第1話 紗耶と長髪の男
● この作品はフィクションであり、実在の人物、忠実、団体名などは関係ありません。
● この作品は、今までの小説とは一風異なった独自の新しいスタイルの小説です。予めご了承下さい。
● この作品は、僕(作者)のYahoo!ブログやミクシィ、モバゲータウンの小説広場などで連載している作品と同内容です。
どこか山奥に小さな里があった。だが、その里に住む人々は、子供も大人も皆、薄汚れた着物を着ており、どこか貧しい感じがする。
里の周りは山で囲まれており、木でできた小屋のような家が数軒あるだけ。
里に暮らす人々は毎日、同じことの繰り返すように生活している。大人達は、自分の家の前にある畑で農作業をしており、子供たちはその近くで石蹴りなどをして遊んでいる。それが彼らにとっての平和な日常だった。そして、この日も…。
ある家の前で、幼い少年“桃丸”と友人らしき少女が元気に遊んでいた。家の前の畑では両親が畑仕事をしている。
【母親】「ほら2人とも!遊んでばかりいないで、少しは手伝いなさい。」
その言葉で、元気に遊んでいた少年と少女は畑仕事の手伝いを始めた。
【少女】「ねえ、明日は川へ行って遊ぼうか?」
【桃丸】「うん!」
【父親】「桃丸! 口を動かすヒマがあったら、手を動かせ。」
【桃丸】「はぁ〜い…。」
父親に怒られた桃丸は、友人の少女を家に帰らせようとした。
【少女】「あ、そうだ! 忘れるところだったね。」
そう言って少女は、服の中から草で出来た手作りのペンダントを桃丸に手渡した。ペンダントの先端には、綺麗な石が付いていた。
【少女】「その石、川で拾ったの。綺麗だったからペンダントにして、桃丸に上げるね。」
【桃丸】「良いの?」
【少女】「ウン! 私のもあるから。」
そう言って、少女はもう1つ同じペンダントを取り出して桃丸に見せた。
【桃丸】「ありがとう。」
【少女】「どういたしまして。」
笑顔で手を振りながら家に帰る少女を見送った桃丸は、少女の姿が見えなくなるのを確認すると親の畑仕事を手伝い始めた。
その日の夜遅く、桃丸は自分の家で家族揃って寝ていた。
しばらくすると、何だか外が騒がしい事に気がついた。異変に気づいた父親は、ゆっくりと起きて外に出た。桃丸も外に出た。
すると、森の奥から何かが近づいてくるのが分かった。次の瞬間、「ワァーッ!!」と言う掛け声と共に、刀を持った大勢の兵士が里を急襲した。
兵士達は、無防備な里の住民達を、子供でも容赦なく次々と殺害した。ある兵士は、家に火を放った。暗かった里が一瞬にして炎で明るくなった。
桃丸の両親は、襲い掛かる兵士に対抗するため、家の中から小さな刀を持ち出した。
【父親】「桃丸、ココから逃げなさい!!」
【母親】「私達がココを守ります。アナタは、森の中へ逃げ込みなさい。」
【桃丸】「イヤだッ、ココにいるッ!!」
【父親】「ダメだッ! 早くオマエだけでも良いから逃げるんだ!! …そして、俺達の分まで、生きろ!!」
【桃丸】「父上…。」
今にも泣き出しそうな桃丸に、背後から母親が、薄い汚れた上着を着せてくれた。そして、ギュッと桃丸を抱きしめた。
【母親】「元気でね、桃丸…。」
【桃丸】「母上…。」
暖かい母親のぬくもりに、桃丸の目から涙が出た。
【父親】「さあ、行くんだッ!!」
父親の声と同時に、桃丸は森の奥へと走って逃げた。桃丸は、泣いていたが決して振り向かなかった。
【兵士】「子供が森の中へ逃げたぞー!!」
【兵士】「追えーッ、殺せッー!!」
桃丸が森の中へ逃げた事に気づいた数名の兵士が、桃丸の後を追いかけた。そのうちの2人を桃丸の両親が刀を使って倒したが、すぐに他の兵士に刀で切りつけられて地面に血を流して倒れた。
