004.爺、廉価VR購入じゃっ!
儂がVR機器購入可能かを店員へ尋ねたところ、店員は慌てて儂へ告げる。
「だ、大丈夫でございますが…ただ…高齢者の方々が好んで買われるようなソフトが使用可能なレベルでは…」
そう困ったようにのぅ。
ふむ、廉価版では扱えぬソフトも存在するようじゃのぅ。
して、どのようなソフトなのじゃろか?
気になって尋ねてみたところ、次のような代物じゃった。
バイタル状態をチェックし危険の有無を監視する。
前頭葉と小脳なども含み心身とリンクを深く接続する。
接続率を上昇させることにより、よりリアルな体感を得られるように。
挙げた3つをクリアしたことで、実世界を再現したような仮想空間を実現。
そんな仮想世界を実現させるには廉価版の機器では不可能なそうな。
富裕層の者共は仮想世界で優雅な暮らしや旅行などを楽しんでおるらしいのぅ。
こちらの廉価版は所謂ゲームというヤツじゃて。
格闘対戦や銃撃戦やRPGなどなど…
そんな世界へと入り込んで楽しむのじゃが、リアルかと言うとのぅ…
そんな話を店員としておるとじゃ、近くに居った小僧がのぅ。
「なら、【トライン】なんて良いんじゃね?」っとな
トラインとな?恐らくはゲームソフトの名なのじゃろうが…なんじゃろか?
「ああ、トラインですか…確かにアレは、ある意味リアルですけれど…
お爺さんにできますかねぇ…」
そう呟いて考え込んでしまったぞぇ。
えっ?そんなに難しいゲームなのかえ!?
「確かに簡単じゃないけどさぁ、あのゲームだったら一番リアルじゃん。
なんでもできるけど、逆にやること決めないと何にもできないけどさ。
時間があるんだったら一番良いんじゃないの?」
笑いながら告げてから去って行ったのぅ。
なんじゃったんじゃろかいのぅ?
「う~ん、一理ありはしますけれど…大丈夫かしら?」
そう言いつつ店員が告げる。
「VR機器ですけれど、新品で3万5千円で消費税が付きますわ。
中古で2万円ですわね。
一番安いのは…ちょっと待ってくださいね」
そう告げて己の右腕へ嵌ったヴァルジェを操作し始める。
宙へ投影された映像を操作しつつ何やら調べておるようじゃ。
「あら?これは…ああ、あのタイプですか…」
そのように呟いておるな、どうしたのじゃろうか?
「なにかあったのかのぅ?」っと声をかけてみたところ、店員が慌てたようにのぅ。
「いえ、在庫状態を確認したのですけれど…1つだけ8千7百円の品がですねぇ」
ファッ!?安過ぎはせぬかえっ!
「何故に、その値段なのじゃ?」っと思わず尋ねてしもうたわぇ。
「いえ、単にデザインの問題でしてねぇ、性能的には最新型と遜色はない品なのですけれど、余りに売れないので値が下がってしまった中古品なのですよ。
不良在庫扱いで値崩れしているしなですけれど…お爺さん、デザインとかは?」
「この歳で、そのようなことは気にせぬわえ。
そんなに安く手に入るならば買いたいのぅ!」
思わず告げてしもうたわぇ。
そんな遣り取りを終えて、ようやく購入へと到ったVR機器と小僧お薦めの【トライン】とか言うソフトを購入してキャリーバッグへとのぅ。
そして杖を突き付き、キャリーバッグを引いて自宅へと戻るのじゃった。