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15

ベッドの傍に木箱を置いてテーブル代わりにし、その木箱を挟んで別の木箱を椅子の代わりにして俺も座った。

ポットに茶葉を入れてお湯を注ぎ、暫く置いてから木のコップに注ぎ彼女にも勧めた。


「お茶を淹れるのはあまり上手く無いけど、ただ水を飲むよりマシだから良かったら飲んでくれ」


「別に飲んだり食べたりする必要は無いんだけど・・・・・」


「ああ、それは解ってる。でも人の姿をしている以上、人の習慣は真似するべきだと思うぞ」


そう言ってお茶を一口飲んだ。ちょっと蒸らしすぎたのか茶葉が多かったのか少し渋みが強かったが久しぶりの味覚が嬉しかった。

彼女は訝しげな顔をしながらも一口飲むと眼を見開き、コップの中と俺の顔を交互に見た後、ゴクゴクと一気に飲み干した。

空になったコップを少し寂しそうに眺める彼女にもう一杯入れてやると、今度は楽しむ様に眼を細めてゆっくりと飲んで行った。


「生きて行く為には必要なくても経験するだけの価値はあったろ?」


「・・・・・うん、貴方の言う通りだわ。人って生きる為だけに食事をしてたんじゃなかったのね・・・・・何だか凄く落ち着いて幸せな感じになれたわ」


「そりゃ良かった。でだ、俺はこれから世界を旅して回ろうと思っているんだが・・・・・お前はどうする、付いて来るか?」


返事なんて聞かなくても解っていた。十年以上も俺を探していたのだから付いて来ると言うに決まっている。面倒な事になるのも解っていたけれど、それでも放って置く訳にはいかなかった。強大な力を持つ意味も、その力の使い方も知らない彼女に人として生きて行けるだけの知識と経験を与える事が出来るのは嘗て人で在った俺だけだと思ったから。


「い、良いの?私と一緒に居てくれるの?・・・・・」


「ああ、但し条件がある。俺は『人』として旅をするからお前も『人』として行動して貰う。お前は人社会での常識が足りないから、俺の許可無く勝手な行動はしない事。これが条件だ」


「何でよ!私達は人より上位の存在なのよ!何で人の真似して我慢しなきゃいけないのよ!」


「まぁ、そう言うと思ったよ。お前が言う通り俺達は人じゃないし人より遥かに強い。お前がその力を自由に振るえば簡単に人は死ぬよ。でもな、そうする事でお前は狙われ続ける事になるんだ」


「わ、私が狙われる?」


「そうだ、人は群れて組織を作り群れを守ろうとする生き物だから外敵が現れると排除しようとする。状況は違うがお前の主も戦い続けたんだろ?俺は殺されるのも殺すのも嫌だから出来る限り戦いたくないんだ。お前が勝手な真似をすると言うなら俺はお前を置いて一人で逃げるぞ。今の俺は以前よりも速くなってるから簡単に逃げられるし、その方が面倒が無いしな」


「・・・・・うぅ・・・何でよ・・・・・人の相手なんてしなくても旅は出来るでしょ」


「そんなの詰まらないからに決まってるじゃないか。着いた場所によって違いが有るんだぜ。面白い話を聞いたり変わった食材を使った料理とか食べたりするには、人社会に紛れても問題無いだけの常識が必要なんだよ。まぁ、どうするかは自分で決めな」


少し突き放すような言い方をして彼女に背を向け木箱の中身を確認していく。

水や食料だけでなく炭や油に調理器具や食器も欲しいし、多分彼女も付いて来ると言うだろうからベッドに椅子やテーブルも欲しい所だ。

買い物リストを頭に叩き込んで立ち上がると、俯いて悩んでいる彼女に話しかけた。


「さて、俺はこれから足りない物を買い足してからそのまま旅に出るけど・・・お前はどうするか決めたか?」


「えっ!も、もう行くの?!ちょっと待ってよ!」


「あまり遅くなる訳にも行かないんだよ、買い物が有るんだから。ほれ、片付けるから外に出た出た」


彼女の手を引いて立ち上がらせて背中を押して外に出し、ガレージを仕舞うと分体生成でオフロードバイクを出して跨った。


「それじゃ俺は行くけど元気でな。もう会う事も無いだろ」


そう言ってエンジンを掛けると彼女がしがみ付いて来た。


「いやぁ!行かないでぇ!・・・もう・・・一人は嫌なのぉ・・・グスッ・・・言う事聞くがら連れでいっでぇ・・・うぅ・・・・・」


ちょっとやり過ぎたかと思いながら落ち着くまで頭を撫でててやった。




「・・・・・落ち着いたみたいだな。さて、これから街に向かう訳だが・・・・・お前~・・・・・いや、俺の名はニール、ニール・シルフラインだ。お前の名前は?」


彼女の名前を聞こうとして自分の名前が無い事に気が付いて咄嗟にリサの旧姓を名乗った。


『固体名をニール・シルフラインで登録しますか?Y/N』


例によって天の声?に聞かれたのでYesと応えるとステータスに名前が書き込まれた。


「今は無いわ・・・ご主人様はアダマスの鎌って呼んでたけど」


「アダマスの鎌・・・・アダマス・・・ってなんか聞き覚えが・・・・・まぁ良いか、何で名前無いんだ?自分で付けたら良かっただろ」


「別に・・・必要無かったし・・・・・」


「ああ・・・そうか・・・すまん。一人じゃ名前なんて必要なかったか・・・・・」


「謝らなくても良いわよ・・・・・そうだ!貴方が付けてくれない?私じゃ名前なんて思い付かないのよ」


「ん~・・・俺の名前もリサに付けて貰った物だしなぁ・・・・・前の名前から取るとして・・・アダマス・・・アダマス~・・・・・ああ!思い出した!アダマンタイトって金属の事だ!・・・ん~・・・・・ちょっと捩ってアマンダなんてどうだ?」


「あら、良いじゃない!それにするわ」


『アマンダ・シルフラインで固体名及び眷属登録しました』


「「はぁ?!」」


「ちょ、ちょっとどう言う事!何で眷属に為ったのよ!」


「し、知らねぇよ!俺だってこんな事に為って驚いてんだよ!」


「同格ならお互いの承諾無しに眷族に成る筈無いのに・・・・・」


「それだ!お前精霊王なんだろ?俺は付喪神なんだよ!」


「へ?・・・か、神・・・あんた神族なの・・・・・す、凄い・・・・・・・・」


「凄いかどうかは置いといて、取り合えず契約解除するぞ。俺はこう言う主従関係とか好きじゃないし、お前だって嫌だろ」


「待って!このままで良いわ!これから貴方の言う事聞くって言ったんだもの。この方が確実に私を止められるでしょ?私の知らないうちに間違った事して捨てられたくないのよ・・・・・」


「お前なぁ・・・・・俺が変な命令したらどうすんだよ・・・幾らなんでも警戒心無さ過ぎだろ」


「そう言って私の事心配してくれてるんでしょ?そんな方がご主人様だなんて私は幸せだわ。それに信用して貰うには私から誠意を見せないといけないでしょ?」


妙に勘が鋭いと言うか頭が良いのか、俺の内心を見透かされている気がしたが、確かにアマンダが暴走した時に止められる力は有った方が良い。

上手く言い包められた気もしたが、こうして旅の仲間が出来たのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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