第2話 サスケと鹿之助
※ この作品はフィクションであり、実在の人物、忠実、地名などは一切関係ありません。
※ この作品では、他の小説とは一風異なった新スタイルの小説です。人によっては読みにくい等の支障が出る場合もありますが予めご了承下さい。
【神宮寺紗耶】「どこなの、ここ…。」
突然、自分の家の蔵から見知らぬ森の中に迷い込んだ私。周囲を見回したけれど、人誰一人見えず、森ばかり。
【神宮寺紗耶】「誰か〜。誰か、いませんかぁ〜?」
とりあえず誰かいないか、大声で叫んでみた。誰の返事もない。そりゃ当然か…。
【神宮寺紗耶】「たぶん、これは夢ね。そう、夢よ、夢! きっと、そうに違いないわ。」
そう言って、自分の頬を手で抓ってみた。痛い…。
【神宮寺紗耶】「ゆ、夢じゃないの…?」
私は、ハァ〜と大きくため息をついて空を見た。晴れた夕方の空だ。もうじき夜が近いのだろう。
【神宮寺紗耶】「お母さん…、お父さん…、広沢先生…、みんな…。」
空に、皆の笑顔が見えたような気がした。
【神宮寺紗耶】「どうしよう…。」
とりあえず、私は前に向かって歩いて行った。
どこまで歩いても森だった。森のざわめき音しか聞こえない。
しばらく歩くと、目の前に森で囲まれた河原を見つけた。綺麗な小川だった。
私は、小川に両手を入れて川の水を一口飲んだ。
【神宮寺紗耶】「…おいしい、このお水。」
スーパーなどで売っているミネラルウォーターよりも遥かに美味しかった。
私は、この河原で一休みする事にした。河原には、綺麗な小石が沢山転がっており、私はそこに座って、川に石をポチャポチャと投げていた。
【神宮寺紗耶】「あ〜あ…。本当、ココは一体どこの森なのかな? 日本…よね?」
その時、森の奥からガサガサと音がする。何だろうと思って、その音がした方向を見た瞬間、その音がした草陰から5歳くらいの小さな男の子が走って私の前にやって来た。
【神宮寺紗耶】「えっ!?」
その男の子の姿を見た瞬間、私はビックリした。なぜなら、その男の子が着ている洋服が、今の日本では見たことがない汚れた着物を着ていたからだ。
男の子は、私の存在に気づき、涙目で私を見て、突然私に抱き着いてきた。
【男の子】「助けて!!」
【神宮寺紗耶】「えっ!?」
日本語だ。とりあえず、ここは日本らしい。でも…。
【神宮寺紗耶】「た、助けて…って、誰に?」
すると、男の子が走ってきた同じ方向の草陰から、今度はサムライの格好をした男たち4人が現れた。その瞬間、男の子は私の後ろに身を隠した。ブルブルと男の子が震えているのが分かった。
4人のサムライ達は、1人だけ不気味な仮面を被っていた。どうやら、この男がリーダー格なのだろう。
【仮面の男】「ん…? なんだ、貴様は? 新手か?」
【神宮寺紗耶】「さ、サムライ!? な、なんで、こんな時代に!? …あ、分かった!これは時代劇のドラマの撮影ね? でも、私は出演者じゃないし、エキストラでもないわよ。女子高生の制服を着ているし…。」
【サムライの男2】「黙れッ、そこの小娘!」
そう言って、サムライの男の1人が、腰にあった鞘から刀を取り出して構えた。
【神宮寺紗耶】「し、真剣ッ…!? な、何を考えているの、アナタ達!?」
【サムライの男1】「小娘、オマエの後ろにいるガキをおとなしく渡せ。さもないと、オマエを殺す!」
【神宮寺紗耶】「ちょ、ちょっと待って。この男の子がアナタ達に何をしたのかは知らないけれど、私とこの子は何の関係もないの。だから、バカな事はやめてッ!」
【サムライの男3】「関係ない…? そのガキはオマエに助けを求めているじゃないか。」
【神宮寺紗耶】「そ、それは、たまたま…、偶然よ!」
【仮面の男】「フッ、まあ良い…。オマエ達、この小娘共々、殺っちまえ!!」
