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連載2作品目となります。

「キャアアアァァァ!!助けてえええぇぇぇ!!イヤアアアァァァ!!」


山の中腹の木々の中をスカイブルーのスクーターがシートの上に叫び声を上げる女性を腹這いに乗せたまま斜面を下って行く。


(おい!前見ろ前!危ねぇぞ!くそっ!このままじゃぶつかるぞ!!)


木の根や転がる枝に乗り上げる度に跳ね回る車体は転倒していないのが不思議な位だったが、それでも斜面を下って行った。


「もうダメエエェェ!死んじゃう!あたし死んじゃううぅぅ!!」


(だから前見ろって!左だ!左のレバーを握れ!!足引きずったって止まんねぇよ!)


やがて大木にぶつかりそうになるも直撃は避けたが、張り出した大きな根に乗り上げてしまう。

乗っていた女性は乗り上げた衝撃で手を離して転がり、スクーターは宙を舞いガシャンと音を立てて地面に落ちた後3m程斜面を滑って止まった。


―――どうして・・・俺は何でこんな目に・・・・・



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



「良し!洗車完了っと!」


毎年春先と秋口は休暇を取ってツーリングに行くのが唯一の趣味の俺は、愛車のオフロードバイクを整備し終えると旅支度を始めた。


「テントにシュラフとコンロにランタン・・・・・後は着替えとデジカメと・・・・・良し、準備も出来たし後は明日を待つばかりだな!」


十六歳で原付免許を取得し、その後は小型、中型、大型とステップアップして、車の免許も取得したが何故かバイクだけは止められない。

スクーターに始まりネイキッド、レーサーレプリカ、アメリカンにヨーロピアン、オフロードと様々な車種を乗り継いで来たが、走る場所を選ばない事と車検が要らないと言う理由で250ccのオフロードに落ち着いた。

勿論乗るだけに留まらず、エンジンのオーバーホールまで出来る様になったのはちょっとした自慢だ。


テーブルの上に地図を広げ移動ルートを確認しながら明日目の前に広がるであろう光景に思いを馳せ、缶ビールを飲み干すとベッドに転がり早めに眠りについた。








・・・・・タンタンタンタンタン・・・・・・・・


低排気量のシングルエンジンの排気音に気が付き目を覚ますと、周囲には霧が立ち込めていた。


(なんだ・・・何処だここ?・・・・・俺ベッドで眠った筈だよな・・・・・)


周囲を見渡せば少し開けた草原と雑木林を朝靄が白く覆い隠していた。

寝起きの重たい頭を振ろうとしたが視界は動くが身体は動かない。

いや、そもそも俺の身体は人では無くなっていた。


(う~む・・・何んでこんな状況なのに落ち着いてんだ俺?目が覚めたらバイクになってましたとか、パニックに為る所だと思うんだが・・・・・この事態に納得している俺が居る・・・・・はぁ・・・ツーリング行きたかったなぁ・・・・・)


暫くすると周囲の霧が晴れてきた。


(ん~よく見えんが山の中かな?あっちに山頂っぽいのが見えるし。しかし何処の山なのかねぇ・・・この景色だけじゃまったく解らんな。取り敢えずエンジン切っとくか、燃料とかどうなってるのか解らんし)


山の中だし道らしき物も無い。誰かが来たとしてもスクーターじゃ乗って行けないよなぁ等と考えていると林の中を走る影が見えた。


(おっ!お~い!こっちに来てくれ~って話せないんだったわ。ははははは・・・エンジン掛けりゃ聞こえるかな・・・カシュ・・・タンタンタンタンタン・・・あ~原付っぽいし無理か・・・・・ホーンならどうかな・・・ピッ!・・・うわ!しょぼ!流石原付って感じだがこれなら・・・ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!・・・・・


暫く鳴らし続けていると草を掻き分け叫びながら一人の女性が此方に駆け込んで来た。


「くっ、来るな!くそっ!こんな所でやられて堪るか!・・・・・確かこっちから変な音がした筈・・・・・何あれ・・・なんだか解らないけど車輪が有るし乗り物?上手く行けば逃げられるかも!」


(何やら立て込んでる見たいだけど気が付いてくれたみたいで何よりだな、うん・・・で、何あの格好?・・・女性にしては地味って言うか無骨って言うか・・・・・ええっ!何でナイフなんか持ってんの?!俺刺されちゃうの?!止めて!シートだけは切らないでええぇぇぇ!)