【父親】(…桃丸、…逃げ…ろ…。)
地面に倒れた2人の体に、兵士の刀が突き刺した。
しばらく森の中を走っていると、小さな河原に出た。その河原は、桃丸の友人である少女と明日来ようとしていた場所である。
【兵士】「小僧! どこへ行った!?」
背後の方で、兵士の声が聞こえた。桃丸は、追っ手をかわすために、大きな石の影に隠れて身を潜めた。
しばらくして、数名の兵士が桃丸の前に姿を現した。だが、彼らは桃丸に気がついていない。
【兵士】「相手は、子供だ。まだ、そんなに遠くには行っていない。たぶん、この近くに隠れたんだ。探し出して殺せッ!!」
数名いた兵士は、それぞれ隠れた桃丸を見つけ出すために、周囲に散らばった。
【桃丸】「クッ…!」
どうやってココから脱出するか悩んでいた桃丸を、背後から誰かが桃丸の口を突然、手で塞いだ。
【桃丸】「ッ!!」
【少女】「シーッ、黙って!」
【桃丸】「おつねッ!?」
桃丸の口を塞いだのは、桃丸の友人である少女だった。
【桃丸】「おつね、無事だったのか!? てっきり殺されたのかと…。」
【おつね】「急襲された時に、父上と母上が私を森へ逃げさせてくれたのよ。」
【桃丸】「そうだったのか…。」
おつねの無事な姿を見て、寂しかった桃丸は嬉しくなった。
【おつね】「早くココから逃げましょう!」
【桃丸】「ウン!」
【兵士】「いたぞッ!!」
背後を見ると、先ほどの兵士が桃丸を指差していた。
【桃丸】「ヤバイッ、見つかった!!」
【おつね】「コッチよ!」
と、おつねは桃丸の手を掴んで一斉に走り出した。それを数名の兵士が追った。
桃丸達は、河原の近くに草で隠れた小さな洞穴の前にやって来た。
【桃丸】「ココは?」
【おつね】「前に河原へ来たときに見つけたの。ココから森を抜け出せるわ。」
2人は小さな洞穴の中に入った。
洞穴の中は、人1人が通れるくらいの洞窟になっていた。暗闇の奥に道が続いている。2人は、そのまま奥に進んでいった。
すると、目の前は行き止まりになっており、桃丸よりも高い場所に、子供が通れるくらいの小さな外に出る穴があった。桃丸より少し背が高いおつねなら、辛うじて手が届く場所にある。ここから外に出られるかもしれない。
【桃丸】「この先、どうなっているの?」
【おつね】「分からない…。でも、先へ進むしかないわ。」
【兵士】「見つけたぞッ!!」
洞窟の奥から、数名の兵士が姿を現した。
【おつね】「私が肩を貸すから、先に登って!」
【桃丸】「えっ!?」
【おつね】「早く!!」
【桃丸】「わ、分かった…。」
桃丸は、おつねの肩を借りて、先に穴の外に出た。それを確認したおつねは、穴に手を掛けた。しかし、すぐ背後に刀を持った数名の兵士が立っていた。
【おつね】「…ッ!!」
そうとも知らず、外に出た桃丸は振り向いて、出てきた穴を見た。
【桃丸】「大丈夫だよ、おつね。敵は、いないよ。」
しかし、おつねが一向に穴から姿を表さない。
【桃丸】「…おつね?」
桃丸は、一気に不安になった。
次の瞬間、穴から兵士の手が出てきた。それを見た桃丸は愕然とした。そして、泣きながらその場を走り去った。
気がつくと、山の上の崖にいた。遠くに、炎が出ている場所が見えた。桃丸とおつねが生まれ育った里である。
それを見た桃丸は、ガクンと地面に両ヒザと両手をつけ、土下座するような姿勢になっった。
【桃丸】「父上、母上…、おつね…。…みんな、死んじゃった…。」
と、泣きながら地面に向かって言った。桃丸の涙が地面に落ちた。そのとき、桃丸の服から何かが地面に落ちた。おつねから貰った手作りのペンダントである。
