006.爺、説明されるぞぃ。
「いやいや、いや!
なんで死んだと思うんですかっ!
余命幾許もない老人ではあるまいし、おかしいでしょっ!」っと天使さんがオコなんじゃがのぅ…
これが逆切れというヤツかえ?
全く最近の若い者というヤツは困ったものじゃてのぅ。
「何を言うておるのじゃ?
儂は余命限られた老人じゃが?」
そう告げて、儂の年齢を教えるとのぅ、目を引ん剥いて驚いておるぞぃ、はて?
「なんで、そんなお年よりが、このゲームを?」っと驚いておるのじゃがのぅ、なんでじゃ?
「いやいや、儂の姿を見れば年寄りと分ろうに」っと不思議に思い告げるとじゃ。
「あのですね、現在の容姿は男女の別はあっても共通アバターですからね。
ですので年齢的な差異は現れていませんので!」
困ったように断言する天使殿の言に自分の手を見てみれば…皺1つ無い若々しい手が目に写っておったぞい。
「おおっ!儂の手に皺1つ無いぞぇっ!
んっ?っと言うか…良く見え、良く聞こえるわぇ。
おおっ!若返った気持ちじゃわぇ!」
う~むぅ、感激じゃっ!
「いやいやっ!若返った訳ではありませんからねっ!
仮想的に造られた肉体に精神がリンクしているだけですからっ!
っか、本当に、ご老人なのですねぇ…
それで、このゲームについては、ある程度は調べておられるのでしょうか?」
何気に疲れたように告げてくるのじゃが、どうして疲れたのじゃろか?
「んっ?いや、何も知らぬぞぇ。
VRで色々できるとか言うことで薦められたのじゃがのぅ」
そう答えると困ったように儂を見てから諦めたようにのぅ。
「誰が薦めたのかは分りませんけれど…初めから丁寧にお教えした方が良いようですわねぇ。
先ず、このゲームは従来のゲームとは違い脳波との常時リンク形式ではございません。
ユーザの意識を脳波にて取り込みサーバーにて構築いたします。
ユーザーの意識をサーバー上の補助AIが取り込み、ユーザーの意識はサーバー内にて独立して活動いたしますの。
そしてユーザーの肉体へはサーバーから本人に負担とならぬ範囲でフィードバックする仕組みですわ。
ですのでユーザの肉体に対する負荷は極力取り去られておりますの」
ほぉうっ、高価なVR機器などは肉体とのリンク率を上げてリアリティを増す方式と聞いたのじゃが…このゲームでは逆を目指しておるのかぇ。
面白いのぅ。
「詳しい仕組みは申しませんけれど、この方式にてサーバー内の時間調整をサーバーが行っておりますわ。
ゲーム内での1日が現実世界の1時間となっておりますの。
そしてログアウト中はゲーム内の時間が止まっていると思っていただいてかまいませんわ。
ログインするとログアウトした時間にゲームへ参加できますので。
この帳尻合わせをサーバーにて行っておりますの。
連続ログイン可能時間は3時間、1日に最大12時間ログイン可能となっております。
そしてログイン不能時間を利用してサーバーにて時間の帳尻合わせを行っておりますの。
これは、このゲームにて初めて実現できた画期的なシステムですのよ。
まぁ、帳尻合わせ可能なのは現実の1日以内でして、数日単位での帳尻合わせなどは行えておりませんわねぇ。
これについては現在研究中とのことですわ」
ほぉう、時間加速措置まで可能で、ログアウトでズレル筈のラグ調整まで行えるとはのぅ。
3時間ログイン後に1時間ログアウトとした場合はじゃ。
ゲーム内にて3日過した後に1日おいてゲーム内へ現れる筈じゃ。
それが3日過した後の4日目にログインして連続してゲーム世界に留まっていたように過せる、そう言う訳かのぅ。
そう確認してみたところ、天使殿は驚いたようにのぅ。
「その通りですわっ!
驚きましたわねぇ、初めての方は、なかなか理解していただけないものなのですけれど…本当にご老人ですの?」っとのぅ。
「まぁ、老人じゃてのぅ。
それで、何時になったらゲームとやらは始まるのじゃ?」
急かす訳ではないのじゃがのぅ、早くゲームの世界とやらに行ってみとうてのぅ。
「ああ、そうですわね。
先ずはゲーム内で名乗る名前を決めていただきたいのですけれど」っとのぅ。
「うむ、猪股 悠士じゃて」っと告げたのじゃが…
「それ…本名ですわよね?
流石に身バレする情報は控えていただきたいのですけれど…」っと言われてしもうたわい。
ふぅむぅ…ゲーム内にて名乗る名前のう。
さて、どうしたものやら。