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リサからの手紙には俺が出て行ってから何があったのかが書かれていた。
三十年後にアンモン様が亡くなって息子に代替わりした事。
その二年後にエドム王国が進攻して来てゲベルが陥落し、周囲の農村まであっと言う間に占領された事。
アンモン家は領民を守りつつ撤退戦を続け、王都まで領民を逃がした後、王国軍と共に戦い続けた事。
三年後にアバタ領を占領された事が原因で食糧難となり、アンモン様は国王陛下の命で北へと領民を連れて移住した事。
更に二年後に王都が陥落したが、エドム王国はそれ以上進軍して来なかった事。
アンモン様は陛下の命で北の地で残った民を導かなければ為らず、この不毛の地を豊かにする事が陛下への手向けと奮闘し続けた事。
終始そんな感じで俺に文句も愚痴の一つも無かったのがリサなりの優しさなんだと思った。
城門を潜り中庭を抜けて城内へと入るとメイドに案内されて待合室へと通され、出されたお茶を飲んでいると四十後半位の男性がやって来た。
「良く来て下さった。私はアルバハン公爵と言う。そなたが旅商人のニールで間違いないか?」
「はい、始めまして旅商人をしておりますニールと申します。こちらは私の連れでアマンダ。何分こう言った所は不慣れな物で失礼に当たる事が有るかもしれませんがお許し下さい」
「・・・ふむ・・・・・そう言う割には然程問題ない言葉使いだが、作法の方はどうだ?急な話で悪いがこれから国王陛下に御会いして貰うのだが」
「・・・・・申し訳有りません。しがない旅商人ですので作法の方は良く知りません」
「・・・まぁ、陛下も解っておいでであろうし大丈夫であろう。では、私の後に付いて来てくれ。謁見の間に入ってからは許しが有るまで口を利かぬ様に。それと膝礼は私の真似をし、頭を軽く下げたままにしておく事だ、良いな」
俺達は「解りました」と返事をし、公爵の後について謁見の間へと向かった。途中で何故呼ばれたかを聞いてみたがネックレスの礼を直接言いたいらしい。正直そんな事は信じていない、おそらくは俺を利用しようとしているのだろうが出来れば穏便に断りたい。ゴタード家の引越しを無事に終わらせなくては為らないからだ。
如何した物かと思案しているうちに謁見の間に付いてしまった。衛兵が二人豪華な装飾の付いた扉の両脇に立ち、俺達に気が付くと扉を開けて中へと通された。
謁見の間に入って中を見た第一印象は『あ、これあかん奴や』だ。
いや、正直室内は漫画やアニメにに良く出てくる謁見の間その物だし、赤い絨毯に三段程高い所に有る玉座に座る見るからに王様な感じのおっさんとテンプレその物で特に感じ入る所は無かったんだが・・・・・
近衛だか騎士団だか知らないが、槍を構えた三十人を越える兵士が絨毯の両脇以外にもずらりと並んでいて、どう考えても礼を言う為に呼んだのでは無く脅迫する気満々だった。
この時点で穏便に断る事よりアマンダを暴走させない様にする事を考えていた。
公爵が立ち止まり跪き、俺達もそれに習うと国王陛下が口を開いた。
「アルバハンよ、その者等がこれを運んで来た旅商人であるか?」
「はい、陛下。この者等が王家の祖であるアンモン家の紋章を届けてくれた旅商人のニールとアマンダと申す者に御座います」
「そうか、大儀であったな。その方らも良く届けてくれた礼を言う。直答を許す、何か望みが有れば言うが良い」
「・・・・・いえ、直接御言葉を戴けただけで十分で御座います」
「そうか・・・殊勝な事だ下がって良いぞ」
え?これで終わり?と思ったが、周囲の兵に警戒してピリピリとした雰囲気を纏っているアマンダが爆発する前に終わって良かったと立ち上がり「失礼します」と言って歩き始めた所で声が掛かった。
「待て、そなたは変わった魔道具を持っているそうだな。その力を我が国に役立てて貰えぬか?」
「・・・・・仕事の依頼で御座いましたら既に請け負ってしまった物が御座いますので、一月後で宜しければ喜んでお受けさせて頂きます。ですがしがない旅商人の身、お役に立てるとは思えませんが?」
「ふむ・・・・・ちと解りにくかったか?我が国に使えよと言っておるのだ。そなたの持つ魔道具は使用者を選ぶと記録に残されていたのでな」
そんな事は解ってんだよ!遠回しに断ってんだ、察しろよ!確かにリサ以外は乗せなかったけど、それは俺が選んでたんじゃなくってリサが断ってたんだよ!アインは怖がってたけどな!と、怒鳴りたいのを我慢してはっきりと断る事にした。
「大変有り難い申し出ですが、お断りさせて頂きます。私もアマンダも誰かに使える気は有りませんし、旅商人を辞める気も有りませんので」
そう言ってちらりとアマンダを見ると、ちょっと機嫌が良くなったらしく口元が少しにやけていた。
「・・・そうか、仕方ないな・・・・・その者達を捕らえよ!魔道具の在り処を吐くまで殺さぬ様に気を付けるのだぞ。大人しく言う事を聞いておれば良かったのだ、愚か者め」
周囲の兵達の他に入り口や玉座の裏からも兵士が雪崩れ込んで来て、あっと言う間に槍を構えた兵士達に囲まれてしまったが、自分達の安全よりアマンダの口元が凶悪に歪んで行き、このままでは兵士達の命が危険に晒される事を心配して気を逸らす為に口を開いた。
「・・・・・陛下、一つお聞きしても良いですか。あれを、魔道具を何に使う御積もりでしょうか?」
「・・・ふん、まぁ良いであろう。そなた達は知らぬであろうが、アラバ塩湖周辺は元々我らの物であったのだ。故にそれを取り戻す事こそが我らの使命であり開祖で有るアンモン家の悲願!例の魔道具は馬よりも速く馬車よりも多くの荷が運べると言うではないか!これを軍事目的に使わずしてどうする!もう一度だけ問う、協力するか否か心して答えよ!」
「ニール・・・もう良いでしょ?私もう我慢出来そうにな・・・・・ど、どうしたのニール?」
苦し紛れとは言え聞かなければ良かった・・・・・いや・・・アマンダにやらせるよりもマシだったのかもしれない。俺は国王の台詞に完全に切れてしまっていた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