そう言って、周囲にいたサムライの男達が刀を構えて、私達に攻撃してきた。
私は、咄嗟に落ちていた木材で、男たちの刀による攻撃を受け止めた。そして、次の瞬間、私は木材で1人の男の顔を叩いた。
【サムライの男2】「ぐあああッ!!」
【神宮寺紗耶】「だてに武術部に入っているわけじゃないんだからね!」
【サムライの男3】「こ、この小娘ッ!!」
男は、私に刀を振り下ろしてきた。私は、それを寸前でかわし、刀を手にしているその男の腕を木材で叩き落した。
【サムライの男3】「ぐあッ!!」
私は、ハアハアと息を漏らしていた。
【仮面の男】(こ、この小娘…。手練の者2人を、木材でいとも簡単に倒すとは…。)
【神宮寺紗耶】「ハッ!」
私は、ハッとした。守っている小さな男の子の存在を忘れていた。後ろをチラッと見ると、その男の子はブルブル震えながら、私を見ていた。
【神宮寺紗耶】「逃げるわよッ!!」
私は、男の子の手を引いて、その場から逃げ出した。
【サムライの男1】「待て、コラッ!!」
当然、男達は私達の後を追いかけてきた。
私達は死に物狂いで森の中を走った。途中で身を隠せる草陰があったので、そこに私達は隠れた。
しばらくして、その草陰の横を男達が走って通過して行った。それを見て、私達はフゥーとため息をついた。
【神宮寺紗耶】「な、なんだったのよ、アイツら? と言うか、何なのよ、ココ!? 私の家の蔵にいたのよ!? なのに、何でアイツらに殺されかけるワケ!?」
【男の子】「し、知らないよ、そんなの…。」
私は無意識の内に、男の子に向かって怒っていたようで、男の子はビクビク震えながら私を見ていた。
【神宮寺紗耶】「…あ、ご、ゴメンね。怒っちゃって…。キミが知っているワケないものね…。」
【男の子】「・・・・・。」
【神宮寺紗耶】「あ、お詫びにキミの家まで送っていくわ。家、近いんでしょ?」
男の子は、しばらく考え込んでから、
【男の子】「こっちだよ。」
と言って、歩き出した。
しばらく歩くと、森を抜けて、周囲を森に囲まれた広場に出た。その広場には木で出来た家が数軒建っていた。どうやら、ここは小さな集落みたい。
その集落に住む人々は、みんなが薄汚れた着物を着ていて貧しそうな感じがする。
私が現れた瞬間、家の外にいた人々の視線を多く感じた。皆が珍しそうな顔や変な視線を送っていた。
【神宮寺紗耶】(あ、明らかに、私、浮いているじゃない!?)
すると、一軒の家から1人の30歳くらいの男の人が顔を出した。
【????】「さ、サスケッ!!」
【男の子】「父上ッ!!」
男の子は、その人に向かって一直線に走っていった。
【神宮寺紗耶】「お、お父さん…?」
【????】「どこに行っていたのだ、サスケ!もうじき日が暮れるから、心配したのだぞ?」
【サスケ】「ゴメンなさい、父上…。森で薪を拾いに行っていたら、途中で盗賊に襲われてしまって…。それを、あの女の人が助けてくれたんです。」
【????】「女の人…?」
サスケが私を指差したと同時に、父親が私を見た。私は、その人に向かってお辞儀をした。すると、その人は私のところにやって来て言った。
【????】「危ないところを助けて下さり、ありがとうございました。なんとお礼を言ったら良いか…。」
【神宮寺紗耶】「い、いえ…。それほどでもないです…。」
【????】「お礼と言っては何ですが、今晩は家に泊まっていって下さいませんか? 自分は、この村の長をしている鹿之助と申します。あの子は、サスケと言います。」
【神宮寺紗耶】「あ、じ、神宮寺紗耶です。よ、よろしくお願いします…。」
【鹿之助】「紗耶と申されるのですか。ささ、もうじぎ日が暮れます。汚い家ですが、どうぞ中へ…。」
