030.爺、月日が流れるのは早いのじゃ!
「だからぁっ!ありえないでしぉぉぉぉっ!」
いきなり隣接の研究施設より魔術教練所へと現れたキャサリン嬢の絶叫が轟く。
一体、何事じゃっ!!
「いきなり現れて喧しいですよ」っとジェロウ教官が顔をしかめておるのぅ。
まったくじゃわい。
「喧しいじゃないわよっ!定めた教練学科を全て習得し終えたって、そんなバカな話、ありえないわっ!」
いや、ありえてしもうたゆえにのぅ…しかたあるまいて。
習得する教練学科が定まってからのぅ、トライン内での3ヶ月の月日が流れておるわえ。
リアルでは7日と6時間ほどが過ぎた感じかのぅ。
儂自体は完全な隠居爺ゆえに時間だけは有り余っておるでな。
日々のダイブイン12時間のトラインライフを満喫しておる。
廃人と賞賛されるプレイヤー殿達と同様とサコン殿に賞賛されたで照れたらのぅ…
「褒めておらぬぅ、褒めておらぬでござるよっ!」っと否定されてしもた。
げせぬぅ!
そのサコン殿もトライン内での1ヶ月ほど前に自国への帰途に着いておるぞい。
お陰でトライン内のプレイヤー知り合いは身近にはおらぬようになってしもうたわぇ、はぁ…
まぁ、サコン殿が居る間に色々とレクチャーして貰うたでのぅ、以前よりは色々と知識は増えとるでな。
そしてのぅ、このアバターというヤツの適性才能というのが高機能過ぎてのぅ。
どうも儂の超爺クラスになると超補正がかかるようでな、キャサリン嬢が告げるように3ヶ月で決められた教練を習得してしもたというわけじゃわい。
いやのぅ…他にも興味を持った教練にも色々とチョッカイを出した上での教練終了に到ったわけで…まぁ規格外らしいわぇ。
しかもじゃ、教練所から紹介された仕事を行いつつであるゆえにのぅ、意外と懐は潤っておるな。
生産補助を教練にて行った際には、それに対する対価もいただいておるでな。
紹介された仕事…バイトは喫茶店のような店にて調理補助などを行っておったぞい。
リアルでは調理経験など皆無じゃった儂じゃが、今では一通りのメニューをこなせるレベルにのぅ。
調理教練学科に顔を出して色々と習うておるとじゃ、様々な調理講師に捕まってな、色々叩き込まれる嵌めに…げせぬぅ~
特に、何故ゆえに現れた王城の総料理長殿が儂に色々とな。
あのぉ~儂は料理人になる気はないんじゃが?
調理講師達が儂を離さぬゆえに、他の教練講師と揉めたり…まぁ、色々とあったわけじゃわえ。
そうそう、サコン殿が修めた剣術と柔術に対しても習うだのぅ。
「こんなに早く修められては、拙者の立つ瀬がのうござる…」っと嘆いておったが、まぁ、このアバターゆえにのぅ。
そんなこんなで卒業試験となったわけなのじゃがの、その話を聞いておった所へキャサリン嬢が乗り込んで来た、まぁ、そう言うことじゃて。
いや、何ゆえ魔術教練所の鍛練室へ集まっておるのかと言うとじゃ、ぶっちゃけ、ここが一番広かったと言うことでな。
何故か各教練の教官達が勢揃いしておるわけじゃが…儂が知らぬ面々も多いのぅ。
儂は特別教練として1人マンツーマン教練を受けておったわけなのじゃが、儂と言う優秀な者がおると噂になり争奪戦と…
いや、初めて聞いたのじゃが、それで勧誘者が紛れておると?
そんな中で儂の卒業試験をどうするか?喧々諤々に揉めておるわい、困ったものじゃてのぅ。
して、それにて決まったのがじゃ…
「いや、おかしゅうないかのぅ…何ゆえ各地を巡り晶石を集めつつ晶武具や晶導具などを造ることになっておるのじゃ?
しかもじゃ、素材などを狩るのも課題とな?
さらに調理なども儂がするのかえ?」
いや、無茶苦茶ではあるまいかのぅ?
卒業試験ならば街中にて受けれるものではないのけぇ?
「少ない晶石師候補の貴殿には晶石を採掘する才能があるかを見分ける必要があるのですよ。
これは流石に現地へと赴かねばなりませぬ。
ゆえに晶石産地へと赴き採掘可能かを見極めるは必須にて決定なのです。
ただ…その試験に他の教練講師が便乗して来ましてな。
っと、自己紹介をしておりませんでしたな。
私は第3騎士団所属のアンリー・ソールマンと申します。
晶石産地巡りのむ旅へ護衛として同行が決まっておる1人ですな。
(まぁ…騎士としての特性を判断する試練官でもありますがね)」
んっ?何やら最後に不穏なことを呟いたような…いや気のせいかのぅ。
農村出の若造が騎士になぞ…いやじゃぞ、儂。
「無論、私も同行することに決まったからね」っとウインクして来るキャサリン嬢。
いやいや、アンタは講師じゃなかろうに…
「(研究員としてスカウトを命じられてるんだから、ここは負けられないわっ!)」
そんな風な呟きが…ヤケに気合を入れておるのじゃが、儂、どうなるのじゃ?




