071.爺、儂が教わるのでないのかのぅ?
「な、なんじゃぁぁぁっ、こりゃぁぁぁっ!」
五月蝿い、がなるんでないわいっ!
「熱しても無いと言うのに金属が液体となって鉱石から流れ出しているど。
しかも、同一の金属液に纏まって別々に固まっていないどら?」
「う~んむぃ、不思議なこともあるもんだど。
妖術の類だどか?」
誰が妖怪かっ!全く失礼なヤツらじゃてのぅ。
「錬金布の上に乗せておるじゃろうがっ!
これは、れっきとした錬金術じゃ!」
そう告げたら鍛冶師達が驚いておるわい、何故じゃ?
「俺が知っている錬金術とはよぉ、随分と違うど?」
「いや、最新の錬金方法ではないのか?」
「おお、皇都から来られたと言うど、流石、都会は違うど」
などと騒ぎ始めたわえ。
「いやいや、騙されたら駄目だてな。
このようなことができるのはユウくらいだてな、普通の錬金術師にはできぬぞい」
ゼルフト様が困ったように告げなさるわけじゃがな、そんなわけあるまいてのぅ。
この程度のことは、ある程度の力量である錬金術師ならば誰でも行える筈じゃわえ。
「いやいや、お婆様も薬材より効能のある薬液なんぞを抽出しておられますぞい」
そう反論したらのぅ…
「こらこらっ!大魔女と一般の錬金術師を一緒にするでないわっ!
大体、ゼルダも動植物なんぞからは錬金抽出できても鉱石からは行えぬと聞いておる。
おぬしが容易く行うで、ゼルダに頼んだら仰天しておったぞ」
そう言われ呆れておられるのじゃが…あれぇ?そうじったかいのぅ?
「大魔女様をお婆様呼ばわりしておるど、凄いど」
「宝級鍛冶師様が連れて来ただというに大魔女様とまで懇意にしとるようだど、ほんに凄いど」
などと再び騒ぎ始めてしもうたわえ、面倒なっ!
「それよりもですじゃ、こうして別けた金属は純度が高いですのでのぅ。
こうしてから人工晶石と混ぜると、このような金属となりますのじゃ」
そう告げて小袋から複数のインゴットを取り出して見せてやる。
「ぬぁぁっ!なんどぉ、この金属はぁっ!」
「見たことなか金属どっ!凄いどっ!」
いやぁ、騒ぎに燃料を投下、まさに火に油状態になにってしもうたわえ。
儂が困ったように鍛冶師を見ておる横でゼルフト様がインゴットを手にしてシゲシゲと嘗め回すように見られておるのぅ。
いや、鍛冶師達をなんとかしていただきたいのじゃが…
「ユウよ」っと、唐突に声をかけられたぞい。
「なんですじゃ?」そう、とりあえずは合いの手をのぅ。
「人工晶石を混ぜるには純金属化せねばならぬのか?」
深刻そうな顔で儂に尋ねてきなさる。
「そうですなぁ~、できぬこともないですがのぅ、性能は格段に下がりますな。
いや、下手をすると不純物混ざりの脆い金属と化す可能性が高いですじゃ。
ゆえに、不純物を徹底的に取り除く技法に辿り着きましたでな」
そう答えたらの、ゼルフト様がガックリと肩を落としなすったわえ。
「どうなされたのじゃ?」不思議に思い尋ねたらの。
「どうしたも、こうしたも、こりゃユウ以外に造れぬ代物じゃと分ったでな。
属性付与した武器を独自に造ることは叶いそうにないぞい」っとな。
「えっ?儂が練成したインゴットを使えば良いのではないですかいのぅ?」
「確かに、それでも造れるであろうのぅ。
だがな、儂は鉱石から己の力で冶金したインゴットを造ってから武器を叩き出したかったのだよ。
色々な金属を合成した新たなる合金にも挑んでみたいでな」
う~むぅ、鍛冶師たる拘りじゃろか?
「儂が手伝えるなら手伝いますがのぅ」そう言ったらのぅ、ガバッと肩を掴まれたわえ。
「本当かっ!ならば、儂に錬金術を授けてくれぬかぁぁぁっ!」っと。
「いやいや、ゼルフト様は魔術素養がなかった筈ですじゃっ!
流石に、それは無理ですぞっ!」
思わず告げてしもうた儂は悪うない筈じゃ。
まぁ…ゼルフト様が落ち込んで…何故に、おぬし達も落ち込んでおるのじゃ?
鍛冶師達も皆が一斉に落ち込んでおるのぅ。
そう言えば、ゼルフト様が錬金術指南を儂へと申し入れた際に、キラキラした気持ち悪い目で見られておったような…
いや、おぬしらも魔術素養がないのであろ?
無理なものは無理だてのぅ、ふぅ。




