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落ち込みつつもゴタード装飾品店へ戻ると何やら慌しかった。
「ああっ!ニールさん、良くご無事で」
「は?ああ、そうか、公爵に呼ばれたの知ってるんだもんな。無理難題吹っ掛けられるとか、取り込まれるとか思うよな」
「ええ・・・国の為に働けとか、魔道具を寄越せとか言われて牢に繋がれてるんじゃないかって・・・・・」
「そりゃあ心配掛けてすまなかった。って言うか、そっちは逃げる準備でもしてたって事かな?」
「はい・・・万が一の為に最低限の物だけでもと。ま、杞憂に終わったみたいですけど・・・ははははは・・・・・」
「ははははは・・・・・いやぁ・・・すまん!国王相手に謁見の間で暴れて来ちゃったんだよね・・・近衛とか衛兵も四十~五十人位倒しちゃったし・・・・・あ、きっちり脅しといたから多分俺達に二度と係わらないと思うよ。いや、本当に」
「え・・・・・暴れた?・・・謁見の間で?・・・・・・・・・・ちょっ!ちょっと!何やってるんですか!拙いじゃないですか!逃げましょう今直ぐに!」
「大丈夫だって。今現在追いかけて来てないし、多分公爵が止めてると思うし。な、アマンダ」
「そうねぇ・・・何だかあの人、私達に謝りたそうにしてたしねぇ」
「そうそう、だからそんなに慌てなくても良いから。あ、奥さん荷造りとかいらないから。俺の収納に放り込んで持って行くからそのままで平気ですよ。知り合いに挨拶とかそっちの方優先して・・・・・そう言や名前聞いてなかったわ・・・ははははは。俺はニール、この子はアマンダって言います。暫くの間ですけど宜しく」
「え・・・あ、はい。私はミリアと言います。この子は娘のアリアと言います。こちらこそ宜しくお願いします」
「ああ、そういや名乗ってなかったな・・・俺はエイル・・・・・ってそうじゃないだろ!早く逃げないと!」
エイルを宥めて今後の事を話し合い、明日は挨拶回り等を済ませて出発は明後日と言う事に為った。
夕方に裏庭にガレージを出して見せ、野営の準備も要らないし、俺達は寝なくても平気で結界も有るからエイルは見張りもしなくて良い事も伝えた。
翌日、各々が挨拶回りに出かけている間に俺が家財道具を次々と収納に仕舞い込んでいると、ホクホク顔で戻ったエイルが言った。
「いやぁ~まさかこんなに高値で売れると思って無かったよ!見てくれ!金貨千五百枚だ!流石ギルド前の一等地だけは有るなぁ~ははははは!」
当面の生活費所か暫く遊んで暮らせる位の余裕が出来たと大喜びのエイルに、家を借りる事を考えたらそんな余裕は無いと冷や水を浴びせるミリアとアリア。
「ま、まぁ向こうの相場次第で家を買う事も検討した方が良いんじゃないか?小国とは言え王家御用達の職人なんだし、工房を構えても良いと思うぞ。親戚に頼り切りってのもなんだし」
「そ、それもそうだな。うん、大金を手にして気が大きく為ってしまったみたいだ。知らない土地に行くんだし堅実に行かないとな」
そんな遣り取りの有った翌早朝、忘れ物が無いか確認をして表の通りで分体を出す。少々大きくなってしまったがヨーロピアンに三人乗りのサイドカーを付けてゴタード一家を乗せ出発。門番達に止められる事も無く街を出て先ずは南へと向かう。三人が慣れるまでは余りスピードを出さない様に気を付けつつ進み、昼休憩後から徐々に速度を上げて行った。
国境を越えジュイダ王国に入った後も更に南へ向かった。三人共マモン王国を出た事が無く、どうせなら水上都市を見てからと言う事に。行きと同じ場所で野営をする事にして皆で夜景を眺めた。案の定アリアが水上都市に行って見たいと言ったが、手前の街の事等を説明すると納得してくれた。
翌早朝に水上都市を眺めた後に出発。来た道を少し戻って分岐を東へと向かう。街道や周囲の景色も昔と特に変わって居らず三日で山の手前の分岐に付いた。山の南側の街道を進みアマンダと初めて会った場所辺りで野営をする事に。ガレージを出して夕食を食べた後、アマンダは山へと向かって飛んで行った。
「わぁ~・・・・・良いなぁアマンダさん飛べるんだ・・・・・私も飛んでみたいなぁ・・・・・」
「そんなに時間も掛からないだろうから、戻って来たら抱えて飛べないか聞いてみたらどうだ?」
「ん~・・・・・それは何か違う気がするし、手が滑って落ちたら嫌だから良いかなぁ・・・・・」
アマンダが戻るまでお茶でも飲んで待とうとお湯を沸かしながら話をしていると、山の上の方からアマンダの声が聞こえた気がして顔を向けた。
「・・・・・ん?・・・・・あれ・・・アマンダだよな?随分早く戻って・・・・・・・・何だあれ?」
何やら叫びながら近づいて来るアマンダの後方に大きな影が見えた。
「ニール!逃げてぇ!!」
着地もせずに地面すれすれを飛びながら俺達に向かって叫び声を上げるアマンダの後方の地面に巨大な何かが激突した。
轟音と共に地面を吹き飛ばしたそれは、巻き上げた砂塵の中で体を起こし声を上げた。
「グハハハハ!何たる僥倖か!ティーターンの隠れ家と思しき場所で張っておれば何れはと思って居ったが、連なる者が集って居るとはな!我等が主の命だ、そなた等の命貰い受けようぞ!!」
砂塵が晴れたその中に居たのは全身を紅蓮に染めた竜、ドラゴンだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




