009.爺、変身するぞえ。
「これは、なんとしたことじゃっ!」
声まで女子になっておる、じゃっ、とぉっ!
「ふふ、女性を選択なさいましたものねぇ」っと微笑んでおる女神殿。
「なんで前のアバターと連動しておるのじゃっ!」
聞いておらぬぞえっ!
「実際に連動してご自分の状態が変わった方が分り易いからですわね。
決定した後に違和感に耐えられないなんてなったらアバターを削除して造り直しですもの」
なるほどのぅ、確かにそうじゃて。
そしてのぅ、流石に女子はなしじゃて。
男が好き好んで女子になることはないと思えるぞぇ。
「流石にのぅ、女子は無理じゃわい。
選ぶ者もおるまいのぉ」
そう呟く儂へ女神殿か困ったように告げる。
「いえいえ、意外とおられるのですわよ」っとな。
ファッ!?
好き好んでかや!
「そのような者が本当に居るのかえ?」
驚いて尋ねるとじゃ。
「ええ、それも幼女になったり、美女になったりと色々ですわね。
その大半の方が男性プレーヤーに貢がせていたりするようですの」
世も末じゃわい、なんて世の中じゃっ!
「ともかく、儂には無理じゃてのぅ。
っと、そう言えばじゃ、女子を選んだ者達は現実に影響せんのかえ?」
気になって尋ねてみるとじゃ。
「それは大丈夫ですわ。
アバターとプレーヤーの肉体は乖離していますから。
サーバーにて構築されたアバター情報から現実に問題や負荷が及ばない程度の情報がフィードバックされる仕組みですのよ。
ですから、どのようなアバターでプレーしようと実生活には影響しませんの」
ふむ、そう言うことかえ。
では男にて色々と試してみるかのぅ。
そう考え、基本アバターを色々と弄ってみたのじゃがのぅ、どうもスッキリせぬわぇ。
弄れば弄るほどに収拾がのぅ…こりゃ無理じゃわぇ。
「ううむぅ、こりゃ儂の手に負えぬわえ。
矢張り3Dデータをヴァルジェより得て手を加えた方が良さそうじゃて」
「そうですか?
なかなか良い出来だと思われるのですけれど…」
女神殿には受けは良いようなのじゃがのぅ、流石に儂には許容できぬわぇ。
そう言うことでヴァルジェよりデータを取り込んで貰うてアバターにしてみたのじゃ。
ふむ、定年後とは言え、見事な爺じゃわい。
この侭のアバターでゲームは無理じゃわいのぅ。
「この姿で今よりお若い時なのですの!?」
そう女神殿が驚いておるのじゃがのぅ。
「この頃は若かったゆえに足腰もシッカリしておったからのぅ。
耳や目も達者でな、今のように衰えてはおらなんだわえ」
そう言いながらアバターを修正していく。
皺を消して筋肉を増していくとじゃ、若い頃の儂よりもスポーツマンタイプにのう。
いや、スポーツマンと言うよりも武芸者風かや。
ふむ、若い頃の儂にも髭生やしてみるのかのぅ。
髪は後ろで結い上げて、素浪人風にのぅ。
3Dデータにて纏っておった着物と合って実に良い感じじゃて。
身長は今よりも高めの180センチ程度にして…うむ、これで良かろうかの。
黒髪黒目黒髭の素浪人アバターの完成じゃて。
「ふむ、これで良かろうて」
そう告げると女神殿が呆れたように…
「トラインは西洋風の世界観なのですけれど…どう見てもお侍さんですわねぇ」っと溜息を。
「ふむ、儂は日本男児ゆえにのぅ」
「そう言う問題ですの?」
「そう言う問題じゃ」
そう、これで良いのじゃ!