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03

冒険者ギルドは中も広かった。

入って左側にはテーブルや椅子が置かれ奥に厨房が有り、お茶や軽食を販売している様で、依頼から戻った冒険者達が食事をしていた。


テンプレの酒に酔って絡んでくる者はいない。何故ならお酒の販売はしていないし飲酒禁止になっているからだ。もっとも、ギルド職員が眼を光らせているのに問題を起こす様な奴は資格剥奪も有るそうで、組織としてはちゃんとしているみたいだ。


俺は依頼の受け付けや報告のカウンターの横、入り口から見て右側の壁沿いに置かれる事に為った。


「それじゃあたしは帰るけど、明日も来るから待っててね。マーシャ、武器の貸し出し申請しといて貰える?」


「それは良いけど、魔道具に話しかけてると危ない人に見えるわよ」


「うっ・・・・・ま、まぁよろしくね。それじゃ」


リサがギルドを出て行った後、マーシャが俺の直ぐ上の壁に『所有者:リサ・シルフライン以外の接触厳禁』と書かれた張り紙をした。


「これで良しっと。まぁここで悪さする奴は居ないでしょうけど」


(おお、気が利くな。有難うマーシャさん・・・・・だが惜しい・・・実に惜しい!何故語尾に『ニャ』が付いていない!それさえあれば完璧なのに!)


マーシャは黒髪金目の猫獣人だった。


(まぁ実際問題語尾に『ワン』とか『ニャ』とか付いてたら話しにくいしな・・・・・)


冒険者ギルドは二十四時間営業ではなかった。街の安全の為に日没後、暫くしたら門を閉めるからだ。依頼で外に出ていても閉門後は余程の事が無い限り門を開けてくれる事は無いので、閉門に間に合わなければ野営をするのだそうだ。

依頼の報告者がいなくなり食堂の客達が帰ると、ギルマスと当直の者数名を残して職員も帰り入り口の鍵を閉める。


暗闇の中一人・・・・・いや、一台で佇んでいると少し不安になった。日本での俺に何が有ったのかとか、両親や職場の事や住んでいたアパートに愛車の事。幾ら考えても無駄な事なのは解ってはいるが考えずにはいられなかった。


(・・・・・はぁ・・・でも・・・これだけは確実なんだよな・・・・・俺は死んで、そして生まれ変わった・・・・・バイクになりたいなんて思った事無かったけどな・・・・・)


悶々と考え事をしていると朝になったが、徹夜明けの気だるさは感じなかった。どうやら睡眠は必要ないらしい・・・・・バイクだし。


暫くすると職員達が出勤してくる。が、時間はまちまちで余程遅くなければ良いらしい。時計の無い世界だからその辺は適当だ。


依頼を張り出す時間も決まっていない。申し込みがあれば必要事項等を記入した後、控えを取って直ぐに張り出される。報酬には相場の様な物は有るが決めるのは基本依頼主だ。その為安すぎて誰も受けない仕事が多数存在するが、後日依頼主が来て取り消すか報酬を上げるのが普通だ。


その為冒険者が来るのも人それぞれで、朝一から来て朝食を取りながら掲示板に張り出されるのを待ち続ける人も居れば昼過ぎに来る人も居る。


そして冒険者の仕事は多岐に渡る。討伐や採取と言った街の外での仕事以外にも店の掃除や荷物運び等も有り、派遣会社に近いかもしれない。


「おはよ~ニール、マーシャ。あら、この張り紙はマーシャ?有難ね。武器の用意出来てる?」


「おはよう、リサ。用意出来てるけど特に討伐の依頼はないわよ」


「解ってるわよ。暫くは常時依頼と狩りで食い繋ごうと思ってさ」


「そう、無理はしないでね。行ってらっしゃい」


「勿論よ。それじゃ行って来るね。よっと、ニール行こう」


リサに押されて冒険者ギルドを出て門へと向かう。門番に冒険者証を見せて門の外へ出ると、エンジンを掛けた俺は保護を使いヘルメットとツナギ姿に為ったリサを乗せて移動を開始した。

少し走って門が見えなくなった辺りで止まるとリサが話しかけてきた。


「ねぇニール、この座る所の前に有る隙間って何か入れる様になってるのよね、使っても良い?《ピッ!》良かった、お金預かっといて欲しいんだ。これ全財産だからさ落としたら教えてね」


(ピッ!と、それが多分小物入れだと思うんだよな・・・・・入れたらどうなるんだ?)


「わっ!す、吸い込まれちゃった・・・・・ど、どうなってるのこれ?・・・見えなくなってる・・・・ちょ、ちょっと返してよ!・・・あ・・・こ、これって収納魔法なの?・・・・・凄い・・・ほ、他にも入るかしら・・・・・わっ!わっ!この幅の物なら何でも入るのね!ニールゥ~あんたほんと凄いわぁ~・・・・・」


(あ~何か知らんが着替えまで入れるのはどうかと思うぞ・・・・・せめて下着は袋に入れるとかだな・・・・・色気の欠片も無いかぼちゃパンツなのが救いだけど・・・・・)


リサは小物入れに入るだけの手荷物を入れた後、軽くなったリュックを背負って再度出発した。

暫く進んで目的地らしき草原に到着すると、リサはハンドルにリュックをかけて弓を持ち矢筒を背負って奥へと向かって行く。


(あんまり離れるなよ~って、あれ?服が戻ってる・・・・・)


「ちょっとニール!何で服戻しちゃったの!あのままなら怪我しないと思ってたのに・・・・・あれ?何これ?・・・・・これ以上離れたらダメって事?・・・え~・・・乗りながらじゃ弓は使えないし獲物も逃げちゃう・・・・・静かにして貰って押すか元の服で行くか、か・・・・・そう旨い話も無いかぁ・・・仕方ない、押しながら行ってみますか」


(効果範囲は五~六mかな?まぁ大変かもしれないけど見える範囲に居て貰った方が俺も安心だし、いざと為ったら乗って逃げられるしな)


俺を押しながら草原の先に有る木々が点在する所で俺を停め、身を低くして周囲を観察しながら移動して弓を放つと『キュッ!』と鳴き声が聞こえた。

リサが弓を放った方へと走って行き戻ってきた時、その手には短い角の生えた兎が首元に矢の刺さった状態で耳を捕まれていた。


「へへ~どうよ。弓にはちょっと自信が有るんだ~」


(お~流石はエルフだな~ってナイフ持って何して・・・あ、血抜きか・・・・・えっ!?なんで撒き散らしてんの?!)


「これで良しっと!下がるわよ、ニール」


リサは血を撒き散らした場所から二十m程下がった場所で身を潜めた。


「こいつはねホーンラビットって言う魔物なんだけど、こいつら肉食で鼻が良いのよ。ほら、おいでなすったわ」


血の臭いに惹かれて集まってきたホーンラビット六匹にリサは矢を射掛けて行くが、三匹倒した所で接敵された。


「あはは!思った通りだわ。この格好なら攻撃されても大丈夫だと思ったのよね~。よっと!・・・ゴスッ・・・ガスッ・・・えいっ!・・・ドカッ・・・ゴキッ・・・ふぅ~終わった終わった。こりゃ楽で良いわ、矢の消耗も押さえられるし、最高だわ~」


(おまっ!・・・エルフだろ!せめて魔法使えよ!あ~もう残念だ!何か色々台無しだよお前!近接格闘エルフなんて見たくなかったわ!)


この後、昼食を挿んで場所を変えつつ夕方まで狩り・・・いや、殴り続け、ホーンラビットを二十六匹倒した。流石にキャリアーとステップボードに乗り切らずハンドルにも下げ、残りはリサのリュックに入れて帰る事になった。


「いやぁ~大量、大量。これなら直ぐに昨日の分取り返せそうだわ。有難うニール、ほんと助かるわ~」


(俺は二日目にして早くも登録解除したくなったけどな!あれ?LVが上がって・・・あ、又上がった・・・・・もしかしてリサが倒しても経験値が入るのか?後は走行距離が経験値に為ってる?あれ?耐久が少し減ってる・・・昨日から転倒してないよな・・・・・もしかしてリサが受けた分をある程度肩代わりしている?・・・・・ま、拙いぞ、これにリサが気が付かなかったら俺が壊れた時に保護が切れてリサも・・・・・何とかして伝えないと!って何も出来ねぇ~!)



 種類:オートバイ LV4 名前:ニール

  耐久:164/230 魔力:49/65

 スキル

  イグニッション(アクティブ時:前照灯・警笛・方向指示器)

  自動修復(小) 小物入れ 所有者保護

 所有者:リサ・シルフライン



(くそっ!スキルも増えてないし、今晩中に何か考えておかないと・・・・・)


街へ帰り冒険者ギルドで換金するとリサはホクホク顔で宿屋へ帰って行き、俺はギルドの定位置で一晩中対策を練るのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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