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衛星都市アデイル。

ハルハ王国王都ケラクの衛星都市で人口は二万人弱。その様相は三千人規模のセドムとは明らかに違っていた。石造りの高い城壁に物見櫓と物々しく、街中の建物も全て石造りで城塞都市と言った感じだ。


「お前達は通常業務に戻れ、君達は私に付いて来たまえ」


今だ困惑する俺は彼に付いて行くしかなかった。

少しでも見知った場所は無いかと見回すがどの建物も見覚えは無く、唯一見知った看板は冒険者ギルドだけだった。


(マーシャさん・・・・・居る訳無い・・・よな・・・・・)


暫く西へと進み、中央広場を左に曲がって南へ進むと商業ギルドが見えて来た。

裏に回って兵士の馬と俺のバイクを止めて正面からギルドへと入ると、奥の空いているカウンターへ向かう。


「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか?」


兵士に促されて俺はカウンターに金貨を置いて用件を伝えた。


「こいつを換金して欲しいんだけど出来るかな?」


「では、拝見させて・・・ゴクリ・・・申し訳有りません!少々お待ち下さい!」


ギルド職員は俺の置いた金貨を手に取ると、驚愕の表情を浮かべ慌てて奥へと入って行き、俺と兵士が何事かと顔を見合わせていると奥から別の職員を連れて戻って来た。


「お待たせいたしました、少々お聞きしたいのですが此方は何処で手に入れたのでしょうか?」


「・・・それは以前、知人から仕事の報酬で貰った物なんだ」


「・・・・・左様ですか・・・こちらの換金は今は行なっておりませんので買取と言う事になりますが宜しいでしょうか?」


(前の職員の態度と言い怪しいな・・・・・こいつ何か隠してる・・・鎌かけてみるか・・・・・)


「そいつは金額にもよるな・・・・・それの価値を知ってて買い叩こうって言うなら他の街に行かせて貰うぜ」


「と、言いますとこの金貨についてご存知と言う訳ですか」


「ああ、そいつはハビラ金貨だ。ハビラ王国とその周辺諸国での共通通貨だろ」


「・・・ご存知でしたか・・・・・申し訳有りませんでした。では、適正価格の金貨二十枚で買い取らせて頂きます」


「五十だ。さっき言ったろ、他の街に行くだけだって」


「ご、五十とは・・・・・幾らなんでもそれは・・・・・」


「実はな・・・それ一枚じゃないんだが・・・・・どうする?」


「なっ!・・・くっ・・・・・解りました、枚数にもよりますが、三十・・・いや、三十五で如何でしょうか」


「・・・・・まぁ、その辺が妥当か・・・それじゃあ十枚出そう。商談成立で良いかな?」


「その口振りですとまだお持ちの様ですが、お売り戴けないのでしょうか?」


「まぁな・・・他へ行けば良いだけだし」


「わ、解りました・・・・・これ以上は私の権限で出せませんので上司に伺ってまいります、暫くお待ち下さい」


職員が奥へと向かって行くと、背後で兵士の呟く声が聞こえた。


「・・・お、俺の年収が一瞬で・・・・・」


「あんたのお陰だよ。仕事が終わった後に晩飯奢るから、この後に宿屋紹介してくれるかい」


「俺は仕事をしただけなんだが・・・・・その額を聞いた後だと罪悪感も湧かんな・・・ククク・・・・・」


兵士と顔を見合わせ笑い合っているとまた別の職員がやって来た。


「どうもお待たせしました。当ギルドの支部長を務めておりますメイヤー・コープウッズと申します。旧ハビラ金貨を纏まった数お持ちと聞きましたが、間違いないでしょうか」


メイヤーと名乗るその職員はエルフだった。


(・・・旧ね・・・・・アマンダが言ってた『ずっと待っていた』ってのと合わせると、やはり付喪神に成るのに長い事眠ってたって事か・・・・・)


「ああ、取り合えず十枚は売るって事にしたけど・・・・・それ以上はあんた次第かな」


「出来る事なら全て買い取りたいと思っております。ご存知かと思いますが旧ハビラ金貨は現存数も少なく市場に出る事も稀ですから。ですが、現物を見せて戴けない事には何とも言えません」


俺を探る様な目で見るメイヤーにニヤリと笑い、右掌をカウンターに付けて掌から金貨を出して行く。

ジャラジャラと音を立てて金貨が掌を押し上げて行き、全て出し終えるとカウンターに金貨の山が出来上がった。

周囲に居た者達が眼と口を開いたまま呆気に取られて動けなくなり、静まり返った所で俺は口を開いた。


「全部で百枚ある筈だ検めてくれ。ああ、その間に俺と彼女の登録と移動用の魔道具で街中を走れる様に荷馬車と同じ扱いにして欲しいんだが・・・出来るかな?」


「・・・・・はっ、はいっ!す、直ぐにご用意致します!君、書類の用意を!」


我に返った職員達が動き出し、問題なく(アマンダは字を書けなかったので俺が代筆したが)登録も終わり交渉に入る。


「さて、それじゃ一枚幾らで買ってくれるのかな?」


「・・・・・全て本物で状態も良いですし・・・お客様の提示した五十と言う強気の数字にも納得ですが・・・・・四十三でどうでしょう?流石に五十と言うのは出せませんし、これ以上はこちらの利益が無くなってしまいます」


「おいおい、六十以上で売れるんだろ?百枚纏まってんだ、利益が出ないとか有り得ないだろ。それとも十枚だけにしとくか?」


「・・・・・はぁ・・・参りました。まさか売値まで把握していると思いませんでしたよ。解りました、五十で買い取らせて下さい」


「良し、商談成立だ。ああ、売値の事は最初の提示額から予想しただけなんだ、悪かったな」


「・・・・・相手が悪かったと言う訳ですか・・・ですが、この期を逃す訳にも行きませんでした。今金貨を用意させます、それまでの間に聞いても宜しいですか?」


「ん?入手先の事なら言えないぞ」


「いえ、登録名の『シルフライン』と言うのは偽名ではありませんか?」


「・・・・・俺の名付け親の旧姓なんだが・・・何故偽名だと?」


「不躾なのは謝ります。ですがシルフラインと言うのはエルフの部族名なのですよ。ですから人族の貴方が使っているなら偽名なのではと思いまして」


「いや、別に構わないさ。それより俺も聞きたい事が有るんだ、ハビラ王国についてあんたが知ってる事を教えて欲しい。俺が知らない事を知ってるかもしれないしな」


「ええ、構いませんよ。と言っても三千年程前にアラバ塩湖周辺を治めていた国で、北部は製塩とガラス製品や装飾品が盛んで、南部には巨大な穀倉地帯ととても豊かな国だったと言う事位しか知りません。何が有って滅んだのか、詳しい文献も残っておりませんのでこれ以上は私からお話出来る事は無いかと」


「・・・・・そ、そうか・・・いや、まぁ、有難う・・・・・そ、そうだ、これを見てくれ!これについて何か解る事は無いか?」


三千年程前に滅んだと言う言葉を聞いて動揺を隠しきれなかったが、少しでも情報をと首からネックレスを外して職員に見せた。


「では、拝見いたします・・・・・ふ~む・・・中央に鷲と円形の盾?・・・ああ、マモン王家の紋章と似ていますね」


「そのマモン王家の居る国は何処にある?」


「マモン王国でしたらアラバ塩湖の北側を治めておりますよ。ここからですと荷馬車でも二十日もあれば着きますよ」


「そいつは良い事を聞いた。アマンダ、予定変更だ北へ向かうぞ」


職員から金貨を受け取り、兵士に案内されて宿屋へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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