015.爺、何事じぁぁぁっ!
難民管理局より出て門前へとのぅ。
門に向かう間に辺りの景色が目に入ってきた訳なのじゃがの、門の外にも雑多な賑わいというものがのぅ。
多くの屋台やゴザのような敷物を敷いて品物を売っておる者達などがのぅ。
キチンとした店舗もあるようなのじゃがな、猥雑な活気というべきものが溢れておるわい。
それに比べるとじゃ、門の中は整然とした感じでのぅ、都会的な趣に変わるでな。
少々小腹も空いた感じの儂に屋台から漂う匂いがダイレクトアタックじゃて。
若い頃のような空腹が湧き上がってくるのじゃ。
いや、久し振りの感じじゃてのぅ。
くぅぅぅ、堪らんわえ、実家より持ち出した金銭もあるようじゃて、ここは1つ買ってみるかえ。
そう考えた儂は屋台へとのぅ。
「おお、こりゃ美味そうじゃ」
1つの屋台へ近付くとじゃ、鳥の骨付き腿をタレ焼きしとるのが目に入ったわえ。
値段は350ソルとなっておるわい。
金銭価値がいまいち分らんのじゃが、儂が持っておる金銭ならば余裕で買えそうじゃて。
って、ん?
なんで儂はアバターが保持しておる所持金について知っておるのじゃ?
いや、無意識なんじゃがのぅ、アバターの過去なども、なんとなく分っておることに気付いたぞぇ。
意味が分からんわぇ、はて?
そんなことを思いつつも焼き鳥を購入じゃっ!
ううむぅ、こりゃ、食いでがあるのぅ。
両手の平から十分に溢れるほどの大きさの本体が骨に付いておる訳じゃがのぅ。
それに齧り付いて食い千切りつつ食す訳じゃ。
紙の手拭が数枚ほど一緒に手渡されたので怪訝に思っておったのじゃが…こりゃタレで汚れるで必須じったわえ。
アッサリめでありながら十分な肉汁が溢れてのぅ、それが甘辛いタレと交わい得も言えぬ味へと消化しとるぞえ。
これに白米があればのぅ!
そう思い、辺りを見渡せばじゃっ!塩結びを売っておるではないかぁぁぁっ!
これは買いじゃっ、買いっ!
即座に買いに走ったぞえ。
ふぃっ、食った、食ったぁっ!
こんな腹一杯に食したのは何時以来であったかのぅ。
っと…そうじゃったか、ここは仮想世界であったわえ。
実際に食した訳ではない訳かえ…なんとも不思議じゃのぅ。
っと言うかじゃ、今考えたら…ここはゲーム世界は良いのじゃが、どうやったらログアウトできるのじゃ?
メニューとやらがゲームならばある筈なのじゃが、メニューの出し方も分らんのじゃが…
むむっ?マジでログアウトとやらは、どうするのかのぅ?
いや、今まではのぅ、余りにリアルな世界に圧倒されておってな、つい忘れておったのじゃよ。
ええじゃないかぇ、見えたのじゃ、聞こえたのじゃよ。
体が動くわ、息は苦しくないしのぅ、疲れずに活動可能なのじゃよ?
夢中になっても、ええじゃないかえ。
じゃからシステムが使えんのに気付かぬでも当然じゃわえ。
そう思うじゃろ?
っと言ってものぅ、ログアウトできぬは困るのぅ。
儂はログアウトしたいのじゃ、どう…
そう思った儂の意識がのぅ、いきなり途絶えたのじゃ。
何事じぁぁぁっ!




