033.爺、旅の準備をせねばのぅ。
朝、何時ものように目覚めて散歩へとでかける。
活動する人の少ない薄暗闇のなか漂う朝霧を掻き分けるようにして公園へのぅ。
何時もの型稽古と座禅を終えた頃、辺りに人通りが増え始めたわえ。
何時もの日常が始まる、そんなシチュエーションなのじゃがのぅ、数日後には皇都を旅立つゆえ準備を始めねばなるまいてのぅ。
今日は難民管理局へと赴き卒業試験として晶石産地を巡る旅へと旅立つことをしらせねばなるまいて。
バイトは昨日が最後となったわえ。
昨日までの給金とは別にボーナスを弾んでいただけたゆえ懐は暖かいぞい。
水筒や背嚢などは村から持って来たものがあるのじゃがのぅ、せっかくじゃらか新調しようと思っておるのじゃ。
いやな、生産教練にて色々と習うたゆえにのぅ、その技術を用いて色々と造れぬかと考えたわけじゃて。
そのように考えたわしはの、まずは宿舎へと戻り朝食をいただくことにしたぞい。
バイキングは良いのぅ、朝食は一日の活力ゆえにシッカリといただく、うむ、旨し!
朝食を終えた儂は満足した腹を軽く摩りつつ宿舎を出でて生産教練所へと向かう。
そして鍛冶場にて以前より考えておった合金を種類の違うインゴットを溶かし精錬しつつ造り出たわい。
この時に全属性の人工晶石を粉末にした代物を混ぜ込みつつ魔力と氣を注ぐことを忘れぬようにのぅ。
この魔術と氣を注ぐ工程が、なかなかに難しいのじゃてのぅ。
マナ操作を行いつつ魔力を精製しつつ体内にて練った氣と混ぜ込みながら注ぐわけじゃが、多過ぎても少な過ぎても性質の違う金属は反発して分離じゃわえ。
一定量の魔力と氣を継続して注ぎ続けるのに苦労したものじゃが、今では慣れたものでな、新合金が思ったより早く造れたぞい。
これを打ち出して2つの水筒を造り出したわけなのじゃが、これで終わりではないのじゃ。
これへ魔術陣を彫金して魔導具へと仕上げて行くぞぇ。
一方へは温水の魔術陣をの、もう片方へは冷水の魔術陣じゃ。
ふむ、良いできじゃて。
これを断熱、断冷の魔術陣を施した革カバーへと入れて固定。
これで完成じゃ!
この水筒はの、1つは水筒内へとマナより冷水を生み出しつつ保冷する魔術陣が組み込まれておるのじゃ。
もう一方は温水じゃの。
温度を魔術指定にて変えることも可能な優れ物じゃて。
さらに、さらにじゃっ!軽量化と内部拡張の魔術陣も刻んでおるぞい。
それぞれ大人10人が1ヶ月過せるほどの容量を誇るのじゃが、フル装填時の重量でも小指で支えれる程度でな。
ふむ、ちと張り切り過ぎたかのぅ。
まぁ劣化防止陣も刻んでおるで悪化もせぬじゃろうし大丈夫じゃろうて。
お次は背嚢かのぅ。
全属性の人工晶石を粉にし混ぜ込んだ合金の1つより生み出した金属糸。
この糸より織り出した布を使用して背嚢を作るわけじゃがの、布を織るさいに魔術陣を織り込んで行くわけじゃ。
生地の強化にて耐久性や断熱、断冷、断衝撃に断裂などをの。
むろん軽量化と容量拡張も忘れぬぞい。
ふむ、なかなかの品ができたと考えて良いじゃろて。
背嚢内部へ小分けして物を収める子袋も同様の形式にて作成して背嚢へとのう。
ついでに同様の手法で衣服の上下と靴、靴下、手袋を造っておいたわえ。
こちらは下地に特殊加工した植物繊維を織り込んだ布を用いておるゆえ肌に優しい感じじゃの。
魔樹と呼ばれる樹木類に綿花のような実を生す木があってな、その実にて紡いだ糸が秀逸なのじゃよ。
儂が実より魔術と氣を注ぎつつ紡ぎ、特殊調薬した薬材に漬け込んだ代物じゃてのぅ。
流石に金属布よりは劣るが、同等近い性能を誇る自信作じゃて。
なにより肌に優しいのが嬉しいわえ。
昼食は生産教練所にて手短に済ませつつ一日生産教練所に篭った一日じゃったゆえ、難民管理局へ行くのを忘れてしもうたわい。
しもうたのぅ、明日には行くことにするわえ。
そう思いながら宿舎への。
食堂が閉まる直前だったゆえに慌てたぞい。
ま、間に合うたゆえ、良しとするかのぅ。