当然俺の心の声が聞こえる訳も無く、ナイフを持った女性は走って近寄って来たが、その後を追いかける様に林の中からゾロゾロと出て来る集団が有った。


(・・・え?・・・・・何あれ?緑色の・・・小鬼?・・・・・もしかして異世界転生って奴?ははは・・・って・・・おいおい、やばいじゃねぇか!急げ!早くこっちに来て俺に乗るんだ!くそっ!何か・・・今の俺に出来る事は無いのかよ!)


女性の後を追いかけて来た小鬼・・・ゴブリンは八匹。それぞれが棍棒や先を尖らせた木の棒などを持っており、女性の持っているナイフでは太刀打ち出来そうに無い。


(ええと・・・あれだ、異世界転生の定番!ステータスオープン!・・・・・って何も起きねぇ・・・あ、人じゃないからか!ならば!スペックオープン!)



 種類:オートバイ LV1 名前:無し

  耐久:200/200 魔力:42/50

 スキル

  イグニッション(アクティブ時:前照灯・警笛・方向指示器)

  自動修復(小) 小物入れ



(あ~何か出て来た・・・・・突っ込みたい事は色々有るが後回しだ・・・けど・・・使えるのはライトにホーンとウィンカーだけかよ!まぁバイクが攻撃スキルとか・・・無いわな・・・・・おっと、取り敢えず出来る事やってみるしかないか)


ライトとウィンカーを点けたり消したりしながらホーンを鳴らすと驚いて足を止める一同。


「ヒイイィィィ!あ、あたし・・・威嚇されてるの?!あ、ナイフ?ごめんね、あいつ等から一緒に逃げて欲しいだけなの。お願い!助けて!」


(あんたじゃねぇ~!あ~もう早く来いって!しかたない一度エンジン切るか)


「し、静かになった・・・良かった!言葉が通じるのね!なんだか解らないけど今そっちに行くわ!怒らないわよ・・・ね・・・・・」


(後ろ後ろ!怒らないから早くしろって!追い付かれるぞ!!)


静かになった俺に警戒を解き彼女が近寄って来ると、それに併せてゴブリン達も動き出す。

彼女が俺の後ろに回り込んだのを確認してからエンジンを掛け、ライトとホーンでゴブリン達を威嚇した。


「た、助けてくれるのよね?・・・・・あんた、さっきからそれしか遣ってないみたいだけど・・・・・もしかしてそれしか出来ない・・・とか?・・・・・ははは・・・ちょ、ちょっと拙いじゃない!車輪が付いてるから動けるんだと思ってたあたしが馬鹿みたいじゃないの!・・・・・あ、後ろの車輪が浮いてる・・・・・これ!これのせいで動けないのね!今何とかするから待ってて!」


(いや、自力で移動出来ないだけなんだけど・・・・・まぁ確かにスタンド立てたままじゃ動けないわな)


「う~ん!小さいのに意外と重いわね・・・・・あ、ここ滑らないし持ち易い・・・二つ有るって事は両手で持つ様に出来てる?よ~し、このまま前に押せば動かせるかも!」


(お、良い所に気が付いたな!確かにハンドルは両手で握る所だし、そのまま前に押せばスタンドも上がるぞ。頑張れ!)


「せーのっ!・・・ガタン・・・ブゥーン・・・え、ちょ、ちょっと待って!そっちじゃない!そっちじゃ・・・・・キャアアアァァァァ・・・・・!」


勢い良く前に押してスタンドが上がった衝撃で握ったアクセルを回わしてしまい、そのままの勢いで前に走り出した・・・・・そう、ゴブリン達に向かって。


突如走り出し向かって来る俺達に驚き慌てて逃げようとするゴブリンを次々と跳ね飛ばし、そのまま林の中に突っ込んだが彼女は俺を離さなかった。林の中に入り下り始めた所で彼女は足を取られてシートの上に腹這いになり「ライダー乗りかよ!」と突っ込む暇も無く冒頭へと戻るのだが・・・・・この先どうなる事やら・・・・・・・・

最後まで読んで頂き有難う御座います。

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