そのペンダントを見て、最初は泣いていた桃丸だが、次第に決意の目へと変わっていった。そして、地面に落ちたペンダントを手でギュッと握り締めて立ち上がり、燃えている里を見た…。
あれから十数年後…。
同じ山の崖の場所に、1人の長髪の青年が立っていた。手には、十数年前におつねから貰ったペンダントを握り締めている。そして、遠くに見える今は無き里の跡地を見た。
【明智光秀(あけちみつひで:桃丸)】「父上、母上、おつね…。見ていてください。私が、この世を戦無き地平を作り出してみせます!!」
その目は、真剣そのものだった。
【神宮寺紗耶】「ハッ!!」
私は、ベッドからガバッと飛び起きた。ハァハァと息を漏らしている。
【神宮寺紗耶】「ま、またぁ…? よく、こうも毎日同じ夢を見るものだわ…。」
私は、ハァ〜とため息をついた。
【神宮寺紗耶】「…でも、あの長髪の男の人…。なんか格好良かったなぁ〜…。な〜んてね…。」
私はベッドから出て、自分の部屋の窓を開けた。
【神宮寺紗耶】「うん! 今日も良い天気!」
晴天の朝を見ると、なんだか元気になれるような気がする。
私の家は、代々『神宮寺』という神社を守っている家系。神社なのに“寺”って変と思わない? 私もその理由は分からないんだけれどね。
そして、私はこの神社の巫女でもあるわけ。
私の家は、神社の敷地内にある。私の家の裏には神社の境内があって、私の家の右隣には弓道場、更にその隣には倉がある。
祭りの時などは、そこで弓道大会が開かれるんだ。
私も弓道が好き。毎朝、必ず弓道場で弓道の練習をしているんだ。腕前は、そこそこだけれどね。今朝も練習したけれど、あまり的に狙いが定まらなかったなぁ。
【紗耶の母親】「紗耶〜、ご飯よ〜。」
【神宮寺紗耶】「はぁ〜い。」
この母親の言葉で、朝の弓道の練習は終わるんだ。
朝食後、私は高校の制服に着替えて、元気良く家を出た。そして、そのまま私は家の裏にある境内でお参りをするの。
【神宮寺紗耶】「今日も一日、良い日になりますように!」
これも、私の日課。
お参りの後は神社を出て、学校に向かう。けれど、その通学途中で毎日寄り道をしている場所がある。私は、ある家の前にやって来ると玄関のドアを開けた。
【神宮寺紗耶】「おはようございます!」
そう言うと、その家のお母さんが玄関にやって来た。
【????の母親】「あらあら、紗耶ちゃん。おはよう。今朝も元気ねぇ〜。」
【神宮寺紗耶】「元気だけが私の取り得ですから。」
【????の母親】「ウチの健斗も、紗耶ちゃんを見習ってほしいものだわ。」
【神宮寺紗耶】「いえ、そんな…。」
指宿健斗。私の近所に住んでいて、幼なじみ。私は、毎朝学校に行くときに健斗の家を訪れて、寝坊している健斗を学校に連れて行ってやっているのだ。
【指宿健斗の母親】「今、健斗を起こすから、ちょっと待っていてね…。」
そう言うと、健斗の母親は2階に上がっていった。私は両手で手を組み、仁王立ちするような姿勢をとった。
しばらくすると、Tシャツ姿ん健斗が眠たそうな顔をして玄関にやって来た。
【指宿健斗】「なに? 今日は、いつもより少し早くない?」
【神宮寺紗耶】「“なに”じゃないわよ。昨日、言ったでしょ? 今日は、大会前の最後の練習なのよ。健斗は、一度も部活に出た事が無いんだもの…。」
【指宿健斗】「知らねぇよ、んなこと…。オマエが勝手に俺を部員にさせたんだろ?」
【神宮寺紗耶】「良いから、とっとと支度せいっ! 部員の皆が待っているんだから!!(怒)」
【指宿健斗】「ハイッ!! (怒らすと、おっかねぇ〜…。)」
