005.爺、さて、始めるぞぇ。
自宅へと戻った儂は、先ずは部屋着へと着替える。
これも儂にとっては今では重労働じゃてのぅ。
着替え終えてからキャリーバッグより荷を取り出すことに。
っと言ってもVR機器とVRソフト【トライン】を取り出すだけじゃがな。
先ずは軽いソフトを取り出し机の上へ。
その後でVR機器の箱を取り出して箱から本体を出すとテレビの前へとな。
次にコードや電源などを取り出していき本体へと接続していく。
説明書を苦労しつつ読みつつ作業を進めた訳じゃが…少々疲れたわぇ。
御茶を飲みつつ一休みした後で箱などを片付ける。
放っておくと部屋が煩雑になのぅ、時々部屋を巡回して来る職員に苦情を言われるでな、仕方ないわぇ。
一休みを終えた後で本体の電源を入れてからソフトを本体へと挿入する。
それを終えた後で額へ本体へとコードが繋がるヘアバンドを巻いてからコタツへ入って横にのぅ。
すると購入時にヴァルジェより本体へ登録したバイタル情報を元に本体と脳波接続がなされたようじゃ。
必須ではないが、ヴァルジェを着けておけばVR接続を行い易くなるらしいぞぇ。
ヴァルジェが接続補助してくれるのだとか。
そんなことをツラツラと考えている間に、ウトウトとのぅ。
まぁ、ツルっと寝入るなどは何時ものことじゃてのぅ、何時ものように寝てしもうた、そう思っておったのじゃが…
いつものように目が覚めた、そう思うた儂の目には自室の風景でない景色がの。
思わず目を閉じて、再度目を開いて…目を擦ってから辺りを思わず見回してしもうたわい。
いや、辺り一面が白。
いや、違うのぅ、上は晴天、雲ひとつない青空が広がり…太陽と蒼い天体の姿が。
そして地面に相当する場所には、もこもことした雲が一面に。
っか、儂は雲の上に居るのかえ?
一面の雲の上には抜けるような青空のみ、それ以外には何も存在せぬ世界が広がっておった。
「こ、これは…」思わず絶句してしもうたわい。
とうとう、この日が来てしもうた訳かえ。
まぁ十分に生きたからのぅ、せめて買ったばかりのVRゲームとやらを楽しんでみたかったものじゃ。
そう思っておると…
「お待たせしました」っと声をのぅ。
声がした所を見てみるとじゃ、なんと白き翼と天使の輪を頭上に浮かばせた金髪ロングヘアにて青い目の美女が佇んでおった。
白き肌に白きトーガを纏った豊満たる身を持つ天使が微笑んでおる。
うむ、これは最早間違いはあるまて。
「ううむぅ、とうとうお迎えかえ。
しかし、本当に天使が実在しておったとはのぅ。
まぁ、苦しまず死ねたのは僥倖じゃというるのか…
して、儂は天国へ行けるのかえ?」
そう、お迎えに来た天使に尋ねると…
「は、い?何を仰っておられるのですか?」っとな。
な、なんじゃとぉぉぉっ!?
っと言うことはじゃっ!
「地獄行きなのかぁぁぁっ!」
絶望じゃぁぁぁっ!
「なんで、そうなるのですかぁっ!
天国とか地獄とかぁっ、何の話ですかっ!
VRゲームであるトラインの導入ステージですわよっ!
どうして、そうなるんですのっ!」
慌てたように告げて来る天使、つか!
「紛らわしいわっ!
なんで雲の上で天使が来るんじぁぁぁっ!
死んだ思うたわぁっ!」
思わず怒鳴った儂は悪くないと思うのじゃが、どうじゃろう?




