11
翌早朝、寝坊もせずにリサがやって来て、ギルド職員と挨拶をして出発した。
「ニール、悪いけど頼むね。例の奴でおもいっきり飛ばしちゃって」
ゲベルの街を出て直ぐにオフ車にモデルチェンジして北上。
ツォアルとヌメイラに寄らずにセドム経由で王都に行くルートを取るため途中で北東へと向かった。
昼夜問わず走り、二日目の仮眠時に新しいスキルを披露した。
「・・・・・あんたほんと凄いわ・・・まさか自分の家まで作れるなんて・・・・・」
LV60で得たスキルは『ガレージ』だった。
広さは六畳間程とそこそこ広く、出入り口はシャッターで俺の意思で自由に開閉出来る上に強力な結界で守られているのでかなり安全だ。
効果範囲は保護と同じく半径5m程で中に生物が居なければ放置して走り去れば勝手に消えるし、中に荷物を置いたままでもそのまま保存されるので、倉庫としても使える優れものだ。
「王都に付いて一段落したらベッドとかコンロとか用意するのも良いわね。宿代も浮くし」
三時間程の仮眠の後セドムに向けて出発。五日目の昼前にはセドムに到着した。冒険者ギルドは東門近くなので南側から東側へと回り込み門へと近づくと門番に止められた。
「む、リサ・シルフラインだな、領主様が御呼びだ直ぐに領主館に行くように」
「は?何で今頃・・・・・行きましょニール。さっさと用件済まし出発しないと間に合わなくなるわ」
久しぶりに入ったセドムの冒険者ギルドには何時もの様にマーシャさんがカウンターに座っていた。
「マーシャ、久しぶり」
「リサ!随分遅かったじゃない!心配したのよ!」
「ごめんね~ちょっと色々有ってさ。今日はこれ返しに来たのよ」
リサが自分と俺の登録証をカウンターの上に置くとマーシャはギョッと眼を見開いて息を飲んだ後に口を開いた。
「・・・これって冒険者辞めるって事?・・・・・何が有ったか聞いても良い?」
「詳しい事は本部にでも聞いて。あんたには世話になったからさ、ちゃんと挨拶しときたかったのよ。元々戦闘には向いてなかったし、丁度良い機会だから旅商人になったの。今日は時間が無いから余裕が出来たら遊びに来るわ。それじゃ、今まで有難うね」
「そう・・・解ったわ。ちゃんと顔見せに来なさいよ」
リサはマーシャに笑顔で手を振ると冒険者ギルドを後にして街の中央に有る領主館へと向かった。
「・・・・・ニール・・・何時でも逃げられる様にしといてね」
領主館へ付き門番に話しかけると中に入って待つ様に言われた。
「悪いけど急いでるのよ、用件だけ聞いて来て貰える?でなければ後日また来るわ」
「領主様がその魔道具をご所望だ。大人しく中に入れ、言う事を聞けば悪い様にはしない」
「お断りするわ。譲る気も売る気も無いから、そう伝えといて頂戴」
リサがそう応えると門の横にある通用口からぞろぞろと兵士達が出て来て俺達を取り囲み武器を突きつけて来た。
「大人しく投降しろ!さもなくば命の保障はせんぞ!」
「冗談じゃないわ!どうせニールとの契約を解除しなけりゃ殺すつもりの癖に!言う事なんて聞くもんですか!」
(そう言う連中なら遠慮は要らないか。モデルチェンジ!2サイクル125cc・オフロード!・・・カンカンカンカン・・・パアアアァァ・・・!!
俺がアクセルターンで向きを変えると、リサが素早く飛び乗ったのでそのまま走り出した。
進行方向に居た兵士二人が槍を突き出して来たが、リアブレーキを掛けて車体を倒し、兵士達の足を刈り転がしてフローティングターンで向きを変えて北門へと向かった。
昼間の通行量の多い中央道を馬車や人を左右に交わしながら直走る。
兵士達が笛を鳴らし合図を送ると門が閉められて行くが、丁度馬車が止まった所だったお陰で、門が閉め切れずに居て馬車の横を擦り抜けられた。
「はぁ・・・何とか逃げられそうね。このまま王都まで行きましょ、領境い越えたら追いかけて来られないし・・・・・でも・・・マーシャとの約束は守れそうに無いわね・・・・・」
(ああ・・・・・下手すりゃこの国から出て行く事にもなるな・・・・・)
俺達はやるせない気分のまま王都へと向かった。
日程に余裕が有り気分が乗らないと言う事も有ってペースは落ちたが、王都に着いたのはセドムを出て五日目の昼前だった。
商業ギルドに着き厩で待っていると、リサと職員達がやってきてリアボックスから小麦粉を困惑した表情で運んで行く。
「まさかこれ程の量を短期間で運べるとは・・・・・君さえ良ければ定期的に運んでくれないかね?」
「ん~・・・悪い話じゃないんだけどさぁ・・・あたしセドムで領主に目を付けられちゃってモアブ領通れ無いのよ。ゲベルに行くのにアラバ塩湖を北周りで行かなきゃならないから馬車で行くのと戴して変わらないわよ」
「ふむ・・・・・何が有ったのか聞かせて貰っても?」
リサがセドムで有った事を説明している内に納品分の小麦粉が運び終わった。
「これから西側のニエベに行くつもりだから何か運ぶ物が有ったら序に運ぶけど?」
「では、幾つかガラス製品の発注表が有るので、そちらをお願い出来ますか?勿論報酬も御支払いしますよ」
書類一式を受け取り王都の北門を出ようとした時、門番に止められた。
「先日の事だが、君の事を探している女性が来たのだが会えたかね?」
門番の話だと貴族風のドレスを着た黒髪の女性が一人で歩いて来て、俺達の事を聞くと王都に入らずにそのまま立ち去ったと言う。
多分あの大鎌の女だろう、セドム経由でなかったら途中で鉢合わせていたかも知れない。
俺達の足跡を辿っているのであればヌメイラへ向かっているのだろうが、油断せずに北周りでニエベへと向かった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