着替えと朝食を急いで済ませた健斗は、私と一緒に家を出た。いつもと同じなので、もう慣れっこだ。
そして、私と健斗は一緒に学校に向かった。
【指宿健斗】「だいたい何だよ、“武術部”って? 聞いた事がないぞ。」
【神宮寺紗耶】「言っても健斗には分からないわよ、日本古来の伝統武術は。」
【指宿健斗】「ヘッ! 分かりたくねぇや、んなもの…。」
【神宮寺紗耶】「とにかく、私は今度の大会で勝ちたいの。だから、協力して。」
【指宿健斗】「部員数が足りないから大会に出られない、って言うからよぉ〜…。俺は、のんびり高校生活を満喫したかったのになぁ〜。」
【神宮寺紗耶】「私より運動神経が全然良いのに、そんな不健全な事を言うのね。」
【指宿健斗】「うるせぇッ!!」
しばらく歩くと、私達が通っている学校、私立『風凛高校』が見えて来た。
生徒用玄関で靴から上履きに履き替えている時に、私が所属している部活仲間が急いで私の前にやって来た。
【神宮寺紗耶】「どうしたの? そんなに急いで…。」
【女性部員】「か、崋山高校の不良連中が、いきなり練習試合を申し込んできたの! もう私達の部員がアイツらに惨敗していて…。」
【神宮寺紗耶】「なんですって!? すぐに助けに向かわないと…。アナタは、顧問の広沢先生に連絡を!」
【女性部員】「分かった!」
私は急いで、部活動を行っている体育館に向かおうとした。
【指宿健斗】「まあ、何だか知らんが、とりあえず頑張ってくれや。俺は、教室にいるから…。」
【神宮寺紗耶】「アンタも行くのッ!!(怒)」
【指宿健斗】「ハイ…。」
【竹田竜司】「なんだい、こんなに弱いのかよ、風凛高校の実力は。わざわざ大会前に練習試合に来てやったのに…。」
【男性部員】「れ、練習試合なんて、そんなの聞いていないぞ!」
【竹田竜司】「事前に言ったら、つまらないだろ? ここぞ、って時に本当の実力が出るもんだぜ。」
【部員たち】「クッ!」
【竹田竜司】「さあ、次の相手は誰かな? もう、いないのか?」
【神宮寺紗耶】「どういうこと!?」
そこへ、私と健斗が走って体育館にやって来た。見ると、既に部員数名が竹田達にやられていた。
【竹田竜司】「ほー…。今度は、綺麗で可愛いお嬢ちゃんがお相手か…。ちょっとは手応えのある剣術の組み手をしてくれるのかな?」
私は、近くにあった木刀を持って、その先端を竹田に合わせた。
【神宮寺紗耶】「いいわ。そんなにしたいなら相手になるわよ。」
【指宿健斗】「そんな事を言って…。大丈夫なのか、紗耶?」
【神宮寺紗耶】「任せて!」
【竹田竜司】「良いのかい? へへッ…。」
【部員】「紗耶…。ダメだよ、こんな試合は…。」
【神宮寺紗耶】「ゴメンなさい。ここまでされて、黙ってられる程、私は出来ていないのよ!」
と言って、私はギロッと竹田を睨み付けて、木刀を構えた。竹田も木刀を構えた。
【竹田竜司】(…全く隙がねえ。この女、できる…)
【指宿健斗】「・・・・・。」
次の瞬間、竹田が私に向かって木刀を振り下ろしてきた。私は、その攻撃をかわし、私の木刀で竹田の頭に寸止めした。
【竹田竜司】「…ッ!?」
一瞬で怯んだ竹田を見て、部員たちは喚起の声を上げた。
【竹田竜司】「黙れッ!!」
竹田の怒り声で、部員たちの喚起の声が止まった。私は、竹田を睨み続けていた。
【竹田竜司】「良いのか? オマエ、制服姿だぜ?」
【神宮寺紗耶】「…何が言いたいの、アンタ?」
その瞬間、竹田が足で私の足を横に払って床に倒した。柔道で使われる“足払い”だ。
【神宮寺紗耶】「キャアッ!!」
予想外の攻撃に、私は悲鳴を上げて目を一瞬閉じてしまった。
【竹田竜司】(スキありッ!!)
その瞬間を狙って、竹田が木刀を振り下ろそうとした。私が目を開けた瞬間、もう今にも竹田は木刀を振り下ろす直前だった。
【神宮寺紗耶】「しまっ…。」
私は、観念したのか目を閉じてしまった。次の瞬間、カアンッと木刀が何かと当たる音がした。
【神宮寺紗耶】「…ッ!!」
私は、ビクッとした。やられた、と思った。けれど、全然痛みがない。
恐る恐る目を開けると、私の前に木刀を持って私を守っている健斗の姿があった。
【竹田竜司】「…ッ!?」
【神宮寺紗耶】「健斗ッ!?」
【竹田竜司】「何だ、オマエはッ!!」
【指宿健斗】「アンタのその攻撃方法、良くねえよ。」
【竹田竜司】「クッ…、貴様ァ…!!」
その時、体育館のドアが開いた。
【広沢美咲】「何をしているの、アナタ達!?」
【神宮寺紗耶】「広沢先生ッ!!」
体育館のドアのところに、私と健斗の担任で部活動の顧問をしている広沢美咲先生と、他に数人の先生が立っていた。
【竹田竜司】「チッ!!」
教師たちの姿を見た竹田は、チッと舌打ちした。そして、私と健斗を睨み付けた。
【竹田竜司】「オマエら…、覚えとけよ!」
そう言い残して、竹田率いる崋山高校の不良軍団は体育館を去った。
【広沢美咲】「アナタ達、大丈夫? ケガは無かった?」
【神宮寺紗耶】「大丈夫です。健斗が私を守ってくれましたから…。」
【広沢美咲】「そう…、良かった…。」
【指宿健斗】「まったく…。だから、女が武術なんかするな、って言ったんだよ。」
【神宮寺紗耶】「何よッ! ちょ、ちょっと油断しただけよ。私が本気を出せば…。」
【指宿健斗】「バーカ!」
【神宮寺紗耶】「何ッ!?」
【指宿健斗】「アイツら、最初からどんな手を使っても、オマエを潰す気だったの。」
【神宮寺紗耶】「・・・・。」
【広沢美咲】「とにかく気をつけなさい。神宮寺さんは、明日が始めての大会なんだから…。汚い手を使って攻撃してくる人もいるから油断しないでね。」
【神宮寺紗耶】「…はい、ありがとうございます!」
【指宿健斗】「さて…、じゃあ俺、先に教室に行っているからよ。」
【神宮寺紗耶】「あ、健斗…。」
【指宿健斗】「お礼なら別にいらねえよ。」
【神宮寺紗耶】「違うわよ、バカ!」
【指宿健斗】「え?」
【広沢美咲】「まだ朝錬は終わってないわよ、指宿君?」
【指宿健斗】「チッ、バレだか…。」
健斗の考えている事は、お見通しよ。
その日の放課後…。
【指宿健斗】「じゃあな、紗耶。俺、帰るわ。」
【神宮寺紗耶】「ちょっ…。また、部活をサボる気なの!?」
【指宿健斗】「朝錬の時に、誰が竹田の攻撃を守ったんだっけぇ〜?」
【神宮寺紗耶】「クッ…。」
【指宿健斗】「そういうワケで、さようなら。」
そう言って、健斗は逃げ去ってしまった。
【神宮寺紗耶】「もう…。」
その日の夜。私は部活動を終えて、家に帰ってきた。
【神宮寺紗耶】「ただいまぁ〜。」
【紗耶の母親】「あ、紗耶。ちょうど良い所に帰ってきたわ。」
【神宮寺紗耶】「どうしたの、お母さん?」
【紗耶の母親】「急で悪いんだけれど、今から倉の大掃除をしてくれる?」
【神宮寺紗耶】「えっ、今から!?」
【紗耶の母親】「ホラ、もうじき神社のお祭りでしょ? 明日、近所の人達がお祭りの打ち合わせに来るの。その時に、倉の中に閉まってある祭りの道具を確認したいんだって。それで、あまり倉って使ってないでしょ? だから、ある程度綺麗にしてほしいのよ。」
【神宮寺紗耶】「それだったら、別に私でなくてもお父さんやお母さんがやれば…。」
【紗耶の母親】「お父さんは今日残業で遅くなるって言っていたし、私も今、会社の編集長から連絡があって、至急会社に戻ってくれだって…。だから、紗耶しかいないのよ。」
【神宮寺紗耶】「そんなの私1人じゃ出来ないわよ!」
【紗耶の母親】「大丈夫。会社の用事が終わったら、すぐに帰ってくるから…。」
そう言って、お母さんは家を出て行った。
私は部屋にカバンを置くと、そのまま倉に向かった。
この倉は、私にとって興味深いモノばかりが置かれている。日本の古文書や郷土資料など数多く眠っているのだ。だから、1人で掃除をするなんて大変でしょうがない。
【神宮寺紗耶】「こんな事なら、健斗でも呼べば良かったなぁ…。」
そう言えば、私が幼い頃、この倉で肝試しをしたなぁ〜。健斗はビビッちゃって動けなくなった。涙ぐんで手を握ったまま、「早く出よ〜」って…。
【神宮寺紗耶】(あの時は、背も私と同じくらいだったのにね…。)
こう思うと、健斗に「オマエが勝手に大きくなっただけだろ」って言われそうな気がするな。
【神宮寺紗耶】「あれ…?」
掃除をしていると、私は見慣れない長細い長方形の箱を見つけた。
【神宮寺紗耶】「何だろう、コレ…?」
箱の上に何か文字が書いてあるけれど、文字が古すぎて全然読めない。私は、箱のフタを開けてみた。
【神宮寺紗耶】「…巻き物?」
箱の中には、長細い巻き物がヒモで閉じられていた。私は、ヒモを解いて、巻き物の中身を見た。
巻き物の中身には、1つの大きな古い絵が描かれていた。左右に大勢の刀を持った兵士がいて戦っている絵だ。
ただ、右側の兵士の中に特徴的な人物を発見した。長髪の男である。
【神宮寺紗耶】「私の夢に毎晩出てくる、あの長髪の人だ!」
その長髪の横に、1人だけ髪が長い女性の姿もあった。その女性だけ、名前が書かれていた。
紗…、耶…?
【神宮寺紗耶】「私!?」
私は、ビックリしてしまった。確かに、私の名前“紗耶”と書かれている。
…いや、たぶん別人よ。ただ名前が同じだけかもしれない。
私は、その女性をよく見た。その女性が着ている服は、他の兵士達とは全然違う服装だけれど、その服は私が今着ている学校の制服にすごく似ていた。
【神宮寺紗耶】「まさか…。まさか、そんなハズはない!」
不気味に思った私は、急いで倉を出た。
倉を出ると、そこには神社の敷地内ではなく、どこかの見知らぬ山の中だった。
【神宮寺紗耶】「あれ…? ココ、どこ…?」
私は、背後を振り向いた。だが、先ほどまでいた倉の姿はどこにもなく、森が奥に続いていた。
確かに、私は倉の中にいたハズ…。しかし、今、私の周囲にあるのは森だけだった…。
<第2話に続く>