【神宮寺紗耶】「あ、お、お邪魔させていただきます…。」
私は、鹿之助と言う人の家の中に入った。
広さは、5畳くらいで狭く、床にはゴザが引かれてあるだけだった。中央には簡単な囲炉裏があるくらいで、タンスなどの家具はあまりない。
【鹿之助】「まあ、その辺にお座り下さい。」
【神宮寺紗耶】「し、失礼します…。」
私は、ゴザの上に座った。緊張しているのか、動きがロボットのようだ。
【鹿之助】「サスケ、紗耶さんにお茶でも出して差し上げなさい…。」
【サスケ】「はい、父上。」
【神宮寺紗耶】「あ、お構いなく…。」
【鹿之助】「それより、アナタは何と言う珍しい着物を着ているのですか? よりにもよって、この時期の尾張(おわり:現在の愛知県)で…。あの森の中を武器も持たずに歩き回るのは、自殺行為ですよ?」
尾張…? 何か聞いた事があるような…。
【神宮寺紗耶】「あ、あの、今は何年ですか?」
【鹿之助】「おかしな事を聞くんですね? 今は、永禄3年(1560年)ですよ。つい先日、近くの桶狭間で織田信長と今川義元の戦があり、今川義元が敗れました。おそらく、サスケやアナタを襲った者達は、今川の残党でしょう。」
永禄3年、桶狭間、今川義元、織田信長…!?
っていう事は、今、私がいる時代は、戦国時代!?
【神宮寺紗耶】「な、なんで…?」
私は、ズゥーンと肩を落とした。
戦国時代から現代へ…。どうやったら元の時代に帰れるのだろう、私…。
【鹿之助】「紗耶さん、お疲れのところを申し訳ないのですが…、アナタの事を色々聞かせてもらえないでしょうか?」
【神宮寺紗耶】「あ、ハイ…。話せば長くなるし、信じられないような話なんですが…。」
私は、今までの経緯を鹿之助さんに説明をはじめた。
その頃、現代の日本。
私が蔵で姿を消してから約10分後、私の蔵に指宿健斗がやって来た。
【指宿健斗】「紗耶、いるかぁ〜? オマエの母さんに呼ばれて、蔵の掃除を手伝いに来たんだけれど…、ってアレ? いない…。」
健斗は、蔵を見回した。
【指宿健斗】「紗耶、どこにいるんだ?」
健斗の足元には、私が消える直前まで見ていた巻き物が床に落ちていた。
【鹿之助】「…紗耶さんのお話をまとめると、つまり…、アナタは約450年後の時代から来たのですか?」
【神宮寺紗耶】「は、ハイ…。」
鹿之助とサスケは、互いの顔を困ったような顔で見合わせた。
【鹿之助】「どうにもねぇ〜…。ハイ、そうですかとは言えないが…、少なくともこの時代の普通の人には見えませんし…。」
【神宮寺紗耶】「む、無理に信じなくても良いですよ…。」
【鹿之助】「まあ、とにかく死にたくないのでしたら、その格好で外を出るのは止めた方が良いです。今川の残党に殺されても、おかしくはないですから。」
【神宮寺紗耶】「で、でも、私…。一刻も早く、元の時代へ帰りたいんです!」
【鹿之助】「どうやって?」
【神宮寺紗耶】「そ、それは…。」
私は、口を閉ざしてしまった。帰る方法なんて一切知らないから…。
【鹿之助】「今日は、もう日が暮れました。方法は明日考えるとして、今日はもうお休みしましょう…。」
【神宮寺紗耶】「はい…。」
その日の夜、5畳しかない狭い家の中で、私達3人は寝ていた。
目が覚めたら、私のベッドの上にいて欲しい。
そう思っていた。
しばらくして、私はフッと目を覚ました。残念ながら、私の家の天井ではなく、鹿之助さんの家の天井が見えた。まだ、外は暗い。
周囲を見回してみると、サスケは疲れていたのかグッスリと眠っていたが、鹿之助さんの姿が家の中には見えなかった。
私は、家の外へ出た。
【鹿之助】「やあ、紗耶さん…。起こしてしまいましたか?」
【神宮寺紗耶】「何をしているんですか、こんな夜中に…?」
