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旅商人を始めてから数年が経ったある日の事。


「ツォアルに店を構えようと思うの」


ニエベからツォアルに向かう途中、神妙な面持ちでリサが言った。


(そりゃ何時までも旅暮らしって訳にも行かないだろうし、商店所か豪邸買える位のお金もあるしな。まぁ良いんじゃないか・・・ピッ!・・・)


「良かった!そ、それでね・・・・・その~・・・けっ、結婚・・・したい人が・・・出来たと言うか・・・プロポーズされて・・・・・」


正に寝耳に水である。

ニエベで仕入れていた装飾品の細工師がお相手で、名前はアイン・ゴタードと言うエルフ。独立する資金が貯まり、旅商人として成功しているリサなら申し分ない相手だそうだ。

店を構えるなら恩の有るアンモン伯爵様の居るツォアルが良いと言うリサの提案に二つ返事で了承し、開店資金も渡されたので騙されていると言う事も無いだろう。


何より乗り物でしかない俺に反対など出来る筈が無かった。


ツォアルに着くとリサは商業ギルドで店舗の購入と出店手続き等をこなし、家財道具等を買い揃え領主館へこの町で開業する事を知らせた後、ニエベへアインを迎えに行った。


ニエベで引越しの荷造りを手伝うリサの左手の薬指にはアインが自作したのであろう、細やかな細工の施された銀の指輪が光っていた。


引越し荷物を載せた荷車を俺が引いてツォアルへと向かう。

出発して暫くの間リサとアインは荷台に座っていたが、乗り心地が悪いと言ってリサは俺に乗り換えたがアインは怖がって荷台のまま移動した。


ツォアルに着き荷解きをして、足りない日用品を買い足し、開店準備が整った時、俺の身体が光り両サイドの名前が書き換わった。

俺はもう見る必要の無くなっていたスペックを久し振りに確認した。



 種類:オートバイ LV1000(MAX) 名前:ニール

  耐久:15000/15000 魔力:6000/6000

 スキル

  イグニッション(アクティブ時:前照灯・警笛・方向指示器・アクセル操作)

  自動再生 小物入れ 所有者保護 レバー操作 加重移動 モデルチェンジ リミッターカット ガレージ 魔力回復力増加 カスタマイズ 物理攻撃耐性 魔法攻撃耐性 状態異常無効

 所有者:リサ・ゴタード



最大排気量は2サイクルが500cc、4サイクルは1500ccで、カスタムパーツはフレームから選べてオリジナルマシンになれる様に為っていた。


引越しに開店準備と忙しかったからと、営業開始を三日後にしてギルドと領主館へ報告。二人は新婚生活を満喫し、俺は何と無く裏庭の倉庫の隅にいる事にした。


三日後からの営業は順調だった。開店初日にアンモン様が奥様とお祝いに来てくれた事が知れ渡り、旅商人時代の知り合いも仕入れに来てくれたりした。

リサは店番に家事と忙しく、仕入れはギルドでする様になり、俺に乗るのはアンモン様からの依頼だけになった。

三年後にリサが妊娠したのを切欠に店員を雇い、出産と子育てに専念する様になるとアンモン様からの依頼もなくなり、俺は倉庫の隅から動かなくなった。

薄暗い倉庫の片隅で幸せそうに笑うリサ達を見守る事が自分の役目だと思い、ただ時が過ぎて行った。


更に数年が経ち二人目の子供が生まれ、暫くしてリサが言った。


「あんた何時までそうしているつもり?」


俺は愕然として何も考えられなくなり、リサが俺に向ける真剣な眼差しから目を逸らす事さえ出来なかった。


「あたしはあんたのお陰でこうして幸せになったわ、凄く感謝してるのよ。だからこそあんたには自由になって欲しかったの。そのうち出て行く時が来たらちゃんと見送ろうって思って待ってたんだけど・・・・・もう良いのよニール・・・何時までもあたしに縛られている事なんて無いの・・・・・あんた走る為に生まれて来たんでしょ?」


リサはそう言うと小物入れに金貨が百枚の入った袋とアンモン家の紋章を入れた。


「これを持って行きなさい。アンモン様もあんたなら怒らないでしょ。あんたが旅の途中で信用出来る新しい仲間を見つけた時に必要に為るかも知れないからさ。ああ、あんたの家の中に置きっぱなしのベッドとかも好きにして良いわ・・・・・・・・今まで・・・本当に有難う・・・助けて貰ってばかりで恩も返せないのに追い出す様な真似してごめん・・・・・でも・・・だからこそ言うわ・・・・・行きなさいニール・・・最後にあんたの好きなあの格好で、あの音を聞かせてよ」


(ああ・・・そうか・・・・・馬鹿か俺は・・・何を勘違いしてたんだ・・・・・モデルチェンジ!2サイクル250cc・オフロード!・・・カンカンカンカンカン・・・見守るなんて・・・バイクの役目じゃないもんな・・・・・)


「さぁ、あんたは自由よ!何処へでも行きなさい!走れぇ!ニール!」


リサの掛け声に背中を押されて走り出し、2サイクルの乾いた甲高い音がツォアルの街に響き渡る。

人々が振り返り俺を指差し声を上げるが構わず北門を抜け、セドムの街を目指した。


やり直すなら最初にリサと会ったあの山で所有者登録を解除しようと思った。旅の途中で勝手に登録が解除されたらツォアルに戻ってしまう気がしたからだ。


セドムの街を東に進み山の中に入って行く。あれから十年以上経っているが人の手が入っている様には見えない。道無き道を進み、あの場所に何とか辿り着くとガレージを出して中に入りシャッターを閉めた。


スペックを眺めながら所有者登録の解除と念じると頭の中に声が響く。


『所有者登録の解除には九十日の行動停止が伴います。解除しますか?Y/N』


この声を聞くのも久し振りだと思いながらYesと応えた。

徐々に所有者名が消えて行くと何故か自分の名前も消えて行き、それと同時に目の前が暗くなって行って思考も覚束なく為って行く。


『所有者解除のペナルティにより、これより九十日の行動停・・・ります・・・動停止解・・・所有者・・・より制・・・ていた・・・・・放に・・・・・を開・・・・・・・・』


途切れ途切れの声を最後に俺の意識は暗闇に閉ざされた。

何時も読んで頂き有難う御座います。

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