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003.爺、お出かけじゃ!

歩道をヨタヨタと杖を突きつつキャリーバッグを引きつつ歩みを進める。

若者達がツカツカと儂を追い越して歩んで行くわい。

昔は儂も不自由せずに楽々と歩んでおったものじゃが…ほんに歳はのぅ、はぁ。


近場のテツヤへの移動も一苦労じゃが、なんとか辿り着いたぞぇ。

数年前までは本を買いに通ったものじゃが、今ではのぅ。

久し振りに来たテツヤは内装が少々変わってはおったが以前と同様の有様であったわぇ。


自動ドアを潜り抜けて入ったテツヤにてキョロキョロと辺りを見渡すとじゃ、入って左側で騒音がのぅ。

そちらへ目をやると様々な立体映像が宙へ投影されておるようじゃった。

ふむ、どうやらゲームの宣伝映像のようじゃのぅ。


あちらがゲーム販売エリアと言うことなのじゃろうな。

そうと分れば行ってみるかのぅ。


そう決めて足を向けてみると、若者しか居らぬようじゃて。

爺がゲームコーナーへと足を踏み入れたゆえにか怪訝そうに儂をみておるわい。

良いじゃないかぇ、爺がゲームしてものぅ。


そう思いつつ辺りを睥睨しつつ歩みを進める、儂。

ふぅ~むぅ…どうやら、棚にはゲームソフトが陳列されておると思われるな。

っと言ってもな、目が悪いゆえに確認も侭ならぬがのぅ。


んっ?店員らしき者が居るのぅ、ここは少々尋ねてみるかぇ。


「すみませんがのぅ」

「えっ?あっ、はい!なんでしょうか?」


儂が声をかけると店員が慌てたように屈んでいた身を起こし、こちらへ向いて応える。

どうやら品を陳列しておる最中だったようじゃな。

邪魔してしもうたようじゃわい。


「作業しておるところ、済みませんのぅ」

「いえいえ、それで、何でしょうか?」


笑顔で返してくれる店員さん、うむ、気持ち良い対応じゃてのぅ。

流石はテツヤじゃて。


「VR機器は何処に置いてありますかのぅ?」

そう儂が尋ねると、店員が笑顔で応える。

「VR機器ですか?

 品はお買い上げの際にお渡しいたしますので、そこの棚にあるカードをカウンターまで持ってお越しくださいませ。

 お孫さまへのご購入ですか?

 VR機器はご本人のバイタル登録が必要ですので、ご本人と一緒にお越しいただく必要がございます」


儂が1人なのを見て、そのように忠告をのぅ。

なので勘違いを正すことに。


「いやいや、儂は1人者じゃから孫は居らぬのじゃよ」

「えっ?では何方に?」

不思議そうに儂を見るので、困ったように告げてみることにのぅ。


「無論、儂が使用するのじゃがのぅ…もしかして年齢制限とかあるのかぇ?」

不安に思い尋ねてしもうたわい。


店員は唖然ししたように暫く儂をシゲシゲと見たあと、ハッとしたような顔にな。

「し、失礼しましたぁっ!

 いえ、大丈夫でございますわ。

 ですが、ご高齢の方は専門店にてご購入されるケースが多ゆうございますので…本当に此処で?」

恐る恐る尋ねて来る店員へ困ったように告げることにな。


「老人の全てが裕福な訳ではないでのぅ。

 確かに、あの流感に生き残ったのは金持ちが多いのじゃが、一般庶民の中にも儂のように生き残った者はおるでな。

 そのお陰で年金制度が充実化したゆえに生きて行くには楽にはなったがのぅ…金持ちのように自由になる金はないわぇ」

軽く頬を掻きつつ告げると店員は合点したように頷く。


今の世でも高性能なVR機器は非常に高価なのだとか。

それは、とても庶民が手を出せるレベルの代物ではないのじゃが、富裕層の者達は手に入れておるようじゃて。

特に高齢者層が多く保有しておるとのことじゃ。


廉価版のVR機器を老人が購入に来る際は、大概は孫などに買い与えるケースなんじゃと。

ふむ、まぁ小さな時から高価な代物を買い与えるのものぅ…

合点はいったが…

「して、儂は購入可能っと言うことで良いのかのぅ?」

再度店員に確認する儂じゃった。

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