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翌朝、アデイルの北門を出てジュイダ王国を目指した。と言っても走り始めて一時間もせずに国境を監視する為の砦に着いたのでギルド証を提示して先に進み、あっと言う間にジュイダ王国側の砦に着いたので同じ様にギルド証を提示して先に進んだ。
周囲を低木が囲む街道を進む事二日、西側にアラバ塩湖が見えて来たのだが・・・・・
「何だありゃ?!・・・・・アマンダ!左前方!湖の真ん中見てみろ!すっげー景色だぞ!」
「わぁ・・・・・素敵ねぇ・・・あれって街よね、ニール!」
「ああ、湖の真ん中をぶち抜いて橋を架けただけでも凄ぇのに街まで・・・・・おお!ありゃあ城かぁ?!一体どれだけの年月と金が掛かったのか検討も付かねぇよ!」
ジュイダ王国の王都はアラバ塩湖の中心に浮かぶ水上都市だった。
更に驚く事にハビラ王国時代は塩害で半砂漠化していた土地に作物が青々と繁り、何も無かった街道脇が農地に変わっていた。
「凄ぇな・・・・・塩生植物とか言う奴か・・・奥の方は・・・・・ありゃあトマトかな?」
途中の畑で農作業をしていた老夫婦に話を聞いてみた。
この植物はジュイダ王国の特産品の「アラバリーフ」と言う野菜で、葉の部分に塩を貯めるので調理の際に塩を必要としない。その為、内陸部で重宝されていて、主に東のマハン王国に輸出されているのだそうだ。
トマトの方は元々塩分を含んだ土地に植えると甘みが増すそうで、連作障害を防ぐ為に植えているとの事。
何時か旅の途中で売れるかもしれないので苗を売ってくれないかと交渉し、金貨を出したら喜んで売ってくれた上に、泊まって行く様に言われたので一晩厄介に為る事にした。
「え~!あそこには行けないの?!楽しみにしてたのに・・・・・」
夕食時の話の中で水上都市の話になり、入れないと聞かされたアマンダが項垂れた。
水上都市は他の国で言う所の貴族街に当たり、平民では許可証を持つ御用商人等の一部の者しか入れないのだそうだ、残念。
あ、夕食に出たアラバリーフはホウレン草の様な味でした。
翌朝、老夫婦に礼を言い二人に見送られ、せめて水上都市を近くで見ようと橋の近くまで行く事にした。
ジュイダ王国王都ハジブ。
アラバ塩湖の中央に王城とそれを囲む貴族街を構え、東西に伸びる橋の両端に平民街を置き、一つの街なのに東西と中央で全くと言って良い程交流の無い変わった街。
俺達は南門から街に入ったのだが、第一印象は兎に角狭い。南門から北門までのメインの通りでさえ馬車三台分有るか無いかで、建物はアパートの様に五~六件が繋がっていてどれも二~三階建て。間の路地は直ぐに突き当たってT字路か行き止まりだ。街中で開けている所は中央広場と橋の手前の門の周囲位と閉塞感が半端無かった。
せめて橋から向こうが見えないかと行って見たが、高い塀と巨大な門に阻まれて見る事は叶わなかった。この門が開くのは数日に一度の早朝のみで、食料品や資材等の搬入時だけだそうだ。
防衛上の観点からすればこれ程守り易く攻め難い街も珍しいが、水上都市を観光に使えばもっと栄えるのにと思ってしまったのは旅人の性だろうか。
昼食に食べた鶏の塩釜焼きは香草が効いてて美味しかったです。
次に門が開くのが二日後と聞いて、それまで待つのも馬鹿らしいと直ぐに街を出た。一泊でもしたらアマンダが夜中に抜け出して飛んで行きそうだった、と言うのが本音だが。
北門を出て暫く走った所で路肩に止めて後ろを振り返る。
日が傾き逆光で黒く染まる水上都市とやや紅く染まったアラバ塩湖の対比がとても美しく幻想的だった。
「・・・・・案外近くで見るよりこうして離れた所で見る方が良いのかも知れないな。手前の街も中に入ったら窮屈で落ち着かなかったし」
「それもそうね。あそこが手前の街みたいだったら幻滅しちゃうわ」
そして日が落ちる直前まで眺めてからガレージを出して野営をし、翌日は日の出前から水上都市を眺め、時と共に移り変わる景色を十分楽しんだ後に北へと向かい二日後には国境を越えてマモン王国へ入国。
王都マグラスは大陸北部の山脈の手前と聞き、更に一日北上した所で城壁が見えてきたので翌早朝に王都に入る事にして手前で野営をした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




