053.爺、魔素溜まりは…綺麗じゃのぅ…(遠い目)
怪異と化したコボルトの最後は、ヤケに呆気なかったのぅ。
セルフィス様の話では、電撃の魔術にて痺れ筋肉が弛緩したのが原因であろうとのことじゃ。
まぁ、ダリル様の技量があってのことやもしれぬがのぅ。
じゃが…
「コボルトなんぞ魔物では下位の方ではなかったですかいのぅ。
それが、あのようになるので?」
雑魚レベルの魔物として知られらておるコボルトの強さではないぞえ。
「魔素溜まりにて変化したゆえに、あの強さであるな。
ここら辺は森でも浅い場所ゆえ高位の魔物は居らぬ筈、それでも怪異が増えれば手に負えぬことになろう。
早めに魔素溜まりを除去せねばなるまい」
ダリル様の告げられた深刻な事態に気が引き締まる思いじゃてのぅ。
そんな儂らへセルフィス様がのぅ。
「確かに捨て置けぬ事態ではありますが…コボルトレベルの魔物が怪異へと到るのは稀有と言えますぞ。
大概は変化の負荷に耐えかね果てますゆえ。
それよりも魔獣が邪獣化する方が多い可能性がありましょうな。
ですが、あちらならば先程のような劇的な変化は致しておらぬでしょう。
我らにて十分に対処可能かと」
ふむ、群れにて生きるコボルトゆえ、先程の怪異がさらに現れるやもと緊張しておったのじゃが、その恐れはないようじゃの。
じゃが、時が経てば、それも分らぬであろうて。
周囲では魔獣化した獣がさらに増えておるようじゃ。
興奮状態で凶暴化しておる魔獣も見受けられるでな、これは唯事ではないぞぇ。
そう思っておるとな、セルフィス様がのぅ。
「ふむ、此度の魔素溜まりは地脈…いや、龍脈に湧いたやもしれませぬな。
これは益々捨て置けませんぞ」っとな。
先程より地面に手を着き何やら調べておられたのじゃが、どうやら地脈を探っておられたようじゃて。
この大地を巡る星の血管とも言える地脈を探る術は高等技術でな、儂は未だに行うことができぬ技じゃてのぅ。
流石はセルフィス様と言ったところかえ。
しかし…「龍脈ですかえ?」初めて聞く言葉に、思わずのぅ。
「うむ、地脈が支流と定義するならば本流と言えるでしょうな。
このような人里近い場へと現れることは滅多にないのですが、珍しいこともありますなぁ」
そう興味津々とのぅ。
ふむ、学者の顔になっておられるぞい。
こうなった時のセルフィス様は好奇心の塊のようになって手に負えぬのじゃとか。
いや、この危急では勘弁して欲しいのですがのぅ。
そのようなこともありつつ、儂らは先を急ぐことにのぅ。
途中で巨大化した黒き狼が数匹現れ戦闘にのぅ。
それを倒し先へと進むとじゃ、小型化し異常に素早く気配を感ぜさらぬ猿が数匹の群れにて襲って来おったわえ。
そのような戦闘なんぞを行いつつ進んでおる。
怪我人も出たがのぅ、儂が魔術にて癒しておるゆえ移動速度は落ちておらぬぞ。
そうして、ようよう魔素溜まりへとのぅ…
「こ、これが…魔素溜まりですかいのぅ…」
エネルギーの塊と言ったら良いのじゃろか?
力の本流が渦巻き輝く繭…いや玉、寧ろ珠と称しても良い代物がの。
美しいとも言えるそれの、暴力的なほどに渦巻く力の奔流に気圧されつつ見ておる儂では対処できるとはのぅ。
そんな魔素溜まりに圧倒されておる儂へセルフィス様がのぅ。
「これユウ!手伝わぬかっ!」っとな。
セルフィス様は既に魔素溜まりを除去するために動き始めておったぞい。
流石と言えような。
儂も慌てて手伝いに入ることにな。
龍脈の流れを探りつつ魔術陣を構築し流れの制御を行うのじゃとか。
なんぞ、その高等技術!?人の身にて可能な御技なのかえ?
魔術陣を魔力を用いて構築しつつ制御するのが儂の役目でのぅ、これがなかなかに難しいのじゃ。
そして龍脈へと干渉しつつ鎮め地中奥へと封ずるようにのぅ。
未だに凶悪とも言える力の奔流と化しておる魔素溜まりではあるのじゃがな、先程よりは落ち着いたようにのぅ。
お次はコヤツの除去なのじゃがの、龍脈を抑えることを考えるとじゃ、いやにアッサリと終わってしもうたわえ。
しかしのぅ、地脈や龍脈が絡んでおるとは想定外じゃったわえ。
儂的には地脈や龍脈を感ぜられるようになったゆえに、思わぬ収穫と言えようぞえ。
儂らが魔素溜まりを除去しておる間、ダリル様と騎士達が儂らを護衛しておったのじゃがの、流石に無傷とはのぅ。
まぁ、儂が治癒できる程度で済ましておるのは流石と言えような。
魔素溜まりが存在した残滓が漂っておるのじゃが、これは流石に致し方あるまいて。
そんな魔素溜まり後をセルフィス様が深刻な顔にて調べておられるのぅ。
どうしたのじゃろか?
不思議に思っておるとな…
「これは…魔術陣が使用された跡ですな。
もしかしたら此度の騒ぎは、人為的に引き起こされたやもしれませぬなぁ」っと興味深げに…
いや、感心しておる場合ではないですぞいっ!
大事ではないですかえっ!




