょう。私の後に付いてきて下さい。」

と、私に言った。

 【神宮寺紗耶】「あ、ハイッ!」

 私とお市は、一緒に部屋を出て行った。それを信長達は目で確認した。

 【明智光秀】「信長様。」

 【織田信長】「どうした、光秀?」

 【明智光秀】「さきほど、織田家領地内で斎藤龍興の姿を確認しました。」

 【織田信長】「・・・・。」

 斎藤龍興と聞いて、武将達にザワめきが走った。

 【織田信長】「龍興は、何をしていた?」

 【明智光秀】「本人に聞くところによりますと、“ただの散歩”と申しておりました。」

 【前田利家まえだとしいえ】「散歩と言うのはウソだ! きっと、信長様の領地を手に入れる下見をしていたに違いねぇッ!!」

 【丹羽長秀にわながひで】「オラも、そう思う!」

 【柴田勝家】「俺も同感だッ!」

 【織田信長】「・・・・。」

 【木下藤吉郎】「信長様は、どうお考えですか?」

 【織田信長】「…美濃攻め、だ。斎藤龍興を破り、美濃をこの信長の領地にする。」

 “美濃攻め”と言う言葉を聞いた瞬間、武将達からオーッという声が上がった。

 【織田信長】「フッ…。」



 <第5話に続く>


★ 次回(第5話)は2009年5月上旬頃を予定しています。なお、都合により予告無く変更する場合がありますので予めご了承下さい。

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