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018.爺、宿舎に着いたぞぇ。

教練所の宿舎へと向かうために歩き始めた儂は門前の詰め所にて受付をのう。

っと言ってもじゃ、身分証を見せるだけで簡単に通り抜けることができたわえ。

難民管理局で聞いた話ではの、皇都市民と正式に認められた場合にはパスカードなる物が支給されるのじゃと。


これは皇都内にて職を得て暮す者、もしくは、その扶養家族に対して支給される皇都民身分証明書のような品らしいぞえ。

このカードは魔術コーティングされておってな、皇都民専用通路の使用が可能なそうな。

その通路にはパスカードを認識する読み取り装置が存在しておってな、その装置へパスカードをかざせば通れるそうな。


むろん、今の儂は持っておらぬでな、皇領での身分証しか持っておらぬわえ。

他領でも他領の身分証が存在するのじゃがな、身分証などは町レベルの地に住まう者しか持っておらぬそうな。

ゆえに村に住んでおった儂などは身分証を持っておらなんだでな、皇都より盗賊退治に来た騎士団に保護され皇都へ連れられると決まった際に仮身分証を受け取ったわけじゃな。


さて、門を抜けて土から石畳へと変わった街道を地図を頼りに歩むことにのう。

道の端を選んで気を付けながら進むぞい。

なにせ人通りが多いからのぅ…


門前町も人が多かったが、こちらも多いわえ。

今のアバター姿ならば苦にはならぬが、本来の姿であったならば歩むのに苦労したことじゃろうてのぅ。


地図を頼りに進みつつ道沿いに店舗を構える店々の軒先を眺めやりつつの。

食品や衣服、家具や小物や雑貨などなど、生活に必要な品を売る店が大通り沿いにひきめいておるわ。

中には武器を売る店や防具類を売る店などもの。

そこは現実世界とは違うわえ。


なんとか地図を頼りに宿舎へとの。

移動だけで少々疲れたわえ。


これでも教練所は門から近い場所に構えられておるそうな。

皇王様や貴族御方々が住まう場所へは辻馬車を(もちい)らぬと時間がかかるとか。

どんだけ広いのじゃ、皇都はっ!


っと言ってものぅ、実際に儂が住んでいる町でも移動にはのぅ。

地図を確認するとの、東京23区より広いと思われるのじゃよ。

皇都全体の縮小図が載っておってな、ここら辺の拡大図が別にの。

その比率を鑑みるに、そう思えるのじゃわい。


防護壁も皇都内に何重にも存在しておるみたいじゃて。

儂が通ったのは一番外側の防護壁らしいぞえ。


さて、宿舎の門扉を抜けて玄関らしき場所から中へのう。

ふむ、玄関脇に部屋から窓が玄関に開けられているような場所があるわえ。

管理人の当直室かのぅ?


そこには中年男性がおってな、窓の中からこちらを見ておったわえ。

あそこで受付をするのじゃろか?

そう思い、儂は男性の下へと(むこ)うたわけじゃが、あちらもこちらに気付いておってな。


「んっ?誰でい?」っとの。


「うむ、済まぬがの。

 今日、皇都へと辿り着いた者なのじゃが、難民管理局の適性検査にて教練所へ通うことになったのじゃわい。

 ゆえに宿舎に入りたいのじゃがの」


そう告げると、何やらシゲシゲと見られたわえ。

なんじゃろかい?


「身分証を提示して貰えるかい」っとのぅ。

ふむ、手続きに身分証は必要じゃわな、そう思い身分証を取り出し提示したぞぇ。


「うむ、ユウ・ノイマ、15歳か…

 来ていた連絡どおりだな。

 魔術適性ありだそうだが…珍しいことがあるものだ。


 身内に貴族様でも?」

なにやら、そのようなことをの。


「いや、先祖代々農民じゃてのぅ。

 まぁ、儂が知らぬ貴族様の血が入っておるのかは知らぬがのぅ」


困ったように告げるとじゃ、管理人殿が面白そうに告げるのじゃ。

「いやな、貴族の方々以外に魔術適性が現れるなど珍しいからな。

 魔術教練所へは下級貴族で庶民に近しい者達が通いはしているが、一応は貴族に身を連ねる者達だ。

 かく言う俺も下級貴族だが…ま、俺には魔術適性はなかったがな。


 下級貴族と言っても呼び名だけで庶民と変わらん。

 下級貴族で貴族だと偉ぶる者など皆無だから気楽に学べばよいぞ。

 しかし…農民で魔術適性ねぇ…意外と農村にも隠れた魔術適性持ちが居るのかもな」


そんなことを告げつつ、書類などを出してくる管理人殿。


「では、チャッチャと必要事項を書いてくれや。

 それが終わったら部屋へ案内しよう。


 そうそう、そろそろ食事の時間帯だな。

 部屋の案内が終わったら食堂へ案内するから、晩飯を食ってしまおう。

 食費や宿舎代などは月末に支払って貰う。


 請求代は月末に提示されるから、無駄遣いせずに代金を貯めておくことだな。

 まぁ、難民管理局で払われる補助金の支給日より後だからよ、無駄遣いしなきゃ大丈夫だろうがな」


そう言って笑いつつ、儂が記載し終わった書類を受け取り確認しておる。

不備はなかったようでの。


「うむ、良かろう。

 では部屋へ案内しようか」

そう告げると管理所より出て来た管理人に伴われ、宿舎を移動する儂であった。

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