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017.爺、トラインよ、帰って来たぞぇ!

トラインにログインするとじゃ、ログアウトする前にいた門前じゃったわぇ。

いや、正しくは門前に出されていた屋台の1つ近くじゃったがのぅ。


理解が追い付かずにキョロキョロしてしもうたらのぅ、塩結びをば買った屋台の店主が心配そうにのぅ。

「あんた、大丈夫かい?

 いきなり不安そうな顔になったと思ったらオロオロしだすわ、そしたらキョロキョロと辺りを見回し始めるし…

 ウチの商品に何かあったのか?」


そう心配そうにのぅ。

そうじゃったわえ、ログアウトしたのと同じタイミングでログインするのじゃったわえ。

儂は現実にて過した後じゃからのぅ、こちらでは(とき)が過ぎておらぬことを忘れておったぞい。


「いや、なんでもないわえ。

 しかし、この塩結びは美味いのぅ」

そう告げてニコヤカに微笑んでやると、店主はホッとしたようじゃったわえ。


そうじゃ、あちらから声をかけて来たこともあるゆえ、気になることを訊いてみるかえ。

そう思い店主に尋ねることにのぅ。


「そうじゃ店主殿」

「んっ?なんでい?」

「塩結びに使われている米は普通に流通しとるのかえ?」っとのぅ。


「ああ米かい?ここら辺では珍しくはなくなってはいるが、最近までは流通してなかったからなぁ…

 っと言うかよぅ、米が素材だってことを良く知ってたなアンタ。

 この米は近年、皇都近くの農村で育てられ始めた農作物だ。


 東のラーナラス王国が東方との通商にて手に入れている品の1つらしいぞ。

 そこから幾つかの品々を侯爵閣下が手に入れて侯爵領にて栽培試験を行ったらしいな。

 そして栽培に成功した品と方法を皇王様へ謙譲したってぇ話だ。


 なので昔にはなかった品々が皇都付近の農園にて栽培されはじめてなぁ。

 なんでも侯爵様に刺激を受けた貴族様方が各地より様々な品を手に入れて領内にて栽培研究なされているそうな。

 そんな中で栽培に成功した品が皇都付近でもな。


 特に皇都付近では様々な物産が得られるようになったから、料理人には堪らない地になってよう。

 斯く言う俺も数年前に皇都へ出て来た口だぜ。

 まぁ…流石に門中は地代が高すぎて店を出すのはなぁ…


 だがっ!今は門前町で、しがない屋台の親父だが、いづれは皇都内に店を持ってみせるぜっ!」


おお、熱い、熱いのぅ…このような情熱を持っておれるとは若いとは羨ましいことじゃて。

しかし食に対しては期待して良いようじゃてのぅ。

そちらには期待しつつ、別のことも訊きたいでな。


「うむ!このように美味い品を提する店主殿ならば、いずれは皇都内に店も構えられようぞい。

 ところで話は変わるのじゃがのぅ、皇都にはギルドはあるのかえ?」っとのぅ。

冒険者ギルドの場所くらいは知っておきたいわぇ。


「ギルド?何処のギルドのことでい?」

むっ?何処のじゃと?

儂がキョトンとしておるとな、店主殿が困ったようにのう。


「ギルドてぇとよぅ、職業互助組織のことなのは分っているよな?

 だから、どの職業ギルドのことかを言って貰わにゃ教えられんよ」


困ったように告げている店主殿に大銅貨数枚を手渡し告げることにのう。


「遅ぅなったが、教えて(もろ)ぅとる礼じゃて。

 それでのぅ、冒険者ギルドについてのぅ」

大銅貨を受け取った店主殿はニンマリしておったのじゃが、冒険者ギルドと訊いて困った顔に。


「冒険者ギルド?なんでい、そりゃっ?」っとな。

なんとぉっ!無いのかえっ、冒険者ギルド!


儂が驚いておるとのぅ、最初に鳥腿を買った店の店主殿が割り込んで来て言うのじゃ。

「そりゃ、数年ほど前に南西の小国チュルクで造られたとか言うギルドじゃないか?

 なにやらプレイヤー支援を行うギルドで冒険者ギルドとか名乗っていると噂に聞いたぞ。


 何でも屋みたいなことをする輩を支援しているらしくてな、ハンターギルドをはじめ様々なギルドと問題になっているそうな。

 大貴族が治める地方領で造られたらしいのだが、そこの領主の息子がギルド発足人の1なんだとさ」


「はぁ~、そんなギルドが存在していたとはなぁ…

 アンタも良く、そんなマイナーなギルドのことを知っていたもんだ」


いや、感心されてものぅ…

そうかえ、冒険者ギルドはプレイヤーが無理矢理造ってはおるが、1地方のマイナーギルドとの。

うむ、何から何まで儂が昔にやったテレビでのRPGゲームとは(おもむき)がことなるゲームだてのぅ。

して、冒険者ギルドがないことは分ったゆえ、教練所の宿舎へと向かうとするかのぅ。


「なるほどのぅ、色々と勉強になったわえ。

 では、また寄らせて貰うわえ」

「おう、待ってるぜぇっ!」っと、にこり受け答える店主殿。

「こっちにも寄ってくれよ!」っと、腿肉焼きの店主殿もの。


「うむ、その内の!」そう応えてから門へ向けて歩き始める儂じゃった。

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