099.爺、ドナドナ先は何処なのじゃ?
師匠達に連れられて皇都を練り歩く、儂。
いやのぅ…地味に目立つのじゃが…どうにかならぬのかえ?えっ?ならぬとなっ!?
なにせ、師匠達を護衛するかの如く顔見知りとなった騎士の方々がのぅ。
これで目立たぬ筈もないわえ。
大体じゃっ!宮廷魔術師たるセルフィス様は皇都内とは言え、普通は馬車で移動するものじゃて。
そのような方が街中を練り歩きでもしたら騒ぎにならぬ筈がないわえ。
セルフィス様だけでも騒動になるであろうにのぅ、さらに有名人が目白押しときては騒ぎにならぬ筈がなかろうてな。
野次馬が集まって好奇の視線を不躾に浴びせかけて来るのじゃが、儂らは見世物ではないぞい。
そんな騒ぎを起こしながら師匠達に連れられ移動した先には豪勢な館がのぅ。
この規模の館となれば豪商か貴族が住んでおるのじゃろうてな。
その者と儂を引き合わせるつもりなのかのぅ?
そう思いながら師匠達に連れられて館へとの。
館を守る門番達に確認されつつ門を潜るとのぅ、何やら儂を見分しておるような…
いやのぅ、不審者を見る目でのうてな、なんとなくじゃが貴人を出迎えたような感じでのぅ。
むぅ、師匠達が共に居るゆえ、儂のことを勘違いしたのじゃろうか?
門を潜り、手入された広い庭を通る石畳の通路を抜けて館の玄関口へとのぅ。
そこにはメイドや執事などがズラリと整列しておってな、儂らを出迎えてくれたのじゃよ。
じゃがの、肝心の館の主の姿が見えぬのうなのじゃ。
いや、この規模の館の主であれば室内にて待っておるのやものぅ。
しかしじゃ、こちらには宮廷魔術師のセルフィス様が居られるわけな。
セルフィス様よりも高位の方となるとのぅ、この規模程度の館主とは考えられぬのじゃが…はて?
もしや、別荘や別宅と言うヤツなのじゃろか?
それなれば使用人のみの出迎えであってもおかしくはないであろうてな。
そのようなことを思っておるとのぅ…
「ユウ、今日からアナタが住まうアナタの家です。
工房各種は誂えておりますし、各種書籍を修めた書庫に書斎も充実させております。
我らの泊まる部屋も別に用意させておりますゆえ、存分に学びつつ研究開発も行えるでしょう」
そんなことをセルフィス様がのぅ。
いきなり、そのようなことを告げられたゆえ、意味を理解するのにのぅ…
って、どう言う意味じゃて?
儂が戸惑っておるとの。
「がはははははっ、十分に広い鍛練室に機材も充実しておったぞい。
存分に扱いてやろうぞ」
カンム様が楽しそうに告げ、ダリル様がニヤニヤとのぅ。
え~っとぉ…理解がのぅ。
「あのぉ~、どう言う意味なのでしょうか?」
戸惑う儂に代わるようにシスター・アンジェリン殿がの。
「んっ?ああ、アンジェリン殿には告げておりませんでしたな。
ユウは准爵に叙爵されることとなったのですよ。
そして、この館は皇国よりユウへ下賜されたものです」
シレッと告げよったわえっ!
いったい、どう言うことじゃっ!聞いておらぬぞえっ!
何時の間にか儂は貴族位を与えられることとなったようじゃのぅ。
いやのぅ、正式な貴族位を叙爵される場合は正式な場にて行われるのじゃがの、准男爵や准爵の場合は簡易叙爵が許されておるそうな。
まぁ、それが行えるのは侯爵以上の方に限るのじゃが…セルフィス様は実は皇族の端に連なる方ゆえにのぅ…
既に皇位継承権を破棄されておるゆえに、皇務なんぞは行ってはおらぬのじゃがの、それでも皇族には違いないでな。
ゆえに准爵ていどなれば叙爵を行うことは可能なのじゃよ。
っと言ってもじゃ、手続きなしで勝手に叙爵可能なわけではないでな。
皇国として正式に准爵を与えられたと見るべきじゃろうのぅ。
そうそう、この皇国における爵位について触れておこうわえ。
皇国は皇王様を筆頭に皇族、大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、准男爵、准爵の順となっておるのじゃ。
稀に准子爵や准伯爵なる爵位が存在したこともあるそうじゃがの、そのようなことは滅多にないそうな。
この場合、子爵位や伯爵位に空きがなく、当該爵位へと陞爵させざるを得ない場合などにの。
まぁ…大概は子爵や伯爵の当主が老齢にて跡取りへ爵位を譲る前準備として用いたようじゃよ。
そのような准子爵と准伯爵とは違うてな、准男爵と准爵は平民と貴族の間とでも言う爵位でのぅ。
平民よりは貴族寄りではあるのじゃが、正式な貴族と言うわけでもないのじゃて。
じゃがの、平民をいきなり男爵や子爵なんぞの爵位へと叙爵するわけにはいかぬゆえ、高位の爵位へと叙爵する前準備として叙爵することもの。
なにやら嫌な予感がするのじゃが…気のせいかいのぅ?
「先にユウへ謝っておきましょう。
私は止めたのですが、止めきれませんでした」
そうセルフィス様が済まなそうにの。
何やら嫌な予感が…
「皇王様方はアナタの才覚にご執心でしてね。
アナタを皇国へと留めるためにも爵位を与えるようにと。
この館は手付金と思っても良いでしょう。
アナタの才能が悪いのですよ。
これだけの人材を魅了させる、その才能が」
いや、それは…どう言う屁理屈じゃえ?
つまり…儂は他国へと行くことは能わぬと、そう言うことかえ?
困ったことじゃてのぅ、ふぅ。




