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「・・・・・ふざけんな・・・・何が悲願だ!アンモン様がどんな気持ちでこの地で国を興したのかも知らねぇ癖に勝手な事ばかり言いやがって!!尊敬する陛下と共に戦う事も許されず、後を追う事さえ出来ずに陛下の命を守ってこの地に骨を埋めたんだぞ!!何故名前を変えハビラ王国を名乗らなかったのかも解らねぇのかよ!!・・・・・返せよ・・・てめえがアンモン様の子孫だなんて認めねぇ・・・・・その紋章はアンモン様の遺志を継ぐ者だけが手にして良い物だ!!」
ゆらりと前へ歩き出した俺の前に立ち塞がる兵士達が槍を構え声を上げる。
「動くな!それ以上進めば命の保障はせんぞ!」
・・・・・ドクン・・・ドクン・・・頭に血が上りすぎてやけに心臓の鼓動が大きく聞こえた・・・・・
兵士の言葉など知った事かと前へと進む・・・ドクン・・・ドクン、ドクン、ドクン、ドクン・・・目の前が紅く染まって行き鼓動が速くなって行った・・・・・
兵士が俺に向かって突き出してきた槍がやけに遅く感じた・・・ドムドムドムドムドム・・・ガアァゴオオォォ・・・ガアァゴオオォォ・・・・・
「ヴオオオオオォォォォ・・・・・ォオアアアァァァ!!」
排気音の様な叫び声を上げた俺の身体が光を放ち、意図せず変化を始め兵士の放った槍を弾き返す。
光が収まると何時ものオフロードでは無くアメリカンに変化していた。
黒地のフェンダーやタンク、サイドカバーには俺の怒りを表すファイヤーパターンのペイントが施され、天へと伸びるチョッパーハンドルは角の様に見えただろう。
スラッシュカットのマフラーとキャブレターに取り付けられた大口径のファンネルから獣の咆哮の如き吸排気音が室内に響き渡り、兵士達は威嚇されたと警戒し少し距離を取った。
「なっ?!何だこいつは・・・・・人じゃなかったのか!」
フロントブレーキとクラッチを握りガコンと音を立てて1速にギアを入れ、アクセルを回しパワーバンドで固定してクラッチを繋いで行く。
1500ccのエンジンパワーがチェーンからリアタイヤへと伝わり空転し、絨毯を吹き飛ばし床との摩擦音と白煙が室内へ広がって行った。
ヘッドライトを点けると正面に居た兵士達が脅えて逃げ出し玉座までの道が開け、フロントブレーキを離し国王へと襲い掛かった。
「ヒイィィ!」
国王は悲鳴を上げて玉座から転がりながら逃げたがフロントタイヤが奴の足を踏みつけゴキリと音を鳴らす。俺は玉座を吹き飛ばしスピンターンで向きを変えた後、国王をヘッドライトで照らした。
「グアアァァ....!」
「陛下!陛下をお守りしろ!」
「女だ!女を捕らえろ!」
周囲の兵達が動き出し蹲る国王を守る為に、アマンダを捕らえる為に移動し始める。
(この馬鹿共が!そこを退けぇ!!・・・パアアァァン!!)
ホーンを鳴らすと兵士達は驚き動きを止めてこちらを向き、その隙を突いてアマンダはふわりと宙を飛んで俺へと跨った。
「と、飛んだぞ!この・・・化け物共め!囲め!こいつ等を逃がすな!」
(どいつもこいつも死にたがり共が!戦がやりたきゃてめぇらだけでやりゃぁ良いんだよ!!)
アマンダを乗せたまま謁見の間を走り回り、次々と兵士達を跳ね飛ばし踏みつけて行く。
やがて謁見の間は阿鼻叫喚の場へと変わり、動ける兵士は壁際に張り付き震え、俺は国王と再び対峙し人型へと戻った。
折れた足を抑えて苦悶の表情を浮かべて蹲る国王。その傍に落ちていた紋章を拾い収納へと仕舞う。
「こいつは返してもらうぞ。良いか・・・アンモン家の子孫だ何だと二度と口にするな!もし俺の耳にそれが入った時は必ず貴様等を潰しに来る!!行くぞ、アマンダ」
国王は返事をしなかったが、そんな事はどうでも良かった。守らなければ言った通りにすれば良いのだから。
謁見の間を出た所にはアルバハン公爵が立っていたが、何も言わずに通り過ぎる俺達の後に付いてきて道を塞ぐ兵士達に下がる様に言い、何事も無く城門を抜けた。アルバハン公爵は俺に何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに立ち去る俺達を見送るだけだった。
ゴタード家へと帰る道すがら俺はアマンダに謝った。
「・・・・・すまねぇ・・・アマンダ。お前には戦うなって言っといて暴れちまって・・・・・アンモン様の気持ちを知りもしない・・・知ろうともしない奴をどうしても許せなくてさ・・・・・」
「良いわよ別に・・・・・私はニール・・・主が見下されているのが気に入らなかっただけで、貴方の理由からしたら何て事無かったって思うしね」
「そうか・・・俺はお前の主だもんな・・・・・押さえ付けるだけじゃなくて、お前の気持ちも考えてやらないといけなかったな・・・・・」
アマンダが普段我侭を言わないのは俺が主だからで、色々不満を抱えていても言わないだけだと気付かされた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