【鹿之助】「見回りですよ。これでも、この村の長なのでね…。最近、何かと物騒ですから…。」
【神宮寺紗耶】「桶狭間の戦いがあったからですか?」
【鹿之助】「ええ、まあ…。」
私と鹿之助さんは黙ってしまった。
静かな夜である。森のせせらぎの音しか聞こえない。こんな静かさは、現代の日本の都会では味わう事が出来ないだろう。
【鹿之助】「あの子は、グッスリと眠っていますか?」
【神宮寺紗耶】「あの子?」
【鹿之助】「サスケですよ。」
【神宮寺紗耶】「ああ、鹿之助さんの息子さんですね? ええ、疲れちゃったようでグッスリと眠っています。」
【鹿之助】「そうですか…。」
【神宮寺紗耶】「?」
【鹿之助】「紗耶さん…。突然、こんな事を言うのは何ですが、あの子…サスケは、自分の息子ではないのですよ。」
【神宮寺紗耶】「えっ、そうなんですか!?」
【鹿之助】「あの子は、元々は桶狭間の村に住んでいたんです。ですが、ある日、今川に村を襲われ、あの子の父と母は今川の兵士に目の前で殺されてしまったのです。お亡くなりになる前に、父と母はあの子を村から逃げ出させました。そして、自分が森でさ迷っているサスケを見つけ、自分の家に引き取ったのです。」
【神宮寺紗耶】「・・・・・。」
【鹿之助】「実を言うと、自分の父上や母上も、サスケと同じように幼い頃、戦で亡くしているんです。ある日を境に突然孤独になった自分…。それと同じような気持ちのサスケを見て、引き取らぬワケにはいかなかったんです…。」
【神宮寺紗耶】「そうだったんですか…。なら、私もアナタやサスケ君と同じですね。」
【鹿之助】「えっ?」
【神宮寺紗耶】「私も、突然この時代に1人でやって来て、行く当てもなく孤独になってしまいましたから…。だから、アナタ達の気持ちも分かる気がします…。」
私は、鹿之助さんに少し笑顔を見せて言った。
【鹿之助】「紗耶さん…。アナタは、絶対に元の世界へ帰れますよ。絶対に…。」
ガサッ…。
その時、静かだった森から、何かが動く音が聞こえた。
【鹿之助】「!」
それを察知したのか、鹿之助さんは私を強引に家の中へ入れた。
【神宮寺紗耶】「どうしたんですか、鹿之助さん!?」
【鹿之助】「敵襲です…。」
【神宮寺紗耶】「えっ?」
【鹿之助】「紗耶さん、アナタはサスケと共に家の中で隠れていて下さい。絶対に外には出ないこと。良いですね?」
【神宮寺紗耶】「は、ハイ…。」
そう言うと、鹿之助さんは数少ない家具の中から隠していた大きな刀を取り出して、家を出て行った。私は、ただそれを黙って見送るしか出来なかった。
家を出た鹿之助さんは、そのまま村の中央にある見晴台に上り、見晴台の頂上にあった大きな鐘をカンカンと叩いた。
【鹿之助】「敵襲―ッ!!」
その音と同時に、周囲の家から続々と刀を持った男たちが出てきた。
私は家の窓から隠れた状態で外を見ていた。森を見ると、森の奥の方でオレンジ色の明かりが見えた。
【サスケ】「…どうしたの?」
私の後ろで寝ていたサスケが鐘の音に気づき、眠たい目をこすりながら起きた。
【サスケ】「…あれ、父上は…?」
【神宮寺紗耶】「あ、起こしちゃった? ゴメンね、サスケ君。今、鹿之助さんは用事があって家にいないんだ。家の中で私と一緒におとなしくしていろ、ですって。」
【サスケ】「わかったよ、お姉ちゃん…。」
“お姉ちゃん”…。サスケ君は、そう私に言ってくれた。
私は、再び身を隠しながら窓から外を見た。森から大勢の人々が、オレンジ色の明かり…いや、松明と刀を持って現れたのが分かった。
【鹿之助】「今川の残党達、か…。」
鹿之助さんや他の村人達は、村の入口で今川の残党を村に入らせないように仁王立ちしていた。
【仮面の男】「よう…。この村を襲いに来たぜ。」
【神宮寺紗耶】(この声…!)
森の中で、私とサスケに襲い掛かった者の声が聞こえた。私は三度、恐る恐る窓から顔を出すと、鹿之助さんの前に、あの仮面の男がいた。
【鹿之助】「帰れ! ここにはオマエ達が欲しがっているようなモノは無い。とっととココから立ち去れッ!!」
ハム太郎?
【仮面の男】「残念だが、欲しいモノが俺達にはあるんだなぁ〜。…いるんだろ、奇妙な衣を纏った女と子供が。」
【神宮寺紗耶&サスケ】「…ッ!」
私とサスケはビクッとした。ここにいる事が、アイツらにバレている。
【神宮寺紗耶】(まさか、後を付けられた!?)
【鹿之助】「そんな者達は、ココにはおらんッ!人違いであろう!!」
【仮面の男】「ほう、いないのか…? ならば、桶狭間の村みたく大暴れしてやるか!」
【今川残党兵1】「お頭は、桶狭間で村人を大勢殺しましたよねぇ?」
【仮面の男】「ああ。確か…その者達の中に、男のガキを森の中へ逃がした男と女がいたなぁ〜。ガキは逃げられちまったが、ガキの父と母は、この俺があの世へ行かせてやったよ!!」
そう言うと、残党達は不気味に大笑いした。
【神宮寺紗耶】「あ、アイツら…!!」
怒りで一杯の私の横で、サスケ君の体が今まで以上にブルブルと震えていた。
【神宮寺紗耶】「サスケ君?」
【サスケ】「…よ、よくも父上と母上を!!」
そう言って、サスケは家を飛び出そうとした。
【神宮寺紗耶】「ダメ、サスケ君ッ!!」
大声で呼び止めようとしても、既に遅かった。サスケと、サスケを連れ戻そうとする私は、気がつくと家の外に出ていた。それを、鹿之助さんや今川残党達が見ていた。
【神宮寺紗耶】「あ…。」
しまった!アイツらのワナに掛かった!!
【仮面の男】「フハハハハ…ッ!!」
仮面の男が不気味に笑い出すと、周りにいた兵士達も大声で笑い出した。
【仮面の男】「村長さんよぉ〜、ウソはいけないよ、ウソは。ちゃ〜んとココにいるじゃないか〜。」
【鹿之助】「クッ!」
【仮面の男】「ウソをついたアンタ達には…。罰として、死んでもらうよ? さあ、野郎ども、やっちまいな!!」
その言葉と同時に、今川残党達が村を襲い始めた。
【鹿之助】「村のため、ココで逃げ出すワケにはいかぬッ!!」
鹿之助さん達村人も、自分の刀を取り出し、今川残党達と刃を交えた。
私はサスケと共に、再び家の中へ隠れた。
刀と刀が交じり合う音を聴くたびに、私たちはブルブルと震えていた。
【仮面の男】「お嬢ちゃんたち、見ぃ〜つけた!」
耳元で、あの仮面の男の声が聞こえた。すぐに振り向くと、私達が隠れていた家の中に仮面の男の姿があった。
【神宮寺紗耶】「い、いつの間にッ!?」
【サスケ】「父上と母上の敵ぃーッ!!」
すると、私の横から家の中にあった刀をサスケが持ち出し、仮面の男に向かって突撃した。
【仮面の男】「フッ…。」
【サスケ】「うぉおおおお〜ッ!!」
【神宮寺紗耶】「だ、ダメ、サスケ君ッ!!」
次の瞬間、仮面の男は刀で横に振り、サスケを私の目の前で切り倒した。
【神宮寺紗耶】「…ッ!!」
刀で切られたサスケは、そのまま地面に倒れて動かなくなった。そして、サスケの体から真っ赤な血が大量に流れ出た。
【神宮寺紗耶】「サスケ君ッ!?」
【仮面の男】「フッ…。ガキに負けるほど、俺様は弱くねぇんだよ!」
目の前で切り殺されたサスケ君を見て、私の怒りは頂点に達した。
【仮面の男】「さあ、小娘。今度は、オマエの番だ。」
【神宮寺紗耶】「…さない。」
【仮面の男】「ん?」
【神宮寺紗耶】「…許さない。私は、アンタを絶対に許さないッ!! 私のこの命を掛けて、アンタを地獄へ成敗してやるッ!!」
と、私はサスケ君が手にしていた刀を取り、その刃の先を仮面の男に向けて睨み付けた。
【仮面の男】「ハッ!たかが小娘が、戯言を…。俺様を殺ろうって言うのかい? そりゃあ無理だね。…俺様との力の差、その身をもって知るが良いッ!!」
その言葉と同時に、仮面の男が私に攻撃を仕掛けてきた。私は、それを寸前でかわし、その直後に、私は仮面の男の心臓を狙って刀を突き刺そうとした。しかし、仮面の男は私の攻撃を簡単にかわした。
【神宮寺紗耶】「クッ!!」
刀が、お、重い…!? そう言えば、真剣を持ったのは初めてだ。今まで部活では木刀しか扱えなかったから…。
【仮面の男】「だから言っただろう。俺様を倒すのは無理だと…。刀の重さに振り回されて、無駄な体力が奪われるだけだ。」
それでも、私は仮面の男を刀で攻撃を続けた。しかし、何度攻撃を続けても、簡単にかわされるか、私の攻撃を簡単に受け止めている。
しばらくして、私は攻撃を止めた。私はハアハアと息を漏らして疲れている。なのに、仮面の男は息を1つも漏らさずに、疲れた様子もなく平然としている。
【仮面の男】「所詮、ガキはガキだ。分かったか、俺様とオマエの力の差が。オマエが俺様に勝とうと言うのは一生無理なんだよ!」
【神宮寺紗耶】「・・・・・ッ!!」
【仮面の男】「さて…、今度は俺様の番だ。」
そう言って、仮面の男は私に激しく攻撃をしてきた。私は、それをかわす事も出来ず、ただ攻撃を刀で受け止めるしか出来なかった。しかも、攻撃を刀で受け止めても、圧倒的な強さで、今にも手から刀が離れそうだった。
そして、私は私のお腹を足で力強く蹴られ、そのまま家の壁に叩きつけられて床に倒れてしまった。
【神宮寺紗耶】「ゲホッ!ゴホッ!ゲホッ…!!」
お腹を強く蹴られたため、私はもの凄く息苦しかった。
仮面の男は、片手で、床に倒れている私の首を掴み上げた。
【神宮寺紗耶】「くっ…!」
【仮面の男】「苦しいか? 苦しいだろう? 今、楽にしてやる…。」
朦朧とした意識の中、仮面の男の右手から刀が現れ、その刀の先が私の顔に向けられているのが分かった。
【神宮寺紗耶】(私…、ここで死ぬの!?)
私は、観念したかのように目を閉じようとした。
【仮面の男】「ぐあああああッ!!」
突然、仮面の男の叫び声がした。頭がクラクラしながら見てみると、仮面の男の背後から鹿之助さんが刀で切りつけたのが分かった。それと同時に、私は仮面の男の手から解放された。
【鹿之助】「・・・・。」
【仮面の男】「き、貴様ぁ〜…ッ!!」
仮面の男は、そのままヨロメキながら家を出て行った。それを確認した鹿之助さんは、すぐに私に駆け寄ってきた。
【鹿之助】「大丈夫ですか、紗耶さん!」
【神宮寺紗耶】「わ、私は、だ、大丈夫です…。そ、それよりも、サ、サスケ君が…。」
【鹿之助】「えっ?」
私は、意識がハッキリしない中で、床で大量の血を流しているサスケ君を指差した。
【鹿之助】「サスケッ!!」
鹿之助さんは、すぐにサスケ君を抱きかかえた。
【鹿之助】「サスケ、サスケ、サスケ〜ッ!!」
何度も呼びかけると、サスケの目がゆっくりと開いた。
【鹿之助】「サスケッ!」
【サスケ】「…あ…り…が…と……。」
そう小さく言って、再び目を閉じてしまった。
【鹿之助】「おい、サスケ! サスケッ!」
【神宮寺紗耶】「サスケ君、しっかりして!!」
だが、今度は何度も呼びかけても、サスケは二度と目を開ける事はなかった。
【鹿之助】「サスケぇ〜〜〜〜ッ!!」
鹿之助さんは、悲しみのあまり、大声で泣き叫んだ。私も、その横で涙を流した。
しばらくして、鹿之助さんの泣き叫び声が止まった。
【鹿之助】「…紗耶さん、外に案内の村人を待たせています。その人と共に、追っ手が来る前に、一刻も早く、この村から逃げて下さい…。」
【神宮寺紗耶】「えっ、で、でも…。」
【鹿之助】「良いんです…。アナタは、この村の民でも、この時代の民でもありません。アナタはココではなく、元の時代へ帰らなければなりません…。」
【神宮寺紗耶】「じゃ、じゃあ、鹿之助さんも一緒に…。」
【鹿之助】「自分は、一緒に行けません。自分は、この村の長ですから…。大事なこの村と民を見捨てて逃げるワケにはいきません。それに、亡くなったサスケを大切にこの地に、私とサスケの2人で葬ってやりたいんです…。ですから、紗耶さん。アナタだけでも無事に逃げて下さい!」
と、私に背中を向けて、どこか悲しく、どこか冷たく語った。私は、しばらく口を閉ざした。そして、私は鹿之助さんの前に出て、涙を流しながら深くお辞儀をした。
【神宮寺紗耶】「ありがとうございました!」
【鹿之助】「いえ、良いんです…。自分は、アナタに出会えて、光栄に思います。この子も、きっとあの世で同じ事を思っているでしょう…。」
【神宮寺紗耶】「私も、鹿之助さんと出会えて、光栄に思います。」
と、涙を流しながら言った。鹿之助さんは、ニコッと笑顔を見せた。
【鹿之助】「時間がありません。さあ、行きましょう。」
私と、サスケ君の亡き骸を抱えた鹿之助さんは、家を出た。すると、目の前に思わぬ光景が広がった。
【神宮寺紗耶&鹿之助】「ッ!」
なんと、村の人々全員や今川残党達全員の無残な死体が、村のあちらこちらに散らばっており、辺り一面が血の海と化していたのだ。
その血の海の奥に、仮面の男が私達に背を向けた状態で立っていた。
【鹿之助】「みんな、アイツが全部1人で殺したのか!?」
私は、無残な死体の数々を見て、気持ち悪くなりそうだった。
【仮面の男】「…オマエ達は、この俺様を怒らせた…。これは、俺様を怒らせた罰だ!!」
すると、辺り一面が一気に炎で燃え上がった。
【神宮寺紗耶】「む、村に、火がッ!」
【鹿之助】「何て事をッ!!」
【仮面の男】「俺様に逆らった罰だ。オマエ達は、よっぽど痛い目に遭いてえらしいなぁ〜。来な…。2人とも、まとめて殺してやるッ!!」
と、その時、燃え盛る炎の奥、森の中から馬の鳴き声が聞こえた。そして、何かがコチラに向かって来る音も聞こえた。
【神宮寺紗耶】「な、何? 何が来るの!?」
【鹿之助】「新手か?」
【仮面の男】「こ、この馬の音…。ま、まさか…ッ!!」
その瞬間、森の中から馬に乗った武士が現れ、燃え盛る炎の壁と仮面の男の頭上を飛び越えた。
その馬に乗った武士は、私の夢の最後に出てきた、あの長髪の男の人だった。
【神宮寺紗耶】「あの人は…!?」
【鹿之助】「あ、明智光秀…!」
【明智光秀】「・・・・・。」
<第3話に続く>




