040.爺、旅立ち…!?なぜにぃっ!
皇都の門へと着くとじゃ、既に教官殿達が待機しておったわえ。
じゃがの、教官殿達がなにやら緊張しておるようなのじゃよ。
いやの、魔術教練所へ集まった時にも緊張しておるのは知っておったぞい。
じゃがの、あの時はお偉いさん方が居ったでな、あのような大物が何故来ておったのかわからぬが、あれでは緊張するわいのぅ、
しかしじゃ、旅立ち直前の門扉前での集合じゃての、しかも早朝じゃろ、お偉い様なんぞ…なぜに、い・る?
「ラセヨツラ様、セルフィス様。
どうされたのですじゃ?」っと、思わずのぅ。
そう、宮廷調理師たるグランシェフのラセヨツラ様と宮廷魔術師のセルフィス様が居られたのじゃ。
いや、他にもお偉い様らしき方々の姿がの。
「何がですかな?
私も旅に同行するから来ただけですが?」っとラセヨツラ様が。
「ほっほほほ、我も同行するでのぅ、よろしゅう」っとセルフィス様。
「いや、お2人とも、何を言っておるのじゃ?
ラセヨツラ様よ、王宮の厨房はどうなさるおつもりじゃて?
セルフィス様も宮廷魔術師の職務があろうに」
そう呆れて告げるとじゃ。
「厨房はセラフィドに任せて来ましたよ。
あれも、そろそろ私の後を継ぐ時期でしようから、ちょうど良い機会でしょう」っと、良い笑顔でのぅ。
「宮廷魔術師は、我1人ではないからのぅ。
そろそろ我も引退時期じゃゆえに、後を任せて来たぞい」
マジで、何を言っておるのじゃ、この爺共は?
「ふむ、割り込むぞい。
儂はゼルフトちゅう鍛冶師じゃ。
儂も旅に同行することにしたで、よしなに頼むぞ」
そう大柄な老人がの。
いやいや…ゼルフトっと言うのは国宝となった宝級鍛冶師の名でなかったかえ?
なぜに、そのような大物が!?
「某、ダリルと申す。
此度は旅に同行となり申したゆえ、良しなにお頼み申す」
儂は目を引ん剥いてダリル殿…いや、武神殿をマジマジと見てしもうたわえ。
いや、本当の神ではないぞい、ただ、その武威を褒め称えた称号として皇国はもとより周辺諸国も認め与えられし称号と聞いておる。
皇国へ立ち寄っておられるとは聞いてはおったのじゃがの、何故にここへ?
「ふぇっへへへっ、ワシぁゼルダじゃて。
ワシも同行させて貰うぞえ」
そう告げた黒色のローブを纏い、節くれ立った大きな杖を持つ老婆の姿は、まさに魔女。
いや、姿だけではないわえ、正真証明の魔女、大魔女と呼ばれるゼルダ様じゃ。
「なぜ…お3方が?」っと呟くように声を漏らしてしもうたらのぅ。
「なにやら面白い品を造る者が皇都を発つと聞いたで、逃してはならぬと思うてな」っとゼルフト殿。
「うむ、サコン殿から面白き御仁がおると聞き申してな、旅に出られると聞き同行を申し出もうした」そうダリル殿が。
「ふぇっへへへっ、セルフィスが筋の良い者を弟子にしたと自慢しよるでな。
ならばワシも仕込むかえっとのぅ」
ニンマリと笑い告げるゼルダ殿。
そんな3人を呆れて見ておるとじゃ、老人5人の後ろから1人の若者が現れたぞい。
また同行人が増えるのかや?
「ユウかね?」っと確認さえたで頷くとじゃ。
「余は皇国第3皇子たるトラムである。
本日は皇王たる我が父の名代として参った。
我が国の都合にて急遽、晶石産地巡りの旅を卒業試験として行うこと大儀である。
ゆえに旅費などを下賜せよと仰せであり、遣わすこととあいなった」
トラム皇子が告げると、皇子の後ろに控えていた従者が盆らしき物へ赤いビロード布で包んだ品を持って近寄って来た。
それを差し出され、ビロード布を剥ぐってみると、中身が詰まった皮袋が1つ。
「ありがたき幸せ」っと一礼して受け取ったぞい。
いや、いきなりのことで、心臓バクバクじゃわえ。
「うむ、では良き旅を」っと告げたトラム皇子は颯爽と去って行ってしもうたわえ。
皇族…初めて見たのぅ…仰天じゃて。
しかし…何も皇子自ら下賜に現れぬとも…
「済まぬな、我らが噂するで王侯貴族共が興味を持ったようでな。
まぁ、トラム皇子が名代を無理に代わってことにおよんだようなのじゃわ」っと告げつつ頬を掻くセルフィス様。
いや、あーたら…なにさらしておるのじゃ?
まぁ、今から皇都を離れるでな、帰って来るまでに、ほとぼりが冷めるておれば良いのじゃがのぅ…
そんな騒ぎがあったがの、いよいよ旅立ちじゃて。
門前には2頭立て馬車が数台ほど用意されておるの。
箱馬車にて、窓を開けることはできるが、窓を閉めれば密閉される代物じゃ。
襲撃を受けた場合に立て篭もることも可能な頑丈な馬車であったわい。
中にはクッションが敷かれておってな、一応は振動を抑えれるように考慮しておるようじゃ。
この手の馬車は振動が激しいと聞き及んでおるのじゃが、さて、どうなのじゃろかのぅ?